明るい部屋でもメリハリのあるプロジェクター映像を楽しめるスクリーン「ブラックシャイン」をレビュー。写真の張り込み式のほか、電動巻き上げ式もラインアップされる
最新プロジェクターが投写する映像の明るさは向上しているものの、明かりを残したリビングで使う場合には、どうしても映像が白く飛んでしまう。そんな課題を大幅に解消するのがキクチの「ブラックシャイン」スクリーンだ。つまり、部屋を暗くしなくてもプロジェクターを高画質で楽しめるということ。今回改めてメーカーであるキクチ科学研究所に足を運び、一般的な「拡散型」マットスクリーンと比較しながらその効果を確認した。
キクチ科学研究所は、昭和33年に創設された数少ない国内スクリーンメーカーだ。家庭用のみならず、公共施設などへの製品納入も行っている。
今回視聴したのは、米国Grandview(グランヴュー)社の幕面を使った「ブラックシャイン」スクリーン。「通常焦点プロジェクター用耐外光ハイコントラストスクリーン」というキャッチがついている。何やら長ったらしく、一見すると複雑に思えるが、意味を分解するとわかりやすい。
幕面(スクリーンの生地)自体はGrandview製
「通常焦点プロジェクター用」とは、「超短焦点プロジェクターには向かない」という意味だ。もっとわかりやすく言い換えれば、スクリーンに対する打ち込み角が大きい(急峻な角度で光を当てる)超短焦点プロジェクターには不向きであることを示す。
なぜなら、プロジェクターから真っすぐに投写される光源だけを視聴方向に反射させ、その周辺からの環境光を遮断する仕組みを取っているからだ。それこそが「ブラックシャイン」の「耐外光」の意味するところで、そもそもの開発目的なのである。
こうしたスクリーンの幕面の違いによる効果については、関連記事を参照されたい。
「ブラックシャイン」の反射イメージは左のとおり。外光を視聴者に向けて反射しないため、明るい部屋でも高コントラスト映像を楽しめる。関連記事で言えば、「反射型」として紹介した「シルバー系」に該当する。超短焦点向けの「耐外光型」スクリーンとは異なり、斜めから入った光を遮る特性なので、スクリーンに対して下から急峻な角度で光を当てる超短焦点プロジェクターでは使用できない
メーカーの一室で明かりをつけたまま「ブラックシャイン」を視聴。プロジェクターはビクター「DLA-Z5」だ。画面中央付近には小さく切り出した一般的な「拡散型」マットスクリーンの幕面を設置し、比較を試みた
「ブラックシャイン」の現物を一般的な「拡散型」マットスクリーンと見比べると、ややグレーがかっており、近づいてみると表面が降り積もる雪のようにキラキラしているのがわかる。これこそが「反射型」(「シルバー系」)の特徴だ。
これまでさまざまな「反射型」スクリーンを見てきたし、自身も過去にスチュワートの「グレイホーク」という「シルバー系」に準じた「グレー系」スクリーンを使っていた。その経験から言えば、一般的な「反射型」スクリーンは総じて黒が沈んでクッキリと見え、赤がビビッドないしコッテリとするのが印象的であるいっぽう、ホットスポット(周辺が暗く中心が明るくなる症状)が出たり、過度に赤みを帯びたりする傾向があった。
「ブラックシャイン」(左)と「拡散型」の「ホワイトマット」の比較イメージ。幕面の色がかなり異なる。暗室で見るならば、より白い「ホワイトマット」のほうが色再現の面で有利ではある
「ブラックシャイン」を視聴すると、なるほどクッキリして黒の描写にすぐれる点で「シルバー系」らしさを感じさせる。それでいて赤が強調されたり、空の青や木々緑が人工的に見えたりすることもなく、きわめてフラット。ゲイン(※)は1.7もあるというが、まぶしいということもなく、かつ、どの色も自然な描写である。
※ゲイン(スクリーンゲイン)とは、スクリーンの幕面そのものが持つ特性を数値化したもの。標準白板と呼ばれる完全拡散板に真っ直ぐに光を当てたときの跳ね返り輝度を1としたときの比率で、1.7は非常に高い数値。プロジェクターの明るさ不足を補う特性があると言える。
Ultra HDブルーレイ「青森 ねぶた祭」を再生すると、昼間のシーンでも空が白く飛んでしまうことがなく、青い空の合間にたゆたう雲のシルエットが明瞭。グラデーションもすうっと自然で伸びやかだ。
印象的なのは人肌の色。人々の紅潮した耳たぶが過剰に赤くならず、かつ1人ひとりの肌のトーンの違いもきちんと描き分けている。
こうした画調は、全暗(部屋を真っ暗にした状態)から、天井に明かりを点けて夜のリビングを模した状態に変えても、さほど変わらなかった。全暗での特徴として付け加えるなら、一般的な「拡散型」マットスクリーンとの比較において、やや輪郭がクッキリ明瞭に見える印象はある。
視聴では映画作品のほか、「青森ねぶた祭」のUltra HDブルーレイを再生。8K/60pで収録されたビコムの力作。自宅プロジェクターの再現性を確かめるのに好適だろう 【パッケージ/映像協力:ビコム株式会社】
一般的な「拡散型」マットスクリーンのパネルを置いて「ブラックシャイン」と比較。中央右側だけ色が浅くなってしまっているのがわかるだろう。この部分がマットスクリーンだ
どの部分でも、「ブラックシャイン」ではしっかりと色が乗っている。いっぽうでマットスクリーンのパネル部分は色が浅めに見える
より差が顕著だったのは夜のシーンだ。「ブラックシャイン」では黒い部分がしっかりと黒く沈み込むので、よりコントラストのある(メリハリのある)映像に見える
ただし、「ブラックシャイン」にも注意すべき点はある。今回はプロジェクターに「DLA-Z5」(光源は青色レーザー)を使ったが、巷を賑わせているRGB(3色)レーザー光源のDLPプロジェクターのような組み合わせでは、特有のクセーーマットスクリーンでも見る人によっては気になるスペックルノイズやコントラスト感ーーが強調されすぎてしまう可能性がある点は留意したい。
電動巻き上げ式「ブラックシャイン」のケースは白。リビングユースを想定したカラーリングなのだろう
なお、冒頭で紹介したように「ブラックシャイン」は電動巻き上げ式のほか、張り込み(フレーム)式も選べる。どちらも100と120インチがレギュラーサイズとして用意されている。
電動巻き上げ式には赤外線リモコンが標準装備され、上下左右にワイヤーで引っ張ることで平面性を得る(しわになりにくい)「タブテンション機構」があり高画質が見込める。黒マスクも大きめなので、映画好きの人は映像に集中できるだろう。なお、ケースはやや大ぶりなので、設置エリアはよく確認されたい。
実際に視聴しても、幕面のしわもなく平面性が保たれていたことも付け加えておきたい。張り込み式を設置できないご家庭でも画質に妥協せずに設置できるのはうれしいポイント。なお、各機構による違いは、以下の関連記事をご覧いただきたい。
電動巻き上げ式スクリーン横には、ワイヤーでテンションをかけて平面性を確保する「タブテンション機構」がある。高画質のための工夫だ
期待していたとおり、「ブラックシャイン」は明かりを残した部屋でもテレビのように気兼ねなく視聴できる柔軟性を持っていた。さらに、電動巻き上げ式ならば100インチ120インチという大画面を、使わないときに収納できる点でも魅力的だ。
それなりに高価であること、RGBレーザーのDLPプロジェクターとは相性がよくないことを考えると、組み合わせるプロジェクターはビクター/JVCやエプソンなど、従来型の製品が望ましい。留意すべき点はあるものの、現状で壁投写している人はもちろん、昔はやっていたという人には“もう一度”、「スクリーンどうですか」と問いたくなる一品だ。リビングなどで、テレビではなかなかできない大画面体験をするための救世主になるだろう。
左写真は「Recodis」シリーズ電動巻き上げ式のイメージ。基本サイズは100インチから150インチまで10インチ刻みだが、特注サイズも対応してくれる
最後に、「耐外光」製品ではないもののこの場で紹介しておきたいのが、キクチのホームシアター用スクリーン「Recodis(レコディス)」シリーズ。映画館のスクリーンと同じようにひとつずつ手塗りで仕上げられるという特別な製品群だ。このタイミングで本製品を紹介する理由は、「Recodis」シリーズが2026年10月31日で販売終了と告知されたから。現行製品(幕面)はゲイン1.25の「Dressty 4K G2」とゲイン1.0の「Grace Matte 100」の2種。「ブラックシャイン」とは対照的に暗室でじっくり映画を見るユーザー向けの本スクリーン、検討していた方は急いで問い合わせを!