ヤマハの7chアンプ内蔵AVアンプ「RX500A」をレビュー。「5.1.2」などのスピーカー構成でDolby Atmos再生が可能であるほか、Spotify、Qobuzなどを使った音楽ストリーミングにも対応する多機能機だ
2026年9月末にヤマハの最新AVアンプ「RX300A」の試聴記を本マガジンに寄稿したが、ここではその上位機にあたる新製品「RX500A」のリポートをお届けしたい。
「RX500A」は7ch(チャンネル)パワーアンプを内蔵したDolby Atmos / DTS:X対応機で、5.1chにオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカー2本を加えた「5.1.2」システムでのDolby Atmos再生が可能だ(サブウーハー出力が2系統用意されているので、最大「5.2.2」システムを構成できる)。また、Dolby Atmos再生用のトップ/ハイトスピーカーを配置しない、配置できない場合は、それらの効果を仮想的に生み出せる「Speaker Virtualization」機能が用意されている。
本機の外観デザインは「RX300A」と瓜二つで、艶消しブラックの精悍なデザイン。ボタンやスイッチの配置も理にかなっていてじつに使いやすい印象だ。
パワーアンプはICチップではなく、ディスクリート構成。電源トランス由来の振動を抑える「5番目の脚」を取り付ける対策が施されている。HDMI入力は4系統で、8K/60Hzや4K/120Hz信号のパススルーに対応する。
本体中央付近に「5番目の脚」が取り付けられているなど、外観の設計は「RX300A」とほぼ同じ。両機の大きな違いは内蔵アンプ数とオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーへの対応(「RX300A」は非対応)と言える
本機はネットワークオーディオ機能を搭載していて、多くのオーディオファンの支持を得ている高音質音楽ストリーミングサービスQobuz(コバズ)に対応しているほか、「Qobuz Connect」機能を使ってスマートフォンやタブレットの「Qobuz」アプリから直接選曲することもできる。もちろんBluetooth機能も装備する。
もうひとつ「RX300A」と比較した場合の「RX500A」の大きなアドバンテージがネットワークオーディオの対応だろう。Spotify、Qobuzに対応しているだけでなく、双方「Connect」対応。使いなれた各サービスのスマホアプリから選曲し、「RX500A」を再生先に選ぶだけで高品位再生を期待できる
また、「ルームコレクション」機能を搭載していることも「RX300A」と同様。これは付属のマイクを使用し、テスト信号を発生させて各スピーカーから視聴ポイントまでの距離や各スピーカーの低音再生能力、部屋の音響特性込みの周波数特性を計測して音質を自動補正する機能のことだ(ヤマハ独自の音場補正機能「YPAO」とは異なる。「YPAO」についいてはこちらの記事を参照)。
「RX500A」では、天井に設置する2本のスピーカーを含む最大「5.2.2」構成のサラウンドシステムを構築可能。スタンダードなDolby Atmos対応と言える
天井にスピーカーを設置しない場合はサラウンドバックスピーカーを使った7.1chも可能。この場合、高さ方向の音場は「Speaker Virtualization」機能で再現してくれる
ここでは、まず「ルームコレクション」機能を生かして、本機の音を聴いてみることにした。ちなみに我が家の再生システムは、センタースピーカーを使わない「6.1.6」構成。フロントL/RスピーカーがJBL「PROJECT K2 S9900」、サラウンド、サラウンドバック、トップスピーカーはすべてLINN「CLASSIK UNIK」で、サブウーハーはイクリプス「TD725sw」だ。今回使うのは、そのうちの「4.1.2」構成のスピーカー(フロントとサラウンド、トップフロントスピーカー、そしてサブウーハー)ということになる。
「RX300A」と同じく筆者自宅でテスト。付属マイクで「ルームコレクション」も実施した
テスト信号を計測して結果を見ると、38cmウーハー搭載の「PROJECT K2 S9900」にもベースマネージメントが働き、45Hz以下の信号がサブウーハーに振り分けられる設定になった。これはこの部屋で発生する定在波の影響によって視聴ポイントで45Hz以下にディップ(凹み)が出ているということだろう。
もっともこのベースマネージメントを行なった状態と行なわない状態(=フロントL/Rスピーカーにフルレンジの信号を送る)を比較してみると、後者のほうがより好ましい音だったので、マニュアルでフロントL/Rはフルレンジに設定することにした。
参考までに「ルームコレクション」の結果がこちら。かなり積極的にベースマネージメントをする(低域をサブウーハーに振り分ける)タイプのようだ。ここからフロントスピーカーのクロスオーバー周波数を変更したほか、レベル調整なども手動で行っている
上記の調整を行った状態でDolby Atmos収録のブルーレイ「罪人たち」を再生してみたが、予想を上回るダイナミックなイマーシブ・サウンドを聴くことができ、その迫力に言葉を失った。9万円弱(※)のAVアンプでこんな凄い音が聴けるとは……。
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1930年代のアメリカ南部。黒人向け安酒場(ジュークジョイント)でひとりギターを爪弾きながらブルーズを歌う少年。その寂しげな音楽が現代の黒人音楽ヒップホップとマッシュアップされるシーンはビートが躍動し、トップスピーカーを生かして効果音が天井高く定位する。「RX500A」で再生すると、この場面は5.1chではなく、もう絶対Dolby Atmosで体験したいと思わせる。Dolby Atmosの立体音響効果の凄さに加えて、「RX300A」以上に音が緻密で低域の解像度がきわめて高いと実感させた。
またDolby Atmosのストレートデコード再生に加えて「MOVIE」モードで「罪人たち」を観てみたが、より音圧感が上がり、細かな効果音がいっそう浮き上がってきて、その効果は明瞭だった。ただし、台詞に抑揚が付きすぎる印象もあり、長時間見るならストレートデコードのほうが好ましいかもしれない。
再生モードとして「MOVIE」や「MUSIC」などがあるが、「STRAIGHT」モード(ストレートデコード)が基本。特殊な音場効果は付加しないが、「Speaker Virtualization」は有効だ
エリック・クラプトンのUltra HDブルーレイ「レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ」。コロナ禍で収録された無観客ライブ作品なのだが、「RX500A」で聴く本作のDolby Atmosサウンドもすばらしかった。「RX300A」で聴く以上にギターピッキングが明瞭で、スティーブ・ガッドのスネアのブラッシュワークの音数が多い。
「MUSIC」モードの効果も好ましかった。ギターの残響が強調され、ライブの雰囲気がよりいっそう際立つ印象だ。ここで「自動EQ」(イコライザー)とそれをオフにした音を聴き比べてみたが、ぼくの部屋の場合はオフのほうが音に生気が宿る感じで好ましかった。「自動EQ」は「音の整い」がよくなるが、音がおとなしくなる印象なのである。
ちなみに周波数特性を手動で調整できる「GEQ」は10バンド構成(中心周波数は32Hz/63Hz/125Hz/250Hz/500Hz/1kHz/2kHz/4kHz/8kHz/16kHz)。ボーカルや台詞の張り出しをよくしたい場合は、250Hz/500Hz/1kHzあたりを持ち上げるとよいだろう。
「ルームコレクション」の測定結果を元に周波数特性の補正を行う「自動EQ」のほか、手動での調整「GEQ」にも対応する。なお、「自動EQ」の数値を微調整することはできなかった
スタジオジブリのUltra HDブルーレイ「もののけ姫」の冒頭を再生してみた。本作はDolby TrueHD5.1ch収録。イコライザーやトーンコントロール、エキストラベース(低域強調)機能がオフになる「ピュアダイレクト」モードでは、台詞のヌケのよさ、歪み感の少なさが印象的。いっぽうトップスピーカーが盛大に鳴る「MOVIE」モードでは、効果音が立体的に広がり、よりダイナミックなサウンドに変貌する。落ち着いてじっくり見るなら「ピュアダイレクト」モードだと思うが、エンタテインメント色が強くなる「MOVIE」モードの楽しさも捨てがたい。
いずれにしても、「RX500A」のマルチチャンネル映画作品の表現力は「RX300A」のはるか上をいく。音の密度感、低音の澄明さと力感、立体音場効果のすばらしさに大きな感銘を受けた。
「Qobuz Connect」を使って2ch音源も再生。スマホの「Qobuz」アプリで選曲をすると、「RX500A」がネットワークオーディオプレーヤーとして音楽再生を行う。スマホから圧縮した音源を伝送するわけではないので、高音質を期待できるのだ
最後に「Qobuz Connect」を用いてQobuzの音源を2ch再生で聴いてみた。「iPhone」の「Qobuz」アプリで選曲し、「RX500A」を再生先として選ぶだけ。竹内まりや、韓国人ジャズ・シンガーのユン・サン・ナなどの楽曲を聴いてみたが、ボーカルに独特の艶が乗り、じつに快適。本格的なネットワークオーディオプレーヤー再生に比べれば、音場の広がりや細かなニュアンスの再現に物足りなさはあるが、クリーンで明瞭な音像描写に本機ならではの音の魅力を感じた。「RX300A」のBluetooth再生とは品格の表現に格段の違いがあることが実感できた。
5chアンプ内蔵の弟機「RX300A」(下)は、バーチャルでDolby Atmosを楽しめる入門機。Bluetooth接続での音楽再生も可能。いっぽうの「RX500A」は、7chアンプ内蔵でリアルスピーカーによるDolby Atmos再生が可能なほか、ネットワークオーディオプレーヤーとしても利用できる
5万円を切る価格(※)で5chアンプ搭載の「RX300A」は、オーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーを配置できないけれど、「Speaker Virtualization」機能を用いてDolby Atmosを体験してみたいという方向け、9万円弱(※)で7chアンプ内蔵の「RX500A」は、1ペア2本のオーバーヘッドスピーカーを取り付けて、リアルスピーカーでDolby Atmosの立体音響を楽しみたいという方向けだろう。もちろん、イネーブルドスピーカーも利用できる。
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加えて「RX500A」は、「Spotify Connect」や「Qobuz Connect」対応機なので、話題の高音質音楽ストリーミングサービスがコレ1台で楽しめる。映画も音楽もよい音で楽しみたいという方には「RX500A」と太鼓判を押したい。