商品企画担当者にインタビューを敢行

オンキヨー初の携帯型Bluetoothスピーカー「SAS200」の全貌に迫る!

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2015年3月、「オンキヨー」ブランドとしては初となる携帯型Bluetoothスピーカー「SAS200」が発売された。サイズを超えたサウンドエクスペリエンスで話題を呼んでいる製品だ。単に、オーディオ技術の進化だけでなく、リスニングスタイルの変化をも感じさせる製品に仕上がっている。そこで今回、オンキヨーの商品企画担当者に取材を敢行。SAS200のコンセプトや技術詳細についてお話しをうかがった。

今回お話しをうかがったのは、オンキヨー&パイオニア株式会社オーディオ事業本部商品企画部オーディオ企画2課マネージャーの浜田直樹氏(写真左)と、オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン株式会社営業本部営業企画部の上田賢司氏(写真右)のご両名。SAS200の仕掛け人である

ミニコンポの進化系として開発された製品

オンキヨーはハイファイオーディオメーカーとしての長い歴史を持つが、実はPC用のサウンドカードやUSB DACなど、PC周辺の音質改善アイテムでも、他社に先んじて製品化してきたという歴史も持つ。近年では、ヘッドホン&イヤホンおよび、ポータブルヘッドホンアンプなど、モバイルオーディオでの存在感も高めている。

そんなオンキヨーが、ワイヤレスで音楽を楽しめるBluetoothスピーカーを投入するのはごく自然な流れと考えられるが、オンキヨー製品群におけるSAS200のポジションについて、あらためて浜田氏に確認をしたところ、意外にもポータブル&パーソナルオーディオの延長線ではなく、メインストリームだったミニコンポの進化形にあたるとのこと。

浜田氏によれば、メディアの変遷がオーディオのカタチを変えるという。過去のレコード、FMラジオやカセットテープ、CDやMDに比べ、ネットの登場はドラスティックな変化と言ってもいいだろう。ユーザーはネット通じて多くの新しい音楽に触れ、試聴を行ってダウンロード購入も可能になった。また、通信環境も整い、聴き放題サービスやインターネットラジオのストリーミングサービスも、スマホを利用すればいつでもどこでもアクセスできる時代だ。

オンキヨー試聴室での取材風景。筆者鴻池(左)、浜田氏(右)

オンキヨー試聴室での取材風景。筆者鴻池(左)、浜田氏(右)

SAS200の仕掛け人である浜田氏

SAS200の仕掛け人である浜田氏

つまり、スマホを中心とするオーディオシステムの台頭は、単にコンパクトで利便性が高まったということだけではなく、リスニングスタイル自体のターニングポイントなのかもしれない。浜田氏によると、SAS200は、そうした変化を正面から受け止めた、オンキヨーの答えであり、同機にはオーディオとして正統な表現能力を持たせるべく、迫力と音質を追求してオーディオのノウハウを凝縮したという。

繰り返すが、単なるポータブルオーディオではなく、ミニコンポの新しいカタチ。それがSAS200なのだ。

据え置き型オーディオに迫る迫力を実現した技術

今回、SAS200において、ポータブルの枠を超え、据え置き型オーディオに迫る迫力と音質を実現した技術詳細についてくわしくお話しをうかがった。

筐体はアルミの風合いから高級感を感じるが、音質面でのアドバンテージもあるという。部品レベルで見ると、押し出し材を切削加工したもので、継ぎ目らしき継ぎ目は見あたらない。コストはかかるが剛性が高く、ハイパワーの音を受け止める土台として相応しい構造体と言えるだろう。

アルミの押し出し材を使用した堅牢な構造を採用

アルミの押し出し材を使用した堅牢な構造を採用

筐体はコンパクトがゆえに、ドライバーユニットの直径は40mmと限定的だが、重低音をパワフルに奏でるべく、オンキヨーは新開発の駆動板「ODMD(Onkyo Double-Molding Diaphragm)」をSAS200で採用している。強靱な振動板に、柔らかな素材のエッジをシームレスに組み合わせ、ストロークの長さで“量”を稼ぐ算段だ。

SAS200用に新規開発されたドライバーユニット

SAS200用に新規開発されたドライバーユニット

またSAS200には、高出力時にドライバーユニットの暴れを吸収すべく、音楽信号に追従させるよう動的にコントロールする技術「スマートアンプ」が採用されているが、SAS200では、スマートアンプの能力を最大限に引き出せるよう、ドライバーユニットも最適化しているという。ドライバー設計でもノウハウを持つオンキヨーならではの、逆転の発想と言えるだろう。

このほか、限られたスピーカーボックス容量で低域を増強するためのパッシッブラジエーターにもこだわりが詰まっている。ドライバーの動きに素早く追随できるよう、エッジにはしなやかなエラストマー素材を用いている。通常、エラストマーは高価で接着剤がつきにくいという理由から、エッジには使用しない素材だが、SAS200ではインサート成型技術を用い、心材となる金属、振動板、エッジを一体化することで解決。音にこだわり、部品レベルまで徹底的に追求するのがオンキヨー流だ。

パッシブラジエータ裏面。金属のフレームと錘をエストラマーで包み込む手法で、接着工程を排除

パッシブラジエータ裏面。金属のフレームと錘をエストラマーで包み込む手法で、接着工程を排除

コーデックにもこだわって高音質を実現

ワイヤレスで音声データを受信するBluetoothスピーカーの音質に大きく左右するのが、コーデック(音声圧縮規格)の違いだ。SAS200では当然のごとく、高音質で定評のある英CSR社の「aptX」(アプトエックス)を採用している。近年はスマホやタブレットも、Android OS機を中心に、aptXの採用が増えており、高音質接続が可能となっているが、オンキヨーがaptXを採用するもうひとつの理由は接続の安定性だ。社内の技術検証からも、信頼性の高さが確認できたという。また、aptXは遅延が少ないのもポイント。YouTubeやHuluなど、ネット動画を視聴する際は、登場人物の口の動きに対して音が遅れると違和感を覚えるため、そうした観点からも、音の遅延が少ないaptXの利用は有効だ。具体的には、AAC(VBR/256kbps)が800ms±200ms(ミリセカンド)、SBCが(220ms±50ms)、AAC(128kbps)が120ms±30msという遅延が生じるのに対し、aptXは70ms±10msというスペックを誇る。

aptXをライセンスするCSR社の資料。コーデックによって遅延時間には少なくない差があることがわかる

aptXをライセンスするCSR社の資料。コーデックによって遅延時間には少なくない差があることがわかる

このほか、コーデック関連では、SAS200がAACをサポートしていないのが気になった。iPhoneなど、aptXに対応しない端末の場合、一般的にAACよりも音が悪いとされるSBCを利用することになるからである。しかしながら、浜田氏によると、SBCには、ビットプールという枠組みがあり、音質は一様ではないという。筆者の調べも合わせると、ビットプールは32〜53と幅があり、ビットレートとしては192kbps〜328kbpsの開きがある。最新の音質を重視したオーディオ機器は、多くがビットプール53(328kbps)に対応していて、AACに迫る音質が期待できるのだ。

試聴レポート

今回は防音と調音が整ったオンキヨーのリスニングルームでSAS200を試聴した。まず、低域の迫力や量感に驚かされた。手の平に乗るほどコンパクトなスピーカーからの音とは思えないヘビー級だ。それでいて低域がブーミーにならずきちんとコントロールされているのに感心する。ベースなどの低域楽器は、音に輪郭を伴い、音程の表現も上々で、小気味よいリズムから躍動感が楽しめた。引き締まった低域は中高域を濁さず、ボーカルの透明感や艶も味わい深い。

SBCとaptXの比較試聴も行った。まず、SBCの音も、AACに勝るとも劣らない高音質で楽しめた。先述の通り、SBCの音が悪いと決めつけるのは誤りのようだ。次に同じ楽曲をaptXで試聴。まずまず良好なSBCに対しても、空気がガラリと入れ替わったかのように、空間の広がりが増す。ボーカルもよりクリアで伸びが加わり、開放的で心地よく耳に届くのが大きな違いだ。原理面から、aptXはSBCに対し、特に高音域で圧縮による音の歪が少ないというアドバンテージを持つが、試聴結果から、aptX自体の優位性に加え、SAS200がオーディオ機器として、コーデックの違いも表現できる能力を備えていることがわかった。

上田氏によるデモンストレーション。2台のSAS200を、右側と左側に設定して頂いた。天面のボタンで簡単に切替できる

SAS200はコンパクトがゆえに、再生できる音量には限界があるが、モノ足りないユーザーなら、SAS200をもう一台追加してパワーを2倍にすることもできる。右と左に割り当ててステレオ再生もでき、その臨場感はミニコンポにも匹敵する。

近年はテレビにBluetoothトランスミッターを内蔵した製品も登場しており、SAS200をシアターバーのように使うのも妙案だ。特に、SAS200はバッテリーの充電中、「スマートスタンバイ」機能が利用でき、有線接続のライン入力でも、無線のBluetoothでも、音声信号を検知して電源が自動連動する。つまり、ユーザーは、SAS200の電源操作を気にする必要はなく、テレビの一部かのように利用できるのだ。テレビのUSB端子から電源を供給すれば、配線もシンプルにできる。

また、Bluetooth接続ならSAS200を自由に移動できるので、就寝時は手元に置いて小音量かつパーソナルに音を聴くような使い方にも重宝するだろう。具体的には、近年のパナソニックの「VIERA」は、コーデックにaptXを採用しており、SAS200との組み合わせななら、高音質かつ低遅延で違和感なく楽しめる。テレビ周りのオーディオとしてもSAS200は活用できそうだ。

最後に

マスターウォールの台座にSAS200を乗せたイメージ。上質な天然木の風合いと肌触りが、音楽鑑賞の気分を高めてくれる。振動の吸収など、音質的にもプラスだ

細部の作り込みのよさや、音質にこだわった独自技術の投入、そしてその結果である音質など、総じてポータブルスピーカーというよりは、ハイファイオーディオに近い印象を受けた。リスニングスタイルの変化を受け、今後はSAS200のようなコンセプトが、オーディオのメインストリームとなる日は、意外と早くやってくるかもしれない。また、こうした小型&高音質を目指したことによって得られた新しい知見や技術が、家庭用の据え置き型オーディオにもフィードバックされ、オーディオ技術を更に先へと進める原動力にもなるだろう。

そのほか、オンキヨーはSAS200を切っ掛けに、無垢のウォールナットを使った家具の製造販売で著名なマスターウォールとのコラボレーションを試験的に開始。マスターウォールのショールームでは、非売ながらSAS200と台座のセットを組み合わせた提案展示を行っており、今後、市場の反応によっては製品化される可能性もあるという。新たな価値を模索し始めたオンキヨーのライフスタイル提案にも注目だ。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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2017.9.20 更新
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