車の中で音楽をかけると、ドライブの楽しさが倍増する。特に今は、スマートフォンを活用して手軽に音楽を聞けるので便利だ。手持ちのスマホに保存した楽曲を再生したり、Spotify/Apple Musicなどのストリーミングサービスから膨大な楽曲を流したり、もちろんYouTubeで公開されているミュージックビデオの音声だって楽しめる。
車内でスマホの音楽を流すスタンダードな方法としては、車載AVユニットとスマホをBluetoothまたはUSB/オーディオケーブルで接続するスタイルがある。しかし今回はあえて、車の中にBluetoothスピーカーを持ち込んでワイヤレスで音楽再生する楽しみ方を紹介したい。車載AVユニットと接続するのとは異なるメリットをはじめ、車内に設置するときの注意点、製品選びのポイントまで解説しよう。
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車にBluetoothスピーカーを持ち込む最大のメリット、それは車のオーディオ環境に左右されずに自分の好きな音で音楽を聞けることである。お気に入りのBluetoothスピーカーの音質を楽しみながらドライブするスタイル。バッテリー搭載のポータブルスピーカーなら、友達の車でも親の車でもレンタカーでも手軽に持ち込めて、車に乗り込んでからすぐにスマホと接続して音楽を鳴らし、迅速に走り出せるのもうれしい。
車に乗り込んだらすぐにエンジンをかけて走り出したい! マイカー以外の車でも、使い慣れたBluetoothスピーカーでお気に入りの音を鳴らせる楽しみ
もちろん、最近の新車やレンタカー/シェアカーのAVユニットにはBluetooth機能が搭載されている場合が多く、それだけでもスマホとワイヤレス接続して音楽再生できるようになっていて便利だ。しかし実際のところ、車載AVユニットのユーザーインターフェイスは車両によって違うこともあり、マイカー以外の慣れていない車両だと接続に手間取ってしまうことが往々にしてある。また、中古車などでBluetooth接続機能が備わらない車両も依然としてある。
そんなときは別売のBluetoothトランスミッターを購入したり、スマホとAVユニットをケーブル接続する方法があるが、上述の通りBluetoothスピーカーを車内に持ち込むのはいちばん手っ取り早い。普段自宅で使用しているモデルをそのまま車の中に持って行けば、室内と同じノリですぐにスマホと接続して音楽再生できるので楽なのだ。
またこれからの季節は、車でキャンプなどのアウトドアシーンに出かける人も多いだろう。そんなときは、車の中で使っていたBluetoothスピーカーをそのまま外に持ち出して、引き続きアウトドア環境でも音楽を鳴らして楽しむことができる。
続いては、車で使いやすいBluetoothスピーカーの条件を書き出していこう。製品の要素としては大きくサイズ/形状、電源、音質の3 点があり、これらを踏まえて開発された車載専用モデルもあるのでぜひ注目されたい。車内に設置するときのポイントも合わせて解説する。
Bluetoothスピーカーを車載で使用する場合、まず考えたいのは電源の確保だ。そこで、バッテリー内蔵のポータブルタイプであることを最重要視しよう。大容量のバッテリーを内蔵したモデルや長時間駆動が売りのスタミナタイプを選んでおけば、数時間のドライブなら電源を気にする必要がない。
ポータブルタイプのBluetoohスピーカーは持ち運びに便利
また、ほとんどの製品がそうであるが、USBケーブルで充電可能なモデルを選んでおくと長時間使いたい場合に便利だ。最近発売される新車の多くがスマホなどの充電用にUSBポートを搭載しているので、ケーブル1本で充電しながら使用できる。また、USBポートがない車では、シガーソケットに接続できるUSB変換プラグを利用すれば、走行中に充電できる。
最近のBluetoothスピーカーはUSB充電できるモデルがほとんど。製品に付属する充電用のUSBケーブルを使用すれば、車内のUSBポートから問題なく充電できる
サイズについては、持ち運びが楽で車内に置きやすい小型モデルがよい。ドリンクホルダーに入る円形状のモデルや、ストラップ付きでシート横にぶら下げられるモデルが便利だ。ドリンクホルダーに設置したい場合は、500mlペットボトルの直径が約6.5cmなので、その直径を大きく超えないサイズを選ぶとよい。また、車だけではなく外にも持ち出したい場合は、防水・防塵機能の付いたモデルが最適。
500mlペットボトルより小さいサイズ・形状のものを選ぶとドリンクホルダーに設置できて便利。なお、設置してビビリ音が出てしまうときは、ドリンクホルダーとスピーカーの間にハンドタオルなどを挟んで予防するとよりよい
ストラップ付きのモデルであれば、シートなど視界をさえぎらない場所にぶら下げて使える
Bluetoothスピーカーを車で使うとき、普通に室内で使用するのと異なる要素が「必要な音量」である。エンジン音や外音が聞こえる車載用途では、室内よりも大きな音量が必要になるのだ。なので、できるだけ小型モデルを選びつつも、アンプの出力が大きく、大音量でも音が歪みにくい製品がよい。
Bluetoothスピーカーは一般的に片手で持ち運べるサイズの製品が多いが、音質や大音量への対応力は各メーカーが投入したコストの差が出てくる部分だと筆者は考える。なお、車内の限られた空きスペースに設置する場合が多いので、ステレオ再生の品質にばっちりこだわる必要はないだろう。モノラル再生のモデルも候補としてアリだし、360°サウンドのモデルなども含めて、設置場所や乗車人数に合わせて好みで選ぼう。
基本的に通常のBluetoothスピーカーは室内用途として設計されているので、車内の温度上昇に弱く、特に夏季に使うときは、外装のプラスチックの変形や故障原因にならないように配慮したい。使用しないときは、トランクやグローブボックスに入れて熱から守るとよい。
また、あまりにも振動が多い場所に設置するのは避け、どうしてもという場合は、下にタオルやすべり止めシート等を敷いて振動から逃すとよい。また、ダッシュボード周りにエアバッグが設置されている車両では、それが展開するスペースを残すために、ダッシュボード上には設置しないようにしよう。
コンパクトなモデルであれば、使わないときはグローブボックスにも入れておける
上記の要素を踏まえた車載専用のBluetoothスピーカーも発売されているので、こちらもぜひ注目されたい。いずれのモデルも車内で設置しやすい形状で、シガーソケットから給電できるケーブルが付属している製品も多い。サンバイザーに設置するクリップタイプや、ドリンクホルダーに設置できる円柱状のモデルなどもある。ただ、サンバイザーに設置するクリップタイプの製品は必然的に小型になるので、音質を過度に期待しないほうが無難だ。
ダッシュボードに設置できるように専用設計された製品も!
それでは最後に、車に持ち込んで使いやすいBluetoothスピーカーの製品例をご紹介しよう。一般的な室内での再生用に開発された「汎用モデル」と、車内用途に開発された「車載専用設計モデル」からそれぞれピックアップしてみた。
直径6.5cmの小型ボディによりドリンクホルダーにも置きやすいモデル。バッテリーライフは約15時間と長時間再生に対応。パッシブサブウーハーを搭載しており低音再生能力にも期待できる
オーディオファンに人気のJBLブランドのモデル。楕円スピーカードライバーと大口径コーン振動板を採用するなど音質重視の設計はいかにもJBLらしい。バッテリーライフは12時間で、IPX7相当の防水機能を持つため、外にも持ち出しやすい
ライフスタイルシーンで絶大な人気を持つB&O PLAYの小型Bluetoothスピーカー。すばらしく美しいデザインの筐体が魅力で、カラーバリエーションも多く用意されている。360°全方向にわたる再生スポットを確保する「True360」機能により、設置場所が自由なのもうれしい
コンパクトな筐体内に約16時間再生できるロングバッテリーを搭載し、出力は5Wを確保するモデル。防水・防じん・防錆性能も高く、カラーバリエーションも豊富なので幅広いシーンで使用できる
Boseらしい迫力ある重低音が魅力のモデル。筐体は不要共振を大きく低減するアルミ製で、洗練されたデザインも魅力。最大12時間の使用が可能で、スマホのSiriやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントを利用することもできる
サンバイザーに設置できるクリップタイプの車載専用スピーカー。ノイズキャンセリング機能を利用したハンズフリー通話にも対応する。手持ちのスマホとのBluetooth接続に電源が連動する機能も備えている
アンプ出力は3Wと若干小さいが、シガーソケットを利用する電源ケーブルやラインケーブルも付属するなど車載用Bluetoothスピーカーとしてはコストパフォーマンスが高いモデルだ。
粘着&吸盤構造を持ちダッシュボード上に設置可能なモデル。スマートフォンを装着し、ADAS(運転支援システム)や運転ナビなどのアプリを使用したり、ノイズキャンセリング機能付きハンズフリー通話も可能とするなど、車載用モデルとして付加価値の高い機能を搭載している。27mm径フルレンジスピーカーが2機搭載され、出力は各5Wを確保するなど、パワーも申し分ない。ワイヤレス充電「Qi」対応モデルもラインアップされている(ダッシュボード付近にエアバッグが設置されている車両には設置できないので注意)
最近のBluetoothスピーカーは人気の高まりとともに音質も上がっており、小型であっても音が明瞭で低域の力強さも向上しているモデルが多い。普段家で使っているBluetoothスピーカーを利用して、好きな音楽を車内で手軽に楽しめば、ドライブが一層楽しくなること請け合いだ。
ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。