レビュー

AKG史上最高の消音効果を実現したNCヘッドホン「N60NC」レビュー

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

AKGは2015年8月4日、オンイヤータイプの密閉型ヘッドホンの新モデル「N60NC」を発売した。価格.com最安価格は32,000円程度(2015年9月4日時点)。ノイズキャンセリング機能を搭載した小型ヘッドホンで、従来から消音性能が向上。その効果については、「AKG史上最高の騒音低減率」を実現したという。今回は、そんな「N60NC」をお借りできたので、ノイズキャンセリングの効果と音質をレポートしていこう。

AKGのN60NC

AKGのN60NC

Nシリーズだが性能は向上した後継モデル

N60NCは、AKGのアクティブノイズキャンセリングヘッドホン「K490NC/K495NC」(2012年12月発売)の後継モデル。同社のノイズキャンセリングヘッドホンの新製品は、実に3年ぶりの登場で、心待ちにしていたファンも多いのではないだろうか。そんなAKGファンなら気になるのが、N60NCという製品名ではないだろうか。同社のノイズキャンセリングヘッドホンは、K490NC/K495NCというように、製品名の頭文字がKから始まっていた。AKGで“K”から始まる製品名といえば、一部の例外はあるが、比較的プロまたは上位モデルを指し示す目印。それが今回のノイズキャンセリングヘッドホンではコンシューマー向けの上位シリーズ「Nシリーズ」を示すNに変わっているのである。となると、「もしかしてグレードが落ちた(≒下位モデル)?」と思う方もいるだろうだが、むしろ消音性能はK490NC/K495NCから向上している。正真正銘の後継モデルだ。

ちなみに、AKGは最近、製品のシリーズを細分化している。現在あるシリーズは3つで、プロユース・オーディオファイルをターゲットにした「Kシリーズ」(製品名の頭にKが付いた、いわゆる “K”付きモデル。このほとんどがここに属している)、コンシューマー向けスタンダードモデル「Yシリーズ」、コンシューマー向け上位モデル「Nシリーズ」となっている。N60NCではコンシューマー向け上位シリーズにラインアップされるが、性能、特に消音効果については向上しているという。

AKG史上最高の騒音低減率をうたうノイズキャンセル機能

N60NCの最大の特徴は、AKG史上もっともすぐれた消音効果を実現したことだ。一般的な、ヘッドホンやイヤホンのノイズキャンセリング機能を簡単に説明すると、マイクで集音した周囲の環境音(特に騒音)と、その逆位相の音(騒音の波形を180度ひっくり返した信号)を発生させることで、騒音の打ち消しを行っている。

方式として、マイクの搭載位置によって、「フィードフォワード式」と「フィードバック式」の2つがあり、前者のフィードフォワードならドライバーユニットの外側に、いっぽうのフィードバックはドライバーユニットの内側に、マイクを配置するタイプとなっている。それぞれ異なるメリットについては、音質への影響が少なく小型化がしやすいのがフィードフォワード、耳から近いところの音を中心に集められるため消音効果が高いのがフィードバックと言われている。

AKG史上もっともすぐれた消音効果を実現した秘密は、ノイズキャンセリング方式にフィードファワードとフィードバックを併用した、ハイブリッド方式を採用すること。また、それに加えて、独自のノイズキャンセリング回路で信号を生成することで打ち消しの精度を高めていることだ。

搭載するドライバーは40mm口径。周波数特性は10Hz〜22kHz、感度は117dB/mW、インピーダンスは32オーム。同社によると音質については、「自然でのびやかな中高域、タイトで力強い低域」としている。ケーブルは1.2mで、入力プラグが3.5mm4極ステレオミニ(L型)。スマートフォン用マイク付き1ボタンリモコンを備えている。

ノイズキャンセリング機能のオン/オフスイッチ。動作状況がわかるLEDインジケーターを備えている

ノイズキャンセリング機能のオン/オフスイッチ。動作状況がわかるLEDインジケーターを備えている

バンドの長さは3cm程調節できる

バンドの長さは3cm程調節できる

200gを切る軽量設計

ノイズキャンセリングヘッドホンは、バッテリーの内蔵やマイクの搭載により、同じ大きさのヘッドホンに比べて重めになりがちだ。N60NCは、従来と同様、リチウムイオン充電池を採用することで、本体を軽量化し、重量は150gと通常のヘッドホンに近いクラスを実現している。なお、部分的にデザインの違いはあるものの外観や重量は、ほぼK490NCと同じで、大きな違いがないように思われる。

また、連続稼働時間は約30時間と、前モデルのK495NC/K490NCに比べて10時間ほど落ちた格好だが、マイクを追加し消音効果を改善している点を踏まえれば、妥当という印象。バッテリー切れでも通常のヘッドホンとしても利用できる「パッシブ・モード」を搭載し、不意の電池切れでも音楽を途切れさせることなく可能だ。

このほか、前モデルと同じように、本体を小さく折りたためる「3D-Axis2機構」を採用し、付属のポーチに入れれば手軽に持ち運びできる。

充電はUSBポートから行う

充電はUSBポートから行う

小さく折りたためる3D-Axis2機構を採用

小さく折りたためる3D-Axis2機構を採用

イヤーパッドはレザー調のものとなっている

イヤーパッドはレザー調のものとなっている

半円形の付属のキャリングポーチ

半円形の付属のキャリングポーチ

ノイズキャンセリング機能のレビュー&音質インプレッション

まずは、ノイズキャンセリング機能のほうから。今回、実際に日中(12時頃)のオフィスで、N60NCのノイズキャンセリング機能を試してみたが、消音性能はかなり高いと感じた。スイッチをオンにした途端、これまで聞こえてきた空調の音といった生活雑音の多くが打ち消された。突発的な雑音として、試しに木製テーブルをトントンと叩いてみたところ、低音域を中心にカットされた。すべて打ち消されるわけではないものの、騒音のレベルがしっかり抑えられている感じはする。実際に音楽を聴きながら確認してみると、想像以上の効果を実感できた。

また、ノイズキャンセル機能がオンでも、話声などが適度に聞こえるのはうれしいところ。たとえば、公共の交通機関を利用して移動する場合、車内アナウンスがほどほどに聞こえてこないと、困ってしまうことがある(座る場所や立つ位置によって)。そういう、生活するうえで消しすぎては困る音(公共の交通機関の車内アナウンスや警告など)をほどほどに拾ってくれるのが実用的だと感じた。遮音性の高いイヤホンやヘッドホンであれば、そのたびに着けたり外したりするが、そういう手間を省ける。

N60NCの音質については、小型ハウジングの密閉型ヘッドホンとしては想像以上に、明瞭感が高く、音のこもりが少ない。低い音と高い音をやや抑えた感じのするトーンで、ボーカルの声がほどよく届く。派手な音ではないが、聴き疲れしない自然な感じのする音色になっている。

ノイズキャンセリングモードのオン/オフで大きな違いはないが、オンのほうがわずかにアドバンテージがある。外から入ってくるノイズが打ち消されるため、クリアなサウンドに聴こえる。さらに、音のエッジがわずかにシャープになるため、全体的に聴きやすい、臨場感の高いサウンドが楽しめる印象だ。実際に、Nora Johnsの「Come Away With me」を聴いてみたところ、声のウェット感が多少減りはしたが、生々しさがほどよくあり、楽器のアタック感も力強かった。

まとめ

AKGのノイズキャンセリングヘッドホンは、ハイブリッド方式により、かなり高い消音効果を実現したモデルだ。また、消音性能が高いいっぽうで、必要な音(公共の交通機関の車内アナウンスや警告など)を消しすぎている感はなく、オーディオ面でも音が大きく損なわれるといったことがなかった。AKGの3年ぶりとなる新作ノイズキャンセリングヘッドホンは、史上最高にふさわしい性能を備えたモデルだと思う。

銭袋秀明(編集部)
Writer
銭袋秀明(編集部)
編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×