ソニーは2015年9月8日、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」の新モデルとして「NW-ZX100」を発表した。ウォークマンの上位シリーズ「ZXシリーズ」の新型で、2013年12月発売の「NW-ZX1」の後継機となる。従来モデルNW-ZX1や、フラッグシップモデル「NW-ZX2」で培った高音質設計に加えて、独自の高音質設計を採用し、従来モデル以上の高音質を実現したウォークマンとなっている。市場想定価格は67,000円前後(税別)で、発売は10月10日。発売前に実機に触れることができたので、その特徴をくわしく紹介しよう。
NW-ZX100。メモリー容量は128GB。ディスプレイは3.0型(240×400)
NW-ZX100。メモリー容量は128GB。ディスプレイは3.0型(240×400)
左側面。操作ボタンなどは配置されていない
NW-ZX100の音質面では、独自のフルデジタルアンプ「S-Master HX」や、圧縮音源を最大192Hz/24bit相当のハイレゾ相当にアップスケールする「DSEE HX」といったソニー独自の技術を踏襲しつつ、シャーシ構造や基板設計が大幅に見直されている。
シャーシ構造では、低音を強化するため、高剛性かつ低インピーダンスを実現した新しい設計を採用。NW-ZX2で採用したアルミ切削筐体に、メインシャーシを一体化させたモノコック構造を採用することで、高剛性ボディを実現している。さらに、シャーシの一部に、銅メッキ+金メッキを施したステンレス鋼板のバスプレートを採用。NW-ZX2で採用した技術を応用することで、グランドを強化し、さらに力強い低音再生を実現しているという。
メインシャーシを一体化したモノコック構造のアルミ切削筐体を採用。左は削り出す前の状態
基板設計では、電気信号を安定化させるために、新しい基板技術を積極的に採用。プリント基板のビア(Via)部分を銅メッキで穴埋めする「Filled Via」構造を採用することで、電気信号が通る面積を増やし、電源の安定と配線インピーダンスの低減を実現している。これにより、音質的には、引き締まった低音、伸びやかな高音、透明感のあるボーカルの再現に効果があるという。さらに、プリント基板に低誘電率の材料(従来比で24%低減)を採用し、配線間容量を下げることで、スムーズな信号の流れを実現。空間表現や音色に効果をもたらしているという。また、ソニーはオーディオ用の無鉛はんだ(高純度無鉛高音質はんだ)を独自開発しているが、今回その素材を見直し、金属結晶の品質を高めたはんだを採用。低域、中域、高域の自然なバランスに加えて、臨場感がより豊かになったという。メイン基板や金属部品を固定するビスにも工夫が施されており、導電性を有するビス(カスタム品)を採用。基板接点を強化することで、より引き締まった低音再現を実現する。
このほか、ZXシリーズには、NW-ZX2/ZX1でも採用された設計がふんだんに使われている。以下にまとめよう。
・フルデジタルアンプ「S-Master HX」のL/R正負独立4電源に大型コンデンサー(OS-CON)を搭載(NW-ZX1と同等)
・音をやわらかくする効果のあるフィルムコンデンサーを採用(NW-ZX2と同等)
・低抵抗ケーブル/保護回路の採用(NW-ZX2と同等)
・圧膜銅箔プリント基板の採用(NW-ZX2と同等)
・オーディオ回路のレイアウト最適化(NW-ZX2と同等)
・OFCケーブルの採用(NW-ZX2と同等)
・「S-Master HX」の出力段にLCフィルターを採用(NW-ZX2/ZX1と同等)
・48kHz系に加えて、44.1kHz系専用クロックも採用(NW-ZX2と同等)
ヘッドホン出力のジャックには、従来と同様、真鍮切削パーツを採用
こちらも従来と同様に、背面の下部は、大型コンデンサー(OS-CON)の採用により少し盛り上がった形状になっている
NW-ZX100は、シャーシ構造や基板設計の見直しによって、高音質を実現するだけでなく、筐体がコンパクトになったのも特徴だ。そのボディサイズは約54.4(幅)×120.1(高さ)×15.4(奥行)mmで、重量は約145g。NW-ZX1(約60.7×122.8×15.3 mm、約139g)と比べて、幅は6mm、高さは2mm小さくなった。さらに、NW-ZX2(約65.1×約131.2×約18.5 mm、約235 g)と比べると、体積比で約70%コンパクトな、ひと回り小さいボディとなっている。
左からNW-ZX100、NW-ZX1、NW-ZX2
NW-ZX100は、OSにAndroidではなく、「Aシリーズ」と同じソニー独自の組み込み系OSを採用したのもトピック。音楽再生に機能を絞っており、動画や静止画の再生機能などは省略されている。また、組み込み系OSの採用に加えて、タッチパネル非対応、Wi-Fi非搭載の仕様に変更することで、バッテリー性能が向上。ハイレゾ音源の再生時で約45時間(FLAC 192kHz/24bitの場合)、MP3音源の再生時で約70時間(MP3 128kbpsの場合)という長時間再生を実現している。ちなみに、ハイレゾ音源の再生可能時間は、NW-ZX2で約33時間、NW-ZX1で約16時間となっている。
また、NW-ZX100では、ユーザーインタフェイスも従来から大幅に変更になった。タッチパネルには非対応で、操作は、画面下の十字ボタン、再生・停止ボタン、BACK/HOMEボタン、OPTION/PWR OFFボタン、側面の音量調整ボタンで行う。ホーム画面に、再生や一時停止、曲送り、曲戻しなどの機能を持つ簡易音楽プレーヤーアプリを配置するなど、音楽再生に特化したインターフェイスとなっている。
ホーム画面には、ウィジェットのような簡易音楽プレーヤーアプリが大きく配置されている。その下に、各種機能や設定へのショートカットメニューが用意されており、十字ボタンの左右で選択できるようになっている
左から再生画面、アルバム選択画面、アーティスト選択画面
NW-ZX100では機能面も強化されている。DSD再生(リニアPCM変換での再生)は、NW-ZX2と同様、DSD 64(2.8MHz)とDSD128(5.6MHz)に対応。2種類のデジタルフィルターの利用も可能となった。
Bluetooth機能では、独自の高音質コーデック「LDAC」に対応。さらに、ハイレゾ対応のデジタルノイズキャンセリング機能も搭載。別売オプションの専用イヤホン「MDR-NW750N」と組み合わせることで、電車やバス、航空機内などノイズが多い環境でも、周囲のノイズを抑えてハイレゾ音源を聴くことができる。
このほか、microSDカードスロットを搭載。microSDXCメモリーカードの利用にも対応している。
LDACに対応
ハイレゾ対応のデジタルノイズキャンセリング機能も搭載
短い時間ではあるが、NW-ZX100を試聴することができたので、その印象をレポートしよう。試聴には、ソニーのヘッドホン「MDR-1A」を利用している。
NW-ZX100の音質は、端的に言うと、従来モデルNW-ZX1の延長線上にある。NW-ZX1は、エネルギッシュかつスピード感のあるサウンドでやや荒っぽさもあったが、NW-ZX100では、その傾向を踏襲しつつ、よりクリアな音に仕上がっている。解像度感も上がっており、順当に進化しているという印象を受けた。なめらかで艶のある音色を実現したフラッグシップのNW-ZX2とは異なるサウンドで、キャラクターがしっかりと分けられていると感じた。好みにもよるが、ロックやポップスを中心に聴くのであれば、NW-ZX100の音はかなり魅力的に感じるのではないだろうか。