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スマホと2台持ちにぴったり! 高音質有線接続が可能な小型ハイレゾDAPのススメ

スマホと2台持ちにぴったり! 高音質接続が可能な小型ハイレゾDAPのススメ

現在のオーディオリスニング環境は、スマートフォン+完全ワイヤレスイヤホンが主流となっているのは皆さんご承知のとおり。そんな時代だからこそ、さらに便利に、さらにいい音で音楽を楽しむ環境を提案したい。それは、小型のハイレゾDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を導入して音楽を楽しむプランだ。

小型DAPを導入するメリットはいくつかある。それは主に、

1.スマートフォンのバッテリーを消費しない
2.ワイヤレス接続も有線接続も使える
3.小型モデルでもバランス接続等に対応した製品が登場、さらにいい音にグレードアップ

という3ポイントだ。

1については、言わずもがなだろう。音楽プレーヤーをDAPにすることで、ただでさえ1日持つか持たないかのスマートフォンのバッテリー持続時間を長くすることができる。

また、2のように最新の小型DAPは有線接続だけでなく、完全ワイヤレスイヤホンなどのBluetooth接続に対応したイヤホン・ヘッドホンも利用できるようになっているので、利便性を損なうこともない。最近のハイレゾDAPは、LDACなどの高音質コーデックにも対応しているため、AACまでしか対応していないiPhoneに比べると音質的にも優位だ。

ちなみに、最新のハイエンドAndroidスマートフォンはLDACやaptX Adaptive(96kHz/24bit)コーデックに対応している製品も増えてきたが、音質だけでなく接続安定性という点でもDAPにかなわない傾向がある。そのあたりは、専用機ならではのアドバンテージと言える。もちろん、DAPも玉石混淆、なかにはワイヤレス接続がいまいちな製品もあるが、今回はそのあたりも含めて紹介する。

3は、最新の小型DAPの中でも一部のモデルに搭載され始めたスペシャルな魅力ポイントだ。これまで一部の高級DAPにしか搭載されていなかった音質向上機能が、小型DAPにも搭載されるようになったのだ。使い勝手がよく、さらに音もずいぶんとよくなった。最新の(一部の)小型DAPは使い勝手と音質が巧みに両立され、とても魅力的な製品へと進化している。今まさに、“買い時”と言ってよいだろう。

さて、音をさらによくするバランス接続がいかなるものか、改めて簡単に紹介しておこう。イヤホン・ヘッドホンにおけるバランス接続とは、LRでアンプを完全セパレートしたうえ、+(プラス)側と−(マイナス)側にそれぞれアンプを配置し(オーディオ表現的に)“プッシュプル”回路構成を持つシステムのことを指す。実は(知っている人も多いだろうが)、イヤホン・ヘッドホンの回路は一般的なオーディオシステムとは異なりR+/L+/−の3極しかない。−側が合わさってしまっているのだ。実は、これによってわずかながらも左右の音が混じり合ってしまい、本来の音質を損ねてしまう場合がある。

それを解決し、さらにいい音で音楽を楽しもうとするシステムが、イヤホン・ヘッドホンのバランス接続で、これによってセパレーションやSN感が向上、より楽曲本来の魅力が伝わりやすくなってくれる。ちなみに、イヤホン・ヘッドホンにおけるバランス接続は、ここ10数年で普及した(オーディオ製品としては珍しくも)新しい潮流だったりするのだが、それがいよいよ小型DAPにも普及してきたというのが現状だ。なかなか、うれしい時代となったと言えるだろう。

とはいえ、イヤホン・ヘッドホンにおけるバランス接続は新しい潮流なので、そのシステムにもいくつかのバリエーションがある。文頭の3で“バランス接続等”と表現したのはそういった状況のため。たとえば、LRでアンプを完全セパレートしつつも−側にはアンプを配置しない“グラウンド分離”という手法もある。実は、回路設計が巧みでさえあればこれだけでも十分な効果が期待できたりもするので、こういった手法を採用することでアンプを4基搭載=バッテリー持続時間やサイズの大型化を避けることもできる。要するに、バランス接続、グラウンド分離はともに音質の向上をもたらしてくれるシステムだが結果はあくまで製品による、ということだ。

ということで、この記事では小型で便利、それでいてバランス接続やグラウンド分離回路を搭載、音質的にも満足できる2つの製品をピックアップして紹介していこう。

グラウンド分離接続ができるソニーウォークマン「NW-A300」シリーズ

まず紹介するのは、ハイレゾ対応DAPのなかでも最大のシェア率を誇るDAP界の雄、ソニーウォークマン「NW-A300」シリーズだ。製品の詳細については以下に掲載しているレビュー記事を合わせて参考にしていただきたいが、製品の概要を簡単に説明すると、ハイレゾウォークマン「NW-A100」シリーズを正統進化させたアップグレードモデル的な立ち位置の製品で、本体サイズ56.5(幅)×98.4(高さ)×11.8(奥行)mm、重量113gという「NW-A100」シリーズとほぼ同等サイズの小型軽量ボディを引き継ぎつつ、音や機能性、筐体の質感などがブラッシュアップされている。

ソニーウォークマン「NW-A300」シリーズ。ストレージ容量違いの32GBモデルと64GBモデルがラインアップされている

ソニーウォークマン「NW-A300」シリーズ。ストレージ容量違いの32GBモデルと64GBモデルがラインアップされている

デジタルアンプ「S-Master HX」の搭載やアルミ削り出したシャーシ、アナログ/デジタル部を分離させた基本構造など、「NW-A100」シリーズと共通する部分は多いが、基板レイアウトの最適化や金入りはんだの採用、低抵抗値化した専用バッテリーへの変更など、音質面での向上が押し進められている。また、Android OSがバージョン9から12へと進化し、最新スマートフォンと違和感のない操作性もうれしいポイント。なお、BluetoothコーデックはLDACに対応しているので、ワイヤレスでも良質なサウンドを楽しむことができる。

とはいえ、今回のテーマでの注目ポイントは、4極の3.5mmコネクターを用いた“グラウンド分離”システムを採用していることだろう。こちら、「NW-WM1ZM2」や「NW-WM1AM2」、同時発表の「NW-ZX707などの上位モデルにも採用されているもので、通常(3極)の3.5mmヘッドホン端子も使えるコネクターに、専用の4極3.5mmプラグを挿すことでグラウンド分離による音質向上を実現することができる。リモコンマイク付きイヤホンの4極とは別物、まだまだ普及は進んでいないが、変換ケーブルなどを利用すれば4.4mmバランス端子採用のイヤホン・ヘッドホンを利用&実力を存分に発揮させることができる。

4極の3.5mmコネクターを用いた“グラウンド分離”システムは、通常(3極)の3.5mmヘッドホン端子も使えるコネクターに、専用の4極3.5mmプラグを挿す形

4極の3.5mmコネクターを用いた“グラウンド分離”システムは、通常(3極)の3.5mmヘッドホン端子も使えるコネクターに、専用の4極3.5mmプラグを挿す形

4極の3.5mmコネクターを用いた“グラウンド分離”システムに、既存の2.5mm4極バランス接続や4.4mm5極バランス接続のイヤホン・ヘッドホンを接続できる変換アダプターなども市販されている。今回はこちらを活用して試聴を行った

4極の3.5mmコネクターを用いた“グラウンド分離”システムに、既存の2.5mm4極バランス接続や4.4mm5極バランス接続のイヤホン・ヘッドホンを接続できる変換アダプターなども市販されている。今回はこちらを活用して試聴を行った

実際のサウンドも、なかなかのものだ。そもそも「NW-A300」シリーズはスマートフォンのヘッドホン端子、USBやLightningアダプターとは別次元の端正な音を持つが、その特徴がさらにクオリティアップ、SNやセパレーションがよくなり、滲みやボケのないクリアなサウンドを楽しめるようになる。

おかげで、ボーカルもアコースティック楽器も、このサイズ、この価格からは望外といえるリアルさを持つサウンドを楽しむことができる。ここまで明朗快活な歌声を楽しめるのであれば、わざわざスマートフォンと別にDAPを用意する意義がある。ちなみに、ヘッドホン接続も試してみたが、オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」を十全に鳴らしきっていた。

独自変換ケーブルで4.4mmバランス接続が可能なShanling「M0 Pro」

今回取り上げるもうひとつの製品が、Shanlingの小型DAP「M0 Pro」だ。こちら、先代となる「M0」に対してデザインを変更。本体サイズ43.8(幅)×45(高さ)×13.8(奥行)mm、重量36.8gという「M0」と同等の超小型ボディはそのままに、音質面での大幅なグレードアップが施されている。

手のひらにすっぽりと収まるほどのコンパクトなボディが特徴のShanling「M0 Pro」。楽曲データを保存できる内蔵ストレージは用意されておらず、microSDメモリーカード(最大2TB)を接続して運用する形だ

手のひらにすっぽりと収まるほどのコンパクトなボディが特徴のShanling「M0 Pro」。楽曲データを保存できる内蔵ストレージは用意されておらず、microSDメモリーカード(最大2TB)を接続して運用する形だ

まず、音質の要となるDACはESS社製の「ES9219C」をデュアルで搭載、最大384kHz/32bitまでのPCM音源と、5.6MHz(DSD128)までのDSD音源に対応している。このサイズでデュアルDAC搭載、ハイレゾ音源のネイティブ再生というだけでも大きな驚きだ。さらに、3.5mm5極端子を用いたバランス出力を搭載、ヘッドホン出力自身も最大236mW(32Ω)と、ヘッドホンもしっかり鳴らしてくれる高出力を持ち合わせている。

機能面では、「MTouch OS」と呼ぶオリジナルOSによるわかりやすい操作画面に加えて、スマートフォンからリモートコントロールできるのも魅力のひとつ。「Eddict Player」というスマートフォン用アプリを活用することで、「M0 Pro」内の音楽ライブラリーにアクセスして楽曲再生や選択を行なうことができる。「M0 Pro」は1.54インチという極小のタッチスクリーンを採用しているため、人によってはアプリのほうが使いやすいかもしれない。

また、Bluetoothはイヤホン等と接続するだけでなく、レシーバー機能も搭載しているためスマートフォンと接続して(スマートフォン内の楽曲を)有線接続したイヤホン・ヘッドホンで楽しむこともできる。コーデックは送信時(Bluetoothイヤホンやヘッドホンとの接続時)はLDACやaptX、AAC、SBCに対応、受信時(レシーバーとして使用時)にはLDACとAAC、SBCに対応する。

ほかにも、USB DAC機能も備わっているため、PCやスマートフォンとOTGケーブルで接続することで、インラインDACアンプのような使い方もできる。ホント、小さいことはいいことだ。

とはいえ、いちばん気になるのは3.5mm5極端子によるバランス出力の音だろう。特殊なコネクターのため、Shanling自身が専用の変換ケーブル「M0 Pro 3.5mm to 4.4mm バランスアダプタ」を用意している。こちらを活用することで、4.4mmバランスケーブルを使ったイヤホン・ヘッドホンが使えるようになるわけだ。

Shanling「M0 Pro」でバランス接続するのに必要な変換ケーブル「M0 Pro 3.5mm to 4.4mm バランスアダプタ」

Shanling「M0 Pro」でバランス接続するのに必要な変換ケーブル「M0 Pro 3.5mm to 4.4mm バランスアダプタ」

変換ケーブルを接続することで、4.4mmバランス接続対応のイヤホン・ヘッドホンを接続できるようになる

変換ケーブルを接続することで、4.4mmバランス接続対応のイヤホン・ヘッドホンを接続できるようになる

そのサウンドは、メリハリのよい元気な表現が特徴。一般的な3.5mm3極端子による接続でもボディサイズからは想像できない明瞭でキレのよいサウンドを聴かせてくれるが、バランス接続にするとパワー感が向上。躍動感に満ちた表現を楽しませてくれる。屋外の騒音にも負けない元気あふれるサウンドは、大いに魅力的だ。ちなみに、こちらもヘッドホン試聴を試みてみたが、オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」との組み合わせはパワー的には十分だったが、音質面でソニーウォークマン「NW-A300」シリーズに一歩及ばなかった点は報告しておこう。

まとめ

今回、高音質な有線接続が可能な小型のハイレゾDAPとして、ソニーウォークマン「NW-A300」シリーズとShanling「M0 Pro」の2モデルを取り上げさせてもらった。グラウンド分離はこう、バランス接続はこう、といった特徴は一概には言い切れないところはあるが、少なくとも今回試聴した2モデルは音質面での大きな魅力につながっていた。今、超小型DAPはとても魅力的な製品が次々と登場してきている。皆さんもぜひ注目いただき、気に入った製品と出会えたらぜひ導入してみてはいかがだろうか。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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