レビュー
ハイレゾ対応モデルとアニソン特化モデルの2種類をラインアップ

「攻殻機動隊」の士郎正宗がデザインしたエレコムの個性派イヤホンを聴き比べ!

エレコムから、「アップルシード」や「攻殻機動隊」などの作品で世界的に知られている漫画家、士郎正宗氏がプロダクトデザインを手がけるカナル型イヤホンが発売された。ラインアップは2モデルあり、ひとつはスペシャルモデル的な位置づけのハイレゾ対応「EHP-SH1000SV」、もうひとつはレギュラーモデル的なポジションの「EHP-SL100」シリーズで、こちらはマイク付きの「EHP-SL100M」と、マイクなしの「EHP-SL100A」が用意されている。

ハイレゾ対応のEHP-SH1000SV(左)と、アニソン向けをうたうEHP-SL100(左)。いずれも、プロダクトデザインを士郎正宗氏が手がけている

ちなみに、エレコムでは過去にも士郎正宗氏がプロダクトデザインを手がけたマウスを発売しているが、イヤホンはこれが初めて。ロボットの関節部のようなデザインが特徴となっている「EHP-CH3000」シリーズをはじめ、個性的なデザインを取りそろえるエレコム製イヤホンのなかでも、(デザイン的に)ひときわ存在感の強い製品となっている。

高剛性オールアルミ製ハウジングを採用するEHP-SH1000SV。ダークシルバーのカラーがかっこいい

高剛性オールアルミ製ハウジングを採用するEHP-SH1000SV。ダークシルバーのカラーがかっこいい

メタリックカラーを採用するEHP-SL100シリーズ。カラーバリエションは、写真のルビンレッドのほかに、ブラック、カッパーピンク、シルバーをラインアップする

正直いって、発売が公表されたときに「その手があったか!」と思ったのは事実だ。イヤホンは“身につける”製品であるため、(ヘッドホンほどではないにしろ)デザインセンスは重要だし、エレコム以外のメーカーでも“サイバー”なテイストをウリにした製品もいくつか存在している。そういったニーズが確実にあるなか、本家本元のひとりである士郎正宗氏本人にプロダクトデザインを依頼するのは、もっともな方法論といえるだろう。実際、アルミ製ボディを採用するEHP-SH1000SVのほうは、まるで、ちょっとハードな世界観の近未来からもたらされた製品であるかのような、士郎正宗氏“らしさ”溢れるデザインにまとめ上げられている。そういった趣向の人には、待ってましたといわんばかりの製品だろう。

とはいえ、イヤホンの最重要ポイントが“音”であることに変わりはない。ということで、この2製品について音質をメインとしたレビューをお届けしようと思う。

実売30,000円前後。ハイレゾ対応のハイエンドモデルのEHP-SH1000SV

ということで、まずはEHP-SH1000SVのほうから紹介しよう。

ハイエンドモデルのEHP-SH1000SV。再生周波数帯域は5Hz〜45kHzとなっており、ハイレゾにもしっかりと対応している

士郎正宗氏ならではのオールアルミ製ハウジングが特徴的なEHP-SH1000SVだが、高級モデルと呼べる価格帯の製品だけに、かなり豪勢な作りに仕上がっている。

まず、ドライバーユニットは11.6mm口径と12.5mm口径という2つのダイナミック型ドライバーを向かい合わせて配置。同相駆動することで、力強さとクリアさを両立させたサウンドを目指したという。また、11.6mm口径ドライバーのほうに外磁型マグネットを、両ユニットともにCCAWボイスコイルを、左右のグランドケーブルを独立分離化した4線方式を採用するなど、細部まで音質を突き詰めた作りとなっている。

また、MMCXコネクターによる着脱式ケーブルを採用。マイクなしの3極ミニプラグと、スマートフォン向けのマイク付4極ミニプラグの2種類が同梱されており、シチュエーションに応じて便利に使いこなすことができる。市販のリケーブル製品を活用することもでき、メインテナンスの面でも嬉しい限りだ。

MMCXコネクターによる着脱式ケーブルを採用しているので、リケーブルによる音質変化を楽しむことができる

MMCXコネクターによる着脱式ケーブルを採用しているので、リケーブルによる音質変化を楽しむことができる

ケーブルは左右のグランドケーブルを独立分離化した4線方式を採用。3極ミニプラグ、4極ミニプラグともに金メッキL型プラグとなっている

さて、肝心のサウンドはいかがなものだろう。外観のハードなイメージに反して、意外とジェントルなサウンド。メリハリのしっかりした、パワー感のよさはしっかり活かしつつも、不要なピークや刺激臭のいっさいない、まとまりのよいサウンドを聴かせてくれるのだ。その分、ボーカルやピアノがややウォーミーな音色に感じる時もあるが、けっして雑味が多いわけではなく、あくまでも上質でジェントルなまとめといった印象だ。特に低域は、(たっぷりとした量感はあるものの)迫力よりも質感を重要視したイメージで、心地よい響きを聴かせてくれる。同時に、高い解像感も確保され、細部のニュアンスまでしっかりと伝わってくるから素晴らしい。音色傾向の好みは分かれるかもしれないが、音楽ジャンルを選ばない点、長時間聴き続けても聴き疲れしない点では好感が持てる。デザインも含め、価格に見合った上質な製品といえるだろう。

実売2,000円前後。アニソン向けをうたう低価格なEHP-SL100シリーズ

続いてはEHP-SL100シリーズだ。こちらは、士郎正宗氏デザインのハウジングを採用するスタンダードモデルという位置付け。想定されている実売も2,000円程度で、スマートフォンなどの付属イヤホンのグレードアップ用として想定されている製品だ。コストパフォーマンスが最優先される価格帯ではあるものの、表面に40本のリブを設けて異常振動を抑制したチタンコーティング10mm口径ダイナミック型ドライバーやCCAWボイスコイル、金メッキL型プラグなど、なかなかこだわりのある作りとなっている。また、奥行2段階で調整可能な「デプスフィットイヤーキャップ」や、イヤーキャップ自身は内外の硬度を変えることで、音質向上とフィット感を両立させるなど、細かい配慮も行き届いている。

士郎正宗氏デザインという製品ながら、実売2000円前後というリーズナブルな価格が魅力のEHP-SL100シリーズ

士郎正宗氏デザインという製品ながら、実売2000円前後というリーズナブルな価格が魅力のEHP-SL100シリーズ

マイク付きのEHP-SL100Mのケーブル部分。マイク部には着信応答/通話終了スイッチが付いており、音楽を楽しむだけでなく、通話もできる

もうひとつ、EHP-SL100シリーズには音質面での特徴がある。それは、“アニソン向け”をうたっていることだ。士郎正宗デザインだけでなく、パッケージにアジアのアマチュアイラストレーターのイラストを採用。ルビンレッドには金礼氏、カッパーピンクにはhakusai氏、ブラックにはNine氏、シルバーにはRella氏によるキャラクターがそれぞれ描かれている。 さらにプロモーション企画として、教祖である井上喜久子氏の正式許可を得て「永遠の、17歳へ。」というキャッチコピーを掲げるなど、かなり“本気”な展開を行っている。

こちらは今回使ったEHP-SL100M(ルビンレッド)のパッケージ

こちらは今回使ったEHP-SL100M(ルビンレッド)のパッケージ

カラーバリエーションごとにパッケージに異なるキャラクターデザインを採用するなど、かなり気合が入っている

とはいえ、アニソンとはいってもOP/EDから劇伴までさまざまあり、いち音楽ジャンルにとどまらない幅広いカテゴリーであるのも事実。また、過去に“アニソン向け”をうたっていた製品もあったが、そちらは「ポップス向けでは目立たないのであえてアニソン向けをうたってみた」というニュアンスに近かった。はたして、このEHP-SL100シリーズは本当にアニソン向きといえるのだろうか。また、アニソンのなかでもどんな楽曲が向いているのだろうか。

結論を先にいわせてもらうと、アニソン向きかどうかは人による、という印象だ。一般的にドンシャリと例えられるバランスを基調としつつ、低域をやや抑えめにして中域へのマスクを避け、特に女性ボーカルがしっかりと届いてくるようにバランスさせているところはアニソン、というかキャラソン向けといえるが、それにしては声が細すぎるように感じる。2段階調整可能の「デプスフィットイヤーキャップ」を活用し、イヤーチップを手前側にすると低域が強まり、帯域バランスが整ってくれたりボーカルの声が太くなったりするものの、筆者には低域がブーミー過ぎて聴き疲れしてするバランスとなってしまった。人によっては(耳穴の大きさやカタチなどの個人的な差異によって強調される帯域は変わってきたりする場合がある)このバランスがベストという人もいるだろうから、そういう人にはアニソン向き、といえるかもしれない。

事実、音質とはしては悪くないのだ。チタンコーティングの恩恵もあってか、解像度感は必要充分なレベルが確保されているし、ダイレクト感の高い、キレのよい表現をしてくれる。2000円クラスの製品としては、まずまずの出来といっていいだろう。

ただし、人によっては高域が薄っぺらく聴こえたり、ざわつき感が耳につくという人もいるはず。たとえばGARNiDELiAを聴くと、ボーカルの擦過音が強調されすぎて違和感を覚える。いっぽうでfhanaは、とてもピュアでのびのびとした、ヌケのよい歌声は変わらず。LiSAや西沢幸奏なども、パワフルで活き活きとした歌声を聴かせてくれる。このように、ボーカリストの声質やレコーディングの特徴によって、向き不向きが大きく分かれてしまう傾向があるのだ。

逆に、劇伴のほうが向き不向きが少なく感じた。「この世界の片隅に」劇伴など、クラシック演奏は音数がそれほど多くないもののそつなくまとまっているし、「あまんちゅ!」劇伴のアコースティックギターは、ややピッキングが強まっているものの演奏自体は心地よい響きを聴かせてくれる。

実は、チタンコーディングのダイナミックドライバーには大なり小なりこういったクセがあるようで、音数の少ない中高域メインの楽曲と相性がよかったりする。テンポが速く、マックスボリュームが最後まで続くアニソンOP/EDとは、シビアな相性が露見する傾向にある。「デプスフィットイヤーキャップ」調整の結果も踏まえると、ドライバーの位置が耳からもう少し離れていたほうが万人向けだったかもしれない。

結論としては、EHP-SH1000SVは音質的にも良質で万人向けの製品といえそうだが、EHP-SL100シリーズは多少なり個性のあるサウンドを持つため、よく聴く楽曲との相性を確認してから購入を検討したほうがよさそうだ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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