ジェリー・ハービーが手掛けた「TriFi」との音質比較も実施!

JH AudioとAstell&Kernのコラボイヤホン最新モデル「Michelle(ミシェル)」を聴く

このエントリーをはてなブックマークに追加

ポータブルオーディオ業界にとっては毎年恒例ともいえる傾向ながら、今年の秋冬も多数の新製品が登場。大いに活況を見せている。ありがたいことに、筆者自身もこの2か月あまりで100を遙かに超える新製品を試聴させてもらい、あれもいい、これもいいとかなりの散財を覚悟しなければならないほど、魅力的な製品たちに出会うことができた。

そんななかでも、購入確定の筆頭に位置しているのがJH Audioの「Michelle(ミシェル)」だ。やたらと長い「Astell&Kern IEM-JH Audio THE SIREN SERIES-Michelle」という正式名称をもっていて、具体的にはJH AudioとAstell&Kern(iriver社)とのコラボモデルであり、THE SIRENシリーズの名付けられたユニバーサルタイプのIEM(インイヤーモニター)となる(カスタムIEM版もラインアップされている)。

12月3日に発売されるJH AudioのMichelleは、「Roxanne」「Layla」「Angie」「Rosie」に続くTHE SIRENシリーズの最新モデルだ。THE SIRENシリーズに属する製品は代々ロックの名曲の名前を冠しているが、MichelleはGuns N' Roses(ガンズアンドローゼズ)の1stアルバムに収録されている「My Michelle」が由来となっている

ちなみにこのTHE SIREN SERIESシリーズ、チタン製ボディに12基ものBAドライバーを搭載の「Layla II」を頂点に、現行モデルとしては4モデルがラインアップしており、Michelleは末弟に位置するモデルとなる。金属筐体を採用するほかの4モデルとは異なり、一般的なアクリル系の素材を採用している。とはいえ、シェル製作に3Dプリンターを活用するなど、かなりこだわった物づくりが行われているのも確か。たとえばノズル部分は、10°ほどの角度をつけることで、カスタムインイヤーモニターに肉薄するフィット感を実現しているという。

Michelle は、THE SIRENシリーズとして初めて3Dプリンターを使ってシェルを造形している。この3Dプリンター1台で家が買えるほどの金額がするというのだから驚きだ

ノズル部に約10°の角度を付けることで、ユニバーサルタイプの製品ながら、カスタムIEMに近い装着感を実現しているという

THE SIRENシリーズとしてはかなり小ぶりに仕上がっており、耳が小さい人でも装着しやすい

THE SIRENシリーズとしてはかなり小ぶりに仕上がっており、耳が小さい人でも装着しやすい

いっぽうで、サウンド面においてもいくつかのこだわりが見られる。まず、ドライバー構成は高域、中域、低域の3基3ウェイをチョイス。3ウェイであるところは、名機の誉れ高い「Triple FI 10」や先に限定モデルとして登場した「TriFi」などとも異なっている、独自のものだ(この2つは同じ3BAドライバーながら2ウェイ構成)。

また、ドライバーユニットそのものはMichelleのために新開発されたもので、高域用ドライバーは高解像度、中域用ドライバーはフラット&ワイド、低域用ドライバーは低歪みを追求。この3基のBAドライバーを組み合わせ、さらに独自技術「freqphaseテクノロジー」によって時間軸と位相を正確に制御することで、一体感のある、上質なサウンドを実現しているという。

ちなみに、ユニバーサルフィットとはいえJH Audio製のイヤーモニターなので、ケーブルはカスタムIEMで採用されているものど同じ2pinの着脱式を採用。さらに、一般的な3.5mm3極端子のほか、Astell&Kernとのコラボの証ともいえる、2.5mm4極端子採用のケーブルも付属している。どちらのケーブルも、銀メッキ銅線を圧縮して平らな状態にして芯線のケブラーに巻き付けるという、独自の手法によって作り上げられたケーブル素材を採用しているのが興味深いところだ。

イヤホンはリケーブルに対応。ケーブルは2pinタイプだ

イヤホンはリケーブルに対応。ケーブルは2pinタイプだ

製品にあらかじめ取り付けられている3.5mm3極端子を使ったケーブルのほかに、2.5mm4極端子採用のケーブルも付属。ケーブル長は1.5mと若干長めだ

ということで、ここからは実際のサウンドをレビューしよう。プレーヤーは「AK70」を組み合わせ、比較のために「TriFi」も用意した。

まずは3.5mm3極端子から。改めて聴いてみても、一聴してとても自然なステージング、自然な帯域バランスに驚く。「freqphaseテクノロジー」の恩恵だろう、中高低の帯域ごとにタイミングがずれることもなく、とても一体感のあるサウンドが楽しめる。特に、カナル型イヤホンとは思えないくらい見事なサウンドフィールドは、もう脱帽したくなるほど。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDなどを聴くと、アーティストが意図したとおりの立体感を見事なまでの正確さで再現してくれる。このスムーズで、立体感溢れるサウンドだけでも、手に入れる価値があるというものだ。いっぽうで、音色傾向としてはJH Audioらしい厚みと熱気感は持ち合わせているものの、どちらかというとフラット&ワイドを意識したかのような、客観的な表現をしてくれる。

続いて、プレーヤーは「AK70」のままケーブルを付属の2.5mm4極端子に変更。バランスヘッドホン出力で聴いてみる。こちらの方が断然いい。3.5mm3極端子のときに少々気になっていたSN感の甘さが解消され、とてもピュアなサウンドとグレードアップ。空間的な表現もさらに明瞭に伝わってくるようになった。加えて、低域のフォーカス感が高まったおかげで、グルーブのよいノリノリの演奏に生まれ変わっている。とにもかくにも、「AK70」との組み合わせではこちら、2.5mmバランス端子での接続を推奨したい。

さて、多くの人が気になっているだろう同じJH Audioの「TriFi」とのキャラクターの違いだが、結論をいえばそれぞれに魅力あるサウンドといった印象だった。はっきりいって、サウンドクオリティ的には「Michelle」に分がある。聴感上の帯域幅はワイドレンジだし、抑揚表現も大きく、それでいて細かい部分までしっかりと伝わってくるという、イヤホンとしてなかなかの優秀さを誇っている。末弟にして、THE SIREN SERIESの集大成、と言い切っても過言ではない、素晴らしい完成度だ。

いっぽう「TriFi」のほうは、それに比べると時にウォーミーにも感じられる、世代的にもやや古いまとめ上げのサウンドだ。とはいえ、音楽にとって最も大切な中域の為に全てがまとめあげられている、といった風のサウンドキャラクターは「Triple FI 10」にも通じるものがあり、これはこれで魅力的といえる。ただ「どちらも持っていない、どちらもいい音だと思える」という人には、断然「Michelle」を推したい。正直、この価格でこのクオリティのサウンドを実現している製品は、滅多に存在しないからだ。そのくらい、「Michelle」は出来のよい、完成度の高い製品といえる。是非とも、皆さんもその音を一度は体験して欲しい。最初に手にする高級イヤホンとしてはこれほどの優等性はないだろう。もちろん、初めて手にする“カナル型イヤホンの父”ジェリー・ハービー作品としても、大いにオススメしよう。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
新製品レポート最新記事
新製品レポート記事一覧
2017.8.9 更新
ページトップへ戻る