高性能アップサンプリング機能で18年ぶりにブラッシュアップ

今だから極上のCD再生を! 英CHORDの最上級CDトラポ「Blu MkII」登場

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タイムロードは、英国の高級オーディオメーカーCHORD Electronics(以下、CHORD)が手がける、最大768kHzまでのハイレゾアップサンプリング性能を備えたCD再生機「Blu MkII」を2017年3月下旬に発売する。販売価格は140万円(税別)というハイエンドモデルで、同社CD再生機の新しいフラッグシップ機だ。

本製品は、同社が1999年に発売した「Blu」(日本では「Coda」という名称だった)の2世代目モデルで、18年ぶりにリニューアルしたことになる。一般的にも、そしてハイエンドオーディオの世界でも、音楽リスニングの主流はデジタルファイル再生になっている今、CHORDがあえてCD再生のクオリティを突き詰めたのはなぜなのか? 製品の仕様とともにくわしく見ていこう。

CHORDではBlu MkIIを「CD再生の頂上を目指す製品」とアピールしている。なぜ今あえて「CD再生」なのだろうか?

<※2017/2/9 追記・更新>
記事初出時、外部入力端子はBNC同軸1系統のみと発表されていたが、2017/2/9に仕様変更が行われ、新しくUSB入力端子が追加されることが明らかになった。CD再生、BNC入力、USB入力の3つに対応するアップサンプラーとなり、USB入力経由では最大768kHz PCM、11.2MHz DSDまでサポートする。記事後半にて追記しているので参照されたい。

18年ぶりにどう進化した? CHORDのスゴいCD再生機

いわゆる「CDプレーヤー」とは、CD上に記録されているデータを読み取り、そのデジタルデータをアナログの音に変換して出力するものだ。ところが高級オーディオの世界では、音質を向上するためにこれらの機能をセパレートする場合がある。CDのデータを読み取る機能に特化した製品を「CDトランスポート」、そのデジタルデータをアナログの音に変換する機能に特化した製品を「DAC」と呼ぶ。Blu MkIIは、DACを搭載せず、CDの音をさまざまな外部オーディオ機器にデジタル出力できるCDトランスポート製品だ。出力端子はAES/EBU、BNCを装備(※2017/2/9 追記・更新:USB入力端子を追加装備することが発表され、これに伴って当初装備していたTOS Link出力が省略された)。加えて、44.1kHzのCD音源を最大705.6kHz(48kHz入力した場合は768kHzまで対応)のハイレゾ相当までアップサンプリングできる機能も搭載している。

その進化ポイントは大きく2つあり、「最新FPGAの採用」と、それによる「100万タップのアップサンプリング」だ。それぞれの特徴を紹介する前に、まず同社の最上位DAC「DAVE」の存在に触れておかなくてはならない。DAVEは日本で2016年に発売されたDACで、その音質が多くのオーディオファンから評価を得て大ヒットした。実はBlu MkIIは、このDAVEと組み合わせることを前提に開発されたCDトランスポート。両者を2本のBNCでデュアル接続することで、44.1kHzのCD音源を最大705.6kHzまでアップサンプリングしてハイグレードに楽しめるよう設計されている(BNC1本で接続した場合は352.8kHzまでのアップサンプリングになる)。

Blu MkIIの本体サイズや外観、インターフェイス部などの仕様は、18年前に登場したベースモデル「Blu(Coda)」と共通。右側の丸い部分がCDドライブになっている。見た目はベースモデルとほぼ変わらないが、内部は最新FPGAによる高性能なアップサンプリング機能を備えて大きく進化している

CDを取り出してみたところ。ドライブメカの基本構造もベースモデルに搭載されたフィリップスのPro 2とほぼ共通とのことだが、シャーシのみCHORDが新設計したものにリニューアルしている

こちらが、2016年に発売されてヒットしたDAC「DAVE」。Blu MkIIはこのDAVEと組み合わせることを前提にしたCDトランスポートで、もちろん他社製のDACとも接続できるが、音質面ではDAVEとのマッチングが図られている

専用ラックの一番上に設置されているのがBlu MkII、中段にあるのがDAVE。今回のプレス向け体験会では、もちろん両者を組み合わせた試聴が実施された。音質インプレッションについては後述する

なお、BNC端子は出力用だけでなく入力用にも備えている。つまり本製品はCDだけでなく、BNC入力したデジタル音源をアップサンプリングする単体アップサンプラーにもなる(※2017/2/9 追記・更新:上述の通り、USB端子を追加装備することが発表された。最大768kHz PCM、11.2MHz DSDまでの入力に対応する。詳細は記事後半に追記)

【進化ポイント1】FPGAによる高速処理プログラム

18年ぶりの進化点として大きいのは、最大768kHzまでのアップサンプリングを「最新FPGAチップによる処理」で実現したことだ。FPGAとは、簡単に言うと「プログラムを書き込めるプロセッサー」。ここ2年ほどの間に、オーディオ製品の内部処理にこのFPGAを採用することが、オーディオ分野におけるトレンドのひとつになっていた。というのは、主にDAC製品においての話だが、FPGAを使えば音声処理のアルゴリズムをプログラムできるため、D/A変換処理時の音質傾向を開発者が調整することが可能となり、これが音質面でのポイントになっていたのだ。

注目したいのは、CHORDでは90年代時点からFPGAを使用したDAC製品を開発してきており、それが長年の同社製品の特徴でもあったこと。その最新モデルとしてヒットしたのが上述のDAVEであり、そのノウハウをトランスポートに応用して高性能なアップサンプリング機能の実現を図ったのが、今回のBlu MkIIというわけだ。Blu MkIIに使われているFPGAチップはXilinx(ザイリンク) の「XC7A200T」で、デジカメの映像処理用にも使われるものだという。かなり高い処理速度を確保したものをオーディオ製品に投入したことがわかる。

同社によれば、XC7A200Tレベルの演算能力の高いFPGAチップをD/A変換処理に使用するとノイズが多く発生するそうで、DAC製品に使用するのは難しかったが、トランスポートである本製品だからこそ採用できたとのこと(DAVEのFPGAチップは同じザイリンクの「Spartan-6 XC6SLX75」)。そのおかげでタップ数は100万を超えた。これについては次の項で紹介しよう

【進化ポイント2】“100万超えタップ”の高精度アップサンプリング

上述の高性能FPGAによって実現したのが、高精度のデジタルフィルターを搭載しタップ数100万超えの「WTA M-Scaler」というアップサンプリングプログラムを駆動することだ。この仕組みは割と複雑なものなのだが、これがCHORD製品の、そしてBlu MkIIの特徴のひとつでもあるので、できるだけ説明を簡略化してそのスゴさを紹介しよう。

まず、そもそもデジタルオーディオ機器が音源データを内部処理する際には、本来入らないノイズが発生してしまう。この不要ノイズを除去するための「フィルター」には主にアナログ式とデジタル式の2パターンがあるが、デジタルフィルターでは、流れてくる音源データを時系列に分けて係数をかけることで不要ノイズを割り出す。この係数をかける数を「タップ」と呼び、このタップ数が多ければ多いほどノイズ処理が高精度になるわけだ。

CHORDでは、ノイズ除去性能を突き詰めるため、独自のプログラムを組み込んだデジタルフィルターを開発してきた。これを「WTAフィルター」と呼称している。Blu MkIIのアップサンプリングプログラムでは、このWTAフィルターで培ったノウハウを搭載しているわけだが、タップ数は実に101万5,808タップで、歴代のCHORD製品の中でも最大。DAVEでは16万4,000タップだったので、この2者の比較だけでもかなり処理精度を高めていることがわかる。最新FPGAによって、100万タップを超える処理が可能となり、高品位なアップサンプリングが行えるようになったわけだ。

WTA M-Scalerを制御するため、Blu MkIIでは内部に740基ものDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー=演算処理デバイス)を並列駆動するというぜいたくな構成をとっている

パワポ画像が不鮮明で申し訳ないが、こちらはDAVE側に搭載されたFPGAプログラムの概念図。簡単に説明すると、Blu MkIIとDAVEと組み合わせた場合、DAVEのWTAフィルターも通すことになるが、1段目のWTAフィルターをバイパスすることでDAVE側のノイズを下げられるようにしているそうだ。こういった部分でもDAVEとの音質的なマッチングを図っている

なぜ今あえて「CD再生」なのか?

一般に音楽再生のスタイルは、CD再生に代わってデジタルファイル再生が主流になって久しい。徹底的に高音質を求めるハイエンドオーディオの世界でも、デジタルの分野ではPCオーディオやネットワークオーディオなど、ここ数年はファイル再生を前提とした音質追及が盛り上がりを見せている。それに最近は、音楽ストリーミングサービスの登場により、そもそも音源自体をローカルにアーカイブしないという新しい潮流も生まれている。

そんな中、CHORDがあえてCD再生のクオリティを突き詰めたのはなぜなのか? 同社のエンジニア、ロバート・ワッツ氏がその理由を語った。

「Blu MkIIとDAVEの組み合わせが実現するのは、古いCDの魅力を再発見することだと思っています。80年代にアナログレコードからCDの時代になったとき、私はCDのあまりの音の悪さに驚きました。それで当時から、CDの音を何とかよい音で聞くことへのこだわりをずっと持ってきました。しかし当時はFPGAもDSPも存在せず、CDをいい音で聴くことは不可能に近かったのです。でも、DACなどオーディオ機器の進化にあわせて、悪い音でしか聞けなかった昔のCDを現在ではすばらしい音で聞けるようになりました。それを突き詰めたのがBlu MkIIとDAVEの組み合わせ。これらを使えば、家にある古いCDの魅力を再発見することができます」(ワッツ氏)

ワッツ氏は、CHORD製品におけるFPGAを使用したD/A変換処理プログラムを設計し、WTAフィルターを開発した張本人。オーディオにおけるデジタルデータ再生の場合、「音の立ち上がり」を高精度に再現することが、音の聞こえ方・再現性の高さに大きく影響すると言われている。「ここをしっかりと処理するため、100万を超えるタップ数が必要だった」とワッツ氏は語った

すでに各所で高い評価を得ているDAVEに、Blu MkIIを組み合わせることで「家の中にたくさん眠っているCD資産を生かすことができるシステム」とアピールしているわけだ。今回の取材では、Blu MkIIとDAVEをBNC経由でデュアル接続した状態で組み合わせて、ヒラリー・ハーンの『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲』などのCD音源を試聴させていただいた。 44.1kHzのままのCD音源と、それを705.6kHzにアップサンプリングした音源を聞き比べたのだが、後者ではより空間性が豊かに。楽器の配置などもそうだが、合唱など声の数が多い楽曲の場合も、奥行きが広がることでより立体感が出る印象だ。

なお、CDからリッピングしたデジタル音源でも、BNC経由で外部入力することで、CDと同じようにアップサンプリングしてDAVEと組み合わせて再生できる。Blu MkIIとDAVEが「ディスクにしろリッピングデータにしろ、CD音源を最高峰の音で聞くこと」を突き詰めたシステムであることが実感できた。

写真上が44.1kHzのCD音源をそのまま再生したところで、写真下が705.6kHzにアップサンプリングして再生したところ。サンプリング周波数の違いは、DAVE側のディスプレイに色分けされて表示されている。BNCを2基使用したデュアル出力の場合、アップサンプリングは元の音源に対し4/8/16倍の3種類から選択できる。なお、BNC1基だけを使用したシングル出力の場合は、2/4/8倍の3種類から選択する形になる

<以下、2017/2/9 追記・更新>

記事初出時、外部入力端子はBNC同軸1系統のみと発表されていたが、2017/2/9に仕様変更が行われ、新しくUSB入力端子が追加されることが明らかになった(これに伴い、当初装備していたTOS Link出力が省略された)。

CHORDの発表によれば、100万タップを超える処理アルゴリズム「WTA M-Scaler」をUSBオーディオにも提供したいとの思いから、今回の仕様変更が決定されたという。これにより、PCやNASからデジタル音源ファイルや音楽ストリーミングサービスの音声を、本機にUSB入力して高精度処理した上でDAVEと組み合わせて楽しむことが可能になった。USB入力の対応スペックは最大768kHz PCM、11.2MHz DSDまで。入力信号はそのスペックに関わらず、768kHz/705.6kHz PCMにアップサンプリングされ、DAC側に伝送されることになる。

なお、この仕様変更に伴う価格・発売時期の変更はない。

杉浦 みな子(編集部)

杉浦 みな子(編集部)

オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。あ、90年代アニメも好き。

製品 価格.com最安価格 備考
Choral Range Blu MkII [シルバー] 1,512,000 CHORDのフラグシップCDトランスポート(シルバー)
Choral Range Blu MkII [ブラック] 1,512,000 CHORDのフラグシップCDトランスポート(ブラック)
Choral Range DAVE 1,620,000 ヘッドホンアンプを搭載したCHORDのフラグシップDAコンバーター
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2017.4.24 更新
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