肉眼では見えない小さな物体を拡大して観察できる「顕微鏡」。誰しもが子どものころに学校で使用した経験があると思います。ミクロの世界はただ見ているだけでも楽しいもので、自宅で子どもと一緒に使えたらと思いますが、個人で高価な顕微鏡を買うのはなかなか大変です。
そこで出会ったのが、パーツの多くが紙で作られている「Foldscope」という顕微鏡。スタンフォード大学生物工学科のマヌ・プラカシュ教授が開発した「Foldscope」は、紙を切ったり折ったりして作るため、折り紙顕微鏡とも呼ばれています。この「Foldscope」を購入したので、実際に作ってミクロの世界に旅立ってみました。
「Foldscope」を使えばスマートフォンで小さな物体の写真をとることも可能
購入したのは、「Foldscope」に加えて、専用ケースやプレパラート、ピンセット、はさみ、LEDモジュール、フィルターなどがひとまとめになった「Foldscope Individual Deluxe Kit」というセットです。子どものときに使った缶ペンケースのような持ち運び用ケースには、花や微生物が描かれており、手に取るだけで童心に返れるようなデザインです。
「Foldscope Individual Deluxe Kit」のケース
ケースを開けると、「Foldscope」一式と顕微鏡や標本に使用する道具が入っていて、大人でもワクワクします。説明書は英語で書かれていますが、中学生レベルの英語なので、インターネットを使って翻訳しながら作ってみました。
ケースをピンセットやプレパラートなどが入っていて、理科の授業で実験したことを思い出します
これが作成する前の「Foldscope」。これが本当に顕微鏡になるのか、にわかには信じられません
組み立て説明書は英語で記載されていますが、図でていねいに説明してくれているので助かります
こんなふうに切り取り線に沿ってパーツをパチパチと外しながら作っていきます。写真は、「Foldscope」の土台となるパーツ
これは顕微鏡のレンズに当たるパーツ。レンズは、指紋で汚さないようにきれいに磨いてから土台のパーツに付けていきます。付けると言っても、のりやセロテープでくっ付けるのではなく、折りたたんではめ込むように作る感じです。これが「折り紙顕微鏡」と呼ばれる理由でしょう
「Foldscope」は、観察するサンプルの向こう側から光を当てて、その光をレンズで屈折させて拡大する透過照明という照射方法を使用。写真に写っているのは、光を取り込むためのホールです。作りながら、顕微鏡の基本的な原理を学べるのも楽しい
特に詰まることもなく完成。写真に写っているのは、正面、つまりのぞき込む側になります
説明書が英語ということもあり、作るのは少し難しそうだと思っていたのですが、図解が非常にわかりやすかったため、10分ほどで完成。また、公式の作成動画も参考になります。はさみを使って切るような部分がなく、紙を点線に沿ってパチパチと外すだけだったのも簡単に作れた理由のひとつかもしれません。
自分の手で作るため、作成しながら「Foldscope」の構造が見られるのも興味深かったです。長さの異なる紙を折りたたんで、場所によって厚みが違うピント調節用のスライドを作ったときは、シンプルながらも創造性に富んだ構造に驚きました。このようなアイデアがいたるところに散りばめられているのは、作っていても楽しさが感じられます。
黄色いパーツがピント調節用のスライド。レンズと、プレパラートを差し込む場所の間に位置しています。スライドは、左から右に向かって厚みが増す構造になっていて、左右にずらすことでピントを調節するというわけ
こちらは裏面。外観からは顕微鏡とはまったくわかりませんね
完成したら、まずは同梱されているサンプルの「シダの根茎」を見てみます。プレパラートを差し込み、サンプルとレンズの位置を揃え、顕微鏡をのぞきこむと、目では確認できない部分までくっきりととらえた「シダの根茎」を確認。レンズが非常に小さいので実際の顕微鏡と比べると見にくさは否めませんが、紙製の顕微鏡でもしっかりと観察できるのを実感しました。
「Foldscope Individual Deluxe Kit」には、すでにプレパラートにセットされた「シダの根茎」と「蚊」のサンプルが同梱されています
プレパラートを本体に差し込みます。このときに、サンプルがちょうどレンズの真上にくるように調節
プレパラートをセットし、ホールを閉じれば準備完了
観察するときは、両手で持ってのぞき込みます。大人が見るには、サイズが少し小さいかも
シダの根茎の細胞までが見えており、少し感動(ぼけているのはスマートフォンで撮影したため)
「Foldscope」で観察したものを写真として残したいときは、スマートフォンを使えばOK。同梱されているカプラーをカメラに装着させ、目で見るのと同じようにスマホのカメラをのぞき穴に合わせます。穴が非常に小さいため、画面に映し出される像も小さいですが、少しズームしてやれば問題なし。ただし、ピントを合わせるのには少し苦労しました。しかし、140倍まで拡大した写真をスマートフォンで撮るために、取り付けるタイプのレンズを装着させるなどをしない限り不可能なわけですが、「Foldscope」は手軽に撮れると言っていいでしょう。
スマートフォンで撮影するには、同梱されているカプラーをカメラ部分にテープで装着
目で見るのと同じようにのぞき穴にカメラを合わせると、きちんと見えます。カメラとのぞき穴をあわせるのは難しそうですが、レンズ部分に備えられているマグネットの力により、カメラを近づけるだけで最適な位置に合わせられます
今度は、身の周りにあるものを見てみることに。自分で採取したサンプルを見るには、サンプルを同梱されている紙製のプレートにセットし、専用のシールで固定。これを前述のプレパラートと同じように「Foldscope」にセットするだけです。さまざまなものを試しましたが、サンプルが分厚いと光が届かず細部まで見えません。サンプルを削るなどして薄くするとよいでしょう。
まずは、紙製のプレパラートに専用のシールを貼り付けます
プレパラートをひっくり返してサンプルをシールの裏側に設置
サンプルの上から、もう1枚シールを貼り付けます
ガラスのプレパラートと同じように、レンズとサンプルの位置を合わせるようにセットすれば完了です
実際に見てみたのはポテトチップス。うにょうにょと蛇行しているような模様は油なのでしょうか
これはトイレなどに置いてあるペーパータオル。肉眼では見えない、水色や赤色の繊維が見えますね
これはシャーペンの芯を削ったもの。透過照明タイプなので、厚みがあったり、真っ黒だったりするサンプルだと見えにくいです
「Foldscope」は、「世界中の子どもたちに顕微鏡を配る」という計画のもとに作られた顕微鏡。顕微鏡は、子どもの好奇心や科学への興味を刺激するのに役立つ道具ですが、価格が高かったり、携帯性が悪かったりするなど、使用できる環境が限られているのが現実です。
開発者のマヌ・プラカシュ教授は、発展途上国を中心に「Foldscope」を配布する事業に取り組んでいます。今回購入したのは、個人向けの製品のため39.99ドル(約4,500円)しますが、教育向けの20個入りセットは35ドル(約4,000円)、つまりひとつ当たりわずか200円で購入可能。実際の顕微鏡とは比べ物にならないくらい安く、子どもが手軽に外で使用するには十分の機能を持ち合わせているため、冬休みにお子さんと一緒に遊んでみてもよさそうです。
なお、現在のところ購入は公式サイトからのみという状態で、日本からでも気軽に買えるようになるといいですね。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。