レビュー
シャッターを切るだけで美しい天井バウンス撮影が可能

バウンス撮影を自動化! キヤノン「スピードライト 470EX-AI」レビュー

キヤノンから「AI(Auto Intelligent)バウンス機能」を搭載した「スピードライト 470EX-AI」が登場。世界で初めてバウンス撮影の自動化を実現した本モデルを、カメラマンの吉村永氏にレビューしてもらった。

最大ガイドナンバー約47のスピードライト 470EX-AI

最大ガイドナンバー約47のスピードライト 470EX-AI

モーターを3個、CPU2個の贅沢な構成

キヤノンの「スピードライト 470EX-AI」(以下、470EX-AI)は、同社のデジタル一眼向けのクリップオンタイプのスピードライト。世界初のバウンス撮影を自動化したモデルだ。

最初に、バウンス撮影とは何か? ということを簡単に説明しておこう。特に人物撮影などで気になることが多いと思うのだが、暗い場所でカメラに取り付けたフラッシュを直射して撮影するとどうも描写が生々しく、美しく撮影できないと思った経験はないだろうか?

人物撮影でフラッシュを直射して撮影すると、どうしても描写が生々しくなってしまうし、影も気になる

人物撮影でフラッシュを直射して撮影すると、どうしても描写が生々しくなってしまうし、影も気になる

これは写真を撮影する場合でなくても暗闇の中、懐中電灯で人の顔を照らしたことのある人であればわかるはず。小さな光源から照射された光をダイレクトに当てるとどうしても人物が怖い感じの顔に見えてしまいがち。この光の感じを、写真の世界では「硬い光」と表現することがある。

対して「柔らかい光」とは? 薄曇りの日に、大きな窓から差し込む光を思い浮かべてほしい。この光は照らすもの全体を包み込むような光で、目立って濃い影ができにくく、人物の肌なども柔らかな質感を残したまま見せてくれる。人物撮影には、硬い光よりも柔らかい光の方が向いているのだ。

そこで考えられた手法が「バウンス撮影」となる。これは、フラッシュの光を写したい人物に直射するのではなく、どこかに反射(バウンス)させ、その反射光で撮影する手法だ。天井にバウンスさせる手法がよく知られ、「天バン」と称される。470EX-AIは、この天バン撮影を自動化した製品なのだ。通常のスピードライトがズーム用にモーターを1個、CPUを1個で構成されているところ、AI機能を実現させるためにモーターを3個、CPUを2個搭載した贅沢な構成となっている。

キヤノンのスピードライトシリーズは基本的に型番の番号部分の数字が最大ガイドナンバーを表しているので、この製品の場合はGN47(ISO100/m)となる。カメラメーカー各社のフラグシップスピードライトは、概ねGN60(ISO100/m)で、キヤノンの最上位機である「スピードライト 600EX II-RT」(以下、600EX II-RT)も同じ。なので計算上はパワーが約1段小さいことになる。だがこの最大ガイドナンバーはあくまでもズーミング最望遠時のもの。この470EX-AIではズーム105mm時の値で、フラグシップの600EX-RTの場合はズーム200mm時での値。バウンス撮影で多用する35mm近辺のガイドナンバーはそれぞれ29、34となり、パワーの差は2/3段もない。なかなかのハイパワースピードライトと考えて問題ないだろう。

本体の重さは、パナソニックの「エネループ」(単3形ニッケル水素電池)を4本入れての実使用重量で実測400g。内容を考えるとコンパクトで軽量にまとまっていると感じたが、600EX II-RT以降の同社のスピードライトはヘッド部を立ち上げて細長くした状態ではなく、前方に向けて折り曲げた状態で収納する仕様となったために以前のように細長いケースではなく、横からみるとほぼ正方形のコロッとした布ケースが付属してくる。カメラバッグの限られたスペースに収納するのが難しいと感じられた。

ヘッドは照射角がカメラ本体のレンズ画角に合わせてズームするが、この連動範囲が24〜105mm。内蔵のワイドパネルを引き出して照射面にかぶせれば、14mmの超広角にも対応する。

セットには「バウンスアダプター」と名付けられた乳白色のポリキャップ状のディフューザーが付属している。これを装着すると、より広範囲に光が拡散され、さらに側面からの光がモデルに直接、当たることによる瞳のキャッチライト効果なども期待できる。アクセサリーとしては昔から同種の商品が売られているが、さすが標準付属品だけあって装着するとヘッド下部のセンサーがこれを検知し、制御がディフューザー装着モードへと切り替わるようになっているのでより安心して使える。

自動バウンス撮影を試す

さて、実際のバウンス撮影を試してみよう。本体背面の「バウンスモード切替スイッチ」を「F」にセット。これでバウンス撮影をAIが自動で行う「AI.Bフルオート撮影」にセットされる。次に青いランプが点灯している「AI.Bフルオート測距開始ボタン」を押すと、ヘッドが自動で上を向き、プリ発光。するとプリ発光による測光情報、ヘッド横に搭載されたAI.B測距センサーによる天井との距離、レンズから得られた被写体との距離といったさまざまなデータが瞬時に判断され、ヘッドが最適なバウンス角度にセットされる。あとはシャッターを切るだけで美しい天井バウンス撮影ができるというわけだ。

スピードライトがカメラに装着してあるため、撮影を横位置から縦位置に変更した場合などは当然、発光ヘッドの向きが変わってしまう。この場合はカメラの位置を決めたらシャッターボタンを軽くダブルクリック。すると、ヘッドが器用にくるっと周り、設定した天井にうまく向くように自動で動いてくれる。この辺りのヘッドの動きは滑らかで、まるで生き物のようでちょっと楽しさを覚えるはず。動画を載せるので、こちらで動きを確かめてほしい。

これまで天バン撮影は、多くの人がただ垂直にヘッドを垂直に立てて撮影していた。だが、よく考えればわかるのだがモデルとカメラ位置が近い場合には垂直バウンスだとモデルのほぼ真上から反射光が降り注ぐ形になり、光の質は柔らかいものの目に光が入りにくかったり、目の下に影ができてしまいがち。反対にカメラとモデルが遠い場合は反射面が遠いために光の柔らかさや光量も落ちてしまいがちになる。そこで、カメラとモデルの距離が変わっても、常にモデルの数メートル手前の天井を広く照らしてその反射光を使うのが470EX-AIの天バンの考え方。なので近距離で撮影すればヘッドはカメラマンから見て少し後ろに向くし、離れて撮影すれば垂直より前向きにヘッドが調整される。この辺りの勘所がAI機能で自動調整になっているというわけだ。もちろん、バウンスは物理的に可能な条件があり、天井があまりにも高すぎる体育館などでは反射光がほぼ届かなくなるためにバウンスはキャンセルされるし(天井高7mが目安となる)、天井が黒いライブハウスなども反射が極端に少ないために使えないシチュエーションと覚えておこう。

モデルとカメラの距離を変えてAI.Bフルオート撮影。470EX-AIの角度が変わっていることが確認できると思う

モデルとカメラの距離を変えてAI.Bフルオート撮影。470EX-AIの角度が変わっていることが確認できると思う

モデルとカメラの距離を1m/2m/3mと変えて撮影(上から1m/2m/3m)。どれもなかなか自然な雰囲気で写すことができた

おもしろい製品だが、気になるところも

この機能、あまりにも動きがおもしろく発想着眼点もよいだけに、もう少し踏み込んでほしかったと思える場面がとても多かった。

ひとつ目は、角度の問題。キヤノンのニュースリリースにもあるよう、「ポートレート撮影に適した」機能と謳うだけあり、正面に立ったモデルを撮ることを前提としているのでカメラを上や下向きに傾けるとこのAIバウンス機能はキャンセルされてしまう(具体的には上下約60度)。なので、ベッドに寝た赤ちゃんの寝姿やテーブルの上の料理などを上目の角度から狙おうとするとバウンスがキャンセル。どちらもバウンス撮影がかなり有効で、美しく写せるシチュエーションなのでこういった場合にいきなり手動調節でなくてはバウンス撮影できないのは残念。手動での場合は「AI.Bセミオート撮影」にセットすれば、手動セットした角度を470EX-AIが記憶してくれ、カメラの角度を変えてもバウンスの角度をキープしてくれるのでこれまでのスピードライトよりも便利であることは間違いないのだが。

また、せっかくAIを謳いながらいつもカメラレンズの向きの方向正面の天井からのバウンス光だけに照明が限定されてしまうのも残念。初心者向きではあるが、このストロボで数回撮影すれば、どの角度で発光させればいいかは誰もが覚えられてしまう。個人的には立体感を重視したライティングが好みなので、正面天井の天バン撮影というのは滅多にやらない。いくつか雰囲気の違うライティングがセットされていて切り替えられるであるとか、自動でライティングバリエーションを変えた数枚を撮影してくれ、気に入ったライティングを指定すれば以降、そのライティングをキープしてくれるような工夫はどうだろうか?

バウンス角を自分で決め、向かって左の壁の上側に当てての撮影。正面の天バン撮影よりも、より立体感を覚えるライティングとなった

さらに、通常のスピードライトとしての機能で考えると、この価格でなら電波式リモート撮影に対応してほしかったところだ。カメラ内蔵フラッシュなどと連動する光リモートと赤外線リモートには対応しているのだが、屋外などでも発光の信頼性が高い電波式はぜひとも欲しかった機能。昨今の日本でのストロボライティングはカメラからスピードライトを離してスタンドなどに設置して使う「オフカメラライティング」がYouTubeやTwitter界隈で流行っているのでなおさらだ。

使い勝手や光量は高いレベルなので大量撮影にも対応できるよう、外部電源端子も装備してほしいところ。大光量をいちばんの売りにするのではなく、クリエイティブな機能を充実させた多機能モデルとしての進化を期待したい。

モデル:山田あかり

吉村 永

吉村 永

テレビ番組制作から雑誌編集を経てフリーランスに。音楽ものVideoClipの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真のカメラマン。カメラグランプリ2018選考委員。最近はドローンも飛ばしてます!

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