レビュー

まもなく発売! キヤノン「EOS R」ファーストインプレッション

2018年10月25日の発売が予定されている、キヤノン初のフルサイズミラーレス「EOS R」。キヤノンのフルサイズ機のラインアップとしては、フルサイズ一眼レフのエントリー機「EOS 6D Mark II」と同じかそのひとつ上の初中級機に位置付けられるが、上位モデル「EOS 5D Mark IV」とほぼ同画素となる有効約3030万画素センサーを採用するなどの高性能を実現した注目モデルだ。ここでは、主に操作性について、EOS Rの試作機を使ってみてのファーストインプレッションをお届けしよう。

※今回使用した機材は画質評価が不可の試作機で、キヤノン製品を含めて他製品との比較も不可となっています。実写作例は縦横50%にリサイズしての掲載となります。製品版とは仕様が異なる場合がある試作機のインプレッションであることをご了承ください。

今回、EOS Rのボディとあわせて、標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」、大口径・標準レンズ「RF50mm F1.2 L USM」、コントロールリング付きのマウントアダプターを使用した。いずれも発売前の試作機となっている

「EOS」シリーズの一眼レフ中級機に近い操作フィーリング

EOS Rの操作性は、基本的なところで、「EOS M5」などAPS-Cミラーレス「EOS M」シリーズの上位モデルをベースにしたと思われるところが見られる。ただ、完全にそのままというわけではなく、「EOS」シリーズの一眼レフの操作を組み合わせたうえで、新しい要素も追加することで、これまでのキヤノンのどのデジタル一眼カメラとも異なる操作性となっている。

ボディに装備されているダイヤルは2種類で、シャッターボタン近くにメイン電子ダイヤルを、上面右側にサブ電子ダイヤルをレイアウト。メイン電子ダイヤルはEOS Mシリーズのようなシャッターボタン一体型ではなく、一眼レフと同じ独立型だ。逆にサブ電子ダイヤルは、一眼レフのようなクルクルと回る円形タイプではなく、通常のダイヤルとなっている。このあたりは、ミラーレスのコンパクトボディにあわせて全体のレイアウトを考慮したうえでの選択なのだろう。

上面右側には、各種撮影設定を確認できる表示パネルを、左側には電源スイッチを搭載。背面のボタンレイアウトはEOS Mシリーズの上位モデルに近く、メニューボタン以外は、右手のみで操作が完結するようにボディの右側に集中している。約369万ドットで倍率約0.76倍の電子ビューファインダー(EVF)は、EOS Mシリーズでも一貫しているが、ボディ中央の光軸上に配置。液晶モニター(3.15型、約210万ドット)は、フルサイズ一眼レフの下位モデル「EOS 6D Mark II」や、APS-Cミラーレス「EOS Kiss M」と同様、タッチパネル対応のバリアングル式だ。

シャッターボタン近くにメイン電子ダイヤル、上面右側にサブ電子ダイヤルを装備。上面右側には表示パネルも備わっている。表示パネルは電源オフ状態でも露出モードを常時表示する

ボタン類は右手のみで操作が完結するようにボディ右側に集中している。EOS Mシリーズの上位モデルに近いレイアウトだが、AF-ONボタンが用意されている点などはEOS M5とは異なる

上面左側に電源スイッチを装備。この部分にAFや測光、連写などを選択できる操作性があってもよかったように思うが、右手での操作にこだわって見送ったのかもしれない。メニューボタンは背面左上にレイアウトされている

タッチパネル対応のバリアングル液晶モニター(3.15型、約210万ドット)を採用する

タッチパネル対応のバリアングル液晶モニター(3.15型、約210万ドット)を採用する

撮影モードの変更は、上面の専用ボタンを押して、表示される画面を見ながら選択する方式となっている。EOSシリーズの一眼レフに慣れている方だと撮影モードをダイレクトに変更できないのが気になるかもしれないが、各モードが並んだ画面を見ながら選択できるので、EVFから目を離さずにモードを変更するにはこの仕様のほうが使いやすいところがある。

また、EOS Rには、ダイヤルや十字キーの操作でシャッタースピード、絞り値、感度のすべてを、オートも含めて任意で設定できる新しい露出モード「Fvモード(フレキシブルAE)」が追加されている。このモードをうまく利用すれば、撮影モードを切り替えることなく、P/TV/AV/Mの露出モードを使い分けるような感覚で撮影することが可能だ。

Fvモードは、シャッタースピード、絞り値、感度の値を任意に設定できる新しい露出モード。撮影モードを切り替えなくても露出の変更を自由に行える

EOS R用の新しい「RFレンズ」には、クリック感のあるコントロールダイヤルが搭載されている。EOS Rでは、このダイヤルを含めて計3つのダイヤルに、絞り、シャッタースピード、感度、露出補正のいずれかを割り当てて操作することが可能(EFレンズを使う場合もコントロールリング付きのマウントアダプターが用意されている)。マニュアル露出で露出をコントロールして撮りたい場合に、3つのダイヤルで絞り値、シャッタースピード、感度を調整できるのが便利だ。

RFレンズは先端近くにコントロールダイヤルを装備。ボディとあわせて3つのダイヤルをカスタマイズして利用できる

背面右側のEVFの近くに「マルチファンクションバー」が新設されたのもEOS Rのトピックだ。タッチ操作(スライド操作と左右のタップ操作)による新しい操作性で、撮影時と再生時に分けて、感度やホワイトバランス、画像送りといった機能を設定できる。スライド操作と左右のタップ操作のそれぞれに異なる機能を割り当てることもできるので、たとえば「スライド操作は感度の変更、左のタップ操作はホワイトバランスに太陽光を指定」といった設定も可能。2秒間のタッチでバー操作のロックを解除する誤操作防止機能も用意されている。

この新しい操作性で気になるのは誤操作だと思うが、機能をオンにして(※初期設定では機能はオフになっている)1週間程度使った限りでは、撮影中の誤操作はほとんど発生しなかった。カメラをホールドした際に親指が触れてしまいそうな位置にバーがあるように見えるが、実際に使ってみると、意識しないと触れられない絶妙な位置にレイアウトされている。指の長さやホールドの仕方にもよるが、慣れれば便利に使えると感じた。

EVFの近くに新設されたマルチファンクションバー。3つのタッチ操作に個別の機能を割り当てることもできる

EVFの近くに新設されたマルチファンクションバー。3つのタッチ操作に個別の機能を割り当てることもできる

こうしてEOS Rの基本的な操作性を見てみると、EVFを覗きながら操作することを重視して設計したことがうかがえる。新しい操作性が追加されていて目新しい部分もあるのだが、それなりのシャッターショックがある点なども含めて、操作のフィーリングはEOSシリーズの一眼レフの中級機に近い印象。しっかりとホールドできる大きなグリップも一眼レフの中級機に近い感覚だ。

ミラーレスとしては大きなグリップを採用。握った感じはEOSシリーズの一眼レフの中級機に近い。マウントアダプターを使ってEFレンズの望遠ズームレンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」を装着した場合でもしっかりとホールドできた

ワンショットでの高速AFを実現。連写やバッテリーも十分な性能

続いて、AFや連写など、EOS Rを使ってみてわかった点をいくつかレポートしよう。

■カバーエリアが広がった「デュアルピクセルCMOS AF」

AFは、「デュアルピクセルCMOS AF」のカバーエリアが、フルサイズとしては最大となる約88%(横)×約100%(縦)にまで拡大し、さらに使いやすくなった。フルサイズカメラとして世界最速のAF速度0.05秒を達成したのをウリにしているとおり、非常に高速に合焦する。他機種との評価は不可な試作機ではあるが、キヤノンのライブビュー時のAFとしては間違いなく最速(ただし、AF-Cの追従性はもうひと声といったところ)。純正マウントアダプターを介して「EFレンズ」を使ってもAF精度はキープされる印象を受けた。なお、測光は開放測光で、測距も測光にあわせた動作となっている。

■十分な持続性を実現した連写性能

連写は、AF1コマ目固定/AE追従(※合焦後のAEロックを外せばAE追従可)のワンショットAF時で最高約8コマ/秒、AF/AE追従のサーボAF時で最高約5コマ秒のスペック。圧倒的な性能というわけではないが、AFロックをうまく活用すれば、動体撮影もそれなりに対応できるだろう。連続撮影可能枚数はJPEGラージ/ファインで約100枚、RAWならびにRAW+JPEGラージで約34枚。フルサイズミラーレスの初中級機としては連写の持続性も十分だ。なお、連写時のEVFの動作については、ワンショットAF/サーボAF時ともにブラックアウトのないアフタービュー表示(1つ前のレリーズの撮影画像が表示されたり、レリーズ時の表示画像の更新が遅い方式)となるようだ。

■大きくてクリアな表示のEVF。ややクセがあるところも

約369万ドットで倍率約0.76倍のEVFは、光学系にこだわって設計したという通り、クリアで大きな見えとなっている。歪みが少ないのも特徴で、とても見やすいファインダーだと感じた。アイポイントは約23mmと長く、眼鏡をかけた場合でも視認性を確保しやすいのもポイントである。

EVFで少し気になったのは、画面への露出の反映が少し遅いときがあったこと。特に、評価測光で自動露出を使った場合に気になった。キヤノンのデジタル一眼カメラは、評価測光だと測距点の部分の明るさに連動して自動露出が調整されるようになっているが、EOS Rでは、逆光など輝度差があるところにカメラを向けて測距点を明るいところから暗いところ(またはその逆)に手動で移動すると、明るさが比較的ゆっくりと変化するようになっている。一眼レフの光学ファインダーに慣れている方を意識して、大きな露出変化が発生した場合でも明るさが滑らかに変化する仕様にしたのかもしれないが、このクラスのカメラなら、もう少しリニアに反応してもいいように思う。また、プレビュー表示をオンにしていると、ワンショット撮影時にプレビューが表示されるまで少しブラックアウトする時間があるのも気になった。

■スペック以上の枚数が撮れるバッテリー性能

対応バッテリーはEOSシリーズ一眼レフの中上位モデルと同じ「LP-E6N/LP-E6」で、付属バッテリーLP-E6N使用時の静止画の撮影可能枚数は、CIPA基準のスペックで約370枚となっている。実際に、ワンショット撮影と連写撮影を使い分けながらRAW+JPEG記録で連続して使い続けてみたところ、1回目は約6時間で1600枚程度、2回目は約5時間で1700枚程度(いずれもRAW/JPEGそれぞれの枚数)撮影することができた。バッテリー性はスペック通りというわけではなく、使い方や状況によってはそれ以上に撮影ができるようだ。

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