レビュー
静止画の実写作例を掲載。動画RAWデータでの撮影もテスト

シグマ初のフルサイズミラーレス「SIGMA fp」使い倒しレビュー【画質・動画編】

前編の「操作性・AF編」に続いて、シグマのフルサイズミラーレス「SIGMA fp」のレビューをお届けしよう。静止画画質と動画撮影機能を検証した。

フルサイズらしい高画質を実現。画質調整機能も充実

シグマはこれまでデジタルカメラの撮像素子に3層構造のFoveonセンサーを一貫して採用してきた。だが、SIGMA fpでは、動画撮影などさまざまな点を考慮して、データ処理速度にすぐれる、ベイヤー配列の裏面照射型CMOSセンサー(ローパスフィルターレス仕様)を採用した。シグマ初のベイヤーセンサー機ということで、その画質に注目している方も多いことだろう。

有効約2460万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用

有効約2460万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用

SIGMA fpの画質を端的に言うなら「フルサイズらしい高画質」になるだろう。ローパスフィルターレス仕様の裏面照射型CMOSセンサーとシグマ製のLマウントレンズの組み合わせは、非常に高い解像力を発揮する。さらに、これまでのFoveonセンサー機では考えられないが、フルサイズらしくISO6400程度の高感度でもノイズが少なく、十分に活用できる。AEやオートホワイトバランスの精度が高く、カメラまかせの撮影でも安定した画質が得られるのもFoveonセンサー機にはなかった特徴。同じ裏面照射型CMOSセンサーを採用する他メーカーの最新フルサイズミラーレスと変わらない高画質が得られると感じた。

シグマらしいところとしては画質調整機能が充実しており、仕上がり設定のカラーモードでは、シネマ、サンセットレッド、フォレストグリーン、FOVクラシックブルー、FOVクラシックイエローなどに加えて、ハリウッド映画のカラーグレーディングで使われているティールアンドオレンジ(肌色とその補色であるシアン系のブルーを際立たせる設定)を追加。動画向けではあるが、静止画でも人物撮影を中心に印象的な効果が得られる設定でとても面白い。さらに、階調を調整できるトーンコントロールや、暗い部分にライトを追加するようなイメージで明るさを調整できるFill Light機能も搭載している。

新設定のティールアンドオレンジを含めて計12種類のカラーモードを搭載。効果量を調整できるほか、コントラストやシャープネス、彩度の微調整も可能。モノクロームは調色を選ぶこともできる

トーンコントロールはオート設定(弱と強の2種類)のほか、ハイライト側とシャドウ側を個別に調整することも可能

Fill Light機能は0.2ステップで±5.0まで調整が可能。ブラケット撮影にも対応している

Fill Light機能は0.2ステップで±5.0まで調整が可能。ブラケット撮影にも対応している

レンズ光学補正機能も搭載しており、歪曲、倍率色収差、回折、周辺光量の各補正に加えて、画像周辺部の色付きを補正するカラーシェーディング補正に対応しているのがうれしい。カラーシェーディング補正は手動での微調整が可能で、Lマウントレンズの場合は手動調整値がレンズごとにカメラ内に記録されるようになっている。さらに、手動調整値は計10種類登録しておけるので、マウントアダプターを使用して他マウントレンズを使用する場合でも最適な調整値を呼び出して使うことができる。

カラーシェーディング補正は、赤みと青みを0.2ステップで±1.0まで微調整が可能。調整した値は計10種類まで登録しておける

感度は常用設定でISO100〜25600に対応。オート感度設定も充実しており、感度の上限・下限を設定できるうえ、シャッタースピードの下限設定が可能。シャッタースピードの下限は「より高速」から「より低速」まで計5種類のオート設定に加えて、シャッタースピードの値を指定することもでき、使い勝手のよい機能となっている。さらに感度の拡張設定として、低感度側にISO6〜80(1/3段ステップもしくは1段ステップ)を追加できるのがユニーク。ISO6はISO100から約4段分低い値で、ほかのフルサイズミラーレスでは見られない設定。明るい状況でもNDフィルターを使わずに長時間露光を行えるのが便利だ。ただし、ISO6〜80はコンポジット合成になるため動く被写体を撮ると画像にズレが生じるので注意。コンポジット合成のため動画撮影には非対応で、連写やインターバル撮影、ブラケット撮影などにも利用できない。

オート感度設定ではシャッタースピードの下限を設定することができる

オート感度設定ではシャッタースピードの下限を設定することができる

感度拡張で「コンポジット低ISO拡張」を設定すると、コンポジット合成にはなるもののISO6〜80を利用できるようになる。なお、高感度側の拡張はISO32000〜102400に対応している

画質関連での注意点としては、完全電子シャッターでの動作になるため、ローリングシャッターによる動体歪みと、フリッカー光源下での縞模様現象の発生が避けられないこと。フラッシュの同調速度が1/30秒以下(14bit RAW時は1/15秒以下)なので、センサーのスキャン速度はフラッシュ同調と同じくらいか、速くても一般的なフルサイズCMOSセンサーと変わらない1/40〜1/50秒程度と予想できる。動体歪みはよく抑えられているので、高速で移動する被写体は別だが、スナップやポートレートで使用する分にはほぼ歪みを気にすることなく使用できるはずだ。

センサーをフルに使う3:2のほか、映画用のワイドスクリーンと同じ21:9や、ハイビジョンテレビと同じ16:9といったアスペクト比に対応。A判(※一般的なA判と同じ横縦比)、4:3、7:6、1:1といった設定も用意されている

ボディ内RAW現像にも対応している

ボディ内RAW現像にも対応している

屋内や暗いところでも高画質な撮影が可能

SIGMA fpは低感度から高感度まで安定した高画質が得られるカメラだ。以下のスナップ作例は晴天下の屋外から薄暗い屋内、夕景、夜景とさまざまな光の状況下で撮っているが、ホワイトバランスの精度が高く、どの作例もフルサイズミラーレスとして十二分のクオリティが得られている。特に夕景から夜景にかけての色再現は見事だ。

SIGMA fp、14-24mm F2.8 DG DN、14mm、ISO100、F11、1/160秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、13.0MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO100、F8、1/160秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、15.1MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO100、F2.8、1/8000秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、11.9MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO100、F2.8、1/500秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.52MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO125、F2.8、1/50秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、8.41MB)

SIGMA fp、35mm F1.2 DG DN、ISO100、F1.2、1/8000秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.17MB)

SIGMA fp、35mm F1.2 DG DN、ISO100、F1.2、1/80秒、ホワイトバランス:オート、カラーモード:サンセットレッド、JPEG
撮影写真(6000×4000、6.55MB)

SIGMA fp、14-24mm F2.8 DG DN、14mm、ISO400、F2.8、1/15秒、ホワイトバランス:晴れ、カラーモード:風景、JPEG
撮影写真(6000×4000、8.44MB)

SIGMA fp、14-24mm F2.8 DG DN、14mm、ISO3200、F4、1/20秒、ホワイトバランス:オート、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、13.5MB)

SIGMA fp、35mm F1.2 DG DN、ISO1000、F1.2、1/50秒、ホワイトバランス:オート(色残し)、カラーモード:スタンダード、JPEG
撮影写真(6000×4000、8.27MB)

ティールアンドオレンジは静止画撮影でも印象的な効果が得られる

ティールアンドオレンジは動画撮影向けのカラーモード設定だが、静止画撮影でもとても印象的な効果をもたらす。人物の肌色と、その補色となるシアン系の色を強調するような処理で、人物の存在が引き立つ感じになる。静止画撮影では特に男性のポートレートで使いたいカラーモードだと感じた。

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO320、F2.8、1/100秒、ホワイトバランス:晴れ、カラーモード:ティールアンドオレンジ、JPEG
撮影写真(6000×4000、8.70MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO500、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:晴れ、カラーモード:ティールアンドオレンジ+3、RAW(明るさとコントラストを調整してJPEGに出力)
撮影写真(6000×4000、21.4MB)

SIGMA fp、45mm F2.8 DG DN、ISO1600、F2.8、1/500秒、ホワイトバランス:晴れ、カラーモード:ティールアンドオレンジ、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.92MB)

HDR撮影にも対応。少々クセのある画像処理

SIGMA fpは、3枚のJEPG画像を撮影・合成するHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影にも対応。露出幅として「オート」「±1.0」「±2.0」「±3.0」が用意されている。輝度差のあるシーンで活用できる機能だが、HDR時は色がかなり濃くなる印象で、少々クセがあると感じた。

SIGMA fp、14-24mm F2.8 DG DN、14mm、ISO100、F14、1/40秒、ホワイトバランス:晴れ、カラーモード:スタンダード、HDR、JPEG
撮影写真(6000×4000、13.5MB)

充実した4K撮影機能を搭載。外部SSDへの12bit CinemaDNG記録に対応

SIGMA fpは静止画撮影だけでなく、動画撮影でも非常に充実した機能を実現している。

最大の注目点は、動画RAWデータ(CinemaDNGフォーマット)の記録に対応していることだろう。カメラ内のUHS-IIカードには8bit RAWでの4K UHD/24fps記録(ビットレート1600Mbps)、外部SSDには12bit RAWでの4K UHD/24fps記録(ビットレート2400Mbps)が可能だ。12bit RAWでのダイナミックレンジは12.5ストップに達するとのこと。なお、外部SSDには10bit RAWでの4K UHD/30fps記録(ビットレート2500Mbps)も可能となっている。

外部SSDの使用方法は簡単で、動作確認の取れているSSD(現時点ではサムスン「T5」の1TB/2TBモデル)をUSB Type-C(USB 3.1 Gen1)端子に接続してメディアを初期化すればよい。その後は接続時に自動的に外部ストレージとして認識し、動画だけでなく静止画のデータも記録できるようになる。試しにUSB 3.1 Gen2対応で動作確認外のポータブルSSDをいくつか使用してみたが、録画が途中で中断するものもあったので、本格的に12bit CinemaDNGで撮影するなら動作確認済のSSDを使用したほうがいいだろう。

CinemaDNGフォーマットでのRAW記録は、外部SSD接続時に12bit 4K UHD/24fps記録、10bit/8bit 4K UHD/30fpsが可能。カメラ内のUHS-IIカードには8bit 4K UHD/24fpsで記録できる。なお、現時点ではCinemaDNGデータのカメラ内再生には非対応。今後のフォームウェアアップデートでの対応となっている

動画撮影モードのユーザーインターフェイスは、一般的なシネマカメラに準じたスタイルになっている。ライブビュー画面にはタイムコードなどの情報が表示されるようになり、ダイヤルによる露出操作は基本的に禁止となる(※絞りリングのあるレンズは別)。絞り値やシャッタースピードの調整はメニュー画面の「露出設定」、もしくはQSメニュー上で行う仕様だ。ダイヤル操作で露出を調整したい場合は、メニュー画面の「ダイヤル露出操作」を「入」にするか、「撮影スタイル」を静止画撮影と同じ操作になる「STILL ライク」に変更すればよい。ただし、STILL ライクにすると、シネマカメラの画角や見え方をシミュレーションできる機能「ディレクターズビューファインダー」は設定できなくなる。

画質調整はカラーモードとトーンコントロールの利用が可能。CinemaDNG記録時にカラーシェーディング補正の利用はできないがレンズ光学補正も有効だ。フォーカスピーキングやMF拡大表示などMF関連の機能も利用できる。露出情報の波形表示や、白飛びしそうなエリアを縞模様で表示するゼブラパターン、異なる比率のフレームをモニターに表示するフレームガイドといった、シネマカメラを意識した表示機能も備わっている。

メニュー画面の露出設定では、撮影モード、シャッタースピード、絞り値、露出補正などの設定が可能。撮影モードは静止画撮影と同様、P/A/S/Mに対応している。カメラ内の「シャッタースピード」の表記を「シャッターアングル(シネマカメラで用いられている露光時間の単位)」に変更するシャッターモードという設定も用意されている

動画撮影モードでは、撮影スタイルとして、シネマカメラに準じた「CINE」と、静止画撮影と同じ操作と表示になる「STILLライク」を選べる

輝度レベルモニターは波形とヒストグラムから表示方法を選択できる。それぞれ2通りの表示サイズ(標準と大)が用意されている

ゼブラパターンは、任意の輝度値を基準にして、その基準値以上の範囲を示す「ハイライト」と、任意のパーセンテージの範囲を示す「輝度レベル」を選べる

1.33:1、1.85:1、2.39:1のフレームガイドの表示が可能。複数のフレームを同時に表示することもできる

1.33:1、1.85:1、2.39:1のフレームガイドの表示が可能。複数のフレームを同時に表示することもできる

SIGMA fpは非常に充実した動画撮影機能を持っているが、決して「気軽にキレイな動画が撮れるカメラ」ではないので、その点は注意してほしい。購入前に知っておいてほしいのは、動画撮影時の常時AFは実用的なレベルではないので、ピント合わせはMFが前提になるということ。常時AFの動作は動画用としてカスタマイズされているようで、ゆっくりとした動きになっているのはいいのだが、ピントが合わずにウォブリングが発生することも多い。瞳優先AFの利用も可能だが、静止画撮影のC-AFと同様、常時AFで使うのは厳しい。動画撮影時のピント合わせは最初からMFで行うか、狙ったところを1点AFで合わせてその後にMFで追い込むといった使い方になるだろう。

なお、SIGMA fpではAF合焦後の半押し状態でMF操作が行えるAF+MFの設定が用意されているが、特に動画撮影時に便利なフルタイムMFについてはレンズ側の対応になるので注意。AF設定中のMF操作や、MF設定中に一時的なAF動作が行えるかどうかはレンズ側の機構によるので、こうした操作を行いたいのならレンズ購入前にメーカーに確認しておくといいだろう。ちなみに、レンズキット付属の45mm F2.8 DG DNはフルタイムMFに非対応となっている。

さらに、SIGMA fpはバッテリーの持続性がそれほど高くなく、外部SSDを用いて動画撮影を行うなら、別売のDCコネクタ「CN-21」を使ってAC電源や外部電源を使用する必要がある。細かいところでは、動画撮影時の電子手ブレ補正はMOV記録時のみになる点も購入前に知っておいてほしい点だ。

上の動画は、4K UHD/24fpsの12bit RAW動画データから明るさやコントラスト、色、シャープネスを調整して出力したもの。編集にはブラックマジックデザインの「DaVinci Resolve 16」を使用している。レンズは14-24mm F2.8 DG DNを使用した。設定は絞り値がF4、シャッタースピードが1/25秒、感度がISO400。日没後の北西方面をアンダー目に撮影して、DaVinci Resolve 16で大幅な調整を行ったが、気になるようなノイズやバンディングはほとんど発生していない。なお、製品ページなどには書かれていないがSIGMA fpは4K動画をフルフレームで記録できるようだ。

上に掲載した4K UHD/24fps動画の未編集の状態(左)、編集後の状態(右)をキャプチャーしたもの。明るさや色を大きく変えていることがわかるだろう

まとめ スチール用とムービー用のどちらでも活用できる超コンパクトなフルサイズミラーレス

以上、2回に分けてSIGMA fpの特徴をレビューした。静止画撮影としてだけでなく動画撮影でも充実した機能を搭載しており、スチール用としてもムービー用としても使える、使い方の幅が広いカメラだ。Lマウントを採用しており、ライカやパナソニックを含めた他社のLマウントレンズを使用できるのも魅力である。

スチール用としては外付けEVFに非対応で、AF性能がほかの最新フルサイズミラーレスほどではないものの、やはり手のひらサイズの超コンパクトボディに強い魅力を感じる。小型・軽量で持ち運びやすく、スナップ撮影でとても使いやすいカメラだ。スナップ撮影でのベストマッチレンズはレンズキット付属の45mm F2.8 DG DNだと思う。開放F2.8とそれほど明るいわけではないがボケの質がよく、AFも静かでスピーディーだ。

ムービー用としては、シネマカメラを意識しているもののCimema4K(4096×2160)記録やLog撮影に非対応で、外部ヘッドホン端子がない点なども気になったが、12bit RAW(CinemaDNG)記録に対応しているのが特徴。実質MFでの撮影になるため使いこなしが難しいところがあるが、動画RAWデータでの本格的な撮影・編集にチャレンジできるのが魅力だ。

画質については、画像処理でFoveonセンサーに寄せずに、ベイヤーセンサーとしての高画質を実現している点がすばらしい。Foveonセンサーでしか得られない色表現に惹かれてシグマのカメラを使っているという方にとってはもの足りないところがあるかもしれないが、静止画でも動画でも安定した高画質が得られるようになっている。

なお、画像と映像のハイブリッドなGIFアニメーション「Cinemagraph(シネマグラフ)」が生成できる機能や、動画撮影モード中のHDR撮影、CinemaDNGデータのカメラ内再生、ディレクターズビューファインダー使用中の動画記録・再生機能などはファームウェアアップデートで実装される予定。まだ完成形ではないカメラなので、今後のファームウェアアップデートの内容にも注目していきたい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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