ドローンは空撮やレース、農薬散布に設備点検、測量、配送、警備、遭難者の捜索など、幅広い分野で活用が進んでいます。また、近年では、ホビーとしてドローンを楽しむ人も増えており、特に空撮に使う“空飛ぶカメラ”として人気を集めています。
本記事では、そんな空撮ドローンの選び方のポイント、そして価格.comのランキングと独自の調査に基づいて厳選した人気&ハイコストパフォーマンス製品をご紹介します。
趣味や空撮で使用する市販のドローンを選ぶ際に、まず気を付けるべき点は、1にも2にも安全性です。とは言え、近年の機体は技術革新により安定性、そして安心して飛ばせる性能が充実してきました。たとえば、ここ数年間に販売されたドローンには、「リターン・トゥ・ホーム(離陸地点に自動で戻る)」機能が搭載されており、操縦者がドローンを見失ったり、電波が途切れてしまったりしてドローンが暴走するのを防ぐ仕組みになっています。
このようにドローンの安全性と使いやすさが大きく向上していることを前提とするなら、ほかにどのような基準でドローンを選べばよいでしょうか?
ここからはドローンを購入する際にチェックするべき3大ポイントをご紹介します。
1:サイズと重量
2:飛行時間(バッテリー駆動時間)
3:カメラ性能
一般に、ドローンのサイズと重量が大きいほど安定した飛行が可能になり、大型で画質のいいカメラを搭載できます。しかし、その分持ち運びは困難になり、価格も高くなります。ここはトレードオフの関係であるため、自分の用途にあったサイズと価格のバランスを考慮して選ぶようにしましょう。
また、重量200g未満のドローンは、航空法の規制対象外となりますが、200g以上の場合は航空法により厳しい規制の対象になります。重量によって、飛行に関わる規制が異なる点にも注意が必要です。
飛行時間は使い勝手に大きく影響する部分のため、可能な限り長時間飛ばせるモデルを選ぶのが正攻法です。しかし、DJIの「Mavic Mini」のように、あえてバッテリー駆動時間を犠牲にすることで軽量化をはかり、航空法の規制対象から外れて柔軟な運用を可能にした機体も存在します。
一般的なデジカメと同様に、空撮用ドローンのカメラもセンサーサイズが大きく、画素数の多いモデルがハイエンドモデルとなります。それに加えて、飛行しながら安定した撮影をするには、カメラの揺れやブレを軽減する「ジンバル」というパーツが不可欠です。ジンバルは、飛行中にカメラの向きを変えるためにも使用するため、撮影の自由度にも影響を与えます。
このようにジンバルを搭載するか否かで写真や動画のクオリティ(滑らかさ、安定性、撮影の自由度)が大きくアップしますが、同時に値段も上がるため、選択時の重要なポイントとなります。
ホビー用と割り切って画質より手頃な価格を重視するならジンバルなし、動画の画質にこだわりたい人や、仕事としてドローンを活用していきたい場合はジンバルを搭載するモデルを選びましょう。
ドローンには、5,000円前後で買えるトイドローンから、200万円超の業務用ドローンまで、用途に応じて価格の差が非常に大きくなっています。本稿では、個人でも手が出しやすい1万〜20万円で購入できる製品の中から、カジュアルな空撮ができるドローンや、映画のような空撮ができる本格派モデルまで7機種をピックアップしました。
◆Ryze Tech「Tello」の基本スペック
・発売時期:2018年2月
・サイズ:98(幅)×92.5(奥行き)×41(高さ)mm
・公称重量:約80g
・飛行時間:約13分
・カメラ:センサーサイズ非公開(画素数は500万画素)
・動画:HD(1280×720、H264)
・写真:2592×1936(JPEG)
・ジンバル:非搭載(電子式ブレ補正機能あり)
Ryze Tech「Tello」は、手のひらサイズのコンパクトさと、重量約80gの軽さが魅力のドローンです。無料の専用アプリから離陸と着陸が自動で行え、ドローンがとらえた映像をスマホでリアルタイムで確認しながら空撮が楽しめます。
また、標準モデルでもプロペラガードが付属するため室内での飛行にも向いています。いっぽうで、機体が小さく、モーターの出力が弱いという弱点があり、屋外で飛ばす際には風の影響を受けやすくなります。
ジンバルは非搭載。動画の画質はHD(1280×720)。飛行時間も約13分と、本格的なドローンと比べると見劣りする点はありますが、1万円代という価格を考えるなら十分納得できるスペックです。入門機として低価格なドローンを探しているビギナーの人は、真っ先にチェックする価値があるでしょう。
◆ G-FORCE「SKYHIGH GB030」の基本スペック
・発売時期:2019年11月
・サイズ:218(幅)×180(奥行き)×58(高さ)mm
・公称重量:約185g
・飛行時間:約18分
・カメラ:センサーサイズ非公開(829万画素)
・動画:2K(2048×1152、H264)
・写真:3840×2160(JPEG)
・ジンバル:非搭載(下方向へのチルトは可能)
上下にチルト可能な800万画素のカメラを備え、2K(2048×1152)の動画撮影に対応するドローンがG-FORCE「SKYHIGH GB030」です。光学式センサーを備えることで姿勢制御を自動で行うほか、気圧センサーを利用した高度維持機能も備えており、飛行中でも撮影に集中できる仕様です。
スマートフォンと接続して使える専用のプロポ(コントローラー)が付属。本格的なドローンに近い感覚で操作ができます。折りたたみ可能なコンパクト設計で、付属の専用セミハードケースを使えば持ち運びも快適です。
フライト可能時間やカメラの画質は値段相応ですが、1万円代後半という手頃な価格を考えるならコスパは十分高いと言えるでしょう。入門機であっても写真や動画は少しでもいい画質で撮りたい、という人はこのモデルをチェックしてみてください。
◆ DJI「Mavic Mini」の基本スペック
・発売時期:2019年11月
・サイズ:290(幅)×245(奥行き)×55(高さ)mm
・公称重量:約199g
・飛行時間:約18分
・カメラ:1/2.3インチセンサー(1200万画素)
・動画:2.7K(2720×1530、25/30FPS、H.264)
・写真:最大4000×3000(JPEG)
・ジンバル:搭載(3軸)
DJI「Mavic Mini」は、3万円台後半で驚くほどキレイな映像が撮影できるエントリー価格帯では最強の空撮ドローンです。先にご紹介した1万円代のモデルと決定的に異なる点は3軸のジンバルを搭載していることで、これにより揺れやブレの少ないスムーズな映像が撮影できます。また、飛行中でもカメラの方向を変えられるので撮影の自由度も広がります。
操作は専用コントローラーにスマートフォンを接続して行いますが、無料のアプリからはダイナミックなコマ送り撮影の「ハイパーラプス」や、ドローンをプリセットの軌道に沿って飛ばしながら撮影する機能を備えており、操作に慣れていなくてもタップ操作だけでクリエイティブな映像が撮影できます。アンダー5万円の予算であれば、これを買っておけば間違いなしという1台です。
◆ Parrot「ANAFI」の基本スペック
・発売時期:2018年8月
・サイズ:240(幅)×175(奥行き)×65(高さ)mm
・公称重量:約320g
・飛行時間:約25分
・カメラ:1/2.4センサー(2100万画素)
・写真:5344×4016(JPEG、DNG)
・動画:4K(4096×2160/24FPS、H264)
・ジンバル:搭載(3軸、上方向へのチルト可能)
民生用ドローンの市場は中国、深センを拠点とするDJI社の1強時代が長く、そのマーケットシェアは一説には8割と言われるほどです。そんな中で、気を吐く個性派ドローンメーカーがフランスのParrotです。
今回ピックアップしたモデル「ANAFI」は、カメラを真上に向けて撮影可能な点が最大の特徴で、スノーボードやバイクのジャンプなどを真下から撮影できるなど、ほかのドローンでは難しい映像を撮影できます。
万人向けではないかもしれませんが、真上にカメラが向けられるドローンは筆者が知る限りオンリーワンの存在なので、人と違った空撮にチャレンジしてみたい人には魅力的なモデルです。
◆ DJI「Mavic 2 Pro」の基本スペック
(本文)
・発売時期:2018年8月
・サイズ:322(幅)×242(奥行き)×84(高さ)mm
・公称重量:約907g
・飛行時間:約31分
・カメラ:1インチセンサー(2000万画素)
・動画:4K(3840×2160、24/25/30FPS、H264/H265)
・写真:5472×3648(JPEG/DNG)
・ジンバル:搭載(3軸)
「Mavic 2 Pro」は、空の絶対王者DJI軍団における中量級最強のドローンです。アームを折りたたむことでカバンにすっぽり入るコンパクトサイズながらも、31分の長時間飛行が可能。登山などのアウトドアや旅行の際にドローンを利用するのにうってつけです。
カメラは1インチセンサーを採用しているため、夕陽や朝日などの明暗の差が大きい風景などの撮影時に黒つぶれや白飛びの少ない映像や写真が撮影できます。なお、これより大きいセンサーサイズのカメラが積めるドローンとなると「Inspire 2」などの40万円近いプロモデルになってしまうため、趣味からライトな仕事用に使えるモデルとしては「Mavic 2 Pro」が“ほぼ最上位”のカメラを搭載したドローンであると言っても差し支えありません。
高画質な写真や映像が撮影できて、持ち運びもしやすいドローンを探しているならコレ一択です。
また、サードパーティー製のアクセサリーも豊富で、1例としてシャッタースピードを調節することで滑らかなシネマ調の動画撮影を可能にするNDフィルターなども発売されています。
◆ DJI「Mavic 2 ZOOM」の基本スペック
・発売時期:2018年8月
・サイズ:322(幅)×242(奥行き)×84(高さ)mm
・公称重量:約905g
・飛行時間:約31分
・カメラ:1/2.3インチセンサー(1200万画素)
・動画:4K(3840×2160、24/25/30FPS、H264/H265)
・写真:4000×3000(JPEG/DNG)
・ジンバル:搭載(3軸)
DJI「Mavic 2 ZOOM」は、前述の「Mavic 2 Pro」の兄弟モデルに当たります。光学4倍ズームに対応したカメラを搭載しているのが特徴で、スポーツや動物、車など接近が難しいターゲットに迫る撮影を行いたい場合に強みを発揮します。
いっぽう、センサーが1/2.3インチの1200万画素と、「Mavic 2 Pro」より小さく低画素になるため、風景の撮影や明暗の差が激しい場所での撮影にはやや不向きです。
「Mavic 2 ZOOM」と「Mavic 2 Pro」のどちらもベースとなる機体は同じで、カメラの仕様が異なるだけなので、センサーサイズ重視かズームレンズ重視かで選ぶようにしましょう。
◆ DJI「Phantom 4 Pro V2.0」の基本スペック
(本文)
・発売時期:2018年5月
・サイズ:289.5(幅)×289.5(奥行き)×196(高さ)mm
・公称重量:約1375g
・飛行時間:約30分
・カメラ:1インチセンサー(2000万画素)
・動画:4K(4096×2160、24/25/30FPS、H265)
・写真:5472×3648(JPEG/DNG)
・ジンバル:搭載(3軸)
2013年に初代「Phantom」が登場してから進化を遂げ、ついに1インチセンサー搭載、4K/60FPS撮影を実現した強力な空撮ドローンです。「Mavic 2 Pro/ZOOM」の動画撮影性能が4K/30FPSまでなのに対して、「Phantom 4 Pro V2.0」は60FPSの高速なフレームレートで撮影ができるため、スポーツシーンや車など動きが速いものを撮影するのにピッタリです。
本体は折りたたむことができないため運搬時にかさばりますが、多少の風にはびくともしないパワーを備えており、飛行時の安定性はピカイチ。ほかのドローンでは風に流されてしまう状況でも、「Phantom 4 Pro V2.0」はピタリと空中に静止して全く揺れのない映像を撮影可能です。期待の安定性においては、非常に高い信頼度を備えます。
決して手頃な値段ではありませんが、映像制作の仕事にも対応できる空撮用ドローンを探している人は、検討するべき1台です。
技術の進歩により飛行の安定性が向上しているとは言え、ドローンを飛行させる行為において、墜落や衝突のリスクをゼロにすることはできません。事故を未然に防ぎ、迷惑行為や無用なトラブルを避けるためにも、法律を守り、マナーと思いやりを持ってドローンを使用するようにしましょう。
ここではザックリとドローンに関連する法律やルールに関する情報を記載しますので、飛行前に内容をチェックしてみてください。また、これらの法律やルールは変更になる場合があり、地域や場所によって状況が異なる場合もありますので、ドローンを使用する場合は必ずご自身の責任で最新の情報を確認し、安全な飛行をするよう心がけてくださいね。
ドローンを使用する際に、主に関わるのは以下の法律と条例です。
【1:航空法】
200g以上の無人機を対象にした法律。空港周辺、150m以上の上空、人家の集中地域などの未許可での飛行を禁止しています。また、夜間飛行、目視外の飛行、イベント上空での飛行、危険物の輸送などに関しても制約が設けられています。罰則として「無人航空機の飛行等に関する罪」が定められており、これに該当した場合には50万円以下の罰金に処されます。
【2:小型無人機等の飛行禁止法】
国会議事堂、内閣総理大臣官邸、外国公館、原子力事業所の周辺地域、防衛大臣が指定した防衛関係施設などが飛行禁止空域として定められています。これは機体重量に関わらず全てのドローンが対象となります。
【3:道路交通法】
ドローンを道路上や路肩から離着陸させる場合、「道路において工事若しくは作業をしようとする」ことにあたるため、「道路使用許可申請書(申請料2,100円」を管轄の警察署に提出し、許可証を取得する必要が生じます。
【4:民法】
民法においては「土地所有権の範囲」が「その上下に及ぶ」とされているため、私有地の上空にも所有者の権利が及ぶと考えられます。また、無許可で自分の土地の上を飛行された場合「プライバシーを侵害された」ととらえられる場合もあるため、注意が必要です。原則、他人の私有地の上を飛行する場合は事前に許可を得る必要があると考えてください。なお、私有地とは電鉄駅、線路、山林、神社仏閣などの宗教施設や古墳が含まれます。
【5:電波法】
この記事で紹介しているドローンは全て日本における技適(技術基準適合証明等)をクリアしている製品です。しかし、インターネット通販などで販売されている並行輸入品などには電波法に適合していないモデルなども散見されるため注意が必要です。
【6:都道府県、市町村条例】
日本国内全てに適応される上記の法律とは別に、都道府県や市町村単位でドローンの利用を制限、もしくは規制する条例も存在します。内容は各地により異なりますが、参考例としては下記のようなものがあります。
都立公園もドローン使用禁止 都、81カ所に通知 - 日本経済新聞
また、これらに加えて、飛行場所により上記のほかに河川法、港則法、港湾法、自然公園法が関わる場合があり、これらのケースでは個別に施設やエリアの管理者に確認をとる必要があります。また、大きなイベントの際には特別にドローンの利用が制限される場合があり、代表的なものでは「ラグビー特措法」「オリパラ特措法」などがあげられます。
1万円台前半から20万円超の機体まで、幅広い選択肢がそろったドローンの中からどれを選べばよいのか? 記事のまとめとして、もう一度ポイントをチェックしてみましょう。
カメラの画質にこだわらず、ジンバルがなくてもかまわないという場合は、手頃な価格のRyze Tech「Tello」やG-FORCE「SKYHIGH GB030」が魅力的です。また、もう少し予算に余裕がある場合は、ジンバルを搭載したDJI「Mavic Mini」を購入すれば、画質をグンとアップできます。
10万円台ではDJIの「Mavic 2」シリーズが持ち運びやすさとカメラ性能のバランスがよく、高品質の動画撮影ができるハイ・コストパフォーマンスモデルです。また、より高い飛行安定性や高フレームレートでの4K動画を撮影したい場合はDJI「Phantom 4 Pro V2.0」も要チェックです。
ドローンを飛ばす目的も、空撮に求めるクオリティも人それぞれですが、「とりあえず、どれを買えばいいの?」と言われれば……DJIの「Mavic Mini」か「Mavic 2 Pro」が“テッパン”のチョイスになるはず。ぜひ、この記事を参考にして、ドローン空撮にチャレンジしてみてください!
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