ソニーはこの春、Eマウントレンズの新製品を数多くリリースしているが、今回は、その中から2021年3月12日に発売になった「FE 35mm F1.4 GM(SEL35F14GM)」を取り上げる。この春発売の新しい交換レンズの中でも特にユーザー評価の高い製品で、その写りのよさが話題となっている。
高画素フルサイズミラーレスカメラ「α7R IV」にFE 35mm F1.4 GMを装着したイメージ
FE 35mm F1.4 GMの主な特徴
・フルサイズ対応の大口径・広角レンズ(焦点距離35mm/絞り開放F1.4)
・XAレンズ2枚/EDガラス1枚を含む10群14枚のレンズ構成
・「Gマスター」ならではの高い解像力とやわらかく自然なボケ
・AF時で最短撮影距離0.27m(最大撮影倍率0.23倍)
・最先端のレンズコーティング技術「ナノARコーティング II」
・11枚円形絞り
・高速・高精度・静粛なAF駆動を実現するXDリニアモーター(2基)
・フォーカスホールドボタン、クリック切り替えスイッチ、リニア・レスポンスMFなどすぐれた操作性
・レンズ最前面にフッ素コーティングを採用
・防塵防滴に配慮した設計
・フィルター径67mm
・76(最大径)×96(長さ)mm/重量524gの小型・軽量設計
FE 35mm F1.4 GMは、ソニー純正のEマウントレンズの中で最もグレードの高い「Gマスター」シリーズに属する、フルサイズ対応で焦点距離35mm/絞り開放F1.4の大口径・広角レンズ。最新の光学設計と高い設計基準をもとに性能を徹底追求するGマスターの名にふさわしい、高性能・高画質なレンズだ。
最大の特徴は、最新の設計技術によって、Gマスターらしいすぐれた光学性能と小型・軽量を両立したこと。超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズ2枚とED(特殊低分散)ガラス1枚を用いた10群14枚の贅沢なレンズ構成を採用しながらも、76(最大径)×96(長さ)mmで重量524gという、スペック(焦点距離35mm/絞り開放F1.4)からするとコンパクトな鏡筒に収まっている。
ソニー純正のEマウントレンズでは、同じスペックのレンズとしてカールツァイスブランドの「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA(SEL35F14Z)」も用意されているが、比較すると、FE 35mm F1.4 GMは最大径が2.5mm、全長が16mm短く、重量も106g軽い。全長はそれなりにあるものの、35mm/開放F1.4のフルサイズ対応AFレンズとしてはとても軽量だ。
しかもFE 35mm F1.4 GMは、このコンパクトな鏡筒に高性能なXDリニアモーターを2基搭載。大口径レンズながら高速・高精度で静粛なAF駆動を実現しており、静止画・動画を問わず、被写体を正確に捉えて撮影することができるという。
左がFE 35mm F1.4 GMで、右がDistagon T* FE 35mm F1.4 ZA。FE 35mm F1.4 GMのサイズは76(最大径)×96(長さ)mmで重量は524g。Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAのサイズは78.5(最大径)×112(長さ)mmで重量は630g。FE 35mm F1.4 GMのほうが短くて軽い鏡筒になっている
フォーカシングによる全長変化がなく、前玉も回転しないインナーフォーカスを採用。MFの操作感にもこだわっており、フォーカスリングの操作に対してレスポンスよく反応する「リニア・レスポンスMF」を採用している。フィルター径は「FE 24mm F1.4 GM」と同じ67mm
鏡筒の左手側に、任意の機能を割り当てられるフォーカスホールドボタンを搭載。フォーカスモードスイッチも左手側に配置している
右手側には絞りリングのクリックの有無を切り替えられるスイッチが備わっている
専用のフード「ALC-SH164」が付属する
※以下に掲載する作例は、α7R IVにFE 35mm F1.4 GMを組み合わせて撮影しています。すべてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。
※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F1.4、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、29.8MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F1.4、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:雰囲気優先)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:切、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、27.1MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:切、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、38.1MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F1.4、1/5000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、32.0MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F8、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:切、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、42.3MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F1.4、1/8000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:切、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、46.5MB)
α7R IV、FE 35mm F1.4 GM、F11、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(優先設定:標準)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:切、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(9504×6336、34.4MB)
Gマスターはどのレンズも光学性能にすぐれ、絞り開放から高画質なのが特徴。FE 35mm F1.4 GMもその特徴をしっかりと押さえており、焦点距離35mmの大口径レンズとしてはコンパクトな鏡筒ながら、開放から解像力が高く、抜けのよい描写を実現している。
α7R IVの有効約6100万画素という高画素センサーは、生半可な性能のレンズでは描写に粗が出てしまうが、FE 35mm F1.4 GMはそういったことはない。絞り開放でも気になるような色収差はほぼ見られず、ピント面はとてもシャープ。高画素センサーを生かすことができる解像性能と言えよう。かつ、ざわつくような感じが少なく、自然な感じでボケてくれるのも魅力。高い解像力と自然なボケを両立しており、積極的に絞りを開けて撮りたくなるレンズだ。さらに、逆光に強いのも押さえておきたい特徴で、太陽など強い光源を画面に入れても気になるようなゴースト・フレアは発生しにくい。
さすがに絞り開放付近では、カメラボディの周辺光量補正を使っても周辺の光量落ちがやや目立つことがあるものの、画質ではこれといった欠点は見当たらない。サイズを考慮すると本当によく写るレンズだと思う。
AFについては、AF-Sのワンショットで試した限りではキビキビとした動作で、ストレスなく使うことができた。XDリニアモーターは駆動力が非常に高く、静止画撮影では狙ったところに一気にピントを合わせてくれる印象。フォーカスの移動量が大きいときにわずかに動作音が出るのが気になったが、高速かつ静粛なAFを実現している。なお、フォーカスブリージングについてはそれなりに発生するので、特に動画撮影で使用する場合は気になることがあるかもしれない。
同じスペック(焦点距離35mm/絞り開放F1.4)の2つのレンズ、FE 35mm F1.4 GM(SEL35F14GM)とDistagon T* FE 35mm F1.4 ZA(SEL35F14Z)を使って、夜景を絞り開放で撮り比べた結果を参考までに紹介しよう。使用したカメラボディはα7R IVで、レンズ補正機能(周辺光量補正、倍率色収差補正、歪曲収差補正)はすべてオートにした。
白枠の部分が以下に掲載する切り出し部。ピントは中央の建物に合わせた。撮影設定はF1.4、ISO100、1/8秒、WB:5000K、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート
FE 35mm F1.4 GMの撮影写真(38.0MB)
Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAの撮影写真(37.2MB)
このテストではFE 35mm F1.4 GMのほうが全体的に解像感が高い結果になった。FE 35mm F1.4 GMは周辺でも像が流れる感じが少なく、画面全域でシャープな画質が得られている。なお、カメラボディ側の倍率色収差補正をオフにすると、FE 35mm F1.4 GMでは周辺部でごくわずかに色収差が残るいっぽうで、Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAでは目立つ色収差が発生した。
白枠の部分が以下に掲載する切り出し部。ピントは白枠1の部分に合わせた。撮影設定はF1.4、ISO100、1/5秒、WB:4000K、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート
FE 35mm F1.4 GMの撮影写真(26.0MB)
Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAの撮影写真(26.2MB)
両レンズとも大口径レンズらしい大きな背景ボケが得られているが、ボケの輪郭の描写が異なっている。FE 35mm F1.4 GMは輪郭の色付きが少なく、すっきりとした感じだ。年輪ボケもFE 35mm F1.4 GMのほうが抑えられている。なお、同じ被写体距離で撮影すると、ボケの大きさ自体はDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAのほうがわずかに上回るようだ。
FE 35mm F1.4 GMは実際に購入したユーザーからの評価がとても高いレンズだ。価格.comユーザーレビューを見ると、2021年3月31日時点での満足度のポイントは5点満点中5点で、「α7R IVでも満足のいく見事な解像性能」「腕が上がったと錯覚させてくれる神レンズ」といったように、写りのよさを絶賛する書き込みが多く見られる。今回試してみても、その高評価に値する、すばらしいレンズだと実感した。サイズ感を考慮すると「これ以上の35mmレンズはなかなかない」と思える高性能レンズなのは間違いない。特にα7R IVユーザーにとっては、カメラボディの解像力を生かせるレンズとして押さえておきたい1本だ。
同じスペックのDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAとの写りの違いは、Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAはコントラストが高く、独特の色乗りが得られるのが特徴。比べるとFE 35mm F1.4 GMは絞り開放からシャープで、ボケも自然。より現代的な写りをするレンズという印象を受けた。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。