新しいミラーレスカメラ「OM SYSTEM OM-1」(以下、OM-1)が話題を集めている、OMデジタルソリューションズから、小型・軽量と高画質を両立した開放F4通しの望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」が2022年3月25日に発売になる。標準ズームレンズ並みのコンパクトな鏡筒に高い光学性能を搭載する、注目の1本だ。本記事では、このレンズの画質をいち早くレビュー。「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」との画質比較も参考までに掲載する。
開放F4通しの望遠ズームレンズとして圧倒的な小型・軽量化を実現した「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」(カメラボディは「OM-1」)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」の主な特徴
・マイクロフォーサーズシステム規格の望遠ズームレンズ
・焦点距離:40〜150mm(35mm判換算80〜300mm相当)
・開放絞り値:F4(ズーム全域)
・F値固定で35mm判換算300mm相当対応の望遠ズームレンズとして世界最小・最軽量(2022年3月13日現在)
・サイズ:68.9(最大径)×99.4(全長)mm
・重量:382g(レンズキャップ、リアキャップ、フードを除く)
・フィルター径:62mm
・沈胴機構とインナーズーム方式の組み合わせ
・ズーム全域で高解像を実現する9群15枚のレンズ構成
・最短撮影距離0.7m(ズーム全域)、最大撮影倍率0.41倍(望遠端、35mm判換算)
・絞り羽根枚数:7枚(円形絞り)
・ゴーストやフレアの発生を抑制する「ZEROコーティング」
・防塵防滴(IP53)-10℃耐低温、フッ素コーティング
・価格.com最安価格114,840円(税込、2022年3月13日現在)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」は、高性能な「M.ZUIKO PRO」シリーズに属する、マイクロフォーサーズシステム規格の新しい望遠ズームレンズ。最大の特徴は、35mm判換算で焦点距離80〜300mm相当の画角をカバーしながら、レンズ収納時のサイズが68.9(最大径)×99.4(全長)mmで、重量が382gという小型・軽量な鏡筒を実現したこと。2022年3月13日時点では、F値固定で35mm判換算300mm相当の画角に対応する望遠ズームレンズとして世界最小・最軽量となっている。
そのサイズ感を「M.ZUIKO PRO」シリーズの中で比較すると、本レンズの上位モデルに位置付けられる、開放F2.8通しの望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」よりもひと回り以上小さくて軽い。さらに、標準ズームレンズのリニューアルモデル「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」と比べても、ほぼ同じ最大径で同じ重量(382g)なのが驚かされる。レンズ収納時は「標準ズーム並みのサイズ感」と言っても決して言い過ぎではなく、本当に小さくて軽い望遠ズームレンズに仕上がっている。
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」
68.9(最大径)×99.4(全長)mm/382g
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」
69.9(最大径)×84(レンズ収納時の全長)mm/382g
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」
79.4(最大径)×160(全長)mm/760g(三脚座除く)、880g(三脚座含む)
左から「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」。新レンズの2本は、鏡筒のブランドロゴが「OM SYSTEM」になっている
沈胴機構を採用し、使用時(レンズを繰り出した状態)の全長は約124mm。インナーズーム方式なのでズーミングによる全長の変化はない。なお、小型・軽量化を優先したこともあって、L-FnボタンやMFクラッチ機構などの操作性は省略されている
高性能な「M.ZUIKO PRO」シリーズらしく画質にもこだわっており、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の基本的な構成を継承した、9群15枚(HRレンズ1枚、スーパーEDレンズ1枚、EDレンズ2枚、非球面レンズ2枚)の光学設計を採用。小型・軽量ながらズーム全域かつ画面全体で、絞り開放から高い解像力を発揮するという。最短撮影距離は、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」と同様、ズーム全域で0.7m。最大撮影倍率は0.41倍(望遠端、35mm判換算)だ。
付属のレンズフード「LH-66E」を装着したイメージ
新レンズでは、レンズキャップ/リアキャップのブランドロゴも「OM SYSTEM」になっている
以下に掲載する作例は、「OM-1」に「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」を組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になる。
※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、150mm(35mm判換算300mm相当)、F7.1、1/250秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(3888×5184、11.3MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、40mm(35mm判換算80mm相当)、F8、1/50秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、13.0MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、81mm(35mm判換算162mm相当)、F4、1/400秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、8.4MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、150mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/200秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(3888×5184、11.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、72mm(35mm判換算144mm相当)、F4、1/320秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、8.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、40mm(35mm判換算80mm相当)、F6.3、1/200秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、13.2MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、40mm(35mm判換算80mm相当)、F14、1/13秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、13.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、72mm(35mm判換算144mm相当)、F8、1/160秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(3888×5184、13.6MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、150mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/160秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(3888×5184、11.3MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO、40mm(35mm判換算80mm相当)、F8、1/80秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オン、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(3888×5184、14.1MB)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」は、とにかく小さくて軽い望遠ズームレンズだ。カメラに装着して持ち歩いていると、望遠ズームレンズで撮影していることを忘れるくらいのサイズ感となっている。
画質は、小型・軽量な鏡筒からは想像できないくらい、ズーム全域で高い解像力を発揮する。画像の中央だけでなく周辺までしっかりと描写してくれるのが高ポイント。望遠ズームレンズとしてはボケの輪郭の色付きも比較的よく抑えられており、「M.ZUIKO PRO」シリーズらしい上質な写りを楽しむことができる。画質面で気になったのは周辺光量落ちで、特に絞り開放付近だと減光がやや目立つようだ。自然な落ち方ではあるが、気になるようならカメラ側のシェーディング補正をオンにして使いたいところ。
また、「OM-1」との組み合わせではAFのレスポンスがよく、快適なAF撮影が行えたことも報告しておきたい。フォーカスリングの操作感もよく、近接での緻密なピント合わせもやりやすいと感じた。このあたりの使い勝手のよさは、さすがは「M.ZUIKO PRO」シリーズのレンズだと感じた点である。
次項目では、参考までに「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の画質比較をお届けしよう。カメラボディに「OM-1」を使用し、同じ位置、同じ設定(絞り値F4)で撮影した作例から、広角端(40mm)と望遠端(150mm)での解像感の違いをレポートする。
撮影設定:F4、1/25秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天(5300K)、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準
白枠(1〜4)が以下に掲載する切り出し部。ピントはMFで切り出し1の部分に合わせた。撮影距離は約80cm
切り出し画像1(ピント位置)
切り出し画像2
切り出し画像3(左下周辺部)
切り出し画像4(右上周辺部)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」の撮影写真(11.2MB)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の撮影写真(11.0MB)
撮影設定:F4、1/20秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天(5300K)、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準
白枠(1〜3)が以下に掲載する切り出し部。ピントはMFで切り出し1の部分に合わせた。撮影距離は約120cm
切り出し画像1(ピント位置)
切り出し画像2
切り出し画像3(左下周辺部)
切り出し画像3(右下周辺部)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」の撮影写真(11.6MB)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の撮影写真(11.7MB)
この比較では、広角端(40mm)、望遠端(150mm)ともに、どちらのレンズでもピント位置ではとてもシャープな画質が得られている。「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」ではごくわずかな色付きが見られるものの、ボケの輪郭の描写も、ほぼ違いがないと言っていい。ただし、周辺光量については、さすがに「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」のほうが良好な結果となっている。
撮影設定:F4、1/50秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天(5300K)、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準
白枠(1〜3)が以下に掲載する切り出し部。ピントはMFで画像中央(切り出し1)に合わせた。撮影距離は約180cm
切り出し画像1(中央、ピント位置)
切り出し画像2(左上周辺部)
切り出し画像3(右下周辺部)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」の撮影写真(13.0MB)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の撮影写真(12.7MB)
撮影設定:F4、1/50秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天(5300K)、ピクチャーモード:Natural、シェーディング補正:オフ、高感度ノイズ低減:標準
白枠(1〜3)が以下に掲載する切り出し部。ピントはMFで画像中央(切り出し1)に合わせた。撮影距離は約5m
切り出し画像1(中央、ピント位置)
切り出し画像2(左上周辺部)
切り出し画像3(右下周辺部)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」の撮影写真(12.9MB)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の撮影写真(13.1MB)
水平・垂直を出して、比較的近い距離で平面的な被写体(1枚の地図)を撮影した比較になる。「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」はかなり健闘していて、周辺光量の落ち具合は異なるものの、周辺部の解像感については両レンズで大きな差はない。広角端(40mm)では、むしろ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」のほうが像の流れが抑えられていて、わずかではあるがシャープに見えるほどだ。「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」は周辺の光量が落ちるため、一部を切り出すと見かけ上のコントラストが高くなり締まって見えるが、それを差し引いても周辺部の解像感は高い。
なお、カメラ側での電子的な補正がない状態だと、両レンズとも、広角端(40mm)では樽型、望遠端(150mm)では糸巻き型の歪曲収差が出る。興味深いのは、広角端(40mm)では「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」のほうが、望遠端(150mm)では、逆に「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」のほうが収差が大きいこと。以下に、歪曲収差を電子的に補正した撮影時の写真と、電子補正のない(レンズ内蔵プロファイルを外してRAW現像を行った)写真の比較画像を並べておこう。
マイクロフォーサーズシステム規格のレンズは、撮像素子のサイズを生かした設計によって、コンパクトながら写りがよいのが大きな特徴。今回紹介した「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO」は、標準ズームレンズ並みの小型・軽量な鏡筒に、開放F2.8通しの「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」に匹敵する光学性能(解像力)が備わっており、マイクロフォーサーズの特徴を存分に引き出した1本と言っていいだろう。OMデジタルソリューションズの製品ページには、「マイクロフォーサーズの真価を体現した高画質・小型軽量望遠ズーム」というコピーが掲載されているが、まさにその通りのレンズである。
本レンズの、2022年3月13日時点での価格.com最安価格は114,840円(税込)。10万円を超える価格ではあるものの、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」より4万円ほど安いのはポイントが高い。テレコンバーターを装着できないのと、「OM-1」のAF/AE追従・最高約50コマ/秒の高速連写に非対応なのは残念な点だが、高画質な望遠撮影を軽快に楽しみたい人にとって非常に魅力的なレンズだ。特に風景や植物などの撮影で威力を発揮する1本ではないだろうか。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。