特別企画

携帯性抜群! 富士フイルムのパンケーキレンズ2本でスナップ撮影を楽しむ

「XF18mmF2 R」(右)と「XF27mmF2.8 R WR」(左)は富士フイルムが現行でラインアップするパンケーキレンズ

「XF18mmF2 R」(右)と「XF27mmF2.8 R WR」(左)は富士フイルムが現行でラインアップするパンケーキレンズ

「パンケーキレンズ」というレンズをご存知でしょうか? 有り体に言えば、ただ薄いだけのレンズなのですが、これが驚くほどに薄いのです。携行性が抜群によく、つい持ち出して使いたくなるレンズと言えるでしょう。

パンケーキレンズは、かつては多くのメーカーから常備的にラインアップされていましたが、ミラーレス時代を迎え、ふと気づいてみたら、いつの間にかその数を大きく減らしています。とても魅力的なレンズなのに一体なぜ?

今回は、意欲的にパンケーキレンズをラインアップしている富士フイルムのレンズ2本を取り上げ、その魅力に迫りたいと思います。

パンケーキレンズとは?

「パンケーキレンズ」とは何でしょう? とその前に、「パンケーキ」とは何でしょう?

パンケーキというのはフライパンで焼いた丸くて平らなケーキの総称です。日本ではホットケーキと言ったほうが通じそうですが、ここ数年はブームに乗ってパンケーキが一般的に使われていますので、ある程度イメージしてもらえるのではないかと思います。

つまり、パンケーキレンズとは丸くて薄いレンズの総称です。

パンケーキレンズの歴史は意外に古く、かつては3群4枚のテッサータイプと呼ばれる交換レンズの俗称でした。ただ、それでは描写性能が心もとないということで、各メーカーが、レンズ枚数を増やしつつもなるべく厚みを持たせないように努力しながら、描写性能とパンケーキレンズらしい薄さを両立してきました。

キヤノンなどは最近まで熱心に開発に取り組んでいて、たとえば現行でも「EF-S24mm F2.8 STM」や「EF-M22mm F2 STM」といったパンケーキレンズがあります。しかし、前者はAPS-C一眼レフ用で、後者はEF-Mマウントのミラーレス用。現在同社で主流となりつつあるRFマウント用ではありません。

また、ソニーもEマウント用のパンケーキレンズとして「E16mm F2.8」や「E 20mm F2.8」をラインアップしていますが、今となっては設計が古く、現代的な性能のパンケーキレンズとは言いにくい状況です。

「XF18mmF2 R」(左)と「XF27mmF2.8 R WR」(右)。この薄さでちゃんと写るなら、これ以上ありがたいことはないというほどのサイズです

「XF18mmF2 R」(左)と「XF27mmF2.8 R WR」(右)。この薄さでちゃんと写るなら、これ以上ありがたいことはないというほどのサイズです

パンケーキレンズの絶滅が危惧される中、ミラーレスカメラ用の本格的なパンケーキレンズである「XF18mmF2 R」と「XF27mmF2.8 R WR」の2本をラインアップしているのが、富士フイルムというわけです。

「XF18mmF2 R」と「XF27mmF2.8 R WR」の特徴

開放F2の明るさを持つ広角・単焦点レンズ「XF18mmF2 R」

「XF18mmF2 R」を「X-H2」に組み合わせたイメージ

「XF18mmF2 R」を「X-H2」に組み合わせたイメージ

「XF18mmF2 R」は35mm判換算で焦点距離27mm相当の画角を持つ広角・単焦点レンズです。長さは約33.7mmと、パンケーキというにはやや厚めですが、これは開放F値がF2と比較的明るいためです。このサイズの中に、非球面レンズ2枚を含む7群8枚のレンズが入っていることに、むしろ驚くほどです。

本レンズには金属製のスタイリッシュなレンズフードが付属しています。レンズフードを付けるとさらに厚みが増してしまいますが、格好がよくモチベーションが上がりますので問題ありません。

「XF18mmF2 R」に付属のレンズフード「LH-XF18」を装着したイメージ

「XF18mmF2 R」に付属のレンズフード「LH-XF18」を装着したイメージ

絞りリングを搭載した準標準・単焦点レンズ「XF27mmF2.8 R WR」

「XF27mmF2.8 R WR」を「X-H2」に組み合わせたイメージ

「XF27mmF2.8 R WR」を「X-H2」に組み合わせたイメージ

「XF27mmF2.8 R WR」は35mm判換算で焦点距離41mm相当という、準標準域の画角を持つ単焦点レンズです。長さは23mmで、「これぞパンケーキ!」とうれしくなる薄さです。開放F値はF2.8で「XF18mmF2 R」に比べて控えめの明るさではありますが、非球面レンズ1枚を含む5群7枚の立派なレンズ構成を採用していることを考慮すれば、十分に納得できます。

また、焦点距離41mm相当の画角は、筆者が以前執筆した記事「40mmってどんなレンズ? 35mmや50mmとは何が違うの? 気軽で楽しい『40mm単焦点レンズ』の魅力」で力説した、見た目に近い自然な画角の焦点距離なのも好感の持てるポイントです。

本レンズに付属するレンズフードは、俗にフジツボ型と呼ばれるネジ込み式のもの。バヨネット式の丸型や角形フードに比べて遮光効果は劣るかもしれませんが、レンズのコンパクトさを妨げることはありません。

付属のレンズフード「LH-XF27」を装着したイメージ

付属のレンズフード「LH-XF27」を装着したイメージ

「XF27mmF2.8 R WR」は、前モデルの「XF27mmF2.8」に、絞りリングと防塵・防滴構造を追加したリニューアルモデルです。追加された絞りリングは、絞り指標とロック機構がある本格的なもの。レンズの絞りリングは富士フイルムのカメラを使う醍醐味ですし、防塵・防滴構造は意外に粉塵や雨滴にさらされることの多いスナップ撮影などで安心感があります。

「XF27mmF2.8 R WR」の「R」は絞りリングの搭載を、「WR」は防塵・防滴構造の採用を意味します

「XF27mmF2.8 R WR」の「R」は絞りリングの搭載を、「WR」は防塵・防滴構造の採用を意味します

2本(2枚?)のレンズをもって出かけてみた

2本とも薄くてコンパクトなので、片方を上着のポケットに入れて携行することもできちゃいます

2本とも薄くてコンパクトなので、片方を上着のポケットに入れて携行することもできちゃいます

説明ばかりでは面白くありませんので、実際に2本のレンズで撮影した写真を見てもらいたいと思います。単焦点レンズなので、ズームレンズのように画角の選択に悩むことはなく、それでも“2つの目”があるという安心感がなんとも心地よかったです。

レンズを交換しながら撮影しているかのような雰囲気を楽しんでもらえるように、「XF18mmF2 R」と「XF27mmF2.8 R WR」で撮った写真を交互に掲載していきます。

「XF18mmF2 R」で撮影

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO125、F2.8、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、17.9MB)

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO125、F2.8、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、17.9MB)

35mm判換算で焦点距離27mm相当の画角は、広角だけどデフォルメが少なく、スナップ撮影向きの画角だと思います。標準ズームレンズの広角端でよく採用されている画角に近いので、多くの人にとってなじみがあるのではないでしょうか。

上の写真は絞り値をF2.8にして、船にかかるハシゴにピントを合わせて撮りましたが、合焦部はキリリとした解像感がありつつ、その周りの船はゆっくりやわらかくボケているため、ハシゴが浮き上がるように表現できました。絞り開放付近でも中央部の解像性能はなかなかのものです。

「XF27mmF2.8 R WR」で撮影

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F2.8、1/750秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト撮影写真(7728×5152、19.0MB)

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F2.8、1/750秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
撮影写真(7728×5152、19.0MB)

35mm判換算で焦点距離41mm相当というのは、35mmから50mmの間にあって、見た目に近い自然な雰囲気を楽しめる画角です。気になったものを手あたり次第にパシャパシャ撮りましたが、ことごとく見た時のイメージそのままに写ってくれるのでうれしくなりました。

絞り開放がF2.8なのは、単焦点レンズとしてはやや暗いようにも思えますが、F2.8で得られるボケ具合が自然でちょうどよいと感じました。

「XF18mmF2 R」で撮影

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F8、1/58秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、21.4MB)

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F8、1/58秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、21.4MB)

「XF18mmF2 R」で風景的な写真を撮ってみました。風景というと画面の隅々まで精細感が求められますが、残念ながら絞り開放付近では周辺の解像が甘いです。画面全体まで完璧な解像感を求めようとすると、F8以上に絞り込む必要がありました。

とは言っても、風景を絞り開放で撮影する機会はあまりないと思いますし、そもそも本レンズのコンセプトはどう考えてもスナップで、場合によってポートレートもあるかな? というくらいです。薄いという本レンズの大特徴を前にしては、実にささやかな問題でしょう。

「XF27mmF2.8 R WR」で撮影

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F5、1/2400秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、15.9MB)

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F5、1/2400秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、15.9MB)

「XF27mmF2.8 R WR」のほうはというと、「XF18mmF2 R」よりさらにコンパクトであるにも関わらず、絞り開放からかなり高い解像性能を持っています。1〜2段絞れば画面全体ですばらしく高い解像感が得られます。

そういえば、「X-H2」の登場にともなって富士フイルムから「40MP推奨レンズ」なるものがアナウンスされましたが、その中には本レンズ「XF27mmF2.8 R WR」も入っていましたね。スナップ向けのパンケーキレンズではありますが、風景や建築などの撮影にも活躍してくれそうです。

「XF18mmF2 R」で撮影

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO125、F2、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、17.9MB)

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO125、F2、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、17.9MB)

「XF18mmF2 R」で撮影しました。直前まで「XF27mmF2.8 R WR」をカメラに付けていたのですが、焚火とともに漁港の風景を広く入れたかったためのレンズ交換です。コンパクトな2本のレンズは交換作業も楽々。ズームレンズでよいのでは? と言われればそれまでですが、自分で決めた画角にするため、明確な意思でレンズ交換するところに意義を見出せるのです。素敵な自己満足でもあります。

「XF27mmF2.8 R WR」で撮影

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F4、1/125秒、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ撮影写真(7728×5152、17.9MB)

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO125、F4、1/125秒、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ
撮影写真(7728×5152、17.9MB)

「XF27mmF2.8 R WR」で撮影しました。この時は4本のXマウントレンズを所持していましたが、左の仏像と右のヒシャクをイイ感じで入れたいという気持ちから、わざわざ「XF27mmF2.8 R WR」に交換しています。

撮りたいイメージが先にあると、構図だけでなく仕上げ設定なども迷わず選択できます。この場合は、カラーネガフィルムっぽくしたかったので、フィルムシミュレーションを「クラシックネガ」にしました。

「XF18mmF2 R」で撮影

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、18.2MB)

X-H2、XF18mmF2 R、18mm(35mm判換算27mm相当)、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、18.2MB)

「XF27mmF2.8 R WR」寄りのコメントが続いてしまいましたが、「XF18mmF2 R」は近接撮影が得意な点に注目です。最短撮影距離18cmで被写体に寄ることができ、最大撮影倍率0.14倍(フルサイズ換算0.21倍相当)と被写体を大きく写すことができます。

レンズが薄くワーキングディスタンスを長めに取れるため、寄ってもレンズの影が被写体に被りにくいのがよいです。これもパンケーキレンズのメリットのひとつというわけですね。道端に咲く、小さなハコベ(雑草です)の花を印象的に撮ることができました。

「XF27mmF2.8 R WR」で撮影

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO400、F3.2、1/70秒、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト撮影写真(7728×5152、18.4MB)

X-H2、XF27mmF2.8 R WR、27mm(35mm判換算41mm相当)、ISO400、F3.2、1/70秒、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
撮影写真(7728×5152、18.4MB)

「XF27mmF2.8 R WR」は最短撮影距離34cmで、最大撮影倍率0.1倍(フルサイズ換算0.15倍相当)と標準的。とりたてて近接撮影が得意というわけではありません。ただし、見た目に近い印象という意味では、適度な距離感を維持することができます。自然な画角のレンズの最短撮影距離としては妥当なところと言えるでしょう。

また、設計が新しいためなのか、MF時のフォーカスリングの操作感がすぐれているのは本レンズの長所だと思います。この薄いレンズに、適度なトルクでスムーズに回せるフォーカスリングを仕込んだのは、すぐれた技術力があってこそ。近接撮影時には、しばしばMFが活躍します。

まとめ レンズ交換が楽しい現代のパンケーキレンズ

富士フイルムの2本のパンケーキレンズ「XF18mmF2 R」と「XF27mmF2.8 R WR」は、薄くて小さいのに描写性能が高く、筐体の質感や操作性も良好という、大変すばらしいレンズでした。APS-Cサイズのミラーレス用というところに、現代のパンケーキレンズ感を感じます。

「でした」なんて書いていますが、実は「XF27mmF2.8 R WR」は、2021年3月のリニューアル以来、ずっと気になっていて、昨年2022年に思い切って購入しています。昨年中の買い物の中では間違いなく「買ってよかった!」のトップです。そして、今回「XF18mmF2 R」を使わせてもらった結果、このレンズが今の「これも欲しい!」のトップになりました。

どちらも、単焦点レンズとしてはとりたてて大口径ではありませんので、ハッキリ言えばズームレンズ1本があれば事足ります。でも、筆者の場合、35mm判換算で27mm相当と41mm相当という画角は特別好きな画角なので、面倒なレンズ交換をしてでも「単焦点レンズで撮りたい!」と思えるレンズです。それで満足のいく写真が撮れたときのよろこびは格別なものがあります。むしろ、カメラバッグの隅に忍ばせたレンズの交換が楽しいと感じるほどです。

パンケーキレンズは、元々レンズシステムのメインとなるようなレンズではないことから、各社から細々とラインアップされてきました。それが、ミラーレスが主流となって以来、なぜか新製品がほとんど出ないという不遇が続いています。そんな中、本格的なパンケーキレンズを2本も出している富士フイルムは偉い! 最近ニコンから「NIKKOR Z 26mm f/2.8」が発売されましたが、他社からも最新技術を盛り込んだパンケーキレンズがもっと登場することを願うばかりです。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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