では、早速、街に出て撮影をしてみよう! まずはノーマルで撮影開始。ひさしぶりのチェキにドキドキワクワク♪ デジカメ感覚でパチパチ撮りたいところだけれど、フィルム1枚70円と思うと、失敗は許されない。ノーマル撮影は、予想していたよりもキレイな写りという印象だ。見た目よりアンダーに仕上がるため、渋い建物よりも赤提灯のように色のあるものの方が、インパクトがあっていい。
それにしても、1枚撮るごとに緊張する。撮った写真をモニターで瞬時に確認できるデジカメと違って、ポラロイドカメラは色が出てくるまでの時間が長い。ちゃんと撮れたかな? この心境は、無事に産まれて来るかな? と安産を祈っていた妊婦期間に近いものがある。
撮影開始! 日頃、モニターを見ながら撮影をしているので、ファインダー撮影が慣れない。フィルムも1枚70円と思うと緊張する
出てきた、出てきた! シャッターを押すと、ウィーンという音と共にフィルムが出てくる。出て来た瞬間は真っ白で、徐々に色が出てくる
ノーマル撮影作例。まずはノーマルで撮影。ググッと寄って提灯を撮ってみたり......
下からあおって建物を撮ってみたり
ノーマル撮影で撮影の感覚を覚えたら、次はさまざまな撮影モードを使って撮影をしてみよう。
【マクロモード】
次にマクロ撮影をしてみた。マクロモードは、その名の通り、近くの被写体を撮る時に使う機能。花や食べ物など、そのものをアップで撮りたい時に重宝する。ピントの範囲は30〜60cm。だが、最短撮影距離よりも近づいてしまうとピンぼけになってしまうので、注意が必要だ。いくつか花の撮影を試みたが、ベストな距離は40〜60cm。だが、一般的に近距離撮影は暗めの仕上がりになりがち。明るめに仕上げたい時は、明るさを調整できるLモードを併用するのがいいだろう。
30ミリまで接近マクロモードに設定すると、30〜60cmの範囲まで接写が可能になる。花や料理を撮る時に重宝しそうだ
マクロ撮影作例。マクロモード時の最短撮影距離は30cmだが、あまり近いとピントがあまくなりがち。ベストな距離は40〜60cmかな
【パーティーモード】
チェキといえば、結婚パーティーではおなじみのアイテム。出席者の写真を一人ひとり撮影し、出てきた写真の余白に、メッセージを書いてもらうというのが、一連の流れ。だから、この「パーティーモード」もそれらを想定してできた機能だと思うが、あいにくこの年(アラフォー)になると結婚パーティーのお誘いもなく、試すことができず……。
パーティーモードは、暗い室内でフラッシュ撮影をすると、背後が真っ暗になってしまうことを防ぐためにできたモードだ。室内の明るさに応じて、フラッシュの発光量を調整し、背後もキレイに写してくれるというのがウリ。人物の後ろもキレイに写すという点では、室内も屋外も関係ないのでは?と勝手な解釈で、今回は屋台の前で撮影をしてみた。
撮った写真は、パーティー会場のような華やかさはないけれど、そこそこキレイな仕上がり。これなら、室内にこだわらず、野外でも利用できそうだ。だが、少し距離をとって撮影をすると、後ろは真っ暗。近距離で撮ることが条件のようだ。
パーティーモード撮影作例。暗い室内でフラッシュ撮影をすると背景が真っ黒に。なんてことを解消するための「パーティーモード」だが、距離があるとその効果はほとんどなし
被写体の人物にグッと寄らないと、背景の明るさまでは出てこない
【ハイキー&ローキー】
写真の濃淡を調整するモード。「L」=明るめ、「L+」=かなり明るめ、「D」=暗め、の3段階の調整が可能だ。まず、野外で人物撮影をしてみた。はじめにノーマル撮影で1枚、次に「L+」で1枚。比べてみると、明るめにした方が、ふんわりとした雰囲気になる。でも、筆者はノーマルの方が好きかも。ポートレートで「L」を使うと、美肌効果も出るというので、ちょっぴり若く見せたい時は、ぜひ!
暗めの室内での撮影は、三脚を使用した。今回もノーマルと「L+」で比較。ノーマルではほとんど真っ暗な状態だが、「L+」ではキッチンの細部が分かる。でも、実は肉眼ではもっと明るく見えていた。ポラロイドの仕上がりは、やはり全体的にアンダーになる。でも、それがポラロイドの味なのだと筆者は思っている。
ノーマルと明るめの比較(人物)。左から2番目にある機能ボタンで、濃淡を調整。「L」=明るめ、「L+」=かなり明るめ、「D」=暗め。写真はノーマル(上)と「L+」(下)。明るめにすると、ふんわりとした雰囲気になる
室内撮影。手ブレが心配な暗めの室内は、三脚を利用
ノーマルと明るめの比較作例(室内)。ノーマル撮影だと、ほとんど真っ暗だが、「L+」で撮影をすると、内部の細かい部分も写るように
【遠景モード】
遠くに見える美しい風景を撮りたい時に使うモード。3mより遠くの被写体に有効とあるが、ちょっと遠すぎたか?ノーマル撮影と遠景モード撮影を見比べてみても、その差はわからず……。
ノーマルと遠景モードの比較作例。遠くの被写体をシャープに写してくれるらしいのだが、ほとんど変わらず?
……という感じで、効果が分かる機能とあまり分からない機能があったが、試してみる価値はある。ただ、問題なのは、試すにはそれなりのフィルムが必要ということだ。「instax mini 90 チェキ ネオクラシック」を使う時は、ただやみくもに撮るのではなく、この被写体の時はこのモードがいいかなと考えてから撮る必要がある。それは、デジカメに慣れてしまった人には、ある意味めんどうではあるけれど、そうでもしないとフィルムはあっという間に消えていく。まさに、「一球一魂」ならぬ「一フィルム一魂」の精神が必要だ。だからこそ、これぞ!という写真が撮れた時は、その喜びもひとしお。“記念写真”ではなく、“作品撮り”に使いたいカメラである。
そして、作品撮りをより高度にさせたものが、「instax mini 90 チェキ ネオクラシック」の新機能として注目されるバルブ撮影と二重露光モードだ。
バルブ撮影は、長時間露光で夜景撮影や光で遊べる新機能。この機能により、これまでチェキが苦手としていた夜景やノンフラッシュの室内撮影ができるようになり、チェキの撮影の幅はぐんと広がった。シャッターが開くのは最長10秒。しっかりカメラを持っても手ブレを起こす可能性が高いので、三脚の使用がおすすめだ。
バルブモードでは、シャッター時間は自分で調整する。試しにライトアップされた古民家を、シャッタースピード5秒と10秒で撮ってみた。しかし、少し距離のある被写体では、その違いはほとんど分からず。若干、10秒の方が明るいかな?と感じる程度だった。そこで、もう少し被写体に近づいて撮ってみることに。シャッタースピード10秒で、電車が走る様子を撮影してみた。これは大成功! 「instax mini 90 チェキ ネオクラシック」の実力が発揮できた1枚となった。バルブモードはある程度、近距離の被写体を撮るといいようだ。
三脚を使ってバルブ撮影。夜間の撮影には三脚を使用。「instax mini 90」から搭載された新機能・バルブ撮影に挑戦
バルブ撮影作例(建物)。シャッターボタンを押している間、シャッターが開き続け、露光によって写真の明るさが変わるバルブモード。写真は、シャッタースピード5秒のもの
シャッタースピード10秒のもの。遠景の建物の撮影では、その違いがほとんどわからなかった
バルブ撮影作例(動きあり)。シャッタースピード10秒のバルブモードで、電車を撮影。このくらいの距離だと、バルブモードの実力を発揮してくれる
最後に、「instax mini 90 チェキ ネオクラシック」ならではのユニークな機能、二重露光モードに挑戦してみた。二重露光モードは、1枚のフィルムに2度シャッターを切ることで像を重ねる撮影モード。例えば、1枚目に花、2枚目に人物を撮ると、花と人物が重なり合い、現実とはかけ離れたクリエイティブな写真に完成する。だが、いざ撮るとなると、何と何を重ねようかと結構悩む。そこで、まずは同じ人物で位置をずらして撮ってみることにした。だが、アイデアとしては悪くないと思うが、なかなかうまくいかない。何度撮っても露出がオーバーしてしまうのだ。そうこうしているうちに、フィルムはどんどん消えていく。
結局、分身術は成功しないまま、別のシーンを撮ることにした。次に考えたのが、お地蔵さまとそれを拝む人物を重ねるというもの。1枚目、まずはお地蔵さま、2枚目、それを拝む人物。
二重露光作例その1。1枚のフィルムに2度シャッターを切ることで像を重ねる二重露光モードしかし、何度やっても露出オーバーになり、メーカーの作例のようにはなかなかいかず……
二重露光そ作例の2。1ショット目に地蔵を撮り、2ショット目に人物を撮る。何と何を組み合わせるとおもしろい写真ができるか、カメラマンのセンスも問われる機能だ
どうだ? フィルムから色が出てくる間、緊張が走る。出てきた写真は、まぁまぁ? 素人のわりには頑張ったかなという感じだ。というわけで、バルブモードも二重露光モードもかなり高度な技が必要であることがわかった。だが、それは裏を返せば、アナログ好きにはたまらない機能でもある。結局、コレ! といった作品が撮れなかった筆者はやや消化不良。自分が納得できる作品を撮るには、あと100枚はフィルムが必要になりそうだ。
初代チェキから約10年の時を越え、最新型のチェキを使ってみた。正直、同じカメラとは思えないほどの進化だ。筆者にとって、初代チェキは、撮った写真(主にポートレート)をその場で人にあげられるとい気軽さがよかったが、「instax mini 90 チェキ ネオクラシック」は、記念写真用にとどまらず、作品として残せるので、そう簡単にはあげたくない気分(ケチ?)。
とはいえ、これぞ! という作品を撮るまでは、道のりが長そうだ。特に二重露光モードは、今回はすべて失敗。メーカーの撮り方ガイドの作例などを見ると、こんなことができるのかー! こんなこともできるのかー! と驚いてしまうが、果たして素人でもそこまで達することができるのだろうか? “何事にも練習あるのみ!”なのだが、それには膨大なフィルム代がのしかかってくるわけで……。でも、1枚にかける気持ちの入り方は、デジカメ撮影では決して味わうことのできないよい体験。撮りたい被写体をよりキレイに、よりユニークに撮るために試行錯誤する。失敗を反省し、次に生かす。限られたフィルムだからこそ、魂を込めて撮る。実はこれって、人が生きていく上でとても大切なことだったり。そう思うと、なかなか奥の深いカメラだと思った。