身体や乗り物などに装着して、動きのある映像を撮影できる小型カメラ“アクションカム”というジャンルを確立した「GoPro」。2014年12月に登場した「HERO4 Silver」は「GoPro」史上“初”となるタッチ式ディスプレイを搭載したモデルで、ディスプレイでアングルを確認したり、スマートデバイスのような操作ができる。しかし、機能が増えたことで重量やサイズが増えてしまっては本末転倒。ディスプレイによって操作性はどのように変わるのかを確かめるとともに、これまでの「GoPro」との違いもチェックしてみた。
アクションカムは、スポーツなど激しい動きを行う際に“邪魔にならない”ことがとても重要となる。ゆえに、ボタンやディスプレイといったパーツを極力排除して、小型化・軽量化を図るのが一般的。「HERO4 Silver」は、その視点から言うと逆をいく進化と言える。しかし、前モデル「HERO3+ Black Edition」と比べても大きさは変わっていない。若干重量は増したものの、使用時に負担を感じるほどではないので問題ないだろう。
サイズは59(幅)×40.5(高さ)×30(奥行)mmで、ディスプレイを搭載していない「HERO3+ Black Edition」と同じ。重量はディスプレイを備えたためか、「HERO4 Silver」のほうが10g重い83gとなっている(左:HERO4 Silver、右:HERO3+ Black Edition。以下、同)
天面に録画開始ボタン、左側面にmicroSDカードスロットとUSB、HDMIケーブルの接続口が用意されるレイアウトは同じだ。F値2.8、超広角約170°のレンズや最高画質は4Kといったカメラの基本的なスペックも前モデル同様
大きく異なるのは、背面。「HERO4 Silver」には、縦22mm×横36mm(筆者測定)のディスプレイが搭載されている
ディスプレイの搭載にあわせ、「HERO3+ Black Edition」では背面にセットされていたバッテリーが「HERO4 Silver」では本体内に装着する仕様になった
ディスプレイでは撮影モードやメニューの選択、撮影した動画/静止画の再生が行える。もちろん、撮影前にアングルチェックを行うことも可能だ。タップやスワイプなどの操作に対応しているが、静電式パネルなのでグローブを装着した状態では反応しない。
本体にあるボタンでは一方向にしかスクロールできないが、タッチディスプレイを利用すると用途によって制限はあるものの上下左右にスクロールできるので、前の項目に戻るなどの動作が素早く行える
タッチの感度も上々で、ストレスなく操作できた
ディスプレイが搭載されたことには関連しないが、スマートフォンの同期と撮影モードにも変化点がある。前モデルではWi-Fiでスマートフォンと接続していたが、「HERO4 Silver」ではWi-FiとBluetoothの両方に対応。アプリ起動時には認識速度に優れるBluetoothを使用し、ペアリングされてからの通信にはWi-Fiを用いることで、接続にかかる時間を短縮する仕組みだ。そして撮影モードには、雲や人の流れなどを早送りのようにビデオ記録できる「タイムラプス」や、静止画撮影時の露光時間を最大30秒に設定できる「ナイトフォト」が追加された。
「HERO4 Silver」を自転車に装着し、実環境での使用感を確かめてみよう。「GoPro」はカメラ本体が防水対応ではないので、基本的にハウジングに入れて使用。「HERO4 Silver」のハウジングは、ディスプレイ搭載にあわせてタッチ対応と非対応が用意されている。
同梱されているハウジングは1つだが、フタを交換することでタッチ対応/非対応になる
ただし、タッチ操作ができる穴が空いたフタを装着すると防水にはならない。別売の「スタンダードハウジング with タッチスルードア」を用意すれば、防水と&タッチ操作を兼ねることができる(ただし、水中ではタッチ操作できない)
ハウジングに入れた「HERO4 Silver」を自転車に装着してみた。「GoPro」を乗り物や身体に固定するためには、別売のアクセサリーが必要となるので注意しよう。今回、利用したアクセサリーは「ハンドルバー/シートポストマウント GRH30」
ちなみに、ハウジングのフタは自転車などに固定した後でも手軽に交換可能だ
タッチ対応のフタを装着した場合
ディスプレイで構図や撮った動画の確認ができるのは便利だが、タッチで直感的に操作できるのでとても快適
1つ前の項目に戻るといった動作も、横にスクロールすればいいので素早く行える。「GoPro」初心者でも扱いやすそうだ
防水対応(タッチ非対応)のフタを装着した場合
アングルや映像の確認がディスプレイでできる点は同じだが、再生画面に切り替えたり、各種設定を変更するなどの操作は従来どおりボタンとなる
ただし、前モデルまでは本体前面の小さなモニターに表示されていた内容を、背面のディスプレイで視認できる。自転車のハンドルに装着した場合、前方に移動してチェックする手間がなくなった
アクションカムは屋外やスポーツシーンで使用するケースが多いので、活用度は防水仕様のフタのほうが高そう。その場合、タッチ操作はできなくなるが、ディスプレイでアングルチェックできるだけでも非常に便利。ディスプレイがないモデルの場合、カメラと接続したスマートフォンでアングルの確認や撮影した映像のチェックを行わねばならないが、「HERO4 Silver」ならスマートフォンを取り出さなくて済む。
また、ディスプレイが搭載されたことでバッテリーの消費を懸念する人もいるかもしれないが、1分間操作しないと自動で表示がOFFになるように初期設定されているので安心してほしい。
タッチディスプレイが搭載されたことが大きな進化点だが、アクションカムにおいてはそこが最重要事項とは言えない。用途によってはディスプレイが利用できないこともあるからだ。アクションカムは、装着するアクセサリーを変えることで1台でいろいろな撮影方法を楽しめるもの。“ディスプレイを使う”ことにとらわれずに、自由に使ってほしい。実は今回、約6か月間「HERO4 Silver」を使いまくった。その中から筆者が気に入った楽しみ方を紹介しよう。
【シーン1】腕につけて自転車で走る!
自転車のハンドルに「HERO4 Silver」を装着するのではなく、手首に固定して撮影すると、乗り手の顔を含めた動画が撮影できる。
「HERO3 リストハウジング AHDWH-301」で、「HERO4 Silver」を手首に固定。サイズの調整幅が広いため、たとえばウインタースポーツのウェアの上から装着することも可能だ
ハンドルを握った状態での使用となるため、どうしても路面の凹凸に応じて映像も揺れてしまう。しかし、自転車で走る自分の顔や呼吸音なども収録できるのはおもしろい。カメラを前方に向けて撮った映像とは一味違った雰囲気を味わえる。
【シーン2】スノーモービルで走行!
ウインターシーズンにスノーモービルに挑戦。曇り空で雪がチラつく中での撮影となるため、映像がクリアに撮れるか少し不安だ。
「チェストマウントハーネス GCHM30」を利用し、胸の位置に「HERO4 Silver」がくるようにセット
本体背面のディスプレイでアングル確認ができないためスマートフォンを代用したのだが、グローブを装着しているのでスマートフォンの取り出しに少し苦労した
胸に装着したため、ハンドル部分がかなり映り込んだ映像になってしまった。やや暗い環境での撮影だったが、木々のディテールなどもしっかり映っており、その点は問題なさそう。ただ、少し雪は白飛びしてしまったようで雪面の凹凸までは見えない。
【シーン3】スノーボードで滑走!
上で使用した2つのアクセサリーを使い、アクションカム利用度の高いスノーボードでも滑走してみた。
上の動画は、「チェストマウントハーネス GCHM30」利用して撮影した。胸の位置で正面を向くこのアクセサリーは、スキーであれば問題ないがスノーボードのような横乗りにはあまり適さないかも。今回は適切なアクセサリーを持っていなかったので、「チェストマウントハーネス GCHM30」を滑走方向にカメラが向くようにずらして装着し、撮影してみた。レンズが広角なため、雪面と周囲の木々までを同じフレーム内に収めることができている。スピード感が伝わり臨場感たっぷり!
「HERO3 リストハウジング AHDWH-301」を利用して撮影(上の動画参照)。手首につける「HERO3 リストハウジング AHDWH-301」は アングル調整の自由度が高いので、自分自身もフレーム内に入れることができた。レンズを外側に向けて装着すれば、一緒に滑っているほかの人も撮影可能だ。だが、撮ることを意識し過ぎると手首が不自然になって滑りにくい。撮影時は天気がよかったこともあり、速度が上がってもきちんと雪面の凹凸まで視認できる。
近年のアクションカムは4K撮影ができるものが増えているが、4KとフルHDのどちらで撮るべきなのか迷うことはないだろうか。
ここまでに紹介した映像は、すべてフルHD(1,920×1,080)の解像度で撮影したもの。「HERO4 Silver」は4K(3,840×2,160)での撮影にも対応しており、より解像感の高い映像も撮ることができる。ただし、フレームレート(1秒間に撮影するコマ数)が15fps(1秒間に15コマ)のため、移動スピードが速い映像を撮ろうとすると滑らかさの足りない映像になってしまう。その点、フルHDではフレームレートを60fpsまで上げられるので、速い動きをきちんと収めることが可能。動きは遅いが解像感の高い映像が撮りたい場合は4Kやその下の2.7K(30fps)で、動きの速い被写体を追いかける際はフルHDで撮るのがいいだろう。
4K/15fpsで撮影した映像
自転車が止まった状態での画質は、さすが4Kという高精細なものだが、フレームレートが15fpsのため、走り出して速度が上がってくると近くの景色が画像が流れてしまっているように感じられる。また、動きの滑らかさも不足ぎみ。
フルHD/60fpsで撮影した映像
フルHDで撮った映像のほうが速度が上がっても滑らか。動きの速い映像を撮る際は、解像度を抑えてもフレームレートを上げられる画質を選んだほうが、結果的には美しい映像を撮影できる。
「HERO4 Silver」の画質に関するスペックは、ほぼ前モデルと同様となっている。4Kで撮影した際の撮影コマ数が15fpsであることや、フルHD(1,080p)でのフレームレートには変化なし。細かい部分までチェックすると、解像度960pで選べた48fpsが廃止されていたり、720pで30fpsが選べるといった変更点はあるが、あえてそのフレームレートを選びたいという人でなければ新旧モデルの画質差は気にしなくていいレベルと言っていい。
ちなみに、「HERO4」シリーズには今回紹介した「Silver」だけでなく「Black」もラインアップしている。「HERO4 Black」は4K/30pの高画質に対応した、タッチディスプレイ非搭載モデル。フルHDでは120fpsでの撮影もできるため、いわゆる「スーパースロー」のような映像を撮ることができる。画質優先で選ぶならば、「HERO4 Black」のほうが楽しめるだろう。
これまでいろいろなアクションカムを試してきたが、常々、アングルが確認できるモニターはあったほうが便利だと思っていた。同期したスマートフォンでチェックすることはできるが、グローブを装着していれば扱いづらいうえ、水や汚れなどの懸念も多くスマートフォンをいちいち出すのはめんどうだ。だからといって、アングルの確認をせずに撮影したら上手く納まっていなかった……という事態にもなりかねない。背面にディスプレイを搭載した「HERO4 Silver」なら、このようなわずらわしさと失敗を解消してくれるのは間違いないだろう。付属のハウジングで防水仕様にしてしまうとタッチ操作はできなくなるが、個人的にはタッチ操作よりもモニターで確認できることのほうが価値が高いと感じているので、手軽にアクションカムデビューしたい人にも「HERO4 Silver」はうってつけだ。
※ここに掲載している「HERO4 Silver」で撮影した動画は、すべてリサイズしたものです