2月25日〜28日の4日間で計67,792人が来場し、大盛況のうちに幕を閉じた国内最大級のカメラ展示会「CP+2016」。価格.comマガジンでは、CP+2016の開幕にあわせて、1インチ以上の大型センサーを搭載するカメラを中心に特に注目度の高い新製品を紹介しているが、ここでは、CP+2016を取材して、実際に製品を触ってみて印象のよかった新製品たちをピックアップして紹介しよう。交換レンズの紹介が多くなってしまうが、いずれも“欲しい!”と感じた製品だ。
「DLシリーズ」の広角ズームモデル「DL18-50 f/1.8-2.8」
ニコンからは、デジタル一眼レフのフラッグシップ「D5」や、高性能AF&高速連写を実現したAPS-Cフラッグシップ「D500」など数多くの注目製品が発表になっているが、CP+2016開幕直前に登場した1インチコンデジ「DLシリーズ」も見逃せない。1インチコンデジはソニーやキヤノンが先行している市場だが、ニコンはDLシリーズにおいて3モデルを6月に同時リリースすることで、この市場に割って入ろうとしている。
DLシリーズの詳細は新製品レポート『ニコンから1インチセンサー搭載の高級コンパクト「DLシリーズ」が登場!』をご確認いただきたいが、実際に3モデルを触ってみて、期待を裏切らない仕上がりのコンデジだと感じた。ボディは、アルミと樹脂を組み合わせたものだがしっかりと作られており、質感が高い。オートフォーカスはレンズ交換式の「Nikon 1」シリーズと同じシステムで、非常に高速であることが確認できた。ニコンのデジタル一眼レフと同じようなメニューのレイアウトを採用しており、システムとしての統一性が高く、一眼レフのサブ機としても使いやすいと思う。
3モデルの中でも、特に、広角ズームレンズを搭載する「DL18-50 f/1.8-2.8」を手に入れたいと感じた。35mm判換算で広角18mm・開放F1.8というレンズスペックが魅力で、とても個性的なカメラだ。このカメラをサブ機として所有することで、より多彩な撮影が可能になるはず。6月の発売が待ち遠しい。ニコンダイレクトの直販価格はカメラ本体が105,300円、EVFキットが125,280円(いずれも税込)。
広角端で開放F1.8、望遠端でF2.8という明るさを実現
Nikon 1シリーズゆずりの高速オートフォーカスシステムを搭載
メニューは、ニコン製デジタル一眼レフに似たレイアウトになっている
「EOS 80D」に「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM」を装着
デジタル一眼レフのフラッグシップ「EOS-1D X Mark II」や、ミドルレンジの入門機「EOS 80D」、「DIGIC 7」初搭載の1インチコンデジ「PowerShot G7 X Mark II」など、注目の新製品を多数展示していたキヤノン。
いろいろと触ってみて期待した以上によさを感じたのが、高倍率ズームレンズの新モデル「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM」だ。EOS 80Dのキットレンズとして用意されるモデルだが、新開発の薄型モーター「NANO USM」の搭載によって、高速かつ静粛なオートフォーカスを実現している。
EOS 80Dに装着して試写してみたが、確かに、オートフォーカスは高速だ。EF-Sレンズのズームレンズとしてはもっともオートフォーカスが速いのではないだろうか。EOS 80Dとの組み合わせでは、他社製も含めて、18〜135mmの焦点距離をカバーするAPS-C用の高倍率ズームレンズの中でナンバーワンのレスポンスかもしれない。ライブビュー時のオートフォーカスも速く、バリアングルモニターを搭載するEOS 80Dとの相性が非常によいと感じた。さらにEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMは、別売オプションとして動画撮影用のパワーズームアダプター「PZ-E1」が用意されているのもポイント。このオプションを装着することで、電動によるなめらかなズーム操作での動画撮影が可能だ。
3月25日の発売で、価格は83,000円(税別)。EOS 80Dの購入を検討しているのであれば、このレンズが同梱されるレンズキットに注目してほしい。EF-S18-135 IS USMレンズキットの直販価格は176,800円(税別)。また、キヤノンのAPS-C一眼レフユーザーで、特に標準ズームレンズのみを所有しているのであれば、このレンズを追加することで、35mm判換算で広角29mm相当から望遠216mm相当までスムーズなオートフォーカスで撮影できるようになり、カメラの利便性が高まるはずだ。
望遠端135mm時(35mm判換算216mm相当)
パワーズームアダプターPZ-E1を装着
PZ-E1は、ズーム速度の変速に対応する
「G マスター」ブランドの望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」
ソニーは、CP+2016の開幕にあわわせて、APS-Cセンサーを搭載するミラーレス一眼のフラッグシップ「α6300」と、交換レンズの新ブランド「G マスター(G MASTER)」を発表している。
新製品レポート『新開発センサーで実現! ソニーのAPS-Cミラーレス最上位「α6300」の3大進化点』でも紹介したように、α6300はオートフォーカス、連写、動画性能が大幅に向上した注目モデルだが、G マスターもαユーザーから熱い視線を集めている。G マスターは、ミノルタ時代からαを代表する高級レンズとして高い評価を受けてきた「Gレンズ」の上位に位置する、ソニーとして非常に力の入ったレンズブランド。「進化し続けるカメラの未来も見据えたレンズ」をコンセプトに、静止画でも動画でも高解像とボケ味を両立する設計を採用している。
G マスターのファーストモデルとして発表されたのは、標準ズームレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」、単焦点レンズ「FE 85mm F1.4 GM」、望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」の大口径レンズ3本。いずれも、Eマウント用のフルサイズ対応モデルで、新開発の超高度非球面レンズ「XA(extreme aspherical)レンズ」を採用し、ボケ味を損なうことなく高い解像性能を実現。MTF曲線50本/mmレベルでも高コントラストを実現する、高い設計基準を適用している。さらに、ボケの質にもこだわっており、従来以上に高いレベルの設計シミュレーション技術と、製造時の高精度な球面収差調整を1本1本に実施。通常の非球面レンズの加工では困難な0.01ミクロン単位での高い表面精度を実現しており、輪線ぼけの発生も最小化しているという。
CP+2016では、このG マスターレンズ3本をすべて試すことができたが、使ってみて特に手に入れたいと感じたのが、Eマウントレンズとしては初となる開放F2.8通しの望遠ズームレンズFE 70-200mm F2.8 GM OSSだ。6月発売予定ということで、ブースにはベータ機が1本しか用意されておらず、短い時間での試写となったが、それでもとても高性能なレンズであることを確認できた。「α7R II」に装着して試してみたが、リングSSMと2つのリニアモーターを使ったハイブリッド構造のオートフォーカスは非常に高速。最短撮影距離が0.96mとマクロに強いのも魅力だ。本格的な望遠撮影が可能なレンズとして、手に入れておきたい1本だ。価格は現時点では未定となっている。
各種スイッチ部。流し撮りに効果的な手ブレ補正モードも用意される
三脚座は回転が可能。三脚用アダプターの着脱にも対応している
レンズフードにはフィルターの操作窓が付いている
参考出品された「TG-4用フラッシュディフューザー」
オリンパスのブースでは、2月26日に発売になった高品位なミラーレス一眼「PEN-F」が注目を集めていたが、タフネスデジカメ「STYLUS TG-4 Tough」用の別売アクセサリーとして、スーパーマクロ撮影用のフラッシュディフューザーが参考出品されていた。
TG-4は、ズーム時でも最短撮影距離1cmでの撮影を実現しており、表示倍率で最大44.4倍という驚異的なスーパーマクロ撮影を行えるのが特徴。顕微鏡のような超拡大撮影が可能となっているが、今回出品されたフラッシュディフューザーは、このユニークなマクロ撮影機能を強化するアイテムだ。TG-4用としては、似たようなアイテムとして、カメラ本体のLED高光源の光を均一に照射するLEDライトガイド「LG-1」が用意されているが、フラッシュディフューザーは、内蔵フラッシュを使うことで強い光を効果的に拡散できるようになっている。電気的な接点がないため、水中での利用も可能とのことだ。
実際に試写してみたが、スーパーマクロ撮影用に最適化されているため、被写体に近づいてシャッターを押すだけで、明るくてキレイな写真を撮ることができた。照射距離は2〜30cmとのことで、LG-1のように平面の被写体にピタッとくっつけて撮影することはできないが、非常に便利なアイテムだと感じた。TG-4を使ってスーパーマクロ撮影をすると、暗いところだとシャッタースピードが稼げずに手ブレしたり、感度が高くなって画質が劣化することがあるが、このフラッシュディフューザーを使えば、そうした問題を解決することができる。TG-4ユーザー注目のアイテムだ。発売日や価格は未定となっている。
フラッシュディフューザーを使うことでスーパーマクロ時にも明るく撮ることができる
左はLEDライトガイドのLG-1
オリンパスのブースでは、オリンパスの光学技術を詰め込んだという超望遠・単焦点レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」を、ドットサイト照準器「EE-1」と組み合わせた状態で試写することができた。このレンズは、35mm判換算で600mm相当の画角で、開放F4というスペックながらコンパクトな筐体を実現しているうえ、強力な手ブレ補正機能を搭載しており、手持ちでも被写体をしっかりと捉えて撮ることができる
「LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3」。ズームロックリングを搭載している
パナソニックは、CP+2016開幕前に、新しい標準ズームレンズ「LUMIX G VARIO 12-60mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」などを発表しているが、交換レンズの新製品としては、3月10日に発売になる新しい超望遠ズームレンズ「LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 ASPH./POWER O.I.S.」も期待値の高いモデルだ。
LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/F4.0-6.3 ASPH./POWER O.I.S.は、2016年2月時点で、マイクロフォーサーズ用のレンズとしてもっとも焦点距離が長い400mm(35mm判換算で800mm相当の画角)で撮影できるのが最大の魅力。全長約171.5mmで、重量約985g(レンズキャップ、レンズリアキャップ、外付け三脚座含まず)という、800mm相当の画角に対応するレンズとしてはコンパクトな筐体にまとまっているのも特徴だ。最短撮影距離が1.3mで、最大撮影倍率が0.25倍(35mm判換算で0.5倍)と、マクロに強いのも見逃せない。
実際に試してみて、ズームリングの誤操作を防ぐズームロックリングや回転三脚座が用意されているのが便利だと感じた。回転三脚座は、フォーカススイッチやAF・MFスイッチなどのスイッチ部もいっしょに回転するのがポイントで、三脚を使って縦撮りする場合に、スイッチ部が側面にきて操作しやすくなるように配慮されている。価格は230,000円(税別)。
望遠端400mm(35mm判換算800mm相当の画角)時
回転三脚座は、フォーカススイッチやAF・MFスイッチなどのスイッチ部もいっしょに回転する
外付け三脚座が付属する
タムロンの新製品では、「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)」に注目したい。タムロン伝統の“90mmマクロ”のリニューアルモデルで、2012年発売の「Model F004」から、特殊硝材LD(Low Dispersion : 異常低分散)レンズ1枚と、XLD(eXtra Low Dispersion)レンズ2枚を含む11群14枚のレンズ構成を継承しつつ、手ブレ補正機能を強化したのが特徴。新たに、シフトブレを検知する加速度センサーを搭載し、3.5段の手ブレ補正効果を発揮する。さらに、USD(Ultrasonic Silent Drive)の制御ソフトを見直すことで、オートフォーカスの速度・精度も向上。スイッチ部や、フォーカスリングとレンズ鏡筒の境界にシーリングを施すことで、タムロンとしては初となる防塵・防滴構造も実現している(Model F004は簡易防滴構造)。
Model F017は、キヤノン用、ニコン用が2月25日にすでに発売となっている(※「VC」非搭載のソニー用は順次発売予定)。価格は90.000円(税別)。Model F004のひとつ前のモデルとなる、手ブレ補正非搭載の「SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1(Model 272E)」からの買い替えニーズが高い製品ではないだろうか。
SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)。2015年9月発売の「SP 35mm F/1.8 Di VC USD (Model F012)」と「SP 45mm F/1.8 Di VC USD (Model F013) 」に似たデザインとなっている
各種スイッチ部
タムロンからは、手ブレ補正機能を搭載する大口径・中望遠レンズ「SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)」も発表された。3月24日からの順次発売で、価格は110,000円(税別)。試してみた限りではオートフォーカスの速度が速く、90mmマクロとはひと味違う写りのポートレートレンズとして、使い勝手にすぐれる1本になりそうだ
シグマは、CP+2016開幕前に、同社初のミラーレス一眼カメラ「SIGMA sd Quattro」と「SIGMA sd Quattro H」を発表し、CP+2016でもハンズオンコーナーを用意して話題を集めたが、SIGMA sd Quattroが夏前、SIGMA sd Quattro Hが年内のリリースを目標にしているとのことで、発売はもう少し先となる。
シグマの最新レンズの中では、ズーム全域で開放F1.8の明るさを実現した、APS-C用の中望遠ズームレンズ「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art」に注目したい。ズーム全域で開放F1.8の広角ズームレンズ「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art」とコンセプトは同じで、「高性能単焦点レンズと同等の明るさと解像力をもつ、最高レベルの光学性能と表現能力を発揮できるズームレンズ」として開発されている。キヤノン製APS-C一眼レフの場合、35mm判換算で焦点距離80〜160mmの画角に対応し、「85mm F1.8」「105mm F1.8」「135mm F1.8」という大口径・単焦点レンズ3本分をカバーできるスペックが魅力だ。
また、描写性能にこだわる「Art」ラインのレンズらしく、蛍石と同等の性能を持つFLD(“F” Low Dispersion)ガラス3枚、SLD(Special Low Dispersion:特殊低分散)ガラス1枚、高屈折率SLDガラス3枚、高屈折率高分散ガラス1枚を含む15群21枚のレンズ構成を採用し、軸上色収差、倍率色収差を徹底的に補正。各群に1枚以上の低分散ガラスを用いることで、ズーム全域かつフォーカス全域で高画質を実現しているという。
SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Artに触ってみて、全長の変化しないインナーフォーカスかつインナーズーム方式であるのと、90度ごとにクリック感のある三脚座を採用し、横位置と縦位置をスムーズに切り替えられるのが便利だと感じた。シグマ用、キヤノン用、ニコン用が4月22日より発売される。価格は155,000円(税別)。
SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art
三脚座は回転が可能。90度ごとにクリック感があるのが特徴だ
シグマからは、ミラーレス一眼用の開放F1.4・標準レンズ「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」も登場。ソニーEマウント用とマイクロフォーサーズ用が用意されており、3月18日より発売される。「30mm F1.4」というスペックのAPS-C用レンズはシグマの得意とするところであるが、光学性能とサイズのバランスを重視した「Contemporary」ラインの新製品として、前玉に高屈折率高分散ガラスを採用してレンズ全長の短縮を図ったり、ボディ側での歪曲収差を考慮した設計を採用するなどして、一眼レフ用の「30mm F1.4 DC HSM | Art」とは異なる特徴を持つレンズに仕上がっている。価格は48,000円(税別)
体力勝負ならそこそこ強い編集部デスク。カメラやAV家電を中心に製品のレビュー記事を担当しています。撮られるのは苦手ですが撮るのは好きです。