キヤノン「EOS 80D」
今年2016年の春シーズンは、各社からフラッグシップモデルをはじめとする、上級クラスのデジタル一眼レフカメラが発売され、大いに話題を呼んでいる。なかでも、前回お伝えしたように、ゴールデンウィーク直前の4月28日(木)には、ニコン「D500」、キヤノン「EOS-1D X MarkII」、ペンタックス(リコー)「PENTAX K-1」という、注目の3製品が同日発売され、その動きに注目が集まっていた。ゴールデンウィーク中の動きも踏まえ、その結果がどうなったのかを、「価格.comトレンドサーチ」のデータでお伝えしよう。
図1:「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品のアクセス推移(過去3か月)
まずは、人気モデル各製品の注目状況から見てみよう。図1は、過去3か月における「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品のアクセス推移だが、やはり、上記の3機種が一斉発売となった4月28日には大きくアクセスが伸びている。なかでも、本命と目されてきた、ニコンのAPS-Cモデルのフラッグシップ機「D500」の伸びが大きく、4月29日には、1日で133,316PVというアクセスを叩き出している。5月11日時点でもアクセスではトップを維持しており、予想通りの強さを見せた格好だ。
さらに、この「D500」に次ぐ注目度を勝ち得ているのは、ペンタックス初のフルサイズ機となるフラッグシップモデル「PENTAX K-1」である。さすがに「D500」には及ばないものの、4月29日には、69,657PVを叩き出して、単独2位の座を確保しており、なかなか健闘している。5月11日時点でも、3位以下の製品を大きく引き離す40,000PV/日近いアクセスで推移しており、こちらも非常に好調だ。
3位には、キヤノンのプロ向けフラッグシップモデル「EOS-1D X MarkII」が入った。ただし、こちらは、プロ向けの高価格製品であることから、さすがに上記2モデルほどの注目度とはなっていない。発売日の4月28日には、大きな盛り上がりを見せたが、収束も早めで、5月11日次点では、その次の4位につけているキヤノンのAPS-Cモデルの新製品(3月25日発売)「EOS 80D EF-S18-135 IS USM レンズキット」にほぼ並ばれている形だ。逆に、発売が1か月ほど早かった「EOS 80D EF-S18-135 IS USM レンズキット」のほうが、ここへ来てわずかながら注目度を上げつつあり、両者の交代も時間の問題と思われる。
図2:「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品の売れ筋ランキング推移(過去3か月)
では、実際の売れ行きのほうはどのようになっているのだろうか。図2は、過去3か月における「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品の売れ筋ランキング推移を示したものだ。こちらを見ると、これまでずっと売れ筋首位を保ってきたロングセラーのエントリーモデル、キヤノン「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」が、4月30日時点でついに首位から陥落。ゴールデンウィークに入ってすぐに、発売日を迎えたニコン「D500」が首位の座に躍り出た。ゴールデンウィーク中はこのまま「D500」が首位の座を守り続けたが、後から伸びてきたキヤノン「EOS 80D EF-S18-135 IS USM レンズキット」が、ゴールデンウィーク終了直後の5月9日時点で、何と「D500」を交わして首位に立つという波乱の展開に。「EOS 80D」は、「D500」よりも約1か月早い3月25日に発売された新モデルだが、発売時にはさほど大きな注目を集めていなかったのにもかかわらず、徐々に人気を上げてきて、ついには人気筆頭モデルであるニコン「D500」をとらえた形となる。
ここで、キヤノン「EOS 80D」の概要を改めて解説しておこう。「EOS 80D」は、キヤノンのAPS-Cモデルの中ではミドルレンジに位置する製品。キヤノンのAPS-Cモデルと言えば、上位モデルの「EOS 7D Mark II」が人気だが、本機はラインアップ的には下位モデルではあるものの、新開発となる有効2420万画素のCMOSセンサーを搭載し(「EOS 7D Mark II」は有効2020万画素)、7コマ/秒の連写機能と(「EOS 7D Mark II」は10コマ/秒)、フルHD/60pの動画撮影機能を搭載するなど、上位モデルの「EOS 7D Mark II」に迫る性能を持った製品だ。それでいて、価格的には、ボディ単体で11万円台(価格.com最安価格)で購入できるコストパフォーマンスのよさもあって、現在人気を徐々に上げている。なお、ライバルとなるニコン「D500」は、APS-C機のフラッグシップ機であるが、価格的にはその倍くらいになるため、注目度という点では「EOS 80D」よりも上だが、売れ行き的にはかなりいい勝負となっているようだ(図3)。
また、注目のペンタックス初のフルサイズ機「PENTAX K-1」であるが、こちらも売れ筋では、この2機種と、ロングセラーエントリー機、キヤノン「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」に次ぐ4位につけており、大健闘している。ペンタックス初のフルサイズ機ということで注目度は元から高かったが、ブランド的にはニコン、キヤノンの2大メーカーに大きく差を付けられているペンタックスだけに、実際の売れ行きがどうなるかに注目が集まっていたが、ゴールデンウィークを挟んだ初動の動きを見ている限り、かなり好調なスタートを切ったと言ってよさそうだ。
図3:「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品の最安価格推移(過去3か月)
図4:「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品の満足度推移(過去3か月)
最後に、各製品のユーザー満足度を見てみよう。図4は、過去3か月における「デジタル一眼カメラ」カテゴリー主要5製品の満足度推移を示したものだが、ロングセラーモデルのキヤノン「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」を除き、この春に発売された4機種とも、ほぼ4.9以上の高評価をつけている。製品に対する満足度でいえば、この春の新モデルはどの製品もほぼ拮抗して、高い評価となっているようだ。ここまで来ると、ほぼ誤差範囲と言ってもいいくらいの僅差であるが、なかでも高い満足度を得ているのが、ペンタックス初のフルサイズ機である「PENTAX K-1」で、ほぼ満点の4.96というユーザー評価を得ている(2016年5月12日時点)。特に画質面での評価は4.96と高く、「高解像な上に高感度もかなり強く、驚異的なダイナミックレンジをも有します」「ローパスフィルターレスとフルサイズへのサイズアップによる画質向上がすさまじいの一言です」など、従来からのペンタックスファンを中心に、かなり好評な評価を得ている。
なお、注目のニコン「D500」についても、現状のユーザー満足度は4.93(2016年5月12日時点)。「細かいところはD7200の方がよさそうだが、AFと連写と感度はこちらがとても良い」「高感度はD750より処理がうまいのかノイズが少なく感じます。詳細に比べたわけではありませんが、やはり進化していると思わせます」など、オートフォーカス精度や、ノイズ処理などの点で、やはり予想通りの出来と評価されている。
また、売れ筋で「D500」をわずかに交わしたキヤノン「EOS 80D EF-S18-135 IS USM レンズキット」であるが、こちらの評価は4.89(2016年5月12日時点)。「Fがほんとに速いです! 同じレンズで他機種を比較したりもしたのですが、圧倒的に80Dが速かったです」「簡単に言うと、フルサイズ移行を考えないのであれば、現時点で最高スペック、全機能入りの文句なしの1台です」など、オートフォーカス機能や動画撮影機能などの評価が高いようだ。
以上のように、ニコン、キヤノン、ペンタックスの各主力モデルが火花を散らしたゴールデンウィーク商戦だったが、ユーザー評価からもどの製品もかなり高い完成度であることがわかる。プロ向けのフラッグシップモデル、キヤノン「EOS-1D X MarkII」を除けば、10万〜25万くらいのレンジで購入できる上質のミドルレンジの本格一眼レフがそろっている。どの製品もそれぞれに特徴があり、長く楽しめそうな製品に仕上がっているので、デジタルカメラのステップアップを考えている方には、購入に絶好のシーズンが到来したと言えるだろう。