「EOS 5D Mark IV」
2016年9月8日(木)、キヤノンのフルサイズ一眼レフカメラの主力機「EOS 5D」シリーズの最新モデル「EOS 5D Mark IV」が発売された。有効画素数3040万画素という高画素のフルサイズCMOSセンサーを採用し、映像エンジンには最新の「DIGIC 6+」を装備。常用ISO感度で32000まで対応する高感度撮影を実現。自慢のオートフォーカスもさらに高速化し、最高約7コマ/秒の高速連続撮影機能や、4K/30Pの動画撮影機能を備えるなど、さまざまな部分で前モデル「EOS 5D Mark III」よりブラッシュアップが図られた。前モデル「EOS 5D Mark III」が発売されたのが2012年3月のことなので、約4年半ぶりのモデルチェンジとなる。
図1:「EOS 5D Mark IV ボディ」のアクセス数推移(過去1か月)
図1は、「EOS 5D Mark IV ボディ」のアクセス数推移を「価格.comトレンドサーチ」で示したもの。これによれば、本製品が発表された8月25日以降、急激にアクセスが増加し、同29日にはピークとなる168,176PVを記録した。また、発売日となる9月8日を前に再びアクセスが上昇し、14万PVを超えるアクセスを記録したが、発売日以降はアクセスもかなり落ち着いている。このことから、発売前に話題が殺到したことがわかる。
図2:「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける売れ筋ランキング上位5製品のランキング推移(過去3か月)
図2は、「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける売れ筋ランキング上位5製品のランキング推移を示したもの。これを見ると、「EOS 5D Mark IV」が発表からすぐに多くの事前予約を集め、それまでずっと首位を守ってきたキヤノン「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」をかわして、売れ筋ランキングでも首位に立ったことがわかる。その後も、この2製品の間で首位がめまぐるしく交代しているが、9月12日以降は本製品が1週間以上も首位をキープし続けている状況だ。ちなみに「EOS Kiss X7 ダブルズームキット」は、2013年4月に発売されたロングセラーモデルで、価格帯的にはレンズ2個付きで5万円前後のエントリーモデルであるが、かたや「EOS 5D Mark IV」はボディ単体のみで40万円程度する高級機である。その「EOS 5D Mark IV」がこのような勢いで売れているというのは、驚きとしか言いようがない。スタートダッシュとしては、かなりいい結果になっていることがわかるだろう。
図3:「EOS 5D Mark IV ボディ」の価格推移(過去1か月)
図4:「EOS 5D Mark IV ボディ」と「EOS 5D Mark III ボディ」との価格比較(過去2年)
図3は、「EOS 5D Mark IV ボディ」の価格推移を示したもの。まだ発売から2週間程度しか経っていないので、発売時から価格はほとんど変動しておらず、9月20日次点の最安価格でも395,082円と、わずか3万円程度の下落となっている。これら、一眼レフカメラの上位モデルについては、発売からしばらくの間は価格が安定して推移する傾向にあるので、ここしばらくはおそらくさほど価格下落を期待するのは難しいだろう。なお、4年半前に発売された前モデル「EOS 5D Mark III ボディ」との価格差は、現時点で約15万円(図4)。この価格差をどうとらえるかが問題だが、ここまで好調なスタートダッシュを切っていることを考えると、多くのユーザーが価格なりの魅力を感じているということだろう。
図5:「EOS 5D Mark IV ボディ」のユーザー評価(2016年9月21日時点)
このように、40万円前後という高価格帯の製品でありながらも、かなり好調なスタートを切った「EOS 5D Mark IV」であるが、不安もないわけではない。図5は、2016年9月21日時点での、「EOS 5D Mark IV ボディ」のユーザー評価だが、満足度で「4.04」という評価になっており、カテゴリー平均値の4.65を大きく下回ってしまっている。ちなみに前モデル「EOS 5D Mark III ボディ」の満足度は4.75。ライバルと目されるニコンの「D5 CF-Type ボディ」の満足度は5.00、「D810 ボディ」の満足度は4.77。いずれのモデルも4.7を超える評価を受けているだけに、この満足度の低さはさすがに気になる。
評価の各項目を見てみると、評価が高いのは「画質」「操作性」「ホールド感」。逆に低いのは「デザイン」「バッテリー」「携帯性」「機能性」「液晶」などとなる。実際のユーザーレビューを見てみると、厳しめの評価をくだす人がやや多い印象を受ける。個々のレビューを見ると、「動画となると話は別。α6300やGH4の方が全然良い。動画はパナやソニーに2,3歩遅れていると感じられます。」、「せっかくお金かけて開発したセンサーなのに、見事に生かすことができない意図的とも言える設計になっています。動画については、もうキャノンには期待しません。」など、動画撮影機能についての不満の声が散見される。また、価格面についても、「個人的には予算と物欲で撮れる写真は6Dとさほど変わらないと言うか、15万の6Dと40万の5D IVそこまでの差は無いかな?」「現時点での価格設定はやはり高すぎる。他社フルサイズの同等機種と比較して、また前述の不満点からも適正な価格とはとても思えません。この価格なら、ボディ内手ぶれ補正も搭載してほしい。」といった不満の声が散見される。確かに、前モデルの「EOS 5D Mark III ボディ」からは着実なレベルアップをしており、静止画撮影については一定の評価を得ているようだが、ボディだけで40万円前後の価格ということもあり、ユーザーとしてみれば、もう少し何かしらの機能アップやサプライズが欲しかったというところなのかもしれない。
図6:「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの主要メーカー別アクセス数推移(過去6か月)
ただ、そうは言っても、デジタル一眼カメラ市場全体として見れば、キヤノンは比較的盤石な状況にある。図6は、「デジタル一眼カメラ」カテゴリーにおける主要メーカー別のアクセス数推移を示したものだが、常に首位を争っているライバル、ニコンとは、この8月以降大きな差をつけてきている。ひとつには、本機「EOS 5D Mark IV」の発売があり、もうひとつには、大きな改良をとげたミラーレス機の最新モデル「EOS M5」が、先週9月15日に発表されたことがある。こちらの発売は11月下旬ということで少し先になるが、従来の「EOS M」シリーズよりもかなり本格派の機能・性能を備えており、激戦が続く本格派ミラーレスカメラに、ついにカメラ市場の巨頭の一角であるキヤノンが本気で参入してくることになるだけに話題性は高い。対するニコンだが、今年初頭は、APS-Cモデルのフラッグシップ機「D500」を発表して話題をさらったが、すでに売れ筋ランキングでも8位まで後退するなど、一時の勢いはすでにない。目立った新モデルの投入もこの秋はなさそうな感じで、年末にかけてやや厳しい状況となる可能性はある。
今年は、センサーを生産しているソニーが4月に起こった熊本地震で工場が被災し、センサーの供給が滞るなど、全体的に厳しいムードが漂っているデジタルカメラ市場。年末に向けて、キヤノンが放つ「EOS 5D Mark IV」と「EOS M5」が、どこまで善戦できるか、期待がかかるところだ。