“弾丸”試乗レポート
強化されたEV性能や大画面ディスプレイ備え、高級感が増した

必勝を誓ったトヨタ渾身の「プリウスPHV」試乗レポート

トヨタが次世代環境車の柱とうたう「プリウスPHV」が2017年2月15日より発売された。プリウスPHVと通常のプリウスとの違いは、どんなところにあるのか? プリウスPHVの魅力とは? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏が試乗記とあわせて解説する。

発売後1か月の受注は約12,500台。月販目標台数2,500台を大きく上回る、好調な立ち上がりを見せる「プリウスPHV」。アメリカのZEV規制対応のため、売れることが何よりも求められた、トヨタ渾身の1台となった

北米市場のZEV規制対応のためにも、何がなんでも売れる必要のある「プリウスPHV」

トヨタが「次世代環境車の柱」とうたうプリウスPHVの発売がようやく2017年2月15日より始まった。実は、この発売は延期されたものであり、本来は昨年秋ごろの予定であった。しかし、「新しい技術を数多く採用したため、必要な品質を確保しつつ、必要な数を量産することができない」ために発売を延期。アメリカのZEV規制への対応という大人の事情もあって、プリウスPHVの発売はアメリカを優先。その結果、日本での発売が2017年にまでずれ込んでしまったのだ。

ちなみに、アメリカのZEV規制というのは、メーカーごとに販売するクルマの一定数をEVやプラグインハイブリッドといった次世代環境車にしなければ罰金を課するというもの。その対応のためにアメリカでクルマを販売するメーカーは、今、あわててプラグインハイブリッドなどを投入しているのだ。また、その規制をクリアするには、ある程度の数がさばけなければならない。つまり、顧客が納得する価格と内容でリリースしなければならない。そういう意味でも、プリウスPHVは、トヨタとしても何がなんでも売れなければ困る車種なのだ。

プリウスPHV発売の背景には、アメリカのZEV規制がある。同規制をクリアするために、ある程度数を売れるだけの見込みのある価格設定を維持した、次世代環境車にする必要があった

新型の特徴はEV走行距離の大幅な延長

プリウスのプラグインハイブリッド版は、今回のモデルが初めてではなく、先代モデルからすでに存在していた。しかし、先代モデルのプリウスPHVの売れ行きはかんばしくなかった。その理由は「通常モデルよりも80〜100万円も高いのに、それに見合うだけの魅力がなかったから」とトヨタは考えているという。特に「少しでも負荷が大きくなるとすぐにエンジンが始動する。意外とEV走行が少ない」という不満が特に大きかったというのだ。そのため新型のプリウスPHVは、通常モデルとの差別化に力が注がれた。

差別化の最大のポイントはEV走行距離&走行領域の拡大だ。まず、駆動用のリチウムイオン電池は先代モデルの2倍となる8.8kWhの大容量を搭載した。なお、通常のプリウスは約1.3kWh。このたっぷりの電池によってEV走行距離は従来の26.4kmの2倍以上となる、最大68.2kmを達成している。また、ハイブリッドシステムの要である動力分割機構には、2つのモーターが備わっているが、従来は、ひとつだけで駆動し、もうひとつはもっぱら発電を担当していた。これを2つとも駆動に使うことができるように動力分割機構を改良。モーターアシストをより力強くしたことで、モーター走行領域を拡大。モーターだけのEV走行での最高時速は、旧型の100km/hから135km/hにまで高められている。さらに寒いときの暖房用に、マイナス20℃まで利用できるガスインジェクション(トヨタ初採用)を使ったヒートポンプ式のオートエアコンを採用。駆動用バッテリー内部にもヒーターを内蔵し、外部充電中にバッテリーを暖める機能を追加。厳寒期でもエンジン始動を少なくするような工夫が凝らされている。

先代モデルの2倍の容量となる8.8kWhのリチウムイオン電池を搭載。EV走行距離は68.2kmまで伸びた

先代モデルの2倍の容量となる8.8kWhのリチウムイオン電池を搭載。EV走行距離は68.2kmまで伸びた

充電のしやすさもプリウスPHVの特徴のひとつだ。ほとんどのグレードに急速充電機能を装備。最大約20分で満充電の約80%が充電できる。200V(16A)の普通充電ならば、満充電まで約2時間20分だ。さらに、この新型では100V(6A)での充電も可能とした。これはうれしい機能だ。なぜなら、コンセント側が200V(16A)に対応するには、充電専用施設であることが求められる。しかし100V(6A)ならば、普通の家庭用コンセントで対応できるのだ。100V(6A)での満充電までの時間は約14時間となるが、約10万円といわれる充電設備の設置費用が必要ないのはうれしい。

Sグレード以外には、急速充電と普通充電の2つの充電ポートを搭載。時間はかかるが家庭用コンセントで充電できるのは大きな魅力

さらに量産車として初めて、駆動用エネルギーをまかなえるソーラー充電システムも用意した。ルーフにしきつめたソーラーパネルは180Wの発電力を備えており、最大で1日に6.1km分の電力を充電可能としている。

走り以外の点でも、フロント&リヤ周りはプリウスPHV専用デザインを採用。水平基調のデザインは、「プリウスPHVの伸びやかな走りのイメージ」をアピールするものだという。注目はバックドアで、骨格にカーボン素材を採用。アルミ製のバックドア骨格と比較すると40%も軽量化されているという。インテリア系でいえば縦型の11.6インチの大型ディスプレイの採用がトピックだ。使いやすさと先進感を大きく印象づけるモノとなっている。

オプションで用意される180Wの発電力を備えるソーラーパネル。最大で1日6.1km分の充電が行える

オプションで用意される180Wの発電力を備えるソーラーパネル。最大で1日6.1km分の充電が行える

縦型で11.6インチというタブレットのような大型ディスプレイを搭載。先進性のイメージを強く演出している

縦型で11.6インチというタブレットのような大型ディスプレイを搭載。先進性のイメージを強く演出している

バックドアの骨格はカーボン素材。プリウスPHVのような大量生産車に使われるのは画期的なことだ

バックドアの骨格はカーボン素材。プリウスPHVのような大量生産車に使われるのは画期的なことだ

最上級グレードにふさわしい静粛性と走行安定性

続いて試乗の印象を紹介しよう。試乗してみて、すぐに驚いたのはEV領域の広さだ。アクセルをよほど深く踏み込まなければ、まずエンジンは始動しない。きつい坂でもモーター駆動のままグイグイと上ってゆく。高速道路も同様で、普通の流れに乗るだけであればモーター駆動のままで済んでしまう。しかもモーター駆動が気持ちいい。力強くて伸びやか。エンジンの振動がないから、静粛性も良好だ。静粛性は、普通のプリウスよりもすぐれている。

EV走行区間が増えたので室内は静かで高級感が強い。後席の中央にアームレストがあり左右のシートは独立しており、定員は4名

また、高速走行ではどっしりとした安定感があり、微小な操作にもきちんと反応するソリッドな動きも確かめられた。普通のプリウスも、新型となって劇的にハンドリングがよくなったが、プリウスPHVはさらにもう一段磨かれていたのだ。ただし、アクセルをオフにしたときのエンジンブレーキの効きは、通常のプリウスよりも若干、弱くなっているようだ。重量が増加しつつも、JC08モード燃費を37.2km/lを堅持したこととのバーターではないだろうか。

ちなみにカーボンの骨格を持ったバックドア越しの後方視界は、通常のプリウスよりも良好だ。左右が広いだけでなく、中央部が縦に広くなっていることが好結果につながった。

重量が増したことや、燃費数値を追求したことが影響したのか、回生ブレーキの効きは通常のプリウスと比べて少し弱くなっている

後方の視界は通常のプリウスより良好。デザインだけではなく機能性にもすぐれる

後方の視界は通常のプリウスより良好。デザインだけではなく機能性にもすぐれる

新型のプリウスPHVの価格は326万1600円〜422万2800円。やはり先代同様に通常のプリウスよりも80〜100万円高く、値段は下がっていない。しかし、パワートレインから、エクステリア&インテリアなど、その内容の充実度は、先代よりも大幅に強化され、コスパという点では、先代よりもすぐれたものとなっていたのだ。「このクルマは絶対にヒットさせる!」。そんなトヨタの強い思いが見えるような内容であった。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン「動画」まとめページ
ページトップへ戻る