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東京モーターショー2017で復活が噂されるトヨタ「スープラ」を振り返る

トヨタとBMWが業務提携を発表し、協力関係の強化で合意したのは2012年6月のことであった。この時には、スポーツカー/FC(燃料電池)技術/電動化技術/軽量化技術という、4つの分野で協力していくことに合意した。

クルマ好きにとって、最も気になるのはスポーツカーの共同開発だろう。豊田章男社長は、この合意におけるスピーチで「スポーツカー開発は、BMWが最も得意とする分野だと想います。BMWと協業することで、どんなクルマが生まれるのか。想像しただけで、ワクワクした気持ちになります」と述べている。

トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

この合意から5年以上が経過している今年、10月に開催される「第45回東京モーターショー2017」では、トヨタとBMWが共同開発したスポーツカーが披露される可能性が高い。それが噂になっている「スープラの復活」だ。そこで新型スープラを期待しながら、これまでのスープラの足跡を振り返ってみたい。

もともとは「セリカXX」の北米向けの車名だった「スープラ」

BMWがスポーツカーの開発を得意とするのは確かだが、トヨタもこれまでに多くの名車を生み出してきた。

1965年にはコンパクトで機敏な走りが楽しい「トヨタスポーツ800」を、1967年には本格スポーツカーの「トヨタ2000GT」を発売している。

トヨタ「2000GT」MF12L

トヨタ「2000GT」MF12L

1970年にはスペシャルティクーペの「セリカ」を投入してヒット作になり、1978年には上級モデルの「セリカXX」が加わった。1981年には2代目にフルモデルチェンジされ、さらに人気を高めている。

そして、1986年に3代目となったセリカXXは、車名を北米と同じ「スープラ」へと統一した。もともと初代と2代目のセリカXXも北米ではスープラとして売られていたので、そこから数えれば1986年のスープラは3代目だ。

1986年登場のスープラは、クルマ造りの手法も変えた。それまでのセリカXXは、直列4気筒エンジンを搭載するセリカの6気筒版だったが、1985年に発売された4代目セリカは駆動方式を従来の後輪駆動から前輪駆動に刷新したことで、スープラはもはや独立した車種となったからだ。

3代目(日本では初代)となるトヨタ「スープラ」、通称「70スープラ」。画像のグレードは3.0GT TURBO

3代目(日本では初代)となるトヨタ「スープラ」、通称「70スープラ」。画像のグレードは3.0GT TURBO

リトラクタブルヘッドライトに3ドアクーペスタイルが印象的な「70スープラ」

初代スープラは前述のように1986年に発売された(A70型、以降「70スープラ」と呼ぶ)。70スープラのエンジンはすべて直列6気筒。排気量は2リッターがSOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)、DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)、DOHCターボの3種類で、最もパワフルな3.0GTターボには、最高出力が230馬力に達する3リッターのDOHCターボが搭載された。

トヨタ「スープラ」3.0GT TURBOのフロントスタイル

トヨタ「スープラ」3.0GT TURBOのフロントスタイル

トヨタ「スープラ」3.0GT TURBOのリアスタイル

トヨタ「スープラ」3.0GT TURBOのリアスタイル

トヨタ「スープラ」2.0GT TWIN TURBOのフロントスタイル

トヨタ「スープラ」2.0GT TWIN TURBOのフロントスタイル

トヨタ「スープラ」2.0GT TWIN TURBOの内装

トヨタ「スープラ」2.0GT TWIN TURBOの内装

70スープラのボディスタイルは、直列6気筒エンジンを搭載した後輪駆動のスポーツカーらしく、長いボンネットを持つ外観が特徴だ。ボディの後部にはリヤゲートが装備されている3ドアクーペであった。ヘッドランプは当時流行したリトラクタブル式で、スイッチ操作により持ち上がる。閉じた状態では、鋭角な外観が印象的だった。

70スープラのボディサイズは、全長が4,620mmとクーペでは比較的長く、全幅は2リッターエンジン搭載車が1,690mmで5ナンバーサイズに収まる。3.0GTターボは排気量が3ナンバーサイズになるので、全幅も1,745mmに拡幅された。

サスペンションは、4輪にダブルウィッシュボーンを装着している。初期型は設定がやわらかく、カーブを曲がった後の揺り返しが大きかった。当時は、Lサイズのスポーツカーでありながら安定性のなさに不満を感じていたが、乗り心地は快適だった。

トヨタ「スープラ」走行イメージ

トヨタ「スープラ」走行イメージ

この後、1988年にマイナーチェンジが実施され、フロントマスクのデザインを変更するなど改良が施された。足回りも見直されて、乗り心地は硬めになったが、走行安定性の不満は解消された。

1990年には再びマイナーチェンジを実施して、2.5GTツインターボが追加された。2.5GTには、直列6気筒2.5リッターエンジンにターボが2つ装着されて、最高出力は280馬力に達した。

全モデルに3L直6エンジンを搭載した「80スープラ」

1993年になるとスープラは2代目(海外では4代目)に進化した(A80型、以降「80スープラ」と呼ぶ)。80スープラでは「THE SPORTS OF TOYOTA」を名乗り、メーカーみずからがスポーツカーだと表現している。これはトヨタでは珍しく、トヨタ2000GT以来のことであった。

4代目(日本では2代目)となるトヨタ「スープラ」、通称「80スープラ」。画像のグレードはGZ

4代目(日本では2代目)となるトヨタ「スープラ」、通称「80スープラ」。画像のグレードはGZ

1989年には消費税の導入と併せて自動車税制が改正され、3ナンバー車の不利が撤廃されていた。そこで80スープラは基本設計の段階からすべて3ナンバー車になり、全幅は1,810mmに拡幅された。逆に全長は初代よりも100mm短い4,520mmで、丸みのある塊感をともなう外観が、スポーツカーらしさをいっそう引き立てた。

トヨタ「スープラ」RZのリアスタイル

トヨタ「スープラ」RZのリアスタイル

トヨタ「スープラ」GZの内装

トヨタ「スープラ」GZの内装

搭載エンジンは、直列6気筒の3リッターエンジンのみをラインアップ。「SZ」が搭載する自然吸気のノーマルエンジンは最高出力が225馬力、「RZ」と「GZ」はツインターボを装着して280馬力を発生させた。ツインターボには電子制御式のスロットルが採用され、細かな駆動力のコントロールを可能にした。トランスミッションは、「RZ」にゲトラグ製6速MTが採用されている。また、「RZ」にはビルシュタイン製ショックアブソーバーも装着された。

トヨタ「スープラ」の走行イメージ

トヨタ「スープラ」の走行イメージ

そして、80スープラが発売された1990年代は、スポーツカーを中心に走りに関する技術が急速に進化した時代だった。そのために1989年に発売された日産「スカイラインGT-R」、1990年に発売された三菱「GTO」などは、4WD(4輪駆動)、4WS(4輪操舵)、電子制御式ショックアブソーバーなどを備えたが、80スープラはこれらのメカニズムを採用していない。機能をシンプルに抑えて、ドライバーの自然なコントロール性や運転の楽しさを追求している。この考え方は今日の「86」などにも受け継がれている。

BMWと共同開発すると目されている次期スープラは、左右輪の駆動力配分を積極的に変えて、カーブを素早く安定して曲がるためのトルクベクタリングなどを採用するだろう。そのうえで自然な運転感覚を味わえるに違いない。

トヨタ 次期スープラのベースデザインになるのではと噂されているコンセプトカー「FT-1」

トヨタ 次期スープラのベースデザインになるのではと噂されているコンセプトカー「FT-1」

トヨタは生産規模も大きいため、次期スープラで採用されるさまざまな走りの技術が、トヨタのセダン、さらにはSUVなどに採用される可能性も高い。未来のトヨタ車が見えてくる次期スープラに期待したい。

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渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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