ホンダ「シビック」は、世代によって受け止め方の違うクルマだ。1972年に発売した初代モデルから、2000年まで販売された6代目(EK型)をよく知る30代後半以上のユーザーには、スポーティーでなじみやすいコンパクトカーというイメージがあるだろう。
復活したホンダ 新型「シビック ハッチバック」(左)とホンダ 新型「シビック セダン」(右)
また、もう少し年齢層が下がると、よりスポーツ指向で高性能な「シビック タイプR」の印象が強まる。シビック タイプRは、1997年に発売された6代目シビックに設定されて以来、フルモデルチェンジのたびにラインアップされた。2010年に、日本製の8代目シビックが生産を終えた後も、シビックはイギリス製のタイプRだけが日本でも販売され、その存在感を強めた。
だが、さらに若い世代になると、シビックという車種自体を知らないのだ。シビックは、いわばジェネレーション・ギャップの大きなクルマになっている。そんなシビックが10代目に一新され、2017年9月29日から国内販売を開始した。9代目を飛び越したシビックが、6年半ぶりに復活した。
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ホンダ 新型「シビック ハッチバック」イメージ
“シビック復活”の直接的な原因は、海外における好調な販売を受け、新型シビック セダンを国内の寄居工場で生産することだった。国内で造るなら国内販売も可能であり、セダンだけではインパクトが弱いから、5ドアハッチバックもイギリスから輸入することにしたというわけだ。
しかし、開発者は「国内生産への移行だけが、国内販売の理由ではない」という。「9代目も国内で売りたかったが、(2008年の末に)リーマンショックが発生して販売効率が優先された。そのために9代目は抜けてしまったが、10代目を日本で売るのは当然で、復活という意図ではない」とのことだ。
それでも、日本のユーザーにとってシビックが不在だった7年間は長い。2011年には初代「N-BOX」が発売されて軽自動車のベストセラーになり、「N-WGN」も人気を高めた。「フィット」や「フリード」もフルモデルチェンジを受けて売れ行きを伸ばしている。そんなこともあって、シビックは「日本を見捨てて海外モデルとして展開しながら、今さら戻ってきても遅い」という見方をされてしまう。
この点も開発者に尋ねたが、「ホンダのイメージが、軽自動車やミニバンに向かっている今だからこそ、シビックの発売には意味がある」という。ホンダ車には昔から変わらない“運転の楽しさ”が宿り、それをわかりやすく表現したのが昔から続くシビックというわけだ。
はたしてシビックは、今でも日本のユーザーの心に響くのか。そこを探るべく試乗を行った。