レビュー
ターボ、ハイブリッド、V6、3タイプのエンジン搭載モデルに試乗!

トヨタ 新型「クラウン」試乗/決死の覚悟で若返りを図る唯一無二の国産セダン

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「日本でセダンが売れない」。昨今、よく聞かれる言葉だが、そもそも日本の自動車メーカーが作るセダンは、そのほとんどがいまや海外向けに開発されている。その海外向けのセダンを日本で販売しているのだから、売れなくなって当然ともいえる。

2018年6月25日に発売される、15代目のトヨタ 新型「クラウン」

2018年6月25日に発売される、15代目のトヨタ 新型「クラウン」

だが、例外がある。トヨタ「クラウン」だ。クラウンは日本市場をメインターゲットとしており、トヨタディーラーも主力車種として販売に力を注いでいる。そのために、「セダンが売れない」「値段が高いクルマは売れない」といわれる中で、クラウンは売れ筋グレードの価格が500万円を超える高級セダンにもかかわらず、その販売は堅調だ。

クラウンの悩みの種はユーザーの“高齢化”

とはいえ、そんなクラウンにも悩みはある。クラウンユーザーの平均年齢が、65〜70歳と高齢なことだ。

1955年に発売された初代「クラウン」

1955年に発売された初代「クラウン」

初代が1955年に発売されたクラウンは、長年にわたってクラウンを乗り継ぐオーナーを意識したフルモデルチェンジを繰り返してきたという歴史がある。その結果、「年配の方が乗るクルマ」としてのイメージが定着してしまい、高齢化を招いてしまった。このままの状態が続けば、クラウンの需要が将来的に先細りすることは明白だ。

1999年に発売された11代目「クラウン」

1999年に発売された11代目「クラウン」

トヨタも、かなり前から危機感を抱いていた。そのため、1999年に発売された11代目クラウンでは、スポーティーな「アスリート」をシリーズラインアップに加えた。その戦略によって、今ではアスリートの比率がクラウン全体の半数に達するようになった。

2003年に発売された12代目「クラウン」

2003年に発売された12代目「クラウン」

さらに、2003年に発売された12代目では、「ゼロクラウン」と称してメカニズムが刷新された。そして、2012年に発売された先代型の14代目では、威圧感のある個性的なフロントフェイスとなって、保守的な雰囲気の払拭が図られている。

だが、ここまでしてもクラウンの高齢化は止められない。そこで、2018年6月26日にクラウンは15代目にフルモデルチェンジされ、走行性能からグレード構成まで、ユーザー層の若返りを図った大幅な刷新が施される。

発売前に、3種類のエンジンラインアップすべてに試乗

新型クラウンのエンジンは、2L直4ターボ、2.5L直4ハイブリッド、3.5L V6ハイブリッドの3種類をラインアップ。先代クラウンにあった、2.5L V6や3.5L NAエンジンは、新型クラウンでは用意されない。

グレード構成も見直されている。先代クラウンは豪華指向の「ロイヤルサルーン」、スポーティーな「アスリート」、ロングボディの「マジェスタ」と3つのモデルが存在していたが、新型クラウンではボディが1種類に統合されている。

グレードは、ベーシックな「B」、装備を充実させた「S」、豪華な雰囲気を持つ上級グレードの「G」、スポーティーな「RS」が設定され、前述の3種類のエンジンがそれぞれ組み合わせられる(Bは2L直4ターボのみ)。SやGは、先代クラウンのロイヤルサルーンやマジェスタに相当する。RSは、アスリートの後継だ。

プラットフォームは、レクサス「LS」やレクサス「LC」と共通のものへと刷新された。クラウンはLSに比べて全幅が100mm狭いから相違点もあるが、合理化も視野に入れて共通化されている。

そんな新型クラウンのプロトタイプを、正式発売前にクローズドコースで先行試乗する機会が得られた。今回、2L直4ターボ、2.5Lハイブリッド、3.5L V6ハイブリッドとすべてのエンジンタイプに試乗したので、新型クラウンの走りを中心とした試乗レポートを皆さんにお伝えしたい。

3.5L NAエンジンに近い、上質で洗練されたフィールの「2L直4ターボ」

新型「クラウン」に搭載されている2L直4ターボエンジン

新型「クラウン」に搭載されている2L直4ターボエンジン

まず、2L直4ターボエンジンを搭載した、スポーティーグレード「RS」に試乗した。このターボエンジンは、8速ATの採用もあわせて基本的なメカニズムそのものは先代クラウンと共通だ。だが、ターボ特有のクセが抑えられていて、ドライブフィールは洗練されている。このフィーリングは、3.5L NAエンジンに近い。

さらに、8速ATの制御も以前に比べて滑らかになった。2L直4ターボエンジンの走行フィールは、総じて上質になったといえるだろう。

スポーティーなRSは硬めの乗り味ながらも操舵には忠実

新型クラウンでは、プラットフォームとサスペンションが刷新されていることに注目したい。RSで車線変更を試すと、ステアリングを切り始めた際に先代クラウンと比べて正確な反応を見せる。先代クラウンも決して鈍いわけではなく、高級セダンらしい上質な操舵フィールであったが、新型クラウンでは操舵に対する車体の動きが実に忠実だ。

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

また、コーナーリング中はコーナー外側に位置する前輪を中心として車体がしっかりと踏ん張ってくれて、直進時や危険回避などによる急激な挙動の際には後輪の接地性が高く、どんなシーンでも高い安心感を得ることができる。

RSは、タイヤサイズが18インチ(225/45R18)と大きく、足まわりがやや硬めに設定されているので、SやGなどほかのグレードと比べると、その動きは機敏だ。先代クラウンでいえばアスリートの後継となるが、走りの質そのものが先代アスリートと比較して相当に向上している。

RSの乗り心地は、やや硬めだ。荒れている路面などを時速40〜50km程度で走行すると、凹凸のショックは相応に伝わってくる。だが、ショックの粗さは抑えられており、締め上げられた足まわりでありながら、不快感を覚えることはない。

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

なお、RSでは全グレードにショックアブソーバーの減衰力を変化させる可変ダンパー「AVS」が装備されている。走行モードは、「エコ」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ S」「スポーツ Sプラス」の5つ。走行モードを「スポーツ Sプラス」に設定すれば、ショックアブソーバーが硬めになり、乗り心地が硬くなって操舵感も機敏になる。峠道など、積極的な走行が必要とされるシーンで使いたい。逆に、「コンフォート」にすると車両の動きが少し曖昧になるが、乗り心地も柔軟になるので、市街地走行で利用する価値はあるだろう。

もともとクラウンは後輪駆動のセダンなので、低重心でボディ剛性を高めやすく、前後輪の重量配分もすぐれている。アスリートを中心に走行安定性が高かったが、新型クラウンはさらに磨きがかかっている。それを、走りの面から実感できるのがRSだ。

バランスのいい「2.5Lハイブリッド G」はクラウンを代表するグレード

新型「クラウン」Gグレードのエクステリア

新型「クラウン」Gグレードのエクステリア

次に、2.5Lハイブリッドエンジンを搭載した「G」に試乗した。2.5Lエンジンがベースのハイブリッドは先代クラウンにも採用されていたが、新型クラウンが搭載するハイブリッドは、カムリが搭載している新設計のものだ。そのため、これまで以上に効率にすぐれている。

アクセルを踏み込んだときの反応は、先代クラウンの2.5Lハイブリッドよりも機敏だ。実用回転域の駆動力も少し向上しているような印象を受ける。加速フィールは、無段変速のハイブリッドらしくスムーズだ。

新型「クラウン」に搭載されている2.5Lハイブリッドエンジン

新型「クラウン」に搭載されている2.5Lハイブリッドエンジン

登坂路などでアクセルペダルを深く踏み込むと、先にエンジン回転数が高まり、後から追うように速度が上昇していく。この特性はこれまでと同じだが、実用回転域の駆動力に余裕があり、違和感が残るような場面が減っている。エンジンノイズなどは、先代クラウンに比べてさらに静かになっていて、無段変速による滑らかさと相まって加速感はなめらかで上質だ。

サスペンションのセッティングは、RSに比べるとやわらかく、低速で走っても乗り心地は快適に感じる。タイヤサイズは17インチ(215/55R17)で、しなやかな印象だ。決してフワフワした乗り心地ではなく、クラウンのイメージに合っている。これなら、ロイヤルサルーンからの代替えにも適するだろう。

RSに比べると、乗り心地のよさや快適性を優先しているので機敏に曲がる印象は薄れているが、コーナーを曲がっても動きの鈍さは感じない。タイヤが路面をつかむ力は十分に発揮されていて、旋回軌跡は拡大しにくい。

言い換えれば、2.5LハイブリッドGは乗り心地や走行安定性、ノイズなどを含めた快適性のバランスが最も取れている、クラウンを代表するグレードといえそうだ。

3.5L V6ハイブリッドはクラウンのボディにはやや過剰気味

新型「クラウン」に搭載されている3.5L V6ハイブリッドエンジン

新型「クラウン」に搭載されている3.5L V6ハイブリッドエンジン

新型クラウンが搭載するエンジンの中で、最も高性能なのが3.5L V6ハイブリッドだ。レクサス「LS500h」「LC500h」と同じタイプで、パワフルなエンジンに駆動力の高いモーターを組み合わせているので、総合的な動力性能は、4.5L NAエンジンに匹敵する。

ハイブリッドなので、加速そのものは滑らかだ。だが、4速の有段機能も組み合わせて、10段変速として使えるから、メリハリのある機敏な走りも楽しめる。

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

新型「クラウン」RSグレードの走行イメージ

ただし、ボディが重いのでカーブを積極的に曲がると、スポーティーなRSアドバンスでも足まわりの性能が不足する。コーナーの後半でアクセルペダルを踏み込むと、2Lターボエンジンや2.5Lハイブリッドに比べて、挙動の乱れを抑える横滑り防止装置が作動しやすい。

3.5Lハイブリッドと相性がいいのは、ワイドボディを持つレクサスLSやLCだろう。全幅を1,800mmに抑えた新型クラウンにとっては、動力性能が少し過剰に感じられた。

新型クラウンは、国産セダン存続という役目を担っている

新型「クラウン」イメージ画像

新型「クラウン」イメージ画像

新型クラウンをスポーティーに楽しみたいユーザーには、2L直4ターボエンジンを搭載した「RS」をすすめたい。2Lながら動力性能に余裕があり、8速ATの組み合わせで走りを楽しめる。足まわりが少し硬めで操舵の切れがよく、安定性も高い。40代以前の若いユーザー層に一度乗ってみてもらいたいグレードだ。

市街地や高速道路などさまざまなシーンで、クラウンならではのリラックスした余裕の走りを求めるユーザーには、2.5Lハイブリッドを搭載した「S・Cパッケージ」、あるいは上級の「G」をおすすめする。S・Cパッケージは、買い得なSをベースとして安全装備を割安な価格で加えており、機能、装備、価格のバランスが取れた仕様となっている。

3.5L V6ハイブリッドは、格上のパワーを備えていることから積極的にはすすめづらい。クラウンにハイパワーを求めるという一部ユーザーに限られてくるのだが、前述のとおり足まわりの許容を超えるような過剰なパワーを備えているので、試乗の際などには注意したい。

最近は、メルセデス・ベンツ C、Eクラス、BMW3、5シリーズなどの輸入車セダンが、都市部を中心にシェアを拡大させている。クラウンよりも少しコンパクトなCクラスや3シリーズは、クラウンとほぼ同じ価格帯に属しており、ユーザーが徐々に奪われつつある状況だ。

いまや、日本で走ることをしっかりと考えて作られたセダンは、クラウンだけとなってしまった。それだけに、新型クラウンが成功するかどうかは、もはやトヨタ1社という枠組みにとどまらず、国産セダンという長い歴史の未来をも担っているといえるのかもしれない。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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