いま、もっとも注目されている軽自動車のひとつが、2019年3月に発表、発売された日産新型「デイズ」、三菱 新型「eK」だ。注目されている理由としては、軽自動車で初めて「プロパイロット」(三菱では「マイパイロット」と呼ぶ)が搭載されたこと。
今回、日産 新型「デイズ」の実力を確かめるため、市街地、郊外路、高速道路とさまざまなシチュエーションで走行してみた。また、軽自動車へ初の搭載となる「プロパイロット」についても、その使い勝手などをテストした
そして、新型デイズ、新型eKはクルマとしての実力が相当に高く、メディアからもユーザーからも絶賛の声が上がっていることだ。そこで今回は、日産の新型デイズで市街地から高速道路、郊外路など約300kmを走行して、その実力を確かめてきた。
今回試乗した、新型デイズのグレードは「ハイウェイスターX プロパイロットエディション」だ。
今回、試乗したグレードは「デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション」だ。プロパイロットが採用されていることに加えて、リチウムイオンバッテリーとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドも搭載されている
同車両は、NA(自然吸気)エンジンにスマートシンプルハイブリッドを搭載する上級グレード。スマートシンプルハイブリッドとは、リチウムイオンバッテリーと強化したアイドリングストップ用モーター(2.0kW/40Nm)を搭載するマイルドハイブリッドで、加速時にはモーターをエンジンの補助駆動力として使う。今回は、このスマートシンプルハイブリッドの有用性も同時に試したかったのでこのグレードを選んだ。参考までに、以下は新型デイズのグレードラインアップと価格だ。
■日産 新型「デイズ」のグレードラインアップと価格
S:1,273,320円(2WD)/1,405,080円(4WD)
X:1,325,160円(2WD)/1,456,920円(4WD)
ハイウェイスターX:1,469,880円(2WD)/1,601,640円(4WD)
ハイウェイスターX プロパイロットエディション(今回の試乗車):1,567,080円(2WD)/1,698,840円(4WD)
ハイウェイスターG ターボ:1,549,800円(2WD)/1,681,560円(4WD)
ハイウェイスターG ターボ プロパイロットエディション:1,647,000円(2WD)/1,778,760円(4WD)
走行ルートは、価格.comマガジン編集部のある東京・恵比寿から新宿までは市街地を走り、新宿からは高速道路を使って河口湖へ。河口湖からは、郊外路で道の駅「朝霧高原」まで走行して、道の駅到着後は同ルートを戻るおよそ300kmの道のりだ。試乗したのは5月中旬の涼しい時期だったため、エアコンは常時OFFで走った。乗員は、体重50〜60kg前後の男性2名だ。
まず、市街地を走り出して感じたのは、発進加速のよさと静粛性の高さだった。NAエンジンを搭載する軽自動車の発進加速といえば、高回転まで回してうなるような音とともに速度を上げていくイメージだが、新型デイズではNAエンジンであることを忘れるほど、力強く発進する。ただし、従来のNAエンジン車のように回転を上げて走ることもたびたびあったから、リチウムイオンバッテリーの充電状況によるのかもしれない。発進直後から、いきなりスマートシンプルハイブリッドの有用性を感じさせられることとなった。
市街地の試乗では、マイルドハイブリッドによるモーターアシストの使い勝手のよさや静粛性の高さなどを実感した
静粛性のよさについては、下手なコンパクトカーをしのぐほど。エンジン音が静かなのだ。さらに、スマートシンプルハイブリッドの恩恵で、発進加速で高回転まで引っ張る必要がないため、聴こえてくる音の多くがロードノイズという印象だった。とはいえ、そのロードノイズはやや耳障りなので、もう少し静かになってくれると嬉しい。また、静かさゆえかもしれないが、タイヤによってはねられた小石がホイールハウスに当たる音が気になった。
乗り心地に関しては、突っ張るような硬さもヒョコヒョコした動きもなく良好だったから、ホイールハウスからの音だけが残念だ。
恵比寿〜新宿の市街地燃費は「19.0km/L」。市街地のカタログ燃費(WLTCモード)の16.9km/Lをラクラクと超えてきた。もちろん、とくに燃費に気を使って運転したわけではないことをお伝えしておきたい。
行きの市街地の燃費は「19.0km/L」を記録した
高速道路の走行で注目すべきは、軽自動車で初搭載となる「プロパイロット」だろう。「セレナ」や「リーフ」で導入済みの、日産独自のこのシステムは、いわばステアリングアシストによる車線維持機能のついたACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。軽自動車では、先にホンダ「N-BOX」などがACCを搭載しているが、停止まで作動してステアリングアシストが介入するのは、新型デイズが初となる(2019年3月の発売時点で)。
新型「デイズ」には、リーフやセレナに搭載されている「プロパイロット」と同様に、ブルーの「プロパイロットスイッチ」がステアリングに備えられている。このプロパイロットスイッチを押して、左の「SET−」ボタンを押すだけでプロパイロットによる制御が開始される
プロパイロットの起動ボタンを押し、「SET−」ボタンを押すことでプロパイロットの作動が開始する。以前、「リーフe+」を試乗したときには、車線維持で落ち着かない動きがあったり、すぐにステアリングアシストが解除されてしまったりといった点があったが、新型デイズではそのあたりが改善され、プロパイロットにまかせて走れるシーンが増えた印象を受ける。こうした先進安全運転支援システムは、新しければ新しいほど改良が進むのだろう。
新宿から河口湖までの道のりのほとんどを「プロパイロット」を使って走行。新型「デイズ」に搭載されているプロパイロットは、リーフやセレナに搭載されているものよりも制御が緻密に感じられた。これなら、遠距離もラクに移動することができそうだ
唯一、左右両方の車線が破線のときは、ステアリングアシストに迷いのある動作が見受けられたが、気がつけば高速道路のほとんどをプロパイロットで走っていた。ちなみに、停止まで制御するプロパイロットだが、再発進時にはふたたびボタンを押す必要がある。
100km/hでのエンジン回転数は、2,600rpmほど。上り区間でこそ4,000rpm近くまで回転が上がるが、法定速度で走っているかぎり、乗り心地も含めて“NAの軽”であることを意識させられることはほとんどない。なお、シートは座面がやわらかめで1時間半ほど走ったところでおしりが痛くなってきたことは伝えておこう。
新宿〜河口湖までの高速道路における燃費は、「25.7km/L」。WLTCモードの高速道路モードが22.6km/Lだから、またしてもカタログ燃費超えを達成してしまった。しかも、この高速道路は上り坂が多い区間なのにだ! 下りに転じる帰りの高速道路はどこまで伸びるのだろうか……?
行きの高速道路の燃費は「25.7km/L」を記録した
それでは、アップダウンやコーナーリングが続く郊外路はどうだろうか? 河口湖から「道の駅 朝霧高原」までの郊外路を走行してみた。
新型「デイズ」は、マイルドハイブリッドによるモーターアシストも手伝って、郊外路でも力不足と感じるような場面は見られなかった
ステアリングの手応えはやや希薄だが、足回りの安定感も含めてコーナーリング性能は十分。最高出力38kW(52PS)/6,400rpm、最大トルク60Nm(6.1kgf)/3,600rpmと限られたスペックゆえにパワフルとまではいかないが、制限速度内で不足を感じることはあまりないだろう。最大トルクを3,600rpmで発生するため、この回転域で走行することが多かったが、室内に入ってくるエンジン音が小さいために騒音面で気になることはなかった。
行きの郊外路の燃費は「27.1km/L」、帰りの郊外路の燃費は「37.5km/L」を記録した
上り坂が続いた、郊外路の行きの燃費は「27.1km/L」。そして、下りに転じた帰りの燃費は、なんと「37.5km/L」を記録! なお、郊外モードのカタログ燃費(WLTCモード)は「23.0km/L」である。
ここまでドライバー目線でテストしてきたが、往路は後席での乗り心地をチェックした。新型デイズの後席は、子供が座りやすいように座面を低めにしているそうだ。実際に乗ってみるとたしかに低く、ソファに座っているような感覚だった。身長177cmの筆者が座ると、足を投げ出す角度がちょっと微妙。シートの形状は平板で、座り心地も良好とは言えないが、チャイルドシートを設置するにはこうした形状のほうがいい場合もあるため、あえてそうしているのかもしれない。
リアシートは、子供が座りやすいように低めの座面になっている。大人が座ると、ちょっと低すぎるかもしれない。また、ロードノイズも少し気になるので、試乗の際には後席へ積極的に座ってみたほうがいいだろう
高速道路を走行中は、ロードノイズが常に「ゴー」と響いている感じ。前席で気になったロードノイズの発生源は、どうやらリヤまわりのようだ。市街地ではそれほど気にならなかったが、リヤまわりが静かになれば、さらに印象のいいクルマになることは間違いない。
復路の高速道路では、東京近辺で渋滞に巻き込まれたものの、0km/hの停止にまで対応するプロパイロットのおかげで、疲れは大幅に軽減された
復路の燃費も報告しておこう。下り坂が多い高速道路区間は、上りだった往路を大きく上回る「35.0km/L」。市街地は、夕方の混んだ都内だったにもかかわらず「19.0km/L」だった。新型デイズの低燃費には驚くほかない。しかも、あとで気がついたのだが、試乗車は標準の14インチではなく、燃費には不利になるであろうオプションの15インチホイールを履いていたのだった。
帰りの高速道路の燃費は「35.0km/L」を記録した
帰りの市街地の燃費は、行きと同じ「19.0km/L」を記録した
■新型「デイズ ハイウェイスターX プロパイロットエディション」の燃費
-実燃費-
市街地(行き):19.0km/L/(帰り):19.0km/L
郊外路(行き):27.1km/L/(帰り):37.5km/L
高速道路(行き): 25.7km/L/(帰り):35.0km/L
-カタログ燃費(WLTC)-
市街地:16.9km/L
郊外路:23.0km/L
高速道路:22.6km/L
WLTC総合:21.2km/L
-カタログ燃費(JC08)-
28.6km/L
新型「デイズ」の郊外路走行イメージ
驚くほどの低燃費をたたき出したため、燃費の話が多くなってしまったが、動力性能、乗り心地、静粛性などに大きな不満はなく、むしろ「軽自動車だから」という注釈を抜きに語れる実力の高さが光る1台だった。インパネやメーターなどの質感も高く、上級車種も顔負け。軽自動車のクオリティがまたひとつ上がったと言えるだろう。
新型「デイズ」の郊外路走行イメージ
今回、テストした「ハイウェイスターX プロパイロットエディション(2WD)」は、オプション抜きで、1,567,080円。プロパイロットのないハイウェイスターXは、およそ10万円安い1,469,880円だ。プロパイロットがつかなくても、エマージェンシーブレーキや車線逸脱防止支援システムはつくから、高速道路を頻繁に走らないならば、プロパイロットエディションでなくてもいいだろう。どちらも選べる設定はうれしい。ただし、スマートシンプルハイブリッドがハイウェイスターにしか組み合わされないのはちょっと残念だ。標準車=廉価版ではなく、デザインの好みで選ぶことができれば、さらに選択肢は広がるはずだ。