バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
バランスがバツグンでスペック以上に速くて乗りやすい!

操るおもしろさにハマる! カワサキのオフロードバイク「KLX230」の魅力を語らせてくれ!!


250ccクラスのオフロードバイクとしては、久々の完全新設計となるカワサキ「KLX230」。すでに動画で試乗レポートを紹介しているが、正直、語り足りない! ということで、KLX230の魅力をたっぷり伝えさせていただこう。

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カワサキのオフロードバイクの看板だった「KLX250」

オフロードバイクのラインアップが充実していたのは、バイクブームだった1980〜90年代の頃までさかのぼる。当時は2ストロークエンジン車と4ストロークエンジン車のほか、ツーリング向けモデルも各メーカーが用意していたほどだったが、時代とともに厳しくなる排ガス規制と比例するように2ストロークエンジン車が姿を消し、さらに、日本国内のバイク販売台数が減少したことで、近年は4ストロークエンジンのオフロードバイクがツーリング車も兼ねる状況に。そんな中、最後まで本気でオフロードを攻められるようなバイクを手がけ続けたのがカワサキだ。

カワサキのオフロードバイクといえば、ツインカム(DOHC)の水冷単気筒エンジンを搭載し、倒立式のフロントフォークなどを装備した「KLX250」シリーズが有名だ。シリーズ最初のモデルが登場した1993年頃のオフロードバイクは、速さをウリにした軽量でハイパワーな2ストローク車が主流で、燃費がよく、なめらかな走行感の4ストローク車は“おとなしめ”な印象が強く、そういった傾向のモデルが多かった。そこに現れたのが、4ストロークエンジンを備えたKLX250。2ストロークモデルに劣らない走行性能を誇るKLX250は瞬く間にオフロードライダーに高い人気となり、その後、2ストローク車が環境規制によって姿を消す中、KLX250シリーズは2016年のファイナルエディションまで長きに渡って同社のオフロードマシンの看板であり続けた。

走りの性能を重視したKLX250は“闘う4スト”というキャッチコピーとともに登場した。写真は2016年に発売された「KLX250 ファイナルエディション」

スペックダウンしただけじゃない! 「KLX230」の車体設計には意味がある

今回紹介する「KLX230」は、KLX250の後継モデルとなる。しかも、ただモデルチェンジするだけでなく、この時代にエンジンからフレームまで新設計としながら、メーカー希望小売価格は495,000円(税込)とリーズナブルなのだから期待が高まらないワケがない。だが、スペックを見てみると、エンジンは空冷のシングルカム(SOHC)となり、排気量も232ccと、KLX250より17cc縮小している。単純な見方をすると、ただスペックを下げて価格を抑えたと思われかねないが、採用された装備にもエンジンにもすべて理由があるのだ。

サイズは2,105(全長)×835(全幅)×1,165(全高)mmで、重量は134kg。2016年に発売された「KLX250 ファイナルエディション」のサイズは2,200(全長)×820(全幅)×1,190(全高)mm、重量は136kgだったので、若干コンパクトになった

オフロードバイクは基本的に、ライダーが積極的に乗る位置を変えて荷重をコントロールするのだが、近年は特に、シートの前側に乗って、コーナーリング中の前輪に荷重をかけるスタイルが一般的だ。このような乗り方をするには、前方に長いシートが必要となるため、ガソリンタンクを小さくするか配置位置を低くしなくてはならない。しかし、KLX250に搭載されていた水冷のDOHCエンジンはヘッドが大きく、高さが出てしまう。そこで、高さを抑えられる空冷のSOHCエンジンが採用され、それにあわせてフレームも新設計された。つまり、スペックにこだわらず、ライディングポジションまで含めた全体のバランスを重視した設計となっているのだ。

タンクの上部まで伸びた長いシートにより、ライディングポジションの自由度がアップ。フラットな形状で、乗車位置の移動もしやすそうだ

長いタンクを装備するため、水冷のDOHCエンジンから空冷のSOHCエンジンに変更。空冷232ccのSOHCエンジンの最高出力19PS。最高出力24PSだったKLX250と比べると見劣りするが、最大トルクは19Nm と、KLX250の21Nmと比べて大きく落ちてはいない

ガソリンタンクをかなり低い位置に搭載できたのは、空冷のSOHCエンジンと新設計されたフレームのおかげだけではない。実は、ガソリンタンク自体にも工夫が施されている。オフロードバイクのガソリンタンクは一般的に溶接でできるリブが下にあるのだが、KLX230は上下に分割したものを溶接し、リブをサイドに持ってくることで下にはみ出るリブの高さまで削減しているのだ

バランスを重視したであろう設計思想は、足回りからも伝わってくる。前後のサスペンションストロークは220mmで、オフロードバイクとしては十分な量を確保しているものの、フロントフォークはKLX250に採用されていた倒立式ではなく、細身の正立式とされた。倒立式のほうが圧倒的に剛性は高いが、KLX250よりも重量が軽く、馬力も小さいKLX230は、コースなどをそこまで高速で走るようなマシンではない。もちろん、コストを抑えられることも関係しているだろうが、むやみに剛性を高めるだけでなく、エンジンや車体とのバランスを考慮して正立式が採用されたと思われる。

正立式のフロントフォークはかなり細身で、中央部に蛇腹式のカバーを装着している

正立式のフロントフォークはかなり細身で、中央部に蛇腹式のカバーを装着している

さらに、前後のABS付きディスクブレーキにもこだわりがある。オフロードでは舗装路よりもタイヤが細かくすべったり、グリップしたりを繰り返しながら走行するが、そうした小さなスリップを感知してABSが作動してしまうと、ライダーが望むような制動力が得られないこともある。その対策としてKLX230には、ボッシュと共同開発した「デュアルパーパスABS」が採用された。一般的なものよりABSの介入をギリギリまで遅らせる設計とすることで、少しでもライダーの意に沿った制動力が得られるようにしているのだそう。オフロード走行で行うことが多い、意図的に後輪をロックさせて向きを変える乗り方にも対応しているとのこと。

フロントのブレーキディスクはウェーブ型。片押し式の2ポッドキャリパーに新開発のABSを装備する

フロントのブレーキディスクはウェーブ型。片押し式の2ポッドキャリパーに新開発のABSを装備する

リアブレーキにもABSを装備。ホイールは、オフロードバイクでは一般的な前21インチ、後18インチ

リアブレーキにもABSを装備。ホイールは、オフロードバイクでは一般的な前21インチ、後18インチ

オンロードとオフロードで試乗!

新設計のオフロードバイクがリリースされたことに対する賞賛の声は多かったものの、数値的なスペックはKLX250より落ちるため、実のところ初見で、KLX230はKLXの名に値していないのではないかと感じたオフロードライダーは少なくない。筆者も、そのひとり。取り回しやすさなどを考えてパーツをセレクトし、バランスのよいマシンに仕上げているとはいうが、正直、性能的には物足りないような気がするのだ。そこで、オンロードとオフロードで試乗し、KLX230の実力を確かめてみることにした。

またがってみると、車体は思った以上にコンパクト。筆者は以前、KLX250と同じエンジンと車体にオンロードタイヤを組み合わせたモデル「Dトラッカー」に乗っていたことがあるが、KLX230はひと回り小さく感じる。

身長175cmの筆者がまたがると、両足のつま先がべったりと接地した。シート高は885mmと、このクラスの公道用オフロードバイクとしては高めだが(KLX250は890mm)、シートまで含めて車体がスリムなため足つき性は上々。重量134kgなので、片足で支えても不安感はない

クラッチをつないで走り出すと、エンジンが予想以上にパワフルなことに驚かされた。数値上の最高出力は抑えめだが、車体を押し出すトルクが低回転から発揮されるため、エンジンを回さなくてもグッと前に出るトルク感が味わえる。KLX250に搭載されていた水冷DOHCエンジンは、高回転ではパワーが出るものの、低回転のトルクは薄く、高回転まで回さなければならない。それに対し、KLX230の空冷SOHCエンジンは実用域でのトルクがあるので、街乗りでも非常に乗りやすいのだ。上まで回してもそれほどパワーは出てこないが、トルクの出ている回転域でシフトアップしていけば、十分に交通の流れをリードできる。

街中でよく使う回転域でトルクフルな特性なので、走りやすい

街中でよく使う回転域でトルクフルな特性なので、走りやすい

コーナーリングでは、軽快さに加えて車体のバランスのよさを体感できた。ストロークの長いサスペンションはよく動くものの、その動きにしっかりとコシがあるため、ピョコピョコと動き過ぎることはない。ブレーキをかけてフロントフォークを沈ませ、車体を倒していくフィーリングがとても自然なので、ある程度スピードが乗るコーナーから狭い交差点まで曲がるのが楽しくなってくる。

操作感は軽快で、コーナーでも車体を倒し込みやすい

操作感は軽快で、コーナーでも車体を倒し込みやすい

高速道路も走ってみたが、速度が出ても車体が不安定になる挙動は感じられなかった。高回転まで回しても、あまりパワーが出てくるエンジンではないものの、ギアが6速まであるので(オフロードバイクの中には5速ミッション車も少なくない)、ある程度の速度で巡航するのも苦ではないはずだ。ただ、シートがスリムなため、長時間座ったままだとお尻が痛くなりやすい。フラットなシートは移動しやすいので(下の動画参照)、長距離ツーリングの際は座る位置を少しずつ変えながら乗るといいだろう。


次は、いよいよオフロードでの走行だ。林道を抜けたあと、クローズドのオフロードコースを走る。なお、それぞれ別日に撮影したため筆者のジャケットや車体カラーは異なるが、すべてKLX230だ。

林道は砂利が多かったが、この程度ならカンタンに走破!

林道は砂利が多かったが、この程度ならカンタンに走破!

林道を進み、オフロードコースに到着。コーナーにさしかかったところで、着座位置を前側に移動して前輪がすべらないように荷重し、立ち上がりで少しうしろにお尻をズラしながら後輪をグリップさせる。スムーズに移動できるため、自分が効かせたいタイミングでしっかりと荷重をかけられた。前後だけでなく、左右の移動もしやすいので、コーナーリングで車体を倒す際にシートの外側の角に座るようしてに乗るのも難しくない。また、ややコンパクトな車体のおかげか、腰の下でマシンを動かしながら操れるような感覚もある。

フラットで動きやすいシートのメリットや走りやすさは、オフロードコースでも変わらない

フラットで動きやすいシートのメリットや走りやすさは、オフロードコースでも変わらない

そして、低回転から力が出る特性のエンジンはオフロードとの相性がバツグン! KLX250の水冷DOHCエンジンは高回転ではパワーがあるものの、未舗装路ではなかなかそこまで回すことはできない。いっぽう、KLX230に搭載された空冷SOHCエンジンは回転数に関わらずアクセルを開ければトルクが出てくれるので、凹凸やすべりやすいポイントのあるオフロードでこそ生きてくる。オフロードでは、KLX250よりKLX230のほうが速く走れそうだと感じたほどだ。

街中でも扱いやすかったエンジンは、オフロードに持ち込むとさらにその特性が光る

街中でも扱いやすかったエンジンは、オフロードに持ち込むとさらにその特性が光る

不満点をあげるとすれば、純正で装着されているタイヤくらいだろうか。オンロードでもオフロードでも一定のグリップを発揮できるようにブロックパターンがそれほど粗くないタイヤであるため、今回、オフロードコースで試乗する前日に降った雨でぬかるんだ泥がブロックの間に詰まってしまったのだ。こうなると、グリップ性能は大幅に低下してしまう。ブロックの間隔がもう少し広いオフロード向きのタイヤであれば、もっと軽快に楽しめたはずだ。とはいえ、オフロード向きのタイヤを装着するとオンロードでのグリップが落ちてしまうため、ツーリングユーザーは純正タイヤで問題ない。より本格的にオフロードを楽しみたいなら、さらにブロックパターンの粗いタイヤを装着するという手もある。

ぬかるんだ場所を走ると少し進むだけでブロックの間に泥が詰まり、すべりやすくなる

ぬかるんだ場所を走ると少し進むだけでブロックの間に泥が詰まり、すべりやすくなる

試乗を終えて

KLX230はスペック的には突出した部分はないが、オフロードを楽しむための設計が随所に感じられる。操るおもしろさに満ちており、実際に乗ってみるとそのたのしさにハマる人は多そうだ。KLXの名に恥じない素質のよさを備えながら、メーカー希望小売価格は50万円以下。スペックだけで判断して選択肢から切り捨てるのはもったいないマシンだ。

また、筆者はKLX230とスペックや価格が近いヤマハのオフロードバイク「セロー250」(2018年発売)にも試乗したことがあるので、2モデルの違いについても軽く触れておきたい。シートとステップにしっかり荷重し、タイヤを路面に押しつけるというオフロードバイクの基本的な乗り方を想定して作られているKLX230に対し、セローはハードなセクションでも両足を付きながら“2輪2足”でクリアする設計コンセプト。シート高はKLX230より55mm低い830mmで、サスペンションの沈み込みも大きいため、乗車時に着座位置をそれほど変える必要はない。身長が低い人や足つき性を重視するならセローのほうが乗りやすいだろう。残念ながらセローは2020年に発売された「セロー250 ファイナルエディション」をもって生産終了となるが、現行モデルでKLX230と近しいスペックのオフロードバイクはセローしかない。どちらが合うかは乗り方や好みによって異なるが、個人的にはKLX230のほうがオフロードバイクの乗り方を身に着けながら一緒に成長していけそうだと感じた。

「セロー250 ファイナルエディション」のサイズは2,100(全長)×805(全幅)×1,160(全高)mmで、重量は133kg。20PSの最高出力と20Nmの最大トルクを発揮する。メーカー希望小売価格は588,500円(税込)

ゆっくりとした速度で足を付きながら歩くように進めば、ぬかるんだ路面や登りもクリアできるのはセローの“2輪2足”の魅力だ

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クローズドコース専用モデル「KLX230R」もラインアップ

最後に、KLX230のバリエーションモデル「KLX230R」も紹介しておこう。KLX230Rはクローズドコース専用車であるため、車重はKLX230より19kg軽い115kgで、サスペンションのストロークも250mmと長い。オフロード向けのブロックパターンの粗いタイヤを装備するなど、細かい部分の装備が異なる。

KLX230Rのサイズは2,045(全長)×840(全幅)×1,200(全高)mm。エンジンはKLX230と同一だが、ライトやウィンカーなどは装備されておらず、ナンバーの取得もできないため公道走行はできない。メーカー希望小売価格は517,000円(税込)

タイヤ径は同一だが、KLX230Rはタイヤのブロックの間隔が広い、よりオフロード志向の強いタイヤを装備

タイヤ径は同一だが、KLX230Rはタイヤのブロックの間隔が広い、よりオフロード志向の強いタイヤを装備

KLX230よりも短いマフラーは、軽量化に貢献。重心から離れている分、軽量化による影響も大きい

KLX230よりも短いマフラーは、軽量化に貢献。重心から離れている分、軽量化による影響も大きい

視認性の高いデジタル式のメーターもKLX230Rにはなく、警告灯のみというシンプルなハンドル回り。これも軽量化にひと役買っている

フロードブーツでの操作を前提にし、シフトレバーは金属がむき出しのスタイルに

フロードブーツでの操作を前提にし、シフトレバーは金属がむき出しのスタイルに

KLX230で走ったクローズドのオフロードコースをKLX230Rでも走行してみた。


KLX230Rはサスペンションストロークが長くなり、シート高も925mmと高くなっているものの、サスペンションがさらに硬めの設定となっている。そのため、前後のタイヤを路面に押し付けた感覚が明確に伝わり、KLX230で走行した際に感じた“腰の下で操れる感覚”はより強く感じられた。さらに、20kg近く軽くなった車体はまるで羽が生えたかのように軽快で、操るのも楽しすぎる。公道は走れないマシンなので、クローズドコースで存分に乗り回してほしい。

▶KLX230Rの動画撮影:向殿政高

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増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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