現在、カーナビ市場では大画面化や高機能化が進んでいるが、それを牽引しているのがパナソニックの「ストラーダ Fシリーズ」だ。同シリーズの最新モデルでは、従来の高画質や高機能に加えて、自宅のレコーダーで録画したコンテンツを車内で楽しめるという新機能が搭載されている。今回は、その新機能である「レコーダーリンク」の使い勝手をメインに、新しい「ストラーダ Fシリーズ」をチェックしてみよう。
まず、これまでの「ストラーダ Fシリーズ」について少し振り返ってみたい。2016年、画面が浮いているような構造の「フローティングディスプレイ」が初めて採用された「ストラーダ Fシリーズ」の初代モデルが発売される。
「ストラーダ Fシリーズ」には「フローティングディスプレイ」が採用されており、画面が大きくて見やすいだけでなく、ディスプレイを上下左右にスイングさせて見やすい位置にセッティングできる。今回は、「ストラーダ Fシリーズ」の最上位機種である「CN-F1X10BGD」を用いて、新機能の「レコーダーリンク」を試した
これまで、カーナビの画面サイズは設置されている2DINコンソールのサイズ規定によって、最大でも7V型が限界であった。だが、「フローティングディスプレイ」では画面をカーナビ本体から手前に独立させて浮かせるような新しい構造を採用することによって、9V型の大画面を装着できるようになったのだ。
さらに、「ストラーダ Fシリーズ」に適合する車種は、初代の発売から毎年のように増え続け、現行モデルにおいては500車種を超えている。以前、パナソニックの開発担当者にインタビューした際、車種の適合に関しては「常に現車へ取り付けて、適合可能かどうかを確認する」という話をうかがったことがある。失礼ながら、非常に地味ではあるものの、その堅実な開発姿勢に頭が下がった。
また、「ストラーダ Fシリーズ」は発売以降、モデルチェンジのたびに新機軸と言えるような性能の向上を果たしているのも、大きな特徴のひとつだ。9V型で発売された画面サイズは、現在では10V型にまで拡大している。さらに、有機ELディスプレイの採用や、地図のHD描画に対応した「HD美次元マップ」の搭載などによって、「ストラーダ Fシリーズ」は、もはやカーナビにおける“完成形”なのではないかと思ったほどだ。
だが、2022年11月に発売された最新モデルでは、さらなる新機軸として、家庭用レコーダーで録画したコンテンツを車内で楽しむというリモート視聴機能、「レコーダーリンク」が新たに搭載されたのである。
現行の「ストラーダ Fシリーズ」に搭載されている新機能は「レコーダーリンク」と呼ばれ、ブルーレイレコーダーやNAS(Network Attached Storage)などに録画した番組を同機で視聴できるというもの。
ちなみに、「ストラーダ Fシリーズ」は10V型ディスプレイを搭載した「CN-F1X10BGD」や「CN-F1X10GD」と、9V型の「CN-F1D9GD」の3機種をラインアップするが、「レコーダーリンク」は10V型の2機種に対応している。
また、レコーダーはパナソニックの「ディーガ」のほか、シャープや東芝などにも対応しており、NASはアイ・オー・データ機器やバッファローの製品などに対応している。対応機種の詳細については、以下のパナソニックのWebサイトにて確認してほしい。
https://panasonic.jp/car/navi/products/F1X10BG/ent/ent02.html
今回、筆者が「レコーダーリンク」を試すために自腹購入したのが、パナソニックのブルーレイディスクレコーダー「DMR-2X302」。同モデルは、高画質のブルーレイディスクに対応しており、3TBのHDDを内蔵。さらに、最大6ch×24日間の自動録画も可能だ
実は、筆者はすでに「レコーダーリンク」機能を何度か試したことがあるのだが、その際のアクセス先はパナソニックによってあらかじめ用意されていたレコーダーであった。もちろん、そのこと自体に何も問題はないのだが、事前に用意されている録画番組を見るよりは、やはり「自分が録画した番組を実際に見てみたい」という気持ちになったのだ。そこで今回、“清水の舞台から飛び降りる”気持ちで、最新のパナソニック製ディーガ「DMR-2X302」を自腹で購入し、お気に入りの番組を録画して、パナソニックのデモカーに装着された「ストラーダ Fシリーズ」で視聴してみることにしたのだ。
「レコーダーリンク」機能を使うには、カーナビとレコーダーの両方で接続の設定をする必要がある。設定にあたって必要なのが、テザリングできるスマホとレコーダー設置場所(筆者の場合は自宅)のインターネット環境だ。
【レコーダー側の設定】
(1) 専用アプリをスマホにインストール
(2) 専用アプリにレコーダーを登録(Wi-Fi接続)
まず、専用アプリ「DiXiM Play for レコーダーリンク」を、スマホにインストールする。アプリは無料で、Android OSとiOSの両方に対応している。アプリをインストールしたら、レコーダーの「ホームネットワーク」機能を使えるように設定して、スマホから接続したいレコーダーを登録する。作業自体は、スマホの画面を見ながら行うので問題はないのだが、スマホとレコーダーを同じネットワーク上に接続する必要があるなど、注意が必要な点も見受けられた。筆者は、日々ひんぱんにデジタル家電に触れているものの、このあたりは少しハードルが高いように感じられた。
【カーナビ側の設定】
(3) 専用アプリにカーナビを登録(Bluetooth接続、Wi-Fi接続(テザリング))
(4) 専用アプリとカーナビを接続して完了
次に、カーナビの設定に移るのだが、実はここでも少し壁にぶち当たってしまった。まず、Bluetooth接続でアプリにカーナビを登録し、スマホのテザリング機能を使ってカーナビとWi-Fi接続し、パスワード入力を行う。そして、最後にカーナビのAVメニューに表示された「レコーダーリンク」をタッチしてスマホを登録し、スマホでカーナビを登録するという流れだった。
「ストラーダ Fシリーズ」とスマホ、レコーダーとの接続中の画面。ちなみに、画像は今回のレコーダーとは別モデルなのでご参考まで
言葉にすると少々ややこしいと感じられるだろうが、実際の作業もややこしかった。特に、Bluetoothで接続した後、Wi-Fiでテザリングさせるという手順が、もちろんロジックとしては理解していても、頭の中で最初はどうしてもモヤモヤしたのだ。だが、最初にこの難関(失礼!)さえ超えられれば、後は乗車時にスマホとカーナビを接続するだけで、カーナビの画面上から録画番組を操作できるので便利だ。
初期設定は少々面倒だったものの、無事に接続が完了した。一番下のチェックマークを入れることで、次回からはカンタンに接続できるようになる
著作権の関係で、自宅のディーガで録画したコンテンツをお見せすることはできないが、ストリーミング再生自体の画質は十分に満足できるものだった。これは、HD画質を持つ「ストラーダ Fシリーズ」の高画質再生技術があればこそだ。
録画された番組の表示画面は、シンプルではあるがとてもわかりやすい
さらに、自宅のレコーダーがどのビットレート(画質)で録画されているかにもよる。筆者の場合は、ディーガの「5倍録モード」で録画したコンテンツが多いのだが、それでも十分と思えるくらいに視聴を楽しむことができた。また、スポーツ中継など動きの速い番組でも、ブロックノイズが出るようなことはほとんどなかった。もし、高画質で楽しみたければ、レコーダーの録画画質を上げればいいだろう。
動きのあるスポーツ番組も高画質で楽しめた(画像は著作権許諾済みのもの)
ひとつ気になるのが、スマホのテザリング機能によるパケット通信量だ。通信状態や番組の画質、再生時間などによって異なるので一概には言い切れないが、今回、30分の番組を横浜市内で視聴した際のパケット通信量は0.5GBほどであった。ただし、これはあくまでも一例なので、参考程度の数値であることをご理解頂ければと思う。
「レコーダーリンク」機能の最大のメリットは、「電波さえ届けば、すぐに録画番組を楽しめる」ことに尽きるだろう。
ストラーダのAV機能は、元々かなり充実している。特に、今回テストに用いた最上位機種の「CN-F1X10BGD」は、ブルーレイディスクの再生機能も搭載しているなど、その多機能ぶりはこれまでもユーザーから高い評価を受けている。ただし、車内でブルーレイのコンテンツを楽しむ場合はディスクを持ち込む必要があるので、そのような手間のない「レコーダーリンク」機能はやはり手軽で便利だ。
また、録画したけれどいつまでも視聴しないで溜め込んでしまう、いわゆる「レコーダーあるある」も、「レコーダーリンク」機能を活用することによって、ドライブ先の休憩時間などを使って楽しむ(消費する)ことができるのは大きな魅力と感じた次第だ。
そして最後に、“まさかの機能”に筆者は驚いた。「ストラーダ Fシリーズ」には、高画質の地デジチューナーが搭載されており、現行モデルは受信感度を向上させるなど進化しているのだが、残念ながらBSやCS(衛星放送)のチューナーは搭載されていないので視聴できない。だが、自宅のレコーダーがBS/CSチューナーを搭載して視聴契約されていれば、「レコーダーリンク」機能を使うことでリアルタイムに番組を楽しめるのだ。これは、どちらかというとプラスα的な使い方にはなるものの、スポーツ中継などは衛星放送での配信も多いので、車内で視聴できるコンテンツが増えるのはかなり魅力的である。さらに「なるほど!」と思ったのは、遠隔地へ移動した際にもレコーダーは自宅にあるので、いつも見ている放送局の番組が楽しめることだ。
車内におけるコンテンツの楽しみ方が多様化するなか、「ストラーダ Fシリーズ」の「レコーダーリンク」機能はなかなか魅力的だった。今後は上位モデルだけでなく、普及価格帯のモデルへの採用も期待したいところだ。
ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。1959年生まれ。リクルートで中古車情報誌「カーセンサー」の新車&カーAV記事を担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。