人生をともにする愛車を購入したばかりの皆さんは、きっと「末長く大切にしよう」と強く誓っていることでしょう。なるべく今のキレイな状態のまま、どこも故障せずに元気に走ってほしいと願っていると思います。
しかし! クルマにはたくさんの消耗品が使われているので、何もしないで元気に走ってほしいというのは、ちょっとムシのいいお願いなんです。そんなに大がかりなことはしなくても大丈夫ですが、毎日のちょっとした気遣いと、定期的に行うチェックやお手入れといったメンテナンスは必須事項。
メンテナンスをすることは、愛車の性能を最大限に引き出し、安全性を維持して皆さんの命や周囲の人の命を守ることにもつながります。何も難しいことはなく、慣れてしまえば毎朝の洗顔と同じくらいの手間だと感じるようになりますので、ぜひ覚えて実践してみてほしいと思います。
教習所では、クルマを運転する前の「日常点検」や「点検整備」の大切さを教わりましたね。これはユーザーの義務ですが、何日ごとに何回行うといった規定はなく、自分がどのくらいの頻度で運転するか、走行距離はどのくらいか、各自の使い方で判断して行います。なので、毎日ボンネットを開けて細かくチェックしなければいけないわけではないのですが、どんなに忙しいときでも、運転席へ乗り込む前にココだけは見てほしいポイントが3つあります。
クルマを使用中に、何か起こってからでは遅い。トラブルを避けるために、日常点検を欠かさずに!
1つ目は、タイヤの状態。見るからにペシャンコになっていないか、クギが刺さっていたり傷が付いていたりしないかどうか。クルマが唯一道路と接している部分が4つのタイヤなので、ここにトラブルを抱えたまま走り出してしまうのはNGです。
ハンドルを切って停めると、タイヤの溝の状態などもチェックしやすくなります
2つ目は、窓ガラス。特にフロントガラスとリヤウィンドウがクリアな状態かどうかチェックして、汚れたり曇っていたりしたらしっかり拭き取ってクリアにしてから出発しましょう。広くクリアな視界を確保することが、安全運転の第一歩。時間がないなら、ウォッシャー液を出してワイパーを作動させるだけでも違います。
フロントガラスに何か付いていたら、走行前に除去しましょう。ウェットティッシュタイプのクルマ用ガラスクリーナーなどが市販されていますので、クルマに入れておくと便利です
リヤウィンドウも同様に、視界をチェックしましょう
3つ目は、運転席に座ってシートベルトを締め、エンジンをスタートしたあと、アクセルを踏む前に必ずガソリン残量と、警告灯の点灯がないかどうかを確認しましょう。目的地までガソリンがもたないようなら、早めに給油を。
路上でガス欠を起こすと、思わぬ事故を引き起こす可能性があります。また、高速道路上でガス欠になるのは危険なだけでなく、道交法違反になって罰金が科されてしまうので特に気を付けたいところです。警告灯が点灯していたら、早めにディーラーや整備工場に診てもらいましょう。
赤丸で囲った部分がガソリン残量計。ちなみに、給油機のマークの矢印は、車体の左右どちらに給油口があるかを示しています
取り扱い説明書の警告灯の項。メーター内に見慣れないランプが点いたら、なるべく早くディーラーや整備工場へ!
この3つのほかにも、愛車に「いつもと何か違うな」と違和感を覚えたときは、まぁいいやと放っておかずに、すぐに点検を受けることをおすすめします。
続いて、月に1回程度行いたいチェックやメンテナンスについてです。
走っていなくても勝手に空気が抜けていくタイヤの空気圧チェックと、不足分の空気の充填は必須項目です。適正なタイヤ空気圧は、運転席ドアを開けたところや、取り扱い説明書に書かれています。
カー用品店などで売っている、ミニサイズのタイヤゲージがあると便利ですね。手元になければ、ガソリンスタンドや洗車場などに置いてあるものを使いましょう。溝の深さや傷などの損傷も改めて確認を。
ヘッドライトやテールライト、ウインカーが正常に点灯するかどうかもチェックしておきたいですね。
タイヤの指定空気圧は、運転席ドアを開けたところに書いてあります
次に、ボンネットを開けてチェックする項目が、5つあります。
ボンネットの開け方は、一般的には運転席の足元にあるボンネットオープナーというレバーを使います。このレバーを引くとボンネットがポンと少し浮きますので、ボンネットの先端の真ん中あたりに指を差し込み、ロック解除レバーを左右か上下に動かすと開けられます。
ダンパー式の場合はそのまま上に固定できますが、ダンパーがない場合はステーというつっかえ棒のようなものがあるので、持ち上げてボンネット側のステー穴にしっかりと固定して、ボンネットが落ちてこないようにしましょう。
写真のクルマはステーでボンネットを固定するタイプ
チェックするのはまず、ウィンドウウォッシャー液の量。減っていれば、補充用のウォッシャー液をカー用品店などで購入して、キャップを外して適量を示すラインまで補充します。冬季や寒冷地の場合は、凍結防止タイプのものを選んでくださいね。
ウィンドウウォッシャー液の補充口
初心者が自分で補充しやすいのは、ここまでです。残りの4項目は、チェックして減っていたり異常があったりしたら、ディーラーやガソリンスタンド、カー用品店や整備工場などでプロにメンテナンスをお願いすることをおすすめします。
それぞれのタンクに記されている上のライン(MAXやFULLなど)と下のライン(MINやLOWなど)の間まで液体が入っているかをチェックするのは、ブレーキ液の量、バッテリー液の量、冷却水の量。これらがものすごく減っている場合は、どこかから漏れているなどの可能性があるので、すぐに点検してもらいましょう。最近のバッテリーにはメンテナンスフリータイプといって、外から液量が見えないものもありますが、バッテリーには寿命があるので定期的に点検してもらうことが大切です。
エンジンルームにはさまざまなタンクがあります。点検していてウォッシャー液以外が減っていたら、ディーラーや整備工場に相談しましょう
最後の1項目は、エンジンオイルの量と色。必ず平らな場所に停めてエンジンを切り、しばらく時間をおいてからオイルのレベルゲージを抜き取ります。
その後、乾いたきれいな布を用意して、レベルゲージに付いているオイルを一度拭き取ります。そして再度、レベルゲージをしっかりと底まで差し込んでから、抜き取ります。
このときに、オイルの量がレベルゲージのHとLのラインの間にあるかを確認。量が少なかったり、色が真っ黒になっていたり、ねっとりと粘り気が強くなっているようなら、プロにオイル交換をしてもらいましょう。
走行後しばらくしたら、オイルゲージを抜き取ります
先端を乾いた布などで拭き取り、ゲージを再度差し込みます
ゲージの先に付いてきたオイルの量や色をチェック。写真は、量も色も問題ない状態です。2つの印の間にオイルが付いてくれば量はOK
さて、最後は毎日運転している人なら省いてもいいかもしれませんが、たまにしか運転しない人や、家族など自分以外の人が運転する場合には、月に一度のチェックが安心。
まず運転席に座って、エンジンをかけてみます。かかり具合や異音がないかどうかを確認してくださいね。次にブレーキペダルをいっぱいまで踏み込んでみましょう。フロアとの隙間が以前よりも大きい、小さいなどの違和感がないかどうかをチェック。パーキングブレーキがレバー式やペダル式の場合も、めいっぱいレバーを引いたときやペダルを踏み込んだときに、違和感がないかどうか確認しておきたいですね。
そして、梅雨の時期など雨が続くような時はとくに念入りにチェックしておきたいのが、ワイパーの拭き取りの状態です。ワイパーブレードのガラスと接する部分はゴム製品なので、使っていれば劣化します。
ちゃんと拭き取れなくなったり、動作がスムーズでなくなってきたりして視界を確保できないようなら、新品のゴムに交換しましょう。カー用品店などで車種を調べると、適合する製品がわかります。ウォッシャー液が適正に噴射されるかどうかも、合わせて確認しておくと安心です。
ウォッシャー液がきちんと噴射されているかどうかも重要な項目です
最後に、花粉や黄砂、ウイルスといった健康被害を引き起こすものが空気中に多く混入しているご時世なので、年に一度は交換しておきたいものがあります。それが、車内に入る空気を浄化してくれるエアコンフィルターです。
汚れたままのエアコンフィルターを使い続けると、カビが発生したり、エアコンの効きが悪くなって燃費も悪化したりするなど、いいことナシ。車種ごとに適合するエアコンフィルターを購入すれば、自分で簡単に交換できるので、快適な車内を保つためにもぜひやっておきたいですね。
一般的には、グローブボックスの奥のほうにエアコンフィルターの設置場所があります。フタを開けて古いエアコンフィルターを取り出し、新品を袋から出して表裏が逆にならないように注意しながら、挿入するだけで完了です。交換するときは必ずエンジンを停止してくださいね。
グローブボックスを外したところ。写真の白い部分にエアコンフィルターが設置されています
フタを開けてエアコンフィルターを交換します
ということで、毎日のチェックから月に一度、年に一度のチェックまで、愛車をずっと安心して乗り続けるためのメンテナンスをご紹介しました。
「車検に合格したのだから不要では?」と思うかもしれませんが、車検というのは次の車検までの安全を保証してくれるものではないので、愛車の健康は皆さんの心がけにかかっています。ぜひ習慣にして、快適なドライブを続けていきたいですね。
2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。