スズキは、「スペーシア」「スペーシアカスタム」をフルモデルチェンジし、2023年11月22日に発売する。
スズキで人気のスーパー軽ハイトワゴン「スペーシア」(左)と「スペーシアカスタム」(右)がフルモデルチェンジされる。この2車種は、先日開催されていた「ジャパンモビリティショー2023」でも注目されていた人気車だ
新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」は、軽ハイトワゴンとしてトップレベルにまで向上した燃費や、スズキ初採用となるオットマンのような「マルチユースフラップ」などの新機能。さらに安全装備のさらなる進化など、フルモデルチェンジによってさまざまな魅力が高められている。今回は、おすすめグレードやライバル車との比較なども交えて、新型モデルを徹底解説したい。
ちなみに、SUV風の外観で人気の「スペーシアギア」は、新型モデルの発売時点ではラインアップされていないが、2024年を目処に追加されるようである。そのほか、商用車の「スペーシアベース」は従来型が継続して販売されている。
■スズキ 新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」のグレードラインアップと価格
-「スペーシア」-
HYBRID G:1,530,100円 [2WD]/1,656,600円 [4WD]
HYBRID X:1,705,000円 [2WD]/1,824,900円 [4WD]
-「スペーシアカスタム」-
HYBRID GS:1,801,800円/1,925,000円
HYBRID XS:1,995,400円/2,115,300円
HYBRID XSターボ:2, 073,500円/2,193,400円
※すべて税込価格
まず、先代モデルのデザインモチーフは「スーツケース」だったが、新型モデルは「コンテナ」。これがデザイン上における大きな違いだ。新型モデルには、コンテナの頑丈なプレス面を想起させるようなキャラクターラインが、ボディサイドを中心に刻まれている。
ボディサイドに「コンテナ」のビード形状が施された、新型「スペーシア」のエクステリア。画像のボディカラーは、新色の「ミモザイエローパールメタリック」
新型「スペーシアカスタム」のエクステリアは、グリルが水平方向に配置され、メッキを多用していないところなどから、先代よりも上品な印象を受ける。また新型「スペーシア」と同様に、サイドにはビード形状のデザインが施されている。画像のボディカラーは、「クールカーキパールメタリック」
内装を見ていこう。先代モデルには助手席前のインパネにフタの付いたアッパーボックスが採用されていたが、新型モデルは大型トレイへ変更されている。
新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」の助手席前インパネには、小物などが手軽に置けるような大型トレイが備えられている(画像は新型「スペーシア」の内装)。また、このトレイにはパイル添加樹脂が採用されているので、温かみがあってやさしさを感じさせる雰囲気だ
新型「スペーシアカスタム」の内装は、ブラックを基調としながらインパネやドアパネルにボルドー色が用いられていて、スタイリッシュなのが特徴的だ
視界については、スーパーハイトワゴンらしくフロントウィンドウが直立していて、前方視界は開放感がともなう。
前席にはファブリックのシート生地が採用され、柔軟でリラックスできる座り心地が得られる。また、背中から大腿部をしっかりと支えてくれるので、長距離を移動する際も快適だろう。
後席では、足元空間が広いのが特徴だ。身長170cmの大人4名が乗車した際、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ3つ半ほど。上級SUVのトヨタ「ハリアー」でも握りコブシ2つ分なので、新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」の後席空間は先代と同様に、かなりの広さと言えそうだ。
新型モデルの新たな装備としてあげられるのが、後席に装着されている「マルチユースフラップ」だ。「マルチユースフラップ」は後席の座面前側に備わっており、フラップを引き出すことで乗員のふくらはぎを支えてくれる「オットマンモード」に。
また、フラップを完全に持ち上げれば、後席の座面のうえに置いた荷物が走行中に前側へ落ちにくくなる「荷物ストッパーモード」になる。
「マルチユースフラップ」の「オットマンモード」は、角度を3段階に調整できる。画像は、「オットマンモード」でフラップを最も上げた状態
「マルチユースフラップ」を引き上げて「荷物ストッパーモード」にすれば、リアシートに荷物を載せた際に床下へ落ちるのを防いでくれる
ただし注意点もある。フラップの装着によって座面の前側が凸凹になっているので、大腿部のあたりに少々違和感が生じる場合があることだ。普通のシートのほうが快適に感じられるユーザーもいるかもしれないので、気になるようであれば購入前に後席の座り心地を確かめてみたほうがよいだろう。
ちなみに、「マルチユースフラップ」は売れ筋グレードの「ハイブリッドX」「カスタムハイブリッドXS」「カスタムターボ」グレードに標準装備されている。「ハイブリッドG」「ハイブリッドGS」にはオプションでも装着できないので注意したい。
エンジンは、従来と同じくNAエンジンとターボエンジンの2種類があり、全車にマイルドハイブリッドが装着されている。NAエンジンは、設計の新しい「R06D型」へと刷新され、2WDのWLTCモード燃費は、「ハイブリッドG」が25.1km/L、「ハイブリッドX」と「カスタムハイブリッドGS」「カスタムハイブリッドXS」は23.9km/Lである。
後者の数値でも、全高が1,700mmを超えるスーパー軽ハイトワゴンとしては最良の値だ。そのため、先代モデルから新型モデルに乗り替えれば、カタログ値の燃費で計算するとガソリン代を約11%節約できることになる。
また、「カスタムXSターボ」も2WDのWLTCモード燃費は21.9km/Lと、スーパー軽ハイトワゴンのターボとしてすぐれた燃費値を発揮する。ターボの燃費は、ライバル車のNAエンジンと同等の数値だ。
安全装備についても、大きく進化している。衝突被害軽減ブレーキのセンサーは、先代モデルは2個のカメラが使われていたのだが、新型モデルでは視野の広い単眼カメラとミリ波レーダーへと変更され、超音波センサーが前後に装着された「デュアルセンサーブレーキサポートII」がスズキ車として初採用されている。
これによって、自転車やモーターサイクルなどの検知が可能となり、交差点を右左折するときにも衝突被害軽減ブレーキが作動。また、低速時の衝突被害軽減ブレーキも前後両方向に対応した。
運転支援機能は、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールの作動が従来以上に綿密になった。車線の中央を走行できるように、パワーステアリングを制御する機能が加えられている。
新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」には、単眼カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーを組み合わせた安全運転支援システム「デュアルセンサーブレーキサポートII」を搭載。検知エリアが拡大されたことによって、対象物を素早く検知できるようになった
■スズキ 新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」のグレードラインアップと価格
-「スペーシア」-
HYBRID G:1,530,100円 [2WD]/1,656,600円 [4WD]
HYBRID X:1,705,000円 [2WD]/1,824,900円 [4WD]
-「スペーシアカスタム」-
HYBRID GS:1,801,800円/1,925,000円
HYBRID XS:1,995,400円/2,115,300円
HYBRID XSターボ:2, 073,500円/2,193,400円
※すべて税込価格
グレードは、「スペーシア」が2種類、「スペーシアカスタム」はターボを含めて3種類になる。また、「スペーシアカスタム」は「スペーシア」の装備に加えて、エアロパーツやアルミホイール、電動パーキングブレーキ、前述の運転支援機能などが標準装備されている。
これらのうち、実用装備を充実させて価格を割安に抑えた買い得グレードは、「スペーシア」の上級グレードである「ハイブリッドX」(170万5,000円)だ。「ハイブリッドG」(153万100円)に比べると、ステアリングホイールを上下調節するチルトステアリングや運転席の上下調節機能、両側スライドドアの電動機能、後席にエアコンの冷気を送る「スリムサーキュレーター」、後席の「マルチユースフラップ」、助手席アンダーボックスなどが追加されている。これらの装備は総額でおよそ26万円に相当するが、「ハイブリッドX」の価格は「ハイブリッドG」に比べて17万4,900円の上乗せに抑えられている。したがって、「ハイブリッドX」は装備が充実しており割安と言える。
いっぽう、「スペーシアカスタム」は「ハイブリッドXS」(199万5,400円)の装備が充実している。カスタム専用のエアロパーツやアルミホイールに加えて、「スリムサーキュレーター」や「マルチユースフラップ」などが備わる。タイヤサイズは、「スペーシア」の全グレードと「スペーシアカスタム」の「ハイブリッドGS」(180万1,800円)は14インチだが、「ハイブリッドXS」は15インチに拡大する。
ただし、「ハイブリッドXS」を選ぶなら、最上級の「ハイブリッドXSターボ」(207万3,500円)も検討したい。ターボは最大トルク、つまり実用域の駆動力がNAエンジンの1.7倍へと増強されるが、WLTCモード燃費は8%しか悪化しない。しかも、「ハイブリッドXSターボ」の価格は、「ハイブリッドXS」に比べて7万8,100円高いが、パドルシフトやパワーモードなども加わる。したがって、動力性能が高く燃費にすぐれた高効率なターボの正味価格は、実質6万5,000円と安価に収まるからだ。
以上のように、多くのユーザーにおすすめできる買い得なグレードは、「スペーシア」の「ハイブリッドX」だ。そして、長距離を移動したり登り坂の多い地域を走ったりすることが多いユーザーには、「ハイブリッドXSターボ」を推奨したい。
なお、新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」の主なライバル車は、ホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」、日産「ルークス」になるだろう。そこで、それぞれのライバル車とも比較してみよう。
まず「N-BOX」の特徴からだが、スーパー軽ハイトワゴンの中でも特に広い室内空間を持ち合わせている。さらに、燃料タンクが前席の下に搭載されているので、リヤゲート開口下端部の高さが470mmと低い。新型「スペーシア」を40mm、「タント」を110mm下まわっているので、「N-BOX」なら荷物を積むときなどに大きく持ち上げる必要がないというのが特徴のひとつだ。
「N-BOX」の買い得グレードは、標準仕様(164万8,900円)になる。「スペーシア」の「ハイブリッドX」は、「N-BOX」の標準仕様よりも約6万円高いが、後席の「マルチユースフラップ」や「スリムサーキュレーター」など装備が充実している。収納設備も豊富で燃費もよい。
ホンダ「N-BOX」は、2023年10月6日に3代目の新型モデルが発売されたばかりだ
次に「タント」の特徴としては、左側のピラーをスライドドアに内蔵させていることだ。左側のスライドドアを前後ともに開くと、開口幅が1,490mmにまで拡大する。ベビーカーを抱えた状態でも乗り降りできて、オプションの運転席ロングスライド機能(2万2,000円)を装着して後方に寄せると、運転席まで降車せずに移動できる。このように「タント」は、ドライバーが左側から乗り降りして運転席まで移動する機能を重視している。高齢者が助手席や後席に乗るときも、「タント」なら左側ドアがワイドに開くので便利に使える。
「タント」の買い得グレードは、標準ボディのX(150万7,000円)だ。価格が安い分だけ装備もシンプルで、特に後席は背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がる機能が省かれている。それでも、左側のワイドな開口部などを考慮すると、スーパー軽ハイトワゴンの中では「タント」が最も買い得になる。
「タント」の最大の特徴が、左側のBピラーをドアに内蔵させた「ミラクルオープンドア」だ
「ルークス」は安全装備が充実している。衝突被害軽減ブレーキは、2台先を走る車両を検知して、危険が生じたときには警報を発する。死角を補う「アラウンドビューモニター」なども、大半のグレードに標準装備されている。買い得グレードは標準ボディの「X」(176万8,800円)で、価格は少々高めだ。
「ルークス」は2023年6月にマイナーチェンジが施され、新しいVモーショングリルを採用するなど、高級感のある内外装へと刷新されている。画像は「ルークスハイウェイスター」
上記のライバル車に比べて、新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」が抜群にすぐれているのが、前述した燃費だろう。さらに、安全装備や「マルチユースフラップ」のようなシートアレンジまで、さまざまな機能をバランスよく充実させて、価格は割安という点も見逃せない。新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」は、便利で安全な装備を備えながらも手に入れやすい価格帯なので、子育て世代から中高年齢層までさまざまなユーザーに推奨できるモデルに仕上がっている。