レビュー

日本で最も売れている「N-BOX」の新型に試乗! 今度も得意の“使い勝手”満載です

「N-BOX」の初代は2011年に登場!

“日本一売れているクルマ”として、軽自動車のみならず登録車全体のトップに何度も輝いているホンダの「N-BOX」。初代は2011年に誕生し、同社独自のセンタータンクレイアウトによる高効率パッケージで実現した広い室内空間と、F1由来の技術を注入した頼もしい走行性能などを採用し、「日本にベストな新しいのりものを創造したい」という思いが込められた1台です。

”軽自動車最大級の広さ”をうたって登場した初代「N-BOX」。2013年に一部改良が施されました

”軽自動車最大級の広さ”をうたって登場した初代「N-BOX」。2013年に一部改良が施されました

2017年に登場した2代目はそこからさらに飛躍し、多様化する価値観やライフスタイルにも適応する便利さ、快適性をブラッシュアップ。高まる安全性への要求にも応え、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車標準装備としたことも大きな強みでした。

2代目「N-BOX」。デザインは初代の趣が継承されています

2代目「N-BOX」。デザインは初代の趣が継承されています

3代目も標準とカスタムの2タイプ

そしてついに、3代目となった新型「N-BOX」のグランドコンセプトは、「ハッピーリズムボックス」。家族や仲間たちも、子どもも大人も、日本中のみんなが幸せな生活リズムを作れるクルマを目指したといいます。

軽自動車なのでボディサイズの規格は守りつつ、フレンドリーで暮らしの中にスッと溶け込むような標準デザインと、乗るだけで自分に自信が持てるような特別感を手にしている「カスタム」の2タイプがラインアップされています。

3代目「N-BOX」のフロントエクステリア。全体的な印象は過去2作に近い。時代や流行に影響されず、多くの人に親しみを与えるようなデザインとホンダは言います

3代目「N-BOX」のフロントエクステリア。全体的な印象は過去2作に近い。時代や流行に影響されず、多くの人に親しみを与えるようなデザインとホンダは言います

ボディからルーフへと続く“コの字形状”により、キャビンを包む安心感を表現。写真のボディカラーは「ファッションスタイル」の「オータムイエロー・パール」

ボディからルーフへと続く“コの字形状”により、キャビンを包む安心感を表現。写真のボディカラーは「ファッションスタイル」の「オータムイエロー・パール」

3代目「N-BOX カスタム」。知的で上質な個性をオーナーが誇れるようなデザインを目指したのだそう

3代目「N-BOX カスタム」。知的で上質な個性をオーナーが誇れるようなデザインを目指したのだそう

リアにはクリアレンズのコンビネーションランプを装備。写真のボディカラーは「プレミアムサンライトホワイト・パール」

リアにはクリアレンズのコンビネーションランプを装備。写真のボディカラーは「プレミアムサンライトホワイト・パール」

■ホンダ新型「N-BOX」「N-BOXカスタム」の
 グレードラインアップと価格

-「N-BOX」-
・標準ボディ 164万8900円[FF]/178万2000円[4WD]
・ファッションスタイル 174万7900円[FF]/188万1000円[4WD]
・スロープ 184万4000円[FF]/196万5000円[4WD]

-「N-BOXカスタム」-
・N-BOXカスタム 184万9100円[FF]/198万2200円[4WD]
・同 ターボ 204万9300円[FF]/218万2400円[4WD]
・同 コーディネートスタイル モノトーン 205万9200円[FF]/219万2300円[4WD]
・同 コーディネートスタイル 2トーン 211万9700円[FF]/225万2800円[4WD]
・同 ターボ コーディネートスタイル モノトーン 216万9200円[FF]/230万2300円[4WD]
・N-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル 2トーン 222万9700円[FF]/236万2800円[4WD]
・N-BOXカスタム スロープ 206万7000円[FF]/218万8000円[4WD]

※すべて税込価格、ただしスロープは非課税

車内は外観以上の大きな進化

3代目の開発に当たっては、どこから見ても「N-BOX」とわかる雰囲気を大事にしたということなので、見た目では劇的な変化が感じられないかもしれません。でも、ドアを開けて運転席に座ってみると、大きく変わったことを実感。

低く、水平基調に整えられたダッシュボードと、従来はステアリングの外側からメーターを見ることになる「アウトホイールメーター」を、ステアリングの内側から見る「インホイールメーター」にあらためたことなどで、小柄な人でもミニバン同等のアイポイントを確保し、パノラマ感が一気に倍増しています。

色の切り替えの高さを合わせることで、車内の視覚的な広さも演出

色の切り替えの高さを合わせることで、車内の視覚的な広さも演出

また、インテリアデザインのテーマが「ラウンドリビング」と言うように、乗員をぐるりとやさしく包み込むような空間が広がっており、数の多さではなく“使いやすさ”に徹底的にこだわった収納スペースたちも見どころのひとつ。

思わずディスプレイしたくなる出窓のようなインパネトレイや、従来の約2倍の容量を確保したグローブボックス。また、カップホルダーの位置も、助手席用が使いにくいという声に応えて、手が届きやすい位置と形状に改良されました。

運転中にスマホが近くにあると気が散ってしまうことを考慮し、グローブボックスに収納したままでもUSB端子にコードを挿せるよう、フタにスリットを入れたのもアイディアもの。これらの形状は「カドマル処理」と呼ばれ、角をツルリと丸く仕上げているところにもやさしさを感じます。

さらに後席でも安心して快適に過ごせる工夫があり、右側の収納ポケットにボックスティッシュが入るようになったのも、ユーザーの使い方を見つめてヒントを得た部分。確かに、子どもが後席に座っていると、運転中でもお構いなしに「ママ、ティッシュ取って」と言われるので、これはなるほどと筆者も大いに感心したポイントです。

リアシートの左右のサイドポケットには、ドリンクはもちろんボックスティッシュも収納可能!

リアシートの左右のサイドポケットには、ドリンクはもちろんボックスティッシュも収納可能!

そして、先代もあんなに広かったのに、後席のショルダールームはさらに55mmも拡大。前席の肩口をえぐった形状としたことで、後席からの視界に圧迫感がなくなったり、エアコンの風が届きやすくなったりしたことも改良点です。これは乗り物酔い防止にも効果的。

センターアームレストも付いて、広大な足元スペースと頭上のゆとりをめいっぱい享受しながら、リラックスして過ごせる空間となっています。

自転車の積みやすさは特筆もの

シートアレンジは従来と変わらず、後席の前後スライド、座面を跳ね上げるチップアップ機能、5:5分割でのダイブダウン(床下格納)ができ、低いフロアによる大容量ラゲッジは健在。自転車を積載するときに車輪を通しやすい荷室ボードを採用したり、積み込んでから自転車を立てた際に安定するようフロア形状に工夫が施してあったりするのも新型「N-BOX」のこだわりです。

ちなみに福祉車両としても、アウトドアレジャーなどにも、多彩な使い方ができるスロープ仕様はこの新型にもラインアップ。スロープを引き出す工程がわずか3工程にまで進化したことで、重い荷物をワゴンに載せたまま積み込んだり、車椅子のまま乗車したりするときにも、手間なくサッと操作できるようになっています。ちなみに、先代には助手席がロングスライドするタイプがありましたが、あまり使われていなかったことがわかり、新型には設定されていません。

スロープの出し入れがカンタンになった「N-BOXスロープ」

スロープの出し入れがカンタンになった「N-BOXスロープ」

さて、パワートレーンは自然吸気エンジンとターボエンジンが設定されており、基本的には先代と同じ。先代から自然吸気エンジンには「VTEC」を採用しているほか、将来を見据えて筒内高流動化や吸気ポート高流動、圧縮比アップといった技術を取り入れており、加えてターボエンジンには電動ウェイストゲートを軽自動車で初めて採用し、すべて新型に継承しています。

標準デザインのターボモデルは先代での販売比率が約1割と低かったことから、新型では設定が見送られていますが、そうすることで自然吸気とターボそれぞれのよさをしっかりと際立たせることができたのだと言います。

手のひらに吸い付くようなステアフィール

最初に試乗したのは、自然吸気エンジンモデル。出足から息継ぎ感のないなめらかさと、しっかりとしたボディの一体感が感じられます。どの速度域でも余裕があり、手のひらに吸い付くようなステアリングフィールにも感心しました。これは、先代とは異なるダイレクト制御に変更したことによるもので、交差点を曲がった後などに自分の予想とズレた戻り方をしないところや、カーブでステアリングを切った感覚そのままに弧を描いてくれるところなど、まるで運転がうまくなったよう。

座り心地のよいシートは、手が触れやすい部分の汚れが目立たないような工夫も

座り心地のよいシートは、手が触れやすい部分の汚れが目立たないような工夫も

そして、走行中に耳につくエンジンノイズや路面からのロードノイズが大きく入ってくることがなく、どこか遠くのほうで小さく鳴っているような感覚で、とても静かなことにも驚きました。これはベースとなる骨格から高剛性なハイテン材の配置を適正化したことに始まり、ルーフライニング(天張り)の基本材料構成を変更して全体的なボディパネルの共振を吸収するようにしたり、フロアカーペットに遮音層フィルムを追加したりしてノイズを遮断している効果だそうです。

街乗りなどの近距離移動に過不足ない走りを提供してくれる「N-BOX」

街乗りなどの近距離移動に過不足ない走りを提供してくれる「N-BOX」

「N-BOX」自然吸気エンジン、最高出力は58PS/7,300rpm、最大トルクは65Nm/4,800rpm

「N-BOX」自然吸気エンジン、最高出力は58PS/7,300rpm、最大トルクは65Nm/4,800rpm

またフロント、リアともにサスペンションの締結部分を適正化し、突き上げや硬さ、収束性、路面のざらつきなどの小さい入力のすべてをブラッシュアップしたというとおり、乗り心地も大きく向上。マンホールや踏切の段差を乗り越えても、「コトン」と小さな振動に抑えられているのが印象的でした。

ターボの走りは余裕たっぷり

ターボモデルに乗り換えると、余裕たっぷりのトルクと質感の高い滑らかさが全域でまんべんなく発揮され、ひとまわり大きなクルマを運転しているような錯覚を覚えるほど。静粛性も乗り心地も、高速域での直進安定性やカーブの気持ちよさまで、すべてにおいて軽自動車の域を超えていると感じます。

実はターボモデルではルーフライニングとボディの間に遮音材を入れたり、ダンパー減衰力の変更を施したりと、自然吸気モデルに輪をかけた改良が行われたとのこと。後席の乗り心地は少し硬めですが、これなら4人フル乗車での走行や、高速道路を使ったロングドライブまで、さらに満足度が高いはずです。

写真は「N-BOX カスタム」のターボモデル。高速道路を走る機会が多くても痛痒なく使えます

写真は「N-BOX カスタム」のターボモデル。高速道路を走る機会が多くても痛痒なく使えます

「N-BOX カスタム」ターボモデル、最高出力は64PS/6,000rpm、最大トルクは104Nm/2,600rpm

「N-BOX カスタム」ターボモデル、最高出力は64PS/6,000rpm、最大トルクは104Nm/2,600rpm

エンジンも細部にわたる改良多数

こうして公道で試乗してみると、アイドリングストップからの再始動がなめらかになっていたり、「P」レンジに入れた瞬間にエンジンがかかってしまうようなむだな再始動をカットしたり、細部にわたる進化を実感。自然吸気エンジンモデルでも、市街地から高速道路までオールマイティーに使える実力がありますが、フル乗車で走ることが多い人、荷物をたくさん積む人、山道や高速道路をひんぱんに走る人などは、ターボモデルを選ぶとより快適に使えるのではないでしょうか。日本一売れているクルマから、日本を代表するファーストカーへ、新型「N-BOX」はさらなる高みを目指して突き進んでいます。

3代目も間違いなく売れそうな、高い使い勝手が随所にありました!

3代目も間違いなく売れそうな、高い使い勝手が随所にありました!

写真:島村栄二(3代目)

まるも亜希子
Writer
まるも亜希子
2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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