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日本の3台に1台が「軽自動車」 そのメリットとデメリットを押さえておこう!

今や、日本を走るクルマの3台に1台と言われているほど、大人気の軽自動車。普通車も含めたすべての乗用車の中で、年間販売台数1位を何度も獲得しているホンダ「N-BOX」に代表されるように、天井が高い室内やスライドドアを備えたモデルが増えてきたことも、その人気を後押ししていると言えます。

大人気の軽自動車の中でも、最も売れているのがホンダ「N-BOX」。2023年10月に新型が発売された

大人気の軽自動車の中でも、最も売れているのがホンダ「N-BOX」。2023年10月に新型が発売された

ここまで人気を得ている理由は、やはりユーザーにとってのメリットが多いからなのですが、デメリットも少しはあります。今回は、今一度「軽自動車とは何か」というおさらいから、購入検討の際に役立つメリットやデメリットまで解説したいと思います。

軽自動車は日本独自の規格

まず軽自動車とは、日本独自の規格でボディサイズやエンジン排気量が定められているクルマのこと。昭和24年7月に初めて軽自動車の規格が制定され、当時は全長2.8m以下、全幅1.00m以下、高さ2.0m以下、排気量が100cc(2サイクル)/150cc(4サイクル)以下、出力は1.2Kwと定められていました。

そこから時代の変化とともに、主に走行性能や安全性能などの確保に対応するため、少しずつ規格が見直され、昭和35年には定格出力を廃止。昭和48年10月から軽自動車の検査実施が施行されるようになりました。そして平成8年9月に、全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下で排気量は660cc以下という、現在も続く軽自動車規格が採用されています。

この規格は日本独自のものなので、日本で販売されている軽自動車はそのまま海外で正規に販売されることはありませんが(一部の愛好家が日本仕様を並行輸入して乗っているケースはある)、もっと排気量の大きなエンジンに載せ替えてパワーアップしたり、全幅を広げたりといったカスタムを施し、海外向けとして販売されているモデルもあります。

【メリット-1】
経済的である

では、軽自動車のメリットか見ていきましょう。

まずは、経済的であること。昨今の物価高の影響で車両販売価格が上がっているとはいえ、ダイハツ「ミライース」のように、まだ100万円を切る“80万円台”から購入できるモデルがあるのは、軽自動車ならではです。

定められた燃費基準をクリアしていれば、エコカー減税が適用されるモデルもたくさんありますので、購入時にはさらにお得になることも多くなっています。

ダイハツ「ミライース」の「B」グレード、新車価格はなんと87万円!(諸費用等は別)

ダイハツ「ミライース」の「B」グレード、新車価格はなんと87万円!(諸費用等は別)

そして購入時だけでなく、購入後の自動車税が優遇されているのも軽自動車における大きなメリットのひとつです。自治体によって多少変わることもありますが、標準で年額10,800円ほど。普通乗用車の場合は最低でも25,000円程度の税額が課されるので、かなりお得に感じるのではないでしょうか。

さらに、もしクルマが不要になった場合や、買い換える場合のリセールバリューが高いことも、軽自動車の強み。年式や走行距離、色などによって多少は変わってくると思いますが、総じてほかのカテゴリーよりも高めの買い取り価格が期待できますので、新車で購入するときに少し高いかなと思っても、結果的にそれほど損をしないことが多いのが軽自動車です。

【メリット-2】
取り回しがしやすい

2つめのメリットは、ボディサイズがコンパクトなので省スペースであることや、狭い道での取り回しがしやすいことです。自宅の駐車場や周辺の道が狭いから、軽自動車を選んでいるという人も多く、1〜2人で乗るセカンドカーとしての役割も果たしています。

狭い道でも軽自動車なら安心して運転できる。写真は三菱「デリカミニ」

狭い道でも軽自動車なら安心して運転できる。写真は三菱「デリカミニ」

【メリット-3】
バリエーションが豊富

3つめのメリットは、多彩なボディタイプやカラーが揃っており、好みの1台が見つけやすいことです。

セダン、ワゴン、バンなどのスライドドア車、SUVからスポーツカーまで、多彩なラインアップを誇る軽自動車。大きなクルマに比べるとボディカラーも豊富に揃っており、ほかでは選びにくいようなカラフルな色も、小さなボディの軽自動車なら選びやすいという意見もあります。

ダイハツ「タント」のボディカラー。さまざまな色から選べるのも軽自動車ならでは

ダイハツ「タント」のボディカラー。さまざまな色から選べるのも軽自動車ならでは

【デメリット-1】
5人以上の用途には向かない

では、デメリットを見ていきましょう。

1つめは、1〜2人くらいで使いたい人には関係ありませんが、多人数で使いたい人には4人乗りであるということがネックとなる場合があります。

室内の広さに関しては、今や上級セダンよりも後席スペースが広いという軽自動車もあるほどなのでデメリットにならないのですが、それほど広くても軽自動車の乗車定員は4人と定められているので、5人以上で乗りたい人には向かないのが残念なところです。

後席に大きな空間を有するホンダ「N-BOX」だが、乗車定員は4人まで……

後席に大きな空間を有するホンダ「N-BOX」だが、乗車定員は4人まで……

【デメリット-2】
普通車に比べるとやや非力……

2つめは、山道や上り坂、高速走行などでパワー不足を感じる場合があることもデメリットと言えるでしょう。4人乗車だったり荷物を満載にしたりしてそうした道を走ると、普通乗用車と比べてなかなか加速しなかったり、エンジンノイズがうるさく感じたり、燃費が悪化しやすいことが挙げられます。

ホンダ「N-BOX カスタム」のように、ターボエンジンを搭載してスイスイ走るモデルもあるが、軽自動車は出力のメーカー自主規制があるため、比べてしまうと普通車に分がある

ホンダ「N-BOX カスタム」のように、ターボエンジンを搭載してスイスイ走るモデルもあるが、軽自動車は出力のメーカー自主規制があるため、比べてしまうと普通車に分がある

【デメリット-3】
コストダウンや軽量化が優先される

3つめは、同じ軽自動車でもモデルやグレードに違いによって、多少の優劣はありますが、やはり車両価格を抑えるためや、660ccという小さな排気量で走行性能を高めるために、軽量化やコストダウンが優先されていることがある、ということは頭に置いておくべきでしょう。

ただ、以前は軽自動車の衝突安全テストの基準が普通車に比べて優遇されていたところもありましたが、それが撤廃されて普通車と同等程度のテストをクリアしなければならないなど、安全性については日々進化しています。

安全運転支援装備についても、上級グレードでは普通車と同等程度の充実度となっているモデルも増えてきましたので、安全性、快適性を重視する場合には相応の装備が付いているグレードを選ぶといいでしょう。

万一の際に乗員を守る安全装備は普通車と変わらない。写真は2代目「N-BOX」のエアバッグ作動イメージ

万一の際に乗員を守る安全装備は普通車と変わらない。写真は2代目「N-BOX」のエアバッグ作動イメージ

軽自動車 vs 普通自動車
「ハスラー」と「ライズ」で比較する

ではここで、軽自動車と普通自動車を比較してみたいと思います。

サンプルは、実際に比較検討する人が多い軽自動車とコンパクトカー、クロスオーバーSUVで人気のスズキ「ハスラー」(136.5万円〜163.9万円)と、トヨタ「ライズ」(171.7万円〜233.8万円)です。

どちらにどのような優位点があるのでしょうか?

軽自動車のスズキ「ハスラー」

軽自動車のスズキ「ハスラー」

普通自動車のトヨタ「ライズ」

普通自動車のトヨタ「ライズ」

まず「ハスラー」の優位点は、リーズナブルな車両価格と、自動車税をはじめとする維持費の安さ。軽自動車は、有料道路なども優遇されている区間が多くあります。また、ボディカラーのバリエーションが多く、純正アクセサリーが豊富に用意されているので、自分好みの1台が手に入るのもうれしいところ。

室内の広さも、「ハスラー」が室内長2215mm、室内幅1330mm、室内高1270mmのところ、「ライズ」は室内長1955mm、室内幅1420mm、室内高1250mmとなっていて、幅以外は「ハスラー」のほうが広いという結果に!

走りでも「ハスラー」にはマイルドハイブリッドが採用されており、燃費が最高で25.0km/Lと大健闘。最小回転半径は4.6mと圧倒的に小さく、取り回しのしやすさも優秀です。

「ハスラー」の後席は大人が足を組めるほどの広さを誇る

「ハスラー」の後席は大人が足を組めるほどの広さを誇る

デメリットとしては、やはり4人乗りだというところと、4人乗車時のラゲッジ容量は物理的に「ライズ」よりは少なめ。1〜2人で出かけるならば後席を倒すことで大きな荷物を積載可能ですが、後席を使うときには荷物があまり積めないというデメリットがあります。

続いて「ライズ」の優位点は、1.0Lターボもしくは1.2Lハイブリッドを搭載したことによる、パワフルな走りです。このハイブリッドはエンジンを発電機として使い、モーターで走行するタイプなので、発進から坂道、高速走行まで上質で滑らかで、頼もしく走れるのがメリットでしょう。最小回転半径は4.9〜5.0mと「ハスラー」には負けますが、コンパクトSUVとしては取り回しがしやすい部類に入ります。

また、5人乗車ができ、後席使用時のラゲッジ容量がたっぷり確保できるのもうれしいところ。シートアレンジは、「ハスラー」は後席が5:5分割ですが、「ライズ」は6:4分割です。

「ライズ」の兄弟車、ダイハツ「ロッキー」の荷室(サイズや形状はすべて同じ)。後席使用時でも大きな荷室を持つ

「ライズ」の兄弟車、ダイハツ「ロッキー」の荷室(サイズや形状はすべて同じ)。後席使用時でも大きな荷室を持つ

「ライズ」のデメリットとしては、車両価格が200万円前後と高いこと。自動車税も毎年3万円弱がかかります。

いかがでしたか。軽自動車のメリットとデメリット、コンパクトカーとの違いを考慮して、自分にピッタリのクルマ選びの一助になれば幸いです。

まるも亜希子
Writer
まるも亜希子
2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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