“弾丸”試乗レポート

第4世代「ロードスター」試乗レポート! 歴代モデルの“伝統”は受け継がれている?

2015年6月に発売開始とアナウンスされたマツダの次世代「ロードスター」。そのプロトタイプ試乗会に参加したモータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏のインプレッションと、開発のリーダーであるマツダ山本氏のインタビューを掲載しよう!

今回のプロトタイプ試乗会では、試乗車のボディカラーに、レッド、ホワイト、ブラックが用意された

今回のプロトタイプ試乗会では、試乗車のボディカラーに、レッド、ホワイト、ブラックが用意された

もっとも重要なのは、「人馬一体」の走りを再現できているかどうか

初代誕生から25年を経た2014年9月、ついに第4世代となる新型のマツダ「ロードスター」がヴェールを脱いだ。春にシャシー、秋にデザインがお披露目された通称ND型(初代モデルがNA、続いてNB、NCと世代を重ねてきたため、次世代はND型と呼ばれる)のロードスターは、2015年1月に開催された東京オートサロンの会場において、6月の発売が正式に発表された。

それに先立つ2014年12月に、メディア向けのプロトタイプ試乗会が開催された。クローズドの特設コースにおける試乗会では、詳細なスペックは伏せられたまま。「データのない真っ白な頭で、とにかく乗ってください!」という一風変わった試乗とあいなった(資料として、開発目標値のスペックシートは配布された)。

試乗車に乗り込んでみて、すぐに気づくのはドライビングポジションの自然さだ。シートはやわらかく沈み込んで腰をしっかりとホールドする。いっぽうで肩まわりはフリー。肘を上げれば、ドアの上にのせることができる。低めのウェストラインが効いているのだろう。バスタブに沈みこむようなポジションではない。開放感ある、このような姿勢が取れることは、新型ロードスターはオープンカーとして大切なポイントをひとつクリアしていると言える。

Aピラーの位置が後退しているため、視界が広がっているのも特徴だ。左右のフロントフェンダーの稜線がよく見える。そのピークの下にフロントタイヤがあるというわけだ。タイヤの位置がわかれば、より運転はやりやすくなる。これはジムカーナやサーキットといったスポーツ走行だけでなく、車庫入れなどの普段遣いでも大きな効果があるポイントだ。

プロトタイプのNDに乗り込む筆者

プロトタイプのNDに乗り込む筆者

6速マニュアルミッションの変速フィールはスムーズそのもの。ひっかかりはない。軽いクラッチをあえて雑につないでみても、クルマは何事もなかったようにスルスルと動き出す。クラッチ操作の苦手な人にもやさしいクルマだ。エンジンのパワー感は、1.5リッタークラスとして標準的レベルの印象。1.6リッターのNBロードスターよりはパワフルだが、2リッターのNCロードスターほどではないといったところか。ただし、トルクの頭打ち感はなく、レッドゾーンのある7500回転まで、気持ちよく加速力を維持する。高回転まで、ひっぱりながら走るスポーツ走行では、途切れないトルクのおかげで意外とよいタイムをたたき出せるのではないだろうか。

ギヤ比は、従来型よりも高められていた。時速100kmの6速の時のエンジン回転数は2500。ソフトトップの遮音性も高められているようだ。これならば、高速道路などの巡航時の快適性は、相当に高まっていることだろう。

1.5リッターの「SKYACTIV-G」直噴ガソリンエンジンを採用

1.5リッターの「SKYACTIV-G」直噴ガソリンエンジンを採用

ハンドリングは、ニュートラルそのもの。アンダーも出なければオーバーも出ない。しかも、ドライバーの操作に対するクルマの動きに変な遅れや先走り感はまったくない。ドライバーの気持ち通りに曲がっていく。これが気持ちよさの理由のひとつだ。しかし、試乗会のあった特設コースは路面のミューが高く、さらに試乗車は貴重なプロトタイプ。あまり無茶はできなかった。しかし、それでも旧型モデルであれば、不安定な挙動が出そうなシーンでも、NDロードスターは4輪が路面をしっかりつかんでいる。抜群の安定度だ。

ブレーキのフィールのよさと安定感の高さも特筆すべきも点だ。軽く繊細なタッチでブレーキをわずかだけかけることもできる。さらに高速から一気のハードブレーキングでも、前のめりになって後輪が不安定になることもない。クルマ全体がまるで沈みこむかのようなフィーリングで、ハードなブレーキングも自信をもって行える。これも新型ロードスターの大きな利点と言えるのではないだろう。

限られた時間とコースであったが、ゆったりと流したり、気分を高めて飛ばしたりと走り方を変えて試してみた。そうしていると不思議なもので、だんだんと自分自身が走っているような気分になってきた。適切なドライビングポジションに広い視界、操作に対する素直なクルマの反応。そうしたことがあいまって、“クルマを操る”という部分をあまり意識しなくなってきたのだ。これこそが「人馬一体」というもの。そして、これこそが歴代ロードスターに受け継がれてきたもっとも大切な魅力といえる。つまり、新型NDロードスターは、まったく新しいデザインとスタイル、そしてエンジンなどのエンジニアリングを採用しながらも、本質は従来のものをしっかりと継承していることが確認できたのだ。

過去のロードスターに乗って「なんて楽しいんだ!」と思った人であれば、新型でも、まったく同じフィーリングを得ることができるだろう。これは量産型が楽しみだ!

第4世代ロードスター 日本仕様 開発目標値

寸法:全長3915×全幅1730×全高1235mm、ホイールベース:2315mm、車両重量:1000kg、エンジン:SKYACTIV-G 1.5 直噴ガソリンエンジン、トランスミッション:SKYACTIV-MT 6速マニュアルトランスミッション、最高出力:96kW(131ps/7000rpm)、最大トルク:150Nm(15.3kgf・m)/4800rpm、フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン、リアサスペンション:マルチリンク、ステアリング:電動式ラックアンドピニオンパワーステアリング、ブレーキ(前/後):ベンチレーテッド/ソリッドディスク、タイヤ:195/50R16

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