“弾丸”試乗レポート
【弾丸試乗レポート 第66回】各地でカーシェアリングがスタート

日産、トヨタ、ホンダを乗り比べ! 新感覚「超小型モビリティ」の“今”をレポート

このところ耳にする機会が増えているのが超小型モビリティの話題だ。トヨタをはじめ、ホンダや日産などが、積極的に実証実験を行っている。その超小型モビリティとは、どのようなものなのか? モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が試乗レポートをまじえて解説する。

2013年3月にスイスのジュネーブショーで発表されたトヨタの超小型モビリティ「TOYOTA i-ROAD」。こんな乗り物が、日本の街中を走り回る日もすぐそこまで来ている?

時代の変化に対応する新しい交通手段として国が旗振り役を務める

日産の本社がある、神奈川県横浜市のみなとみらいエリアでは、2人乗りの超小型電気自動車「日産ニューモビリティコンセプト(NISSAN New Mobility CONCEPT)」が走り回る姿をよく見かける。また、トヨタの本社がある愛知県豊田市においても、横浜市と同様にトヨタの超小型電気自動車「TOYOTA i-ROAD」や、トヨタ車体の「コムス」が走り回っている。さらに、埼玉県さいたま市では、ホンダの「MC-β」のカーシェアリング社会実験が2014年10月に開始となる。

2009年に三菱「i-MiEV」、翌2010年に日産「リーフ」が、本格的な量産電気自動車としてリリースされてから約5年。最初は完全に電気だけで走る電気自動車が街を走ることに驚いたものだが、いつの間にか、ただの電気自動車ではなく、次世代を見据えた新しい超小型モビリティが街を走るようになっていたのだ。

次世代の超小型モビリティとは、原付スクーター以上、軽自動車以下を狙った、近距離移動を主眼とする2人乗りの乗り物である。このコンセプトを強くプッシュするのは国土交通省だ。高齢化が進む日本社会の変化への対応、CO2排出量の削減、さらには、新規市場や雇用創出などを狙って、考え出されたのが電気自動車の超小型モビリティというアイデアであった。現在は、その国土交通省の旗振りの元に、トヨタやホンダ、日産といった自動車メーカーが車両を用意し、さらに新しい運営方法の模索もあわせて、日本各地で実証実験が行われているという状況なのだ。

横浜市で走行する姿をよく見かける日産の「日産ニューモビリティコンセプト」

横浜市で走行する姿をよく見かける日産の「日産ニューモビリティコンセプト」

豊田市で実証実験が行われているトヨタ「TOYOTA i-ROAD」

豊田市で実証実験が行われているトヨタ「TOYOTA i-ROAD」

トヨタ車体の「コムス」

トヨタ車体の「コムス」

2014年10月からさいたま市でカーシェアリング社会実験が始まるホンダ「MC-β」。今、日本各地でこうした超小型モビリティが走り出しているのだ

カーシェアリングサービス「チョイモビ ヨコハマ」を開始した日産

超小型モビリティのカーシェアリングサービス「チョイモビ ヨコハマ」を神奈川県横浜市で、2013年10月にスタートさせたのが日産だ。利用する車両は「日産ニューモビリティコンセプト」。リチウムイオン電池によって、最高速度時速80kmまで出すことができる2人乗りの超小型電気自動車だ。サービスの特徴は「横浜市内限定」「高速道路/自動車専用道路NG」「市内約60か所のステーションで乗り捨て自由」「予約不要」「カード決済」「利用申し込みはスマートフォン/PCのみ」というもの。サービス利用前に、1時間ほどの講習を受ける必要があり、そこでサービスの利用方法やクルマの走らせ方/注意点などがレクチャーされる。

では、肝心の「日産ニューモビリティコンセプト」の走りはどのようなものなのか。その走りをレポートしたい。

この車両がメディアにデビューしたのは、意外と古く2010年11月のこと。実は4年も前にお披露目されており、さらに、サービス開始にあわせて70台以上の車両を運用しているだけあって、すでに各部の造形のクオリティは量産車レベルだ。ガルウイングのドアは存在しているが、密閉できる窓はない。雰囲気としては、屋根のあるバイク。インテリアの作りも、自動車ではなく、風雨にさらされるバイク同様という印象であった。

横浜市内限定、1分20円の利用料(2014年11月より50分1000円、もしくは1分30円)で乗ることができる「日産ニューモビリティコンセプト」

自動車というよりも、バイクに近い感覚。といっても、バイクに乗ったことがない人でも気軽に乗ることができる

走行開始は非常に単純だ。クルマと同じような回転型のメインスイッチを右いっぱいに回して、ドライブのボタンを押す。次にサイドブレーキをリリースすれば準備OK。あとはアクセルを踏めばスタートする。ただし、アクセルを踏んだ最初の一瞬は、かなり遊びがある。トルクの大きい電気自動車が急発進してしまうのを防ぐために、わざと鈍くしてあるという。そのため、発進はやや深めにアクセルを踏み込む必要がある。しかし、走り出してしまえばパワーは十分。二人乗りでもラクラクとクルマの流れに乗ることができる。また、重い電池が床下にあるためか安定感は抜群。コーナリングもどっしりとして、安心感は高い。ただし、500kgと公表される車両重量は、2人乗りの大型スクーターと比べても相当に重い。つまり、車体を支えるサスペンションは、相応に硬められており、当然のように、乗り心地も非常に硬いものであった。フラットな路面であればよいけれど、段差などを超えるときは、それなりの心構えが必要だろう。

とはいえ、安定した車体と十分なパワー、ドアに囲まれている感により、総じて安心感は高い。オートバイに乗り慣れている人であれば、快適&安心に利用することができるだろうし、オートバイ未経験者でも、これならば怖い思いもしないはず。横浜市のみなとみらいエリアで、買い物やデートに利用しようというのであれば、気軽で便利な乗り物になるのではないだろうか。

「日産ニューモビリティコンセプト」。2340(全長)×1230(全幅)×1450(全高)mm、車両重量470kg(ドア付きは500kg)、定格出力8kw/最高出力15 kW、最高速度約80km/h、一充電走行距離約100km、リチウムイオン電池

日産の本社などで開催される「チョイモビ」の講習会。「チョイモビ」を利用する前に1時間ほどかけてサービスの利用方法などがレクチャーされる。受講料はもちろん無料。事前の受講予約やクレジットカード登録などが必要となる(2014年11月より登録料1000円が必要となる)

個性的な走りで世界に展開する「TOYOTA i-ROAD」

2010年12月からトヨタは、お膝元となる愛知県豊田市において、交通サポートシステム「Ha:mo」(ハーモ)の実証実験を開始した。もちろん、超小型モビリティによるカーシェアリングサービスも行っている。そこで利用される車両は1名乗りのトヨタ車体の電気自動車「コムス」(セブンイレブンなどの宅配サービスに採用されている車両)と、2013年3月、スイスのジュネーブショーでデビューした「TOYOTA i-ROAD」だ。

スイスのジュネーブショーでデビューした「TOYOTA i-ROAD」は、2014年10月1日より、フランスのグルノーブル市における、カーシェアリングサービスに「コムス」と共に各35台ずつ採用されている。

2013年3月にスイスのジュネーブショーでデビューした「TOYOTA i-ROAD」は、手前の「コムス」とともに、2014年10月からフランスのグルノーブル市でカーシェアリングサービスに利用されることとなった

 

充電中の「TOYOTA i-ROAD」

この「TOYOTA i-ROAD」は、非常に個性的なモビリティだ。2人乗りのEVという点では、日産やホンダと同じだが、「TOYOTA i-ROAD」は前輪2輪/後輪1輪の3輪車。しかも、操舵は後輪が担当し、さらにコーナリング時は自動でリーン(傾斜)する。自動車を小さくしたというよりも、オートバイを大きくしたような超小型モビリティなのだ。

「TOYOTA i-ROAD」は前輪2輪/後輪1輪の3輪車。操舵は後輪が担当し、コーナリング時は自動でリーン(傾斜)する

この走行感覚はクルマにもバイクにもないもので、非常に個性的。筆者も初めて乗った際には驚いた

この走行感覚はクルマにもバイクにもないもので、非常に個性的。筆者も初めて乗った際には驚いた

ところがハンドルを握って走らせてみると、走りのフィーリングはオートバイとも、まったく異なるものであった。コーナリング時のリーンは内蔵モーターによって自動で行われる。オートバイ走行の経験者である筆者は、勝手に傾斜しだした車体の動きに面くらうとともに、コーナリング中にピタリと決まった安定感の高さにも驚いた。また、二輪のオートバイにとって小さくクルリとターンするのは意外と難しいものだが、「TOYOTA i-ROAD」はハンドルをめいっぱい切り込めば、誰でも簡単&安心にUターンができてしまう。非常に小回りが効くのだ。加速感は、それほど速い! というものではなかったが、流れに乗るのに不自由するほどではない。これは300kgという軽量な車両重量が効いているのだろう。

サイズ感だけでなく、走りのフィーリングという意味でも、オートバイとクルマの中間を体験できるのが「TOYOTA i-ROAD」。この強い個性ならば、フランスの人の心も意外にやすやすとつかむかもしれない。

「TOYOTA i-ROAD」。2350(全長)×850(全幅)×1445(全高)mm、車両重量300kg、出力2kw×2、最高速度約45km/h、一充電走行距離約50km、リチウムイオン電池

プラットフォームに動力機構を集中させ、多彩なバリエーション展開を可能に!

ホンダの電気自動車の超小型モビリティは「MC-β」(エム・シー・ベータ)だ。埼玉県さいたま市や、熊本県、沖縄県宮古市にて、この車両を使った実証実験が、この秋以降開始される。

こちらの車両の特徴は、その車体の構造にある。日産やトヨタの超小型モビリティと違って、ホンダは「バリアブル・デザイン・プラットフォーム」と呼ばれる方式を採用している。これは、動力機構をプラットフォームに完結させることで、車体を自由に変更できるというもの。屋根付きの2人乗りから、子ども2人を乗せられる親子3人乗り、オープンボディ、運搬向けなど、さまざまなボディ形状を実現する。また、日本だけでなく、欧州のL7カテゴリー(欧州の二輪規格で、EVの場合、バッテリーを覗き重量400kg以下、出力15kW以下)をも視野に入れて開発されたという。つまり、日本だけでなく、グローバルでのビジネスが念頭に置かれた超小型モビリティなのだ。

ホンダ「MC-β」に採用された「バリアブル・デザイン・プラットフォーム」は、動力機構をプラットフォーム上で完結させることにより、車体を自由に変更できるというユニークなもの。日本だけでなく、グローバルでのビジネスも視野に入れた超小型モビリティだ

その走りは、同じような4輪EVである「日産ニューモビリティコンセプト」と似ている。ドッシリとしており、安定感が高く、コーナリングも不安感はない。加速は力強いが、高速側の伸びはそれほどでもない。低速でのストップ&ゴーに向いたキャラクターとなっている。

車両重量は約570kgあり、安定感が高い

車両重量は約570kgあり、安定感が高い

走行フィーリングは「日産ニューモビリティコンセプト」に比較的近いもので、ストップ&ゴーの多い街乗りに適している印象だ

この車両を用いたペーパードライバー向けの試乗会を見学したことがあるのだが、「操作が簡単」「小さくて扱いやすい」という声が、参加者から数多く聞かれた。実際のところ、こうした超小型モビリティの多くはパワーステアリングのアシストが存在しない。ホンダの「MC-β」も同様で、「ちょっとペーパードライバーの女性には、ハンドルが重いかも?」と思って、その点を何人かに聞いてみたけれど、みなさん一様に「気にならなかった」と言う。クルマの一種と考えると、パワステがなく、窓も閉まらない超小型モビリティに違和感を抱きがちだが、先入観なく(ペーパードライバーのほうがクルマとの比較なしに見たようだ)、「新しい乗りモノ」と見れば、意外と不便さや違和感を感じることはないのだろう。

「MC-β」。2495(全長)×1280(全幅)×1545(全高)mm、車両重量約570kg、定格出力6kw/最高出力11kW、最高速度約70km/h、一充電走行距離約80km、リチウムイオン電池

車両の完成度はまずまず! あとは制度設定と認知が課題となる

実際に、トヨタ、ホンダ、日産の超小型モビリティを試乗してみれば、どれも完成度が高く、すぐにでも量産デビューできそうなほどであった。

そういう意味では、各地で盛んに行われる実証実験は、車両というよりも、「本当に超小型モビリティは便利なものなのか?」という確認や、「どのように運用するのがベストか?」といった運用面、さらに実証実験を通して「このような超小型モビリティが存在しますよ」というアピールという側面が強いように思われる。そして、そうした確認・訴求の先に、新しい超小型モビリティ用ナンバーの設定が行われる。つまり、現在は特別措置として走らせている超小型モビリティを、将来的には日本の交通制度にしっかりと組み入れる構想がある。

ただし、国土交通省は、日本社会を主眼としてコンセプトを提唱するが、自動車メーカーは、トヨタがフランスのグルノーブル市で運用サービスをスタートさせるなど、さらに広い視点を持っている。実際に、スクーター以上/軽自動車以下というジャンルの乗り物は、欧米だけでなく、アセアン各地にも存在している。有名なところでいえば、タイのトゥクトゥクや、インドのオートリキシャ、インドネシアのバジャイなどが該当する。つまり、コストや運用面などがクリアできれば、超小型電気自動車は環境コンシャスな限定的利用では終わらず、通常のビジネスに拡大することも可能となるはずだ。

ビジネスになるとわかれば、展開は早いもの。超小型モビリティを気軽に活用する未来は、意外とすぐそこまで来ているのかもしれない。

環境にやさしい未来の乗り物としてだけでなく、明確なビジネスモデルが提示されれば、超小型モビリティは交通手段のひとつとして広く普及していくのではないだろうか

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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