“弾丸”試乗レポート

高い質感を備えたマイルドなWRX「インプレッサSPORT HYBRID」レポート

スバルの「インプレッサ」シリーズに新たにハイブリッドモデルが追加された。この新顔は、どのような性格のクルマなのだろうか? モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が試乗と開発のリーダーへのインタビューを通じてレポートする。

スバルとしては2モデル目となるハイブリッド「インプレッサSPORT HYBRID」。果たしてその実力は?

ブランドを活性化させるインプレッサSPORT HYBRID

2015年7月10日、スバルのインプレッサシリーズに「インプレッサ SPORT HYBRID」が追加された。名称のとおり、インプレッサのハッチバックモデル「インプレッサSPORT」のハイブリッドバージョンである。スバルにとっては、「スバル XV HYBRID」に続く、2車種目のハイブリッド車だ。

インプレッサシリーズが、現在の第4世代となったのは2011年11月。デビューから3年になる昨年11月にビッグマイナーチェンジを実施。モデルライフ的に言えば、第4世代のインプレッサは後半戦。そこへハイブリッドを投入することで、インプレッサシリーズは、フレッシュさが増し、再び商品力を高めることになる。

そんなインプレッサSPORT HYBRIDのハイブリッドシステムは、ほぼスバルXV HYBRIDと同様だ。2リッターの水平対向4気筒エンジンの後ろに最高出力10kW(13.6PS)/最大トルク65Nmのモーターを内蔵したCVT「リニアトロニック」を接続。その先に後輪を駆動するドライブシャフトが伸びる。駆動用の5.5Ahのニッケル水素電池はトランクの下。モーターの出力やバッテリーの容量は最小限度で、発進時や負荷の小さいときはモーターでのEV走行も行うが、あくまでも限定的。エンジン主体で、モーター/バッテリーが補助的なシステムである。20.4km/lのJC08モード燃費も現在のスバルXV HYBRIDと同様だ。

ただし、完全に古いままではなく、より幅広い充電状態で活用するようなバッテリー制御を変更。リニアトロニックはロックアップ領域を拡大するなどの改良が施されているという。

エンジンの後ろに最高出力10kWのモーターを、5.5Ahのニッケル水素電池をトランクの下に配置する

CVTのリニアトロニックは、ロックアップ領域が増え効率が向上。その後ろに後輪に動力を伝えるドライブシャフトがつながる

エクステリアでは専用のフロントバンパーとサイドシルスポイラー、ルーフエンドスポイラー、LEDリヤコンビランプを採用。タイヤはインプレッサSPORTよりもワイドな215/50R17とした。インテリアも専用のブルードレープ調加飾パネルやブルー照明メーター、専用エネルギーフローモニターなどを採用。全体にスポーティで上質さを高めている。

メッキ処理されたフロントスポイラーは、SPORT HYBRID専用のオプションパーツ

サイドシルスポイラーも、SPORT HYBRID専用が用意される

延長されたルーフエンドスポイラーが精かんさを演出している

延長されたルーフエンドスポイラーが精かんさを演出している

タイヤのサイズは215/50R17で、インプレッサSPORTよりもひと回りワイド

タイヤのサイズは215/50R17で、インプレッサSPORTよりもひと回りワイド

先進運転支援システムは「アイサイト(ver.2)」を標準とした。しかし、本家のインプレッサシリーズは、より進化した「アイサイト(ver.3)」を採用している。新しいモデルに最新のバージョンが採用されなかったのは、正直、残念な部分だ。

グレードは2本立てで、ベーシックな「インプレッサSPORT HYBRID 2.0i Eye Sight」が250万5600円、装備の充実する上級モデル「インプレッサSPORT HYBRID 2.0i-S Eye Sight 」で263万5200円となる。

インプレッサSPORTの2リッター&AWDモデルが214万9200円〜241万9200円。スバルXV HYBRIDが257万0400円〜286万2000円であることを考えると、納得の価格ではないだろうか。そして、WRX S4の334万8000円〜や、WRX STIの379万800円〜という価格を見ると、インプレッサSPORT HYBRIDが手頃に感じてしまう。

先進運転支援システムは「アイサイト(ver.2)」。ガソリンエンジン版よりもひとつ前の世代にあたる

スバルのスポーティなテイストが濃厚に味わえる!

ハンドルを握ったのは上級グレードの「インプレッサSPORT HYBRID 2.0i-S Eye Sight」だ。ブルーステッチのはいったパワーシートや常時発光式ブルー照明メーターなど、ハッと思わせる上質感がある。

スルスルと滑らかな加速にはダイレクト感がある。モーターによるアシストとロックアップ領域の増えたリニアトロニックの改良の効果だろう。また、車内のあちこちに吸音材が数多く採用されている。厚みの増したガラスもあって、静粛性が高められている。静粛性の高さは、高速走行でも確認できた。ライバルの多いCセグメントカーの中で、十分に競えるだけのものだろう。足回りは相当に締め上げられている。ロールが少なく、シャキッとした動きは、WRXをほうふつさせるものがあり、従来のインプレッサSPORTとは格段の差だ。路面の凹凸での突き上げも、うまくいなされており、不快感は少ない。

ステッチやメーター周辺ダッシュボードに貼られた装飾パネルなどブルーが所々に使われているインテリア

ラゲッジ容量は、インプレッサSPORTの380lに対し344l

ラゲッジ容量は、インプレッサSPORTの380lに対し344l

パワー感は、必要十分にプラスアルファという程度。ハイブリッドだが、EV走行は限定的。試乗日は酷暑ということもあり、ほとんどガソリン車と同様のフィールであった。エコカーという印象はほとんどない。ハイブリッドとして20.4km/lのスペックは、それほどすぐれているわけでもない。それよりも、上質なインテリアやスポーティなエクステリア、シャキッとしたスバルらしいスポーティな走り味で、ハイブリッドどうのこうのではなく、WRXに近づいたクルマという印象だ。

エコカーらしさは抑えられ、ガソリン車に近い走行感覚。燃費は20.4km/lで、ハイブリッドとしては控えめな数値

WRXほどのパワーはないが、上質感や乗り味は近い。驚異のパワーが必要ないというのならば、インプレッサSPORT HYBRIDは、非常にコストパフォーマンスが高い。WRXよりも100万円ほども安く、スバルらしいスポーティさが手に入るからだ。スバルの“飛び抜けた速さ”ではなく、“安心と愉しさ”がバランスしたスバルの乗り味が好きという人には、WRXよりもより適しているだろう。

WRXの過激さはマイルドに抑えられているが、スバルらしいスポーティさや乗り味は継承されている

WRXの過激さはマイルドに抑えられているが、スバルらしいスポーティさや乗り味は継承されている

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