“弾丸”試乗レポート
【弾丸試乗レポート】一新されたハードウェアでスズキの未来を先取りする1台

実はライバル不在? 両側スライドドアのトールワゴン「ソリオ」に試乗した

スズキの「ソリオ」「ソリオ バンディット」がフルモデルチェンジし、2015年8月26日に発売開始となった。この新型モデルの狙いは? その走りは? 試乗と開発者へのインタビューを通して、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏がレポートする。

“両側スライドドアを備えるコンパクトハイトワゴン”という軽自動車では定番のスタイルを登録車(軽自動車ではない自動車のこと)で再現したソリオ(写真右手前)とソリオ バンディット(写真左奥)

軽自動車で人気のコンパクトハイトワゴンの登録車バージョン

スズキのソリオは、1.2リッター・エンジンを搭載するコンパクトハイトワゴンだ。ソリオ バンディットは、よりアグレッシブなスタイリングとした兄弟車である。そんなソリオの特徴は、コンパクトクラスでは数少ない両側スライドドアを備えたハイトワゴンであることだ。

ハイトワゴンとは、背を高くして室内を広くしたクルマでトールワゴンとも呼ぶ。軽自動車では、スズキの「ワゴンR」やダイハツの「ムーヴ」、ホンダの「Nシリーズ」など、ベストセラーカーは、ほぼハイトワゴンとなっている。さらに背が高く両側スライドドアを備えたホンダの「N-BOX」やスズキの「スペーシア」、ダイハツの「タイト」「ウェイク」なども、ハイトワゴンにさらなる便利機能(両側スライドドア)を追加したクルマとして非常に人気が高い。

ところが、これだけ軽自動車で人気の高い両側スライドドアのハイトワゴンだが、登録車のコンパクトカーになると、いきなり存在感が薄い。ソリオのライバルになり得るのは、トヨタの「シエンタ」とホンダの「フリード」しかないのだ。しかも、両車とも排気量が1.5リッターで上のクラス。ソリオはライバル不在という、ユニークなクルマなのだ。

両面スライドドアとともに、コンパクトなエンジンルーム、3710mmという短くまとめられた全長によるプロポーションも特徴とえよう

搭載されるのは新開発のK12C型デュアルジェット エンジン。効率を高めるとともに、軽量化され、サイズも小さくなった


そのエンジンに組みあわされるのが、マイルドハイブリッドだ。これはスズキの軽自動車の「Sエネチャージ」と同じシステムで、オルタネーターをかねたモーターがエンジンをアシストするというもの。減速エネルギーは回生されて、助手席下のリチウムイオン電池に溜められる。回生されたエネルギーは加速時にモーターアシストとして使われる。そして、新しいエンジンとマイルドハイブリッドの組み合わせにより、ソリオはFFモデルで27.8km/l、4WDモデルで23.8km/lというすぐれた燃費性能を実現している。

オルタネーターをかねたモーターのISGを搭載し、エンジンをアシスト。スズキの軽自動車に備わるSエネチャージと共通するシステムだ

専用リチウムイオンバッテリーを搭載し、後述の「ISG」の回生エネルギーを貯蔵しつつ、電源としても活用する


先進運転支援システムとしては、軽自動車のスペーシアにも採用されているステレオカメラ方式の衝突軽減自動ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート(DCBS)」を搭載。時速5〜100kmで前方の車両や歩行者を検知し、衝突被害軽減の自動ブレーキを作動させる。カメラ方式のため歩行者を認識できるのが最大の強みだ。誤発進抑制機能や車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能も備える。ただし、前走者に追従するアダプティブクルーズコントロール(ACC)機能を備えていないのが残念な点だ。

フロントガラスに2台のカメラを使った衝突軽減自動ブレーキのデュアルカメラブレーキサポート(DCBS)を備える

コンパクトなボディに広々とした室内と練り込まれた使い勝手を実現

続いて試乗レポートをお送りしたい。試乗会場で現物を前にすると、ソリオのコンパクトさが実感できる。ソリオの全長は3710mm。シエンタの全長4235mmどころか、トヨタのアクアの全長3995mmよりも短い。フロントのエンジンルームの短さは、まるで軽自動車のごとし。とはいえ背が高く、角張っているため、それなりのボリューム感がある。またメッキ系を多用したフロント&リヤのエクステリアグラフィックのおかげで貧相さはない。

角ばった四隅や天井の高さなど、ボリューム感が演出されている

角ばった四隅や天井の高さなど、ボリューム感が演出されている


ドライバーシートからの視野は広い。頭から天井までは30cmほどの空間もある。サイドウインドウも垂直近くに立っているため、室内の広々感は相当に大きい。2列目から前席へのウォークスルーも可能だ。運転席まわりの収納スペースは豊富。助手席の座面が開いてアンダーボックスが出てくるのは、軽自動車によくある便利な仕様。幾何学模様のインパネがあるなど、どこか軽自動車のような雰囲気もある。広いけれど、なんとなく軽自動車風の室内という印象。ちょっと不思議な雰囲気だ。

垂直に近い起立したサイドウインドウや天井までの高さのため室内は広く感じる

垂直に近い起立したサイドウインドウや天井までの高さのため室内は広く感じる

センターコンソールを廃したフロントシートなので、ウォークスルー可能

センターコンソールを廃したフロントシートなので、ウォークスルー可能

助手席に備わるアンダーボックス。軽自動車では珍しくないが便利な機能だ

助手席に備わるアンダーボックス。軽自動車では珍しくないが便利な機能だ


後席はリクライニングと前後スライド機構を備え、その操作レバーはシートバックの肩の部分にある。荷室側から簡単に、後席を動かすことができるので、荷物の出し入れに非常に便利だ。ただ、後席のリクライニングは座面と連動しているため、座ったままシートバックの角度を変えるときに、体重を浮かす必要がある場合があった。

両側スライドドアの電動開閉機能は、左側ドアなら全グレードで標準装備。右側ドアはグレードごとに標準であったり、オプションであったりする。

後席は背もたれのリクライニングと前後スライドが可能

後席は背もたれのリクライニングと前後スライドが可能

スライドドアの電動開閉機能は、左側については全車で標準装備、右側はグレードによって異なる

スライドドアの電動開閉機能は、左側については全車で標準装備、右側はグレードによって異なる

走る、曲がる、止まるに加え乗り心地にも効き目の絶大な軽量ボディ

走り出しはスムーズなもの。別段パワフルではないが、重苦しくもない。必要十分といったところだ。メーターを見ているとモーターによるアシストを行っているシーンもあるが、フィーリング的にはアシストありもなしも変わらない。これはモーターのアシストがあると、エンジン側が出力をセーブ。トータル出力やトルクは変化しないような制御になっているから。エンジンが出力をセーブできるため燃費がよくなるという仕組みだ。減速時の回生も違和感はない。アイドリングストップを行うが、それからの再始動は、非常にスムーズで振動が少ない。これもスズキのマイルドハイブリッドならではのメリットだ。

ハンドリングはハイトワゴンらしく、ゆったりとした安定志向。非常に素直に曲がってゆく。また、路面の凹凸を超えるときのショックのいなし方もなかなかのもの。不快感が少ない。全体として軽快に走る。走る、曲がる、止まるというクルマの基本に、車両重量の軽さがかなりよい方向に効いているようだ。高速道路に持ち込んでみると、時速100km程度では安定感も十分。ただし、強い横風にあおられる場面もあった。また、遮音性能的にもうひとつという印象も。ただし、それ以外の不満はない。高速道路を使った移動にも十分に使えるだろう。

走り出しはスムーズ。マイルドハイブリッドのおかげでアイドリングストップからの再始動もなめらか

走り出しはスムーズ。マイルドハイブリッドのおかげでアイドリングストップからの再始動もなめらか

コンパクトなボディに、広々とした便利室内空間を実現。走らせてみても軽快で燃費性能にもすぐれている。軽自動車マーケットを席捲した両側スライドドアのハイトワゴンの方程式を、スズキの最新技術と軽自動車市場で磨かれたノウハウを駆使して生まれたのがソリオだ。プロダクトとしてのレベルは相当に高い。しかし、現在の登録車マーケットでの、ソリオに対するニーズは小さい。その未開の地をどれだけ開拓できるのかに注目したい。

ソリオ(写真左)の2WDは145万4,760円〜184万1,400円。4WDは158万1,120円〜196万7,760円。ソリオ バンディット(写真右)は、2WDが182万5,200円、4WDが195万1,560円

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