2015年9月15日より、フランクフルトモーターショー2015が開催された。メルセデスベンツやフォルクスワーゲン、BMWといったドイツブランドの本拠地でのモーターショーは、どのような様子なのだろうか? 今年のトレンドは? そんな現地の雰囲気をモータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。
ドイツ屈指の工業都市フランクフルトで開催されるフランクフルトモーターショーの様子を鈴木ケンイチ氏がレポートする
欧州における主なモーターショーといえば、春のジュネーブと秋のフランクフルト&パリだ。毎年開催のジュネーブに対して、フランクフルトとパリは隔年開催で交互に行う。今年がフランクフルトであれば、来年がパリという具合だ。
フランクフルトは、メルセデスベンツやフォルクスワーゲン、BMWといったドイツ勢にとっては本拠地でのモーターショー。当然、内容は充実しており、規模も大きい。ドイツ勢の今を知るショーケースであり、世界中から高い注目を集めている。
正式名は「Internationale Automobil-Asstellung」で、IAAと呼ばれる。郊外と市内を結ぶ鉄道Sバーンの「メッセ駅」を中心に、広い会場内に12の巨大なホールがそびえ立つ。メルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲンは、それぞれのグループで1つずつのホールを占有。アウディは広場に自分だけの特設会場を作って展示を行う。中国のショーほどではないが、日本やデトロイトの2倍はあろうかというサイズ感であり、すべてを見て回るのは、相当に時間と体力が必要だ。自動車先進国であるドイツの底力をありありと感じることができるショーといっていいだろう。
広い会場に各社がさまざまなブースを出展する。すべてを見て回るのもなかなか大変なボリュームだ
フランクフルトモーターショーの朝は早い。最初のプレスカンファレンス(記者会見)は、8時30分にスタートする。今年の一番バッターはBMWだ。しかし、ここでハプニングが発生した。なんと、スタートわずか数分でスピーチに立ったチェアマンが転倒。大事をとって、プレスカンファレンスは、そこで終了に。チェアマンに大事はなかったというものの、前代未聞、驚きのスタートとなってしまったのだ。
そんなBMWの展示は、新型「7シリーズ」を強くアピールするもの。あわせて7シリーズのプラグインハイブリッドを筆頭に「3シリーズ」から「2シリーズ」、「X5」などのプラグインハイブリッドモデルをそろえた。そして同じホール内にあるミニのブースでは、新しく5ドアになった新型「クラブマン」がワールドプレミア。ロールスロイスの新しいカブリオレの「ドーン」もショーデビューを飾った。BMWのホールは屋内に周回コースを作って、実際のクルマを走行させるという演出で2年前と同様。しかし、大注目の「i3」と「i8」をお披露目した2年前と比べると、量産モデル中心の今年の展示は、やや地味に見えてしまった。
BMWグループの展示は、プラグインハイブリッドモデルや新型の7シリーズなどが中心で量産車の比重が多めだ
先日発表された新型7シリーズが中心的扱いを受けていた
7シリーズのプラグインハイブリッドモデルが展示されていた
5ドア化された新型ミニ・クラブマン。国内でも人気が出そうだ
ロールスロイスのカブリオレであるドーンもお披露目された
5階建てビルにも匹敵しそうなほど高い吹き抜けのホールを使うのがメルセデスベンツだ。その巨大な空間でのプレスカンファレンスは派手なもの。今年は、1メートルほどの白く光る風船を飛ばす。コンピュータ制御されたドローンで飛ばしているのだろうが、照明を落とした真っ暗な室内の中での一糸乱れぬ編隊飛行は見事なものであった。
そんなプレスカンファレンスで紹介されたのは、姿を変形させる「コンセプトIAA」だ。時速80kmを越えると、エアロダイナミクスを高めるために車体後部が伸びてゆく。Cd値は驚きの0.19! 燃費性能を高める提案を車体で実現しようという提案である。また、量産車としては「Cクラスクーペ」と「Sクラスカブリオレ」をワールドプレミア。同グループの「スマート」もカブリオレをデビューさせている。
巨大な会場で風船の編隊飛行を披露するメルセデスベンツのカンファレンスは見事なもの
燃費問題をエアロダイナミクスの方向から改善させるコンセプトIAA
ボディ後部が変形することでCd値0.19という驚きの空気抵抗値を実現している
Cクラスのクーペも展示された
Sクラスカブリオレも披露された
スマート・フォーツーのカブリオレも展示されていた
フォルクスワーゲンのワールドプレミアは新型となった「ティグアン」だ。フォルクスワーゲンとしては久しぶりに投入する新型SUVである。これを皮切りに今後続々とSUVをデビューさせるという。ティングアンに関しても、北米と中国向けにロングホイールベース版を2017年に追加する。またティグアンは、基本をオフロード向けとして、オンロード向けをR-Lineという2グレード構成となった。プラグインハイブリッドのGTEもコンセプトとして出品されていており、そのモデルも将来的にリリースされるようだ。
フォルクスワーゲンと同グループで人気を集めたのがベントレー初のSUVである「ベンタイガ」だ。6リッターのW12エンジンという強力な心臓を持つラグジュアリーSUV。展示車のリヤゲートの中には、ワインと食器というゴージャスなピクニックセットが据えられていた。また、グループの一員であるブガッティは、ビデオゲーム「グランツーリスモ」内に登場したコンセプトカーをリアルなレーシングカーとした、「ブガッティ・ビジョン・グランツーリスモ」を出品。W16エンジンによる4輪駆動モデルだ。ポルシェは、電気自動車のミッションEをアンヴェール。最高出力600馬力の4輪駆動車。航続距離500km以上という4ドアスポーティセダン。ライバルはテスラになるだろう。
専用の特設会場での展示を行ったアウディ。コンセプトカーは、フロントに1つ、リヤに2つのモーターを備えた4WDの電気自動車「eトロン・クワトロ・コンセプト」。展示スペースの中央には新型「A4」を飾るという演出。やや手狭なこともあり、もっとも人の密集度の高いブースとなった。
フォルクスワーゲンとしては久しぶりのSUVとなるティグアン。これを皮切りに続々とSUVが投入されてゆく予定
ベントレー初のSUVベンタイガ
ベンタイガの内装は外見に負けず華やかで明るい
ブガッティ・ビジョン・グランツーリスモは、W16エンジンを搭載する4輪駆動モデル
ポルシェの電気自動車ミッションE。最高600馬力で航続距離500km以上
特設会場を用意したアウディ
アウディのブース中央には新型A4が配置され、今回の主役の扱い
4WDの電気自動車、eトロン・クワトロ・コンセプト。フロントに1つ、リヤに2つのモーターを備える