“弾丸”試乗レポート

クルマを深く理解する“通”の選択「ボルボV60クロスカントリー」試乗レポート

2015年10月6日より、ボルボの新型モデルである「V60 クロスカントリー(CROSS COUNTRY)」の日本での発売がスタートした。この新型モデルの特徴を、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が試乗を交えてレポートする。

V60シリーズに加わったSUVテイストのV60クロスカントリーの試乗を行った。走りや利便性に迫ってみよう

V60シリーズに加わったSUVテイストのV60クロスカントリーの試乗を行った。走りや利便性に迫ってみよう

スポーティーなステーションワゴンV60にSUVテイストをプラス

ボルボの新型モデルであるV60クロスカントリーは、ベースとなるV60シリーズにSUVテイストを盛り込んだクロスオーバーモデルだ。世界市場では2014年のLAショーでデビュー。待望の日本導入となる。クロスカントリーシリーズとしては、すでに日本でも発売されているV40クロスカントリーに続くモデルとなる。専用のエクステリアを与え、最低地上高を高めるというクルマのしつらえ方はV40クロスカントリー同様だ。

まずは、専用エクステリアから説明しよう。エクステリアのベースモデルとの違いは意外と多い。専用のハニカムデザインのグリルに前後バンパー下部のスキッドプレート、ホイールハウスを囲むフェンダーエクステンション、ボディ横の下部に光るサイド・スカッフプレート、黒く塗られたグロッシーブラック・ドアミラーカバー、同じく黒くしたサイドウインドー・グロッシーブラックトリム、ルーフレール、インテグレーテッド・デュアルテールパイプ。ぐるりとクルマを一周する専用アイテムでタフなSUVテイストをかもし出す。いっぽうでインテリアはほとんどベースと同じだが、ツートンカラーの専用スポーツシートがオプションで用意されている。

V60シリーズの車高を上げ、独自のエクステリアでSUVテイストを盛り込んでいるという成り立ち

V60シリーズの車高を上げ、独自のエクステリアでSUVテイストを盛り込んでいるという成り立ち

ハニカムデザインのグリルは専用エクステリアのひとつ

ハニカムデザインのグリルは専用エクステリアのひとつ

ボディ下部を保護するスキッドプレートは、前後に装着されている

ボディ下部を保護するスキッドプレートは、前後に装着されている

ホイールハウスを囲むフェンダーエクステンションも専用装備

ホイールハウスを囲むフェンダーエクステンションも専用装備

黒く塗られたドアミラーが精悍な印象を与える

黒く塗られたドアミラーが精悍な印象を与える

最低地上高アップは、前後サスペンションのパーツを交換して実現した。フロントはXC70用ホイールスピンドルとコントロールアーム。リヤにXC70用サブフレーム(4WDモデルはXC60用を使用)とラテラルリンクを採用した。また、安全装備として車両前部にフロント・ロアクロスメンバーを追加。これは万一の他車両との正面衝突のときに、相手車両が自車の下に潜り込まないようにするもの。事故対策にもぬかりなく目を配るのも、さすがボルボといったところだ。

高められた最低地上高はV60に対してプラス65mm。これで最低地上高は200mmになった。この寸法は、SUVと言ってもいいほど大きい。たとえばボルボのSUVであるXC60の最低地上高235mmやアウディQ5の205mmには届かないものの、XC70の190mmは上回る。また、シティ派と呼ばれるSUVとなら、ほとんどそん色ない数値である。クロスオーバーとはいえ、それなりの走破性能が備えられていると思っていいだろう。

パワートレインは2種類。ひとつは2リッターの直列4気筒ディーゼルターボ。もうひとつが2.5リッターの直列5気筒ガソリンターボだ。グレード編成は2モデル。ディーゼルを搭載するのが8速ATのFFモデル「V60 クロスカントリー D4 SE」(494万円)。ガソリンが6速ATの4輪駆動の「V60 クロスカントリー T5 AWD SE」(519万円)となる。スペックは、ディーゼルモデルが最高出力190ps/4250rpm・最大トルク40.8kgm/1750〜2500rpmでJC08モード燃費19.5km/l。ガソリンモデルで最高出力254ps/5400rpm・最大トルク36.7kgm/1800〜4200rpmでJC08モード燃費12.6km/l。これくらいのサイズのモデルとしては、燃費性能はかなり頑張ったものになっている。

最低地上高はV60に対してプラス65mmの200mm。雪道や悪路の走破性もある程度のレベルが期待できる

最低地上高はV60に対してプラス65mmの200mm。雪道や悪路の走破性もある程度のレベルが期待できる

2リッターの直列4気筒ディーゼルターボは、最高出力190ps/4250rpm・最大トルク40.8kgm/1750〜2500rpmでJC08モード燃費19.5km/l

シャキッとしたフットワークに、トルクフルで快適な走りを確認

試乗したのは、オプションの18インチタイヤを装着したディーゼルエンジンのV60 クロスカントリー D4 SEだ。SUVテイストといっても、それほど背が高いわけではなく、しかも全体に流線型が強いこともあり、オフローダーというよりも都会的なイメージが強い。それでも、ブラックアウトしたウインドウトリムやミラー、ホイールアーチといったパーツがタフで力強さを漂わせる。正直、なかなかの格好よさだ。

インテリアは、V40などのほかのモデルと同様。ひとつひとつの造形が大きめだがスッキリとしたクリーンなイメージ。スカンジナビアンデザインは、日本車ともドイツ車とも異なる独特のテイストがある。車高が高められたことで、アイポイントも高まった。全長4640×全幅1865×全高1540mmという、やや大柄なボディの取り回しにはうれしい変化だ。

流線型の都会的な印象のエクステリアの所々にSUV的なパーツがアクセントのように備わる

流線型の都会的な印象のエクステリアの所々にSUV的なパーツがアクセントのように備わる

インテリアはV60から大きな変更はないが、好ましい印象

インテリアはV60から大きな変更はないが、好ましい印象

クリーンで機能性にもすぐれるボルボのスカンジナビアンデザイン。その魅力はV60 クロスカントリーにも受け継がれる

パーツひとつひとつが大きく取られているが、洗練されたデザインのためクリーンな印象を受ける

パーツひとつひとつが大きく取られているが、洗練されたデザインのためクリーンな印象を受ける

リアシートもたっぷりとしたサイズで安心感がある

リアシートもたっぷりとしたサイズで安心感がある

4気筒のディーゼルエンジン特有の振動と音は、やはり消すことはできない。しかし、それも走り出すと、すぐに気にならなくなった。なにせ時速100km走行時のエンジン回転数は、わずかに1500回転。街中で流すのならほとんどが2000回転以下なのだ。低回転域から太いトルクが得られるため、エンジンをあまり回さなくてもよい。だからディーゼル特有の音と振動もミニマムで済む。そして、いざとなればダッシュも効く。高速道路の追い越しなどがもっとも得意なシーンだろう。ノンビリとクルージングしているときは静かで追い越し時の力強さは頼もしい。さらにディーゼルエンジンは燃料費が安く、燃費にすぐれる。このクルマは、高速を使ってのロングドライブで特にその真価が表れやすい。週末のレジャー利用などではピタリとはまり、すぐれたツールとして活躍してくれそうだ。

トルクが太いといってもピークパワーは140kW(190ps)。驚くほど速いわけではない。それでも箱根のきつい坂道をグイグイとのぼってゆく。エアボリュームの少ない18インチタイヤもあってか、フットワークはシャキッとした硬質なフィール。地を這うスポーツカーとは言わないが、軽快にコーナーをクリアすることができたのだ。

トルクフルなエンジンと18インチタイヤの組み合わせで、コーナーリングも軽快

トルクフルなエンジンと18インチタイヤの組み合わせで、コーナーリングも軽快

ワゴンの経験が深いボルボらしく、多彩なレイアウトに対応するラゲッジスペース

ワゴンの経験が深いボルボらしく、多彩なレイアウトに対応するラゲッジスペース

試乗を終えて思うのは、これほどの万能選手は、そうそういないということ。街にも似合うし、少々のラフロードもいける。パワーは十分で、フットワークも軽快。ロングドライブが得意。ガソリン代も財布にやさしい。4WDモデルも用意されている。その上、ワゴンならではの積載量がある。立体駐車場の高さ制限もクリア。もちろん、衝突軽減自動ブレーキといった先進の運転支援技術をたっぷりと搭載している。さらに、これだけの実質を備えつつライバルに対して価格面の競争力も高い。美点がこれほど多いクルマは、そうはないだろう。あえて難点を挙げるとすれば、登場したばかりで知名度が低いということか。ということは、今V60クロスカントリーを選ぶオーナーは、クルマの魅力を深く読み取ることができる「よく知った通な人」となるのではないだろうか。

オンロードとオフロードを選ばない走破性、ディーゼルエンジンの低燃費、立体駐車場対応など美点が多い

オンロードとオフロードを選ばない走破性、ディーゼルエンジンの低燃費、立体駐車場対応など美点が多い

鈴木ケンイチ
Writer
鈴木ケンイチ
新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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