イベントレポート

クルマが勝手に運転してくれる「自動運転」実用化に欠かせない安全技術の“今”をレポート!

政府やメーカー各社が2020年に実用化する方針を打ち出し、 注目が高まっているのが“クルマが勝手に運転してくれる”「自動運転」技術。今回はその夢のようなシステムを実用化するために欠かせない「安全技術」を紹介したい。「安全技術」の代表的なものといえば、「自動駐車」や「自動ブレーキ」が挙げられる。カメラやセンサーで車線やほかのクルマを認識してハンドルやブレーキを自動操作してくれるものだ。すでに多くのクルマに実装され、ドライブの安心を支えてくれる安全技術の“今”をお伝えしよう。

「自動ブレーキ」などの予防安全技術や「自動運転」にも積極的に取り組む日産で、安全技術の数々を体験してきた

クルマが自動で駐車してくれる「インテリジェントパーキングアシスト」

まずは、駐車を自動で行ってくれる「インテリジェントパーキングアシスト」について見ていこう。「インテリジェントパーキングアシスト」が作動すると車体の四方に配置されたカメラが駐車枠などを検知し、最適な位置に駐められるようにハンドルを自動で操作してくれる。ドライバーは、アクセルとブレーキの操作を行うだけでいい。周囲の確認に集中することができるので、駐車中の安全性が高まるというわけだ。その「インテリジェントパーキングアシスト」による駐車は、次のようになる。

上の動画にあるように、駐めたい駐車枠の近くでクルマを停止させてナビ画面で駐車スペースを選択すれば、後のハンドル操作はクルマにおまかせ! ドライバーはブレーキ操作と周囲の確認をするのみ。手を触れていないのにハンドルがクルクル回っている様子は、映画やドラマで見た未来の自動運転の姿を感じる。

筆者も「インテリジェントパーキングアシスト」を体験してみることに。日産「エクストレイル」に乗って、パイロンで指定された駐車スペースに入れるのが課題だ。今回は、筆者自身が駐車したものと「インテリジェントパーキングアシスト」を利用した場合の「走行」と「ハンドル操作」にどれほどの違いがあるかをデータ記録し、可視化してもらった。

自分でハンドルを握った際には目測を誤ってしまい一度切り返えさなければならなくなったが、「インテリジェントパーキングアシスト」を使った際には最小限の動きで最適な位置に駐車することができた

ブルーの線が筆者の運転で、グレーの線が「インテリジェントパーキングアシスト」による駐車の軌跡だ。筆者の運転は切り返し操作をしたのでむだな動きが多く、その分ハンドル操作の量や移動距離も多い。いっぽう「インテリジェントパーキングアシスト」による操作は、余計な動きがなく理想的だ

ちなみに、駐車中のクルマの動きは真上から自車を見下ろすようなアングルで表示される「アラウンドビューモニター」機能で確認できる。現在どの位置にクルマがあるのかが把握できるため、安心感が高い。メーカーによっては、この機能と「インテリジェントパーキングアシスト」が揃っていないこともあるが、日産ではセットで用意している。

ブレーキと間違えてアクセルを踏んじゃった時に助けてくれる「踏み間違い衝突防止アシスト」

続いて紹介するのは、ブレーキとアクセルを踏み間違えてもクルマがぶつからないようにする「踏み間違い衝突防止アシスト」。「踏み間違い衝突防止アシスト」は、「加速させない機能」と「自動ブレーキ」の2段階の機能が一体となって構成されている。まず、車体前後に装備された超音波ソナーとカメラが障害物を検知することで、アクセルペダルを強く踏み込んでも障害物がある場合はクルマが加速せず、警告音とメーターディスプレイの表示でドライバーに警告。それでもさらにアクセルを踏み込んでしまった時には「自動ブレーキ」が作動し、クルマは障害物の手前で停止するという具合だ。

車体前方に搭載された超音波ソナー(赤い囲み部分)

車体前方に搭載された超音波ソナー(赤い囲み部分)

後方にも超音波ソナーが装備されている

後方にも超音波ソナーが装備されている

「踏み間違い衝突防止アシスト」を構成する1つ目の要素、「加速させない機能」の働きを動画でチェックしてみよう。

カメラと超音波ソナーで障害物や駐車枠などを認識している状態では、アクセルを強く踏み込んでも普段どおりの加速はしない。その後、「踏み間違い衝突防止アシスト」をOFFにして同様にアクセルを踏み込んだところ、クルマは鋭く加速した。「踏み間違い衝突防止アシスト」が機能していればブザー音が鳴るので、アクセルとブレーキを踏み間違えたことにすぐ気付けるはず!

警告音が鳴っているにもかかわらずアクセルを踏み続けた時には、「踏み間違い衝突防止アシスト」の2つ目の要素である「自動ブレーキ」が助けてくれる。今回は、停止状態からノーブレーキで壁に向かって走行した際の状況を見ていただこう(下の動画参照)。

壁の直前でクルマが停止。一般的な「自動ブレーキ」は、ドライバーが機能に頼らないように急ブレーキをかけたように止まるが、「加速しない機能」と「自動ブレーキ」で構成される「踏み間違い防止アシスト」はその衝撃が緩やかになる。今回体験した際はそれほど速度が出ていないこともあり、体が前につんのめるような急ブレーキには感じなかった

「スカイライン」に搭載されている最先端の安全技術

最後に、日産が描く最新の安全技術について紹介しておきたい。日産では、事故を予防する安全技術を「セーフティシールド」と称しており、現状でその思想を最先端で体現しているのが「スカイライン」だ。ここまでで紹介したような「自動ブレーキ」は前方のクルマや障害物に対して働く機能だが、「スカイライン」にはさらにその先にあるクルマの動きを捉える機能や、側方やうしろから近付くクルマも検知する機能も搭載。まさに“360°のセーフティシールド”を装備したクルマといえる。

全方位から運転支援する機能を搭載したスカイライン

全方位から運転支援する機能を搭載したスカイライン

前方のクルマの下や横から回り込んで、その先のクルマの動きも捉えることができるミリ波レーダーが2台前のクルマの動行をチェック。減速が必要な場合は、ディスプレイ表示とブザー音でドライバーに注意を促してくれる。この機能は、「PFCW(前方衝突予測警報)」と呼ばれるものだ

車体側方にセンサーを搭載したことにより、斜めうしろから近付くクルマを検知する「BSI(後側方衝突防止支援システム)/BSW(後側方車両検知警報)」が作動。車線変更時などで死角になる位置から近付いているクルマがあると、インジケーターの表示と警報音で知らせてくれる

駐車場からの後退出庫時などに、左右から近付くクルマを検知すると表示と音で警報してくれる「BCI(後退時衝突防止支援システム)」も搭載

まとめ

日産では「自動運転」を実現するために、クルマの「電動化」と「知能化」を進めている。「電動化」とは単に動力が電気モーターになるだけではなく、制御技術も電動となることで、より素早く車体を制御するということ。その代表的な例がスカイラインに採用されている「ダイレクトアダプティブスタリング」だ。これはハンドルの動きを電気信号に変換してタイヤに伝えるもの。通常、ハンドルはステアリングシャフトと呼ばれる金属製の棒を介して機械的に前輪を動かしているが、それを電気信号で行うのだ。そのメリットは、制御に対する反応が速いこと。「自動運転」ではカメラやセンサーから来る情報をコンピューターで処理し、電気信号で各部に指令を出して車体を制御するため、信号に対する反応が速いことは大きなアドバンテージとなる。今後は、車体を制御する機能も電動化がさらに進むだろう。

スカイラインに搭載される「ダイレクトアダプティブステアリング」の概念図。タイヤとハンドルが機械的につながっていないため、路面のうねりや凹凸によってハンドルがとられることもなくなる

そして「知能化」とは、上で紹介したカメラやセンサーなどからの情報を高速で処理し、正確な判断を可能とするためのもの。「自動運転」を実現するには、クルマが人工知能並みの「知能化」を果たすことが必要とされる。

現在、「自動運転」への取り組みは公道を使った実証実験などで進められているが、そのための機能のいくつかはすでに市販されているクルマにも搭載されている。とくに「インテリジェントパーキングアシスト」などは、現行のクルマでも“半”自動運転が実現していることを感じられる機能。そんなクルマの“今”を知っておくと、クルマ選びももっと面白くなるのではないだろうか。

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増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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