“弾丸”試乗レポート
世界レベルのスタートラインに並んだ! 走る、曲がる、止まるの基本性能を実感

サーキットで試した! 「プリウス」プロトタイプ試乗会レポート

2015年12月の発売予定を前に、メディア向けに新型「プリウス」のプロトタイプの試乗会が11月上旬に開催された。参加したモータージャーナリスト・鈴木ケンイチ氏がレポートする。

モータージャーナリストを対象にした、新型プリウスのプロトタイプ試乗会が開催された。そのドライブフィールを鈴木ケンイチ氏がレポートする

トヨタの自信の表れ? いきなりショートサーキットから試乗会に突入!

世界初の量産ハイブリッド車として1997年にデビューしたトヨタのプリウス。2009年から2012年までは、4年連続で新車販売台数ランキング1位を獲得するなど、ハイブリッド車というだけでなく、いまや日本を代表するベストセラーカーのひとつと呼べるほどに成長した。そのプリウスの新しい第4世代モデルの発売が、2015年12月に予定されている。それに先がけて10月には採用される先進技術が発表され、10月末から開催された東京モーターショーにも登場。そして東京モーターショーが終わった直後となる11月上旬に、プロトタイプの試乗会がメディア向けに開催されたのだ。会場となったのは富士スピードウェイ。燃費命! とでもいうエコカーなのにサーキットでの開催だ。トヨタは新型プリウスの走りに相当の自信を持っているのだろう。

生まれ変わった新型4代目プリウスを最初に走らせたのはショートサーキットだ。アップダウンのある1周900mほどのコース。個人的にいえば、今年の春先にトヨタ86GTイエローリミテッド・エアロパッケージを取材で走らせた場所である。

乗り込むとすぐに気づくのが着座位置の低さだ。まるでスポーティセダンのよう。しかし、それでも意外と視野が広い。フロントウインドウだけでなくサイドウインドウもウエストラインが下がった分だけ、運転席の真横あたりが上下に広くなっているのだ。

スポーツセダンのような低い着座位置だが、フロントとサイドのウインドウのウエストラインが低く、視界が広い

走行は1回3周を何度か繰り返すというメニュー。新型モデルだけでなく旧型モデルも対比として用意されていた。そこでハッキリしたのは旧型に対して、新型モデルは相当にスポーティな走りが可能になったことだ。新型は簡単に狙ったラインでクルマを走らせることができる。いっぽう、旧型はステアリングからのインフォメーションも反応もあいまい。グラグラとしており、思い通りのラインで走らせるのが難しい。だが、新型は、ステアリングの手応えもしっかりしており、安心して振り回すことができる。ステアリングのギヤ比は新型ではよりクイックになっているようで、ステアリングを切る角度も少なくてすんだ。また、コーナーからの立ち上がりでは、アクセル・オンから加速までに一瞬の間が存在する旧型に対して、新型はレスポンスがよい。さらに力感という点でも新型が上回る。そしてブレーキング時の安定感や安心度も新型が断然上であった。

プリウスは、サーキットを攻めるスポーツカーではないけれど、スポーティなコンパクトカーのような走りを楽しむことができた。サーキットを試乗コースに設定するというトヨタの自信も、「これならば納得」というのが新型プリウスの走りであったのだ。

最初に行われたのは富士スピードウェイのショートサーキットを使っての試乗だった

最初に行われたのは富士スピードウェイのショートサーキットを使っての試乗だった

新旧のプリウスを乗り比べての違いも検証した

新旧のプリウスを乗り比べての違いも検証した

アクセルオンから加速までのタイムラグが少なく、コーナーからの離脱加速もなかなかパワフル

アクセルオンから加速までのタイムラグが少なく、コーナーからの離脱加速もなかなかパワフル

ステアリングの手ごたえもしっかりしており、思い通りのラインで走らせることができた

ステアリングの手ごたえもしっかりしており、思い通りのラインで走らせることができた

ブレーキの効きや安定感も大きく改善されており、心強いフィーリング

ブレーキの効きや安定感も大きく改善されており、心強い踏み心地

市街地を模したサーキット内の移動用道路を走らせる

後半戦はサーキット内を移動するための1周約5kmの構内路がコースだ。交差点や一時停止のある対面交通の道であり、市街地の走りがイメージできる。ここを、やはり新旧とりまぜて走らせる。

まず、よいと思ったのはサーキット同様に、アクセル操作に対するダイレクトな加速感だ。特に旧型は、この点がもうひとつで、個人的に大きな不満の元であった。そこが、新型では、かなり改善されている。逆にアクセル操作の量よりも加速が上回ると感じるほど。個人的には、もう少しおさえた方が好みではあるのだが…。

また、ブレーキのフィーリングも改善されていた。旧型はバネ仕掛けの板を踏むようで、踏み込み感と減速感が乖離することもあった。そこはずいぶんとよくなっている。同様に乗り心地も、すっきりとしたものになっていた。

そして、驚いたのは室内の静かさだ。遮音の向上もあるだろうが、なんといってもEVモードで走る頻度が増えている。時速60kmほどで走ると、ほとんどEV走行のまま。アップダウンの下りや減速もあるので、電池がなかなかカラにならない。エンジンに火が入っていないのだから、当然、室内は静かなもの。新型は、それだけ発電や回生、モーター駆動でのロスが減っており、よりEV走行できるようになったということだろう。もちろん、これは静粛性だけでなく、燃費向上にも走行のダイレクト感アップにもつながる。技術の進化が走りのよさに貢献しているのだ。

特設コースにおいて、そうした市街地走行のシミュレーションに加えて、新型プリウスに採用された「トヨタ・セーフティ・センスP」の歩行者検知機能付きプリラッシュセーフティ(衝突被害軽減自動ブレーキ)を体験することもできた。単眼カメラとミリ波を併用することで歩行者を認知して、自動でブレーキをかける。システムが歩行者との衝突を予見すると、警報を鳴らす。この時点で運転手が自発的にブレーキをかけるのが約80%だという。それでも運転手による反応がない場合、システムが自動でブレーキをかけて衝突を回避する。注意しなければならないのは、少しでもステアリング操作やブレーキ操作を行うとシステムがキャンセルされて、運転手の操作が優先される点だ。ただし、ブレーキに関しては、より強力に効かせるというアシストが働く。実際のところ歩行者に気づけば、運転手としては、とっさにステアリング操作やブレーキ操作を行うはず。あくまでも保険と考えておくほうがいいシステムであった。

時速60km程度の市街地ならほとんどがEV走行になる。燃費はもちろん騒音も大幅に減った

時速60km程度の市街地ならほとんどがEV走行になる。燃費はもちろん騒音も大幅に減った

もうひとつのテストコースが、構内路を市街地に見立てたコース。交差点や体面交通など実際の道路に近い環境を模している

トヨタ・セーフティ・センスPの歩行者検知機能付きプリラッシュセーフティも体験できた

トヨタ・セーフティ・センスPの歩行者検知機能付きプリラッシュセーフティも体験できた

バッテリーを後席下部に移動したことで、ラゲッジスペースが拡大している

バッテリーを後席下部に移動したことで、ラゲッジスペースが拡大している

普通のクルマとしてライバルたちと戦うために

これまでプリウスは、ハイブリッド車として圧倒的にすぐれた燃費性能を誇ってきた。しかし、いっぽうで「燃費性能はいいけれど、走りのフィーリングはもうひとつ」とも言われてきた。しかし、新型モデルでは、その点が大きく改善されていた。ステアリングやアクセル、ブレーキの操作に対するクルマの動きはダイレクトでしっかり感と安心感を抱けるものになった。静粛性も高まっている。衝突軽減自動ブレーキなどの運転支援となる「トヨタ・セーフティ・センスP」も用意した。燃費は確かめていないが、従来モデルの約1.2倍となる40km/lを達成しているという。長所を守りつつも、欠点を克服してきたのだ。素晴らしい進化だと思う。

では、これでプリウスは無敵の存在となれたのか?

答えはNOだ。確かに、旧型よりもよくなっている。しかし、走りが「ナンバー1!」かといえば、そこまで進化しているわけではない。プリウスの属する2リッタークラスのFFハッチバックは激戦区だ。フォルクスワーゲンの「ゴルフ」を筆頭に、プジョー「308」やフォード「フォーカス」といった優秀なグローバル・プレイヤーがライバルとして立ちふさがる。日本勢にもマツダ「アクセラ」やスバル「インプレッサ」といった個性派が存在する。燃費だけを見れば、プリウスは圧勝だろうが、走りのよさでライバルを圧倒するのは難しい。無敵と言えるのは走りのよさでもライバルを上回ってからだ。

実は、試乗会を前にプリウスの開発を担当したチーフエンジニアの豊島浩二氏は、「プリウスはクルマとして社会人1年生です」と挨拶した。初代から3代目までは、小学校/中学校/高校に通う学生であった。そして4代目になってようやく社会人になれたというのだ。これは、未熟な学生が学校という枠組に守られる存在であるのと同じように、プリウスも「ハイブリッド」という特殊性に守られた存在であったということだろう。「ハイブリッドで燃費がよいから、そのかわりほかは目をつむる」という存在であったと。しかし、最新の4代目モデルは、そうした言い訳なしに、社会人としてライバルと戦える存在に成長してきたというメッセージだ。ただし、「まだ1年生」である。いきなりライバルを圧倒できるわけもない。しかし、4代目の進化の方向は間違っていないと思う。この路線を守って進化を続ければ、プリウスは立派な社会人として、世界中で人気を集めることだろう。進化の先が楽しみな試乗となったのだ。

「プリウスはクルマとして社会人1年生です」と挨拶した、チーフエンジニアの豊島浩二氏。4世代目でついに走りの面でライバルに並ぶ存在になった

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る