“弾丸”試乗レポート

「東京オートサロン2016」取材レポート! ショップ編

毎年、1月初旬の自動車業界をあげての一大イベントが「東京オートサロン」だ。今年は1月14日〜17日の3日間で開催され、32万人もの人が足を運んだ。今年のイベントはどんな雰囲気だったのか? 先日のメーカー編に続き、ショップの展示を中心に今年のイベントをモータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏が振り返る。

昨年デビューの新型車のカスタムも数多く出展された

カスタムカーの祭典だけあって、東京オートサロンには、さまざまなカスタムカーが出展されている。その中でも特に気になったのが“新型モデルのカスタム”だ。昨年に「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得したマツダの「ロードスター」をはじめ、数多くの話題の新型車が登場している。特にロードスターやホンダの「S660」、スズキの「アルト ワークス」といったスポーツカーはカスタムの絶好の素材。また、トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」やホンダの「ステップワゴン」、トヨタの「シエンタ」といったミニバンも同様だ。さらに、「プリウス」も注目である。過去、先代のプリウスでは、一大ムーブメントといえるほど、数多くのカスタムが東京オートサロンに登場したこともあるからだ。

まず、スポーツカーのカスタムという意味では、ロードスターのカスタムがそれなりの数を見ることができた。ただし、かつてのトヨタ「86」/スバル「BRZ」がデビューしたときほど多いわけではない。また、チューニング内容はいくつかのショップからターボ/スーパーチャージャー搭載のチューニングが提案されていたが、基本的にノーマルにプラス・アルファ程度のエアロが中心であった。しかし、「久しぶりのスポーツカーとしてロードスターには期待している」という声をあちこちで聞くことができた。

昨年の話題性ではロードスターと肩を並べるホンダのS660だが、カスタムカーの数はロードスターほどではない。しかし、「チューニングに関する意欲は、ロードスターよりもS660オーナーのほうが熱い」という声も。生産能力の差で、ロードスターほど多くの車両が市場に出ていないS660ではあるが、カスタムカーは、これから数多く出てくるのかもしれない。

スズキの「アルト ワークス」のカスタムはごくごく少数であった。リリースが昨年の暮れということもあり、時間的な余裕がないというのが理由だろう。今後に期待だ。また、ステップワゴンとシエンタのカスタムは、ほとんど見ることがなかった。カスタムの素材としては人気がなかったのだろう。

いっぽうで、さまざまなカスタムカーが出展されたのが「アルファード/ヴェルファイア」だ。まだ、エアロ関係だけであったがカスタムのベースとしての人気は高いようである。これからも、数多くのカスタムカーが作られることだろう。

そして意外と多いな! と気づいたのが、レクサスの「RC F」のカスタム。デビューは2014年の秋。ちょうどユーザーにもクルマが行き渡り、ショップもカスタムをじっくり作る時間があったということだろう。ステイタス性をアピールできるスポーツカーとして、これから増えていくことが予想できる。

古くからロードスターのエアロパーツをリリースしてきた「ガレージベリー」のNDロードスター。ボンネットやフェンダーといった大物パーツを早速作り上げてきた

「BLITZ」の手がけるNDロードスターのチューンはターボ。エンジン本体はそのままで、ターボを取り付けるボルトオンチューンのターボキットを開発中だという

「グレッディ」のブランドでターボパーツを販売する「TRUST」もNDロードスターのターボチューニングを出展。ワイドなフェンダーといったボディにも手を入れてきた

後付けのカメラなど電子部品を得意とする「データシステム」もNDロードスターのリヤウイングを出品。バックカメラとストップランプが内蔵されているのが特徴だ

昨年の末に発売になったばかりの新型アルト ワークスがさっそくチューニングされて出品されていた。「三木スズキ」は兵庫のスズキ車の販売店だ

BLITZによるS660のチューニングカー。「チューニングに対する問い合わせは、NDロードスターよりも多くて、ビックリしています」とスタッフ

「Spiegel」のサスペンションを装着した新型コペン(手前)と「Custom Garage Spice」のS660(その背後)、そしてKLCの旧型コペン(画面左奥)。3台の軽自動車スポーツのカスタムが並んだ

「AIMGAIN」による新型プリウスのフロントリップスポイラー。ノーマルの雰囲気を残したままというのがポイント。ヒット作となりそうだ

シエンタの数少ないカスタム出品車。「トヨタテクノクラフト」のTRDシエンタスタイルMbだ

シエンタの数少ないカスタム出品車。「トヨタテクノクラフト」のTRDシエンタスタイルMbだ

「トムス」が手がけたレクサスRCFのカスタム。最高出力787.4馬力。スーパーGT参戦マシンをほうふつとさせるルックスだ

「ケースペック」グループは、アルファードとヴェルファイアのフロント回りの雰囲気を一新させたカスタム車両を複数出展。ゴージャスな雰囲気が特徴だ

マットなオレンジ塗装が目をひく、「アフェクション」のヴェルファイア。存在感の強いカスタムであった

マットなオレンジ塗装が目をひく、「アフェクション」のヴェルファイア。存在感の強いカスタムであった

定番カスタムの中ではハイエース系が目立った

カスタムの定番には、スポーツカーのパフォーマンスを高めるもの、セダンをVIP風に仕上げるもの、ミニバンのカスタム、SUVカスタムなどがある。今回も、それぞれのジャンルでのカスタムを見ることができたが、全体としてスポーツカーのカスタムの数が少し増えたような気がした。さらに定番カスタムの中で勢いを感じさせたのが、ハイエース系のカスタムだ。キャンピングカー仕様や車中泊を狙ったものなど、多彩なハイエースのカスタムが出展されていたのだ。いっぽう、存在感が薄かったのがセダンのVIPカスタムであった。そして、「誰が購入できるのだろうか?」と思わせるような、ランボルギーニやフェラーリといった超ハイエンド&エキゾチックなスーパーカーのど派手なカスタムも、例年通りに数多く登場して、イベントを大いに盛り上げたのだ。

駐車場からアクセスとなる西ゲート。そこから入ってすぐにブースを構えるのが老舗チューナーである「RE雨宮」。今年は、ロータリーエンジン搭載のマツダシャンテを持ち込んだ

キラキラと輝くピンクのランボルギーニ ムルシエラゴを出展した「LYZER」。こちらはHIDやLEDなど、ライト関連のメーカーだ

「SUVコンセプト」でオートサロン初出展を飾った豊田自動織機。ヴィッツとRAV4をトヨタから委託されて生産を行っているトヨタの母体となった会社だ。ほかにフォークリフトも生産している

「ENERGY MOTOR SPORT」によるBMW i8のカスタム、エナジーコンプリートカーEVO i8。専用エアロパーツを開発して、リリースするという

注目は複雑な形状のアベンタドールのボディにぴったりのカッティングを貼り付け、さらにその上にスワロフスキーを接着した技術。「BOOM CRAFT 029 MOTORING」の出品

写真の「トップシークレット」をはじめ、「トップフューエル」、「ジュンオートメカニック」などの老舗チューナーも数多く出展していた

「NEEDSBOX」によるハイエースのカスタム。ルーフ上にベッドシステムを備えるが、走破性も高められている。車内空間と走りの両面をブラッシュアップしているのだ

わざわざクラシカルな角目ヘッドライトに交換されている「フレックス」のハイエース

わざわざクラシカルな角目ヘッドライトに交換されている「フレックス」のハイエース

ビジネス目的ではない学生の作品は、異色だからこそ面白い

最近のオートサロンのトレンドのひとつが、自動車整備士を養成する専門学校の生徒の参加だ。今年も、日本自動車大学校をはじめ、トヨタ自動車大学校、東京自動車大学校、群馬自動車大学校、花壇自動車大学校、国際情報工科大学校、静岡工科自動車大学校、筑波研究学園専門学校といった学校が参加。そのほとんどが卒業制作としてカスタムカーを製作するという。つまり、学生が「楽しく作る」ことが目的。そのためパーツ販売を目的とするメーカーやショップのカスタムカーの中にあって、学生の作品は異質であり、非常に興味深い存在となる。今年も、さまざまなアイデアを具現化した、楽しいカスタムカーが出展されていた。

面白いのは、学生は20歳前後の若者でありながらも、70年代の暴走族風のカスタムカーまで登場するなど、レトロな雰囲気のカスタムカーが多いこと。聞けば、若者の中には「古いクルマのほうがかっこいい!」という意見が強いとか。そうした古いクルマを求める空気は学生だけでなく一般にもあるようだ。トヨタ2000GTのレプリカなど、60〜80年代の雰囲気を漂わせるレトロ志向のカスタムも数多く出展されていたのだ。

トヨタ自動車大学校の作品で、見た目通りの「華車」。ベースはカローラルミオン。昨年の「甘車」に続く、面白いアイデアだ

NATS日本自動車大学校の作品である「若馬」。狙いは70年代に話題を集めた「族車」。しかし、作品である「若馬」は現代の車検をクリアできるという

埼玉自動車大学校の生徒による作品が「でんどう虫Z」。なんと、ベースは「てんとうむし」と呼ばれた「スバル360」。しかもEV。つまり電動(でんどう)化しているのだ

「ロッキーオート」のトヨタ2000GTのレプリカ。昨年はアクアのハイブリッドユニットを動力源としたが、今年は直列6気筒ガソリンエンジンを搭載。販売も受け付けている

東京オートサロンは世界的にも注目のイベントになってきた

会場を巡っていていると、中国語や英語、タイ語といった言葉を耳にすることが年々増えていることに気づく。なにげなく来場者に声をかけてみれば、アジアからの観光客だった。また、中国からの出展ブースもチラホラと見かける。そういえばオートサロンは、タイや中国にも進出している。東京オートサロンの知名度が、アジアの中で高まっているのだろう。確かに、クルマをカスタマイズするという文化は、アジア圏では日本は屈指の存在。しかも、カスタムカーはショップレベルだけでなく、自動車メーカーの力の入った展示もある。もちろんキャンギャルも充実。これだけ楽しく充実の内容であれば、海外のクルマ好きを呼び寄せるのも当然のこと。今後もアジア圏からの観光客が増えるはずだ。

イベント初日、メディア向けて鈴鹿サーキットの新アトラクション「サーキットチャレンジャー」が披露された。開発にも携わったレーシングドライバーの佐藤琢磨氏が説明する

ホンダのMotoGP体験コーナーを楽しむ外国人観光客。オーストラリアから駆けつけたという

ホンダのMotoGP体験コーナーを楽しむ外国人観光客。オーストラリアから駆けつけたという

今回、痛車の展示は少なめだった。写真はスバルとガイナックスのコラボによる「放課後のプレアデス」公式ラッピングカー

「ジオニックトヨタ」の「シャア専用オーリスII」。シャア芸人として知られる「ぬまっち」が場を盛り上げていた

「タカオートコレクション」では運転席にガンダムの鎮座するレクサスLSが展示されていた

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鈴木ケンイチ
Writer
鈴木ケンイチ
新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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