“弾丸”試乗レポート
エクストレイルやGT-R、果ては商用車のNV350キャラバンまでの多様な6台!

雪積もる真冬の高原で“日産車の走り”を存分に味わった!

2015年1月中旬に長野のスキー場にて日産雪上試乗会が開催された。日産の人気モデルを雪上といういつもと異なるシチュエーションにて走らせると、どうなるのか?を実感してもらうのがその趣旨だ。イベントに参加したモータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏がレポートする。

厳しいシチュエーションで大きな安心感を与えてくれた
「エクストレイル ハイブリッド 20Xエマージェンシーブレーキパッケージ 4WD」

白樺湖から車山高原を経由して霧ヶ峰に向かうビーナスラインは、長野屈指の景観の美しいドライブコースだ。緑あふれる夏のドライブも気持ちよいが、1月下旬も、また違ったよさがある。雪によって白く塗りつぶされた山々を背景に、1本の道が優雅なラインを描く。雪の上を流れてくる風にあたれば、自然と凜とした気持ちになる。

まずステアリングを握ったのは、日産にとって最新モデルでもある「エクストレイル ハイブリッド 20Xエマージェンシーブレーキパッケージ 4WD」(285万8760円)だ。路面は、ドライからウェット、道の半分の路肩側だけが雪、全面が雪といった具合に、めまぐるしく変化する。道幅は意外に狭く、大型の観光バスが続々と対向車として現れる。普通であれば、運転に気を遣うシチュエーションである。しかし、ドライブはイージーそのものであった。アンダーステアもオーバーステアもほとんど出ない。クルマの動きやドライバーの操作を鑑みて、ALL MODE 4x4-iというシステムが、前後トルク配分を調節してくれるのだ。また、2つのクラッチを使ってエンジンとモーターの力を使い分ける日産方式のハイブリッドは、プラネタリーギアを使うトヨタ方式よりもショックの面で不利。ところが、頻繁に行われるエンジン停止/再始動のショックを微塵も感じさせない。さらに前後のピッチングも少ない。静かでフラットな乗り心地。雪道という厳しい路面環境でも、ドライバーや乗員にかかる負担が小さい。街中でも悪くないと思っていたけれど、雪道では、“安心感が高い”というエクストレイルの美点が光ったのだ。

また、昨年の暮れに仕様変更があり、歩行者も検知できる衝突被害軽減自動ブレーキの「エマージェンシーブレーキ」および、「LDW(車線逸脱警報)」、「踏み間違い衝突防止アシスト」が全グレードに標準装備されたこともうれしいニュースだ。

最新モデルのエクストレイル ハイブリッド 20Xエマージェンシーブレーキパッケージ 4WDを雪上で試した

最新モデルのエクストレイル ハイブリッド 20Xエマージェンシーブレーキパッケージ 4WDを雪上で試した

フラットな乗り心地は雪上でも変わらない。安心してハンドルを握ることができる

フラットな乗り心地は雪上でも変わらない。安心してハンドルを握ることができる

前後のトルク配分を調整するALL MODE 4x4-iもあり、アンダーステアもオーバステアも現れず安心して走行できた

雪道であっても、あっさりと普通に走ってしまう
「GT-R Premium edition」

続いて用意されていた試乗車は「GT-R Premium edition」(1058万7240円)。最高出力404kW(550馬力)/最大トルク632 Nmのスーパースポーツで雪上走行というのは、たとえ4WDであるとはいえ、ほとんどジョーク。「ほんのちょっとだけね」と乗り込んでみる。正直、GT-Rは久しぶりだ。

ドライバーズシートに収まって、「おや?」と思った。記憶していたGT-Rよりも、なんだかラグジュアリーだ。もちろん床下に走る2本のドライブシャフトのうなるような振動は、相変わらず。しかし、インテリアが豪華になっていて、乗り心地も悪くない。スパルタンなスーパースポーツというよりもGT風の雰囲気である。プレミアムエディションというグレードやスタッドレスタイヤ&雪道という状況も、そう思わせる理由のひとつだろう。
もうひとつの驚きは、すぐれたトラクション性能だ。これほどパワフルなクルマなのだから、ズルズルと横滑りしつつ、横滑り防止装置の表示をピカピカさせながら走ると思っていたが、まったくそんなことがない。普通に雪上をグイグイと加速する。スポーツカーとしての資質を追求したクルマは、低ミュー路でもしっかりと走ることができるということだろう。さすがGT-Rである。

大馬力のGT-Rを雪上で試す。慎重に試乗を始めたが…

大馬力のGT-Rを雪上で試す。慎重に試乗を始めたが…

カーブに差し掛かっても、電子制御の介入は少なく、路面をしっかりつかんで加速する

カーブに差し掛かっても、電子制御の介入は少なく、路面をしっかりつかんで加速する

しっかりと作られたスーパースポーツは、スタッドレスタイヤを使えば低ミュー路も苦にしないようだ。GT-Rのポテンシャルを改めて思い知った

大人のFRスポーティセダンという魅力を再認識
「スカイライン 200GT-t Type P(DAS)」

GT-Rに続いては、FRの「スカイライン 200GT-t Type P(DAS)」(421万2000円)。乗り込んでステアリングを構えてみたところで、「落ち着いていてよいな」と。値段的にはGT-Rの3分の1だけれど、インテリアの雰囲気では、それほどの差はない。黒とシルバーを基調にしつつも、ピアノブラック調のタッチパネルモニターなど、ぐっと大人らしいシックさがある。

パワートレインは最高出力155kW(211馬力)/最大トルク350Nmの2リッターターボ。グレード名にあるDASとは「ダイレクトアダプティブステアリング」で、いわゆるステア バイ ワイヤ。ステアリングとタイヤが物理的に切り離されているのが特徴だ。無駄なキックバックを遮断しつつ、必要なインフォメーションだけをステアリングに伝えてくれる最先端技術である。雪上の走りといえば、4WDのGT-Rとは異なり、やはりFRのスカイラインはリヤをズリズリと滑らせつつ、横滑り防止装置を作動させながらの加速となる。それでも、ステアリング操作の違和感はまったくなく、意外に運転しやすい。不安感なく雪道を思うままに走る。滑りつつも扱いやすい、素直なFRモデルであったのだ。FR好きとしては、非常にポジティブな雪道走行の印象だ。

FRレイアウトに加えて、路面と遮断されたステア バイ ワイヤのスカイラインの雪上での挙動も興味をそそる

FRレイアウトに加えて、路面と遮断されたステア バイ ワイヤのスカイラインの雪上での挙動も興味をそそる

4WDのGT-Rと異なり横滑り防止装置を動作させつつ加速する。ステアリングの違和感もなく思うままに走らせられた

ジャストサイズによる楽しさ!コンパクトSUVのダークホース
「ジューク 16GT FOUR ドレスアップ」

4台目の試乗車は「ジューク 16GT FOUR ドレスアップ」(280万1520円)であった。コンパクトSUVであるジュークをシルバーとブルーの2トーンで彩った特別仕様車だ。こちらもエクストレイル同様に、昨年11月の仕様変更で、エマージェンシーブレーキとLDW(車線逸脱警報)」が標準装備となっている。

クロスオーバー色の強いSUVとしてジュークが誕生したのは2010年。昨今の世界的なクロスオーバーSUVブームの先駆的な存在といっていいだろう。さすがに誕生から5年というと話題性に欠けるけれど、マメな仕様変更というアップデートで装備面を充実。雪道を走らせてみれば、最高出力140kW(190馬力)/最大トルク240Nmは、コンパクトなサイズに十分。キビキビと走ることができた。

個性的なルックスとキビキビとした走り、充実の先進装備というカードを揃えるジューク。ライバルひしめきあうコンパクトSUVジャンルのダークホース的存在といえる。

専用の2トンカラーが特徴のジューク 16GT FOUR ドレスアップを雪上で試した

専用の2トンカラーが特徴のジューク 16GT FOUR ドレスアップを雪上で試した

コンパクトなボディにパワフルなターボエンジンを組み合わせており、動作はきびきびとしつつ扱いやすさも兼ね備えている

一瞬、ぎょっとするほどのモノモノしさ!
「ジューク NISMO RS」

同じジュークなのだが、日産のモータースポーツ部門であるNISMOが専用チューンを行ったのが「ジューク NISMO RS」(343万4400円)。エクステリアも相当にスポーティだが、室内も相応にモノモノしい。カクカクとサポート部分が出っ張った硬質なスポーツシートに、握り部分がアルカンターラになったステアリング。インパネのあちこちに、カーボン柄や赤いステッチがちりばめられている。速度メーターも赤をベースにした刺激的なもの。乗り込んだ瞬間、一瞬、ぎょっとした。ちょっとポップでおしゃれな雰囲気さえある素のジュークが、かくもスパルタンになるのか! というわけだ。

シャシー性能も相当に締め上げられているけれど、さすがに雪道では、どこまで高められているのかは不明。しかし、ノーマルよりも明らかにグイグイとノーズをインに向けてゆく。そして、CVTのくせに、まるでマニュアルミッションのよう、しかも相当に高回転にならないとシフトアップを行わないというセッティングに、さらに驚く。最高出力157kW(214馬力)/最大トルク250Nmが、すぐに味わえるという、とびきりホットな仕様となっていた。ここまでハッキリとスポーツ志向というのもいさぎよいではないか。この過激さが日産らしいところなのだろう。

ただならぬ雰囲気を漂わせるエクステリアとインテリアをまとったジューク NISMO RS

ただならぬ雰囲気を漂わせるエクステリアとインテリアをまとったジューク NISMO RS

強化されたボディと最高出力157kWを発生するエンジンでグイグイと走る

強化されたボディと最高出力157kWを発生するエンジンでグイグイと走る

ローテクだからこそ4WDのありがたみを実感できる
「NV350キャラバン」

最後が「NV350キャラバン プレミアムGX 4WD」(361万1520円)だ。このモデルは最高出力95kW(129馬力)/最大トルク356Nmの2.5リッターのディーゼルターボで、トランスミッションは5AT。1月26日に商用車初のエマージェンシーブレーキ装備追加装備を発表したが、発売は2月23日よりのため、この日は、エマージェンシーブレーキなしでの試乗となった。

個人的な話で恐縮だが、免許を取り立てのころ、古いキャラバンをアルバイトで走らせていた。大きなボディに最初は、おっかなビックリであったが、ロングボディのFRであるキャラバンは、運転の基礎を学ぶのに最適な教材だったと思う。ガリガリというディーゼル音を隠しもしない商用車然としたところに懐かしさを感じる。

4WDはパートタイム。つまりボタンでFRの2WDと4WDを切り替える方式だ。ABSはついているけれど、横滑り防止装置はない。まずは2WDで走ってみれば、もちろんズルズルとお尻があらぬ方向に出てゆく。しかし、ロングホイールベースということもあり、その挙動はゆったり。あわてずに、わずかにカウンターを当てて車線内をキープ。たまにはこういうプリミティブなクルマも面白い。ただし、ちょっとした上り坂で再発進しようとすると、面白いほど簡単に駆動輪が空転を始める。ここで4WDのボタンを押せば、グイと簡単にスタート。やはり雪国では4WDが必須というのが、実感できる瞬間であった。

パートタイム4WDのNV350キャラバン プレミアムGX 4WDは、横滑り防止装置もないプリミティブな商用車だ

パートタイム4WDのNV350キャラバン プレミアムGX 4WDは、横滑り防止装置もないプリミティブな商用車だ

ホイールベースが長いため、横すべりを起してもあわてずにカウンターステアで修正できる

ホイールベースが長いため、横すべりを起してもあわてずにカウンターステアで修正できる

日産らしい魅力的な新モデルの登場を期待したい

GT-Rにはじまり、スポーティセダンにクロスオーバーSUVにミニバンまでを雪上で走らせてみれば、どのクルマにも豊かな個性と魅力が備わっていることを再認識できた。とはいえ、直近にデビューしたのがエクストレイルのみというのは、正直、新鮮味に欠ける。日産には技術も資本も体力もある。やればできるメーカーなのだから、国内の日産ファンのためにも、魅力的な新型モデルの投入を期待するばかりだ。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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