3分でわかる自動車最新トレンド
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世界有数の豪雪地帯を抱える日本の風土が育てた「4WD」の選び方

自動車に関係する気になるニュースや技術をわかりやすく解説する新連載「3分でわかる自動車最新トレンド」。連載6回目の話題は4WDだ。今まさに厳寒期だが、積雪地帯では必須のテクノロジーといえる。日本は4WDモデルのラインアップが多く、バリエーションもさまざまだ。モータージャーナリストの森口将之氏が解説する。

豪雪地帯に必須の4WD。だが、クルマごとに機構の違いなどの違いが存在する。その違いを解説しよう

豪雪地帯に必須の4WD。だが、クルマごとに機構の違いなどの違いが存在する。その違いを解説しよう

軽自動車やミニバンまで用意される4WDモデルは、日本車の隠れた特徴

軽自動車からミニバンまで、国産車は多くの車種に4WDが用意されている。輸入車のラインアップと比べてみると、数の違いに驚く。

輸入車好きは「スタッドレスタイヤを履いていれば2輪駆動でも問題ない、日本は何事も心配しすぎる人が多い」と思うかもしれない。でも我が国の積雪状況を知れば、考えをあらためるはずだ。

昨年、米国のメディアが発表した、世界で積雪が多い人口10万人以上の都市のベスト(ワースト?)10ランキングによると、トップは青森市、2位は札幌市、3位は富山市で、日本が表彰台を独占している。青森市は年間765cmも雪が積もるとか。日本以外では、米国とカナダの都市がベスト10にランクインしている。

これらの都市に共通しているのは、北国であることのほかにもうひとつ、雪の原料となる水が、海や湖として近くに存在していることもある。そんな場所で昔から人々が生活を営んでいたことが、このような結果を生んだようだ。

このように日本の北海道・東北・北陸地方は、世界有数の豪雪地帯である。その割に気温が上昇する日もあり、人通り車通りが多いので、道路はすぐに凍結する。2輪駆動車で発進時に駆動輪を空転させると、その場を掘るばかりでいっこうに前に進まない。上り坂ではさらにその可能性が高まる。雪国であること以外に、山国であることも日本の特徴なのだから。

人間だって、スキーをするときはストックを使って4つ足になっているわけだし、滑りやすい場所では力を4輪に分散させたほうが、力をじんわり路面に伝えることができて、進みやすくなる。国産車にここまで4WDが多いのは、だから当然なのである。

日本の北部は世界的に見ても雪の多いエリアになる。しかも、降雪量の割に気温も高いという条件も重なり、路面が凍結しやすい(写真は札幌の様子)

4WD技術には複数の起源があり、互いに影響を与えて今に至る

4つのタイヤすべてをエンジンの力で回すという4WDの考えは、100年以上前からあった。しかし本格的に量産され、多くの人々に4WDの性能を広めた立役者は、第2次世界大戦中の1941年に米国軍用として生産が始まり、戦後民間向けに販売された「ジープ」だ。現在の「ジープ ラングラー」のルーツである。

ジープは日本でも、三菱自動車工業の手で1953年から生産を開始。同じ時期にトヨタ自動車や日産自動車からも似たようなタイプの4WDが登場した。日産の「パトロール/サファリ」は海外専用車になってしまったが、トヨタの「ランドクルーザー」は日本でも販売されている。

多くの人にとって4WDといえば、悪路を踏破するヘビーデューティタイプのSUVがイメージされる。その元祖は言うまでもなく米国の「ジープ」だ

ここまでは4WDといえばヘビーデューティタイプSUVのことだった。当時の日本は道路の舗装も進んでおらず、幹線道路を外れればオフロードという状況だったから、なによりも悪路走破性が重視されたようだ。

しかし高度経済成長が進むにつれ、人々は4WDにも快適性を求めるようになる。そんな要求に、世界でいち早く応えたのが、1972年に発表された富士重工業のスバル「レオーネ4WD」だった。これ以降、セダンやワゴンなどの乗用車のボディと4WDの組み合わせが増えていく。

乗用車のボディに4WDを組み合わせたのは富士重工業。その先駆者が1972年の「レオーネ エステートバン4WD」

乗用車のボディに4WDを組み合わせたのは富士重工業。その先駆者が1972年の「レオーネ エステートバン4WD」

さらに1980年になると、ドイツのアウディがスポーツ走行用の4WDを、「クワトロ」の名前とともに発表。クワトロは世界ラリー選手権(WRC)に挑戦してチャンピオンを獲得した。これ以降WRCでは4WDが一般的となり、日産「GT-R」など4WDスポーツモデルが数多く登場するきっかけを作った。

つまり現在の4WDは、ジープがルーツとなるオフロード用、レオーネが確立した生活用、クワトロがパイオニアとなるスポーツ用の3種類に大きく分けられる。ただレオーネと同じスバルの最新作「レヴォーグ」はスポーツ性も強調しているなど、境目が曖昧になってきているのも事実だ。

スポーツカーのトラクション確保にも4WDは有利。その元祖は1980年のアウディクワトロ。現在では日産「GT-R」やランボルギーニの各車も広く知られている

古くからのパートタイムとフルタイムに加え、モーターを使ったものも登場

メカニズムもいくつかある。昔はトランスファーと呼ばれるレバーで2WDと4WDを切り替えるパートタイム式(セレクティブ式と呼ぶこともある)が一般的だった。前後輪がプロペラシャフトで直結してあるので、内輪差が生じる右左折時などでは、前後の回転差が抵抗になって走行を妨げる「タイトコーナーブレーキング現象」を発生した。そのため舗装路では2WDに切り替える必要があったのだ。

中央のシフトレバーの右に見える、一回り小さなレバーが4WDと2WDを主導で切り替えるトランスファー。パートタイム式で見られる機構だ

これを解消すべく、通常は左右輪の間に使われているデファレンシャルギアを前後輪の間に装備したセンターデフによって、切り替えを不要としたフルタイム式が登場した。当初は前後輪の駆動力配分は50:50だったが、最近はセンターデフのギアの組み合わせを変えることで、45:55や40:60などの設定も見られる。

もうひとつ、センターデフの代わりに油圧式多板クラッチなどのカップリングを用い、状況に応じてカップリングのつながりを強めたり弱めたりして、確実な発進と滑らかなハンドリングを両立する方式も生まれた。

こちらはスバルが世界で最初に採用したメカニズムで、同社ではタイトコーナーブレーキング現象を解消するための導入だった。しかし、現在の主流になっているのは、メインの駆動輪がスリップしたりして前後に回転差が生じたときに、カップリングのつながりを強めて4WDにする方式。これをスタンバイ式(オンデマンド式)と呼んでいる。

こちらも最近は進化が目立っていて、ABSのセンサーを使うことで前後輪の回転差が生まれる前から4輪に力を分配したりするなど、電子制御を駆使していて、スタンバイという言葉を使うのが申し訳ないほどきめ細かい制御をするメカが現れている。

モーターを使った4WDも増加中。電気自動車のテスラ「モデルS」のようにフルタイム4WDに近いタイプも登場している

プリウスの4WDモデルは、後輪に備わるモーターが必要なときだけ動作する

プリウスの4WDモデルは、後輪に備わるモーターが必要なときだけ動作する

もうひとつ、最近増えている方式として電気式4WDがある。メインの駆動輪でないタイヤをモーターで回す方式で、日産が世界で初めて実用化し、その後トヨタのハイブリッドカーなどにも導入された。

この方式のメリットは、前後輪を結ぶプロペラシャフトが不要なこと。制御方法はさまざまで、トヨタ・プリウスのように必要な時だけ4WDになる車種、テスラ・モデルS(電気自動車なので前後ともモーターだ)のようにフルタイム式に近い制御の車種、ホンダ・レジェンドのように前輪駆動・後輪駆動・4WDを使い分ける車種などさまざまだ。

モーター制御は今後はさらに増えてくるはずで、自在な制御がしやすいこともあり、今後はこの中でいくつかの方式に分類したほうがよくなるかもしれない。

もっとも現在は、トランスファーとセンターデフを併せ持つ方式や、センターデフと電子制御カップリングを組み合わせて使う車種も存在していて、前に書いたジャンル以上に、きっちり分けられない状況にある。センターデフの前後駆動力配分や、電子制御カップリングの作動状況も、車種によって異なる。

さらにこれは4WDに限った話ではないが、上に書いたABSのセンサーを使って、1輪だけに軽くブレーキを掛けたりすることでスリップを抑え、走破性を高めるというテクノロジーも採用例が増えつつある。

同じ4WDでも異なる強みと挙動。その違いを理解して選びたい

自分の経験をもとにして書けば、雪道に不慣れな人は前輪駆動車ベースで前輪に駆動力を多く配分する車種のほうが、安心感が高いと感じるはずだ。逆にドリフト走行に慣れているぐらいの人は、後輪主導の車種のほうが曲がりやすいと思うだろう。そして雪深い場所に入るなら、パートタイム式あるいはセンターデフがロックできるフルタイム式の信頼性や確実性が心強い。

このあたりの感じ方は個人によって大きく異なるので、できれば同じような道で乗り比べて、自分の使い道にはどれがふさわしいかを決めるのが理想だろう。

ただしいくら電子制御を駆使しても、タイヤがノーマルのままでは凍結路ではほとんどグリップしない。雪道ではスタッドレスタイヤが必須であることは2WDと同じだ。もちろんスタッドレスタイヤを履いていれば万全というわけでもない。

世界有数の雪国である日本は、4WDについても高度な技術力を持っている。しかし自然の力はそれよりはるかに強大であることも覚えておいてほしい。

タイプの異なる4WDが豊富に選べるのが日本のクルマ市場。2WDよりも悪路に強いことは間違いないが、技術を過信することなく使いたい

森口将之

森口将之

1962年東京都生まれ。自動車業界のみならず、国内外の交通事情や都市計画を取材しメディアを通して紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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