“弾丸”試乗レポート
良好な燃費に加えEVのような走行感覚で、ハイブリッドの新たな可能性を開く!

ホンダ「オデッセイハイブリッド」開発者インタビュー&試乗レポート

ホンダの上級ミニバンである「オデッセイ」にハイブリッドモデルが追加され、2015年2月5日より発売された。このモデルには、どんな狙いが隠されているのだろうか? 開発のリーダーへのインタビューと、モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏のレポートをあわせて紹介する。

2月上旬に発売が始まった、ハイブリッド仕様のオデッセイ。開発者インタビューと市場レポートからその実像に迫ろう

ハイブリッド化で注力したのは“意のままの走り”の実現

本田技術研究所四輪R&Dセンター LPL 主任研究員 中川真人氏

本田技術研究所四輪R&Dセンター LPL 主任研究員 中川真人氏

鈴木:まずはオデッセイにハイブリッドモデルを追加した理由からお聞かせください。

中川:今の日本のミニバンのお客さまは、室内空間が広くて、スライドドアがついていて、キャプテンシートがあり、燃費がよくて、走りがいいクルマを求めています。そこで、今のオデッセイにハイブリッドを積めば、お客さまのニーズの多くが満たせるということですね。

鈴木:今回、技術的に困難だった部分は、どういうところでしょうか?

中川:軽量コンパクトで、だからといって値段を思い切りあげたら意味がない。そこが開発として大変でした。アコードのハイブリッドからオデッセイ用に、それだけたくさん改良していますので。

鈴木:コストを抑えるのが一番、大変だったのでしょうか?

中川:コストよりも、小さくすることですね。ミニバンなので、大きなスペースもありませんから、軽量コンパクトであることが、まずあって。その上で、価格を抑えながら、ということですね。

室内空間の広さが求めらるミニバンは、メカの載るスペースが意外と少ない。ハイブリッド用のモーターやバッテリーはなるべくコンパクトに納められている

鈴木:今回、乗ってみて、相当に走行フィーリングが独特だなと思いました。ガソリン車と違うだけでなく、プリウスなどのトヨタのハイブリッドともぜんぜん違います。

中川:ハイブリッドの走りはチューニングで、いかようにでもできます。逆に言うと、だから難しい。人間とはどうあるべきか? ドライバーの要求に対して、クルマはどうあるべきか? というのを考えながら、細かいマトリクスを作りました。開発は、その積み重ねなんですね。

鈴木:狙いとしては、どういう走りなんですか?

中川:一番は、“意のまま”です。加速や減速が、自分の要求したものとぴったりとはまるようなものですね。加速しすぎてもダメだし、しなくてもダメ。止まりすぎてもダメ。開発は“意のままに”を合い言葉にやってきました。

3列シートのレイアウトはガソリン車から変更はない。室内空間も基本的に共通

3列シートのレイアウトはガソリン車から変更はない。室内空間も基本的に共通

鈴木:販売の数をみたところ、発売10日間でオデッセイのシリーズ全体の受注が8400台。そのうち、5800台がハイブリッドだったそうですね。最初ということもあると思いますが、大多数がハイブリッドでしたね。それは予想どおりですか?

中川:けっこうハイブリッドを待たれていたお客さんがいらっしゃったようです。それが、ハイブリッドが7割くらいになっている理由だと思います。ですから、半年くらいすると落ち着くので、そうなればガソリンと半々かなと。

鈴木:ハイブリッドとガソリン車の価格差は50〜60万円くらいですよね。でも、内装はほとんど同じ。つまり、その差が、燃費と走りのよさの違いになります。それをガソリン代で元を取るのは、ずいぶん大変でしょう(通常モデル276万円〜362万5400円/ハイブリッド356万〜405万6400円)。

新開発のモーターや、最適化されたエンジンやクラッチなどを備えた「スポーツ・ハイブリッド i-MMD」を搭載

中川:そうですね。ただ、買っていただいたお客さまは、ガソリン代がどうのこうのというよりも“ハイブリッドという環境車に乗っているよ”というステイタスみたいなところもあるようです。ホンダのエリシオンという、オデッセイのひとつ上のクラスからオデッセイのハイブリッドに乗り換えたかたもいます。そういうかたは“環境車に乗っているんだよ”というステイタス的な意味で買われているかたも多いと聞いています。

写真はモーターだけを使って走行するEVスイッチ。住宅地などを静かに走行できる

写真はモーターだけを使って走行するEVスイッチ。住宅地などを静かに走行できる

鈴木:それ、すごく分かります。個人的にも思うのですけれど、プリウスが大ヒットしたのは、ガソリン代が安いだけではないと思います。やはり環境車に乗っているとか、新しい走行フィーリングが魅力だったと思うんですよね。

中川:私もそうだと思います。

新しい走行感覚や環境負荷の小ささなど経済性を越えた部分でも、ハイブリッドは支持を集めている

新しい走行感覚や環境負荷の小ささなど経済性を越えた部分でも、ハイブリッドは支持を集めている

鈴木:そういう意味で、今回のオデッセイのハイブリッドは走り味も新しいので、受け入れられたのかもしれませんね。

中川:だと思います。

ミニバンの特等席、2列目シートはゆったりとしたサイズで魅力的。写真は7人乗りだが、8人乗りも用意される

3列目シートを折りたたまなくてもラゲッジはそこそこのスペースが確保されている

3列目シートを折りたたまなくてもラゲッジはそこそこのスペースが確保されている

鈴木:それでは最後に、読者やお客さまに、オデッセイ ハイブリッドで、ぜひとも見て欲しいところや、知ってほしいことはありますか?

中川:燃費のよさはハイブリッドですから、もちろん売りなんですけれど、特に都市部や渋滞での燃費がいいんですよ。ガソリン車だと、渋滞や都市部で、がたっと燃費が落ちます。ハイブリッドも落ちますが、落ち幅が小さい。それが今回のハイブリッドの売りです。それと走りも売りのひとつ。自分が要求しただけ加速してくれるよと。つまり、走りと燃費が両立しています。そこを一番、見ていただきたいですね。

モーター駆動中心のホンダ流のハイブリッドを搭載

続いてオデッセイのアウトラインを説明しよう。

現行オデッセイは2013年10月末にデビューした5世代モデルだ。もともとオデッセイは、3列シートのミニバンでありながらも、54ドアで背が低いことが特徴であった。ところが、第5世代に進化するのにあたり、左右のスライドドアを採用し、あわせて車高も10cm以上アップ。車高は16インチ仕様では1695mmになった。ある意味、背の低い54ドアのミニバンというポジションは、新型モデルであるジェイドに譲った格好だ。とはいえ、アルファードの1895mmやエスティマの1745mmと比べれば、まだまだオデッセイの背の低さは抜きんでている。それでも低床プラットフォームのおかげで室内空間の上下寸法をしっかり確保。従来通りの背の低いクルマならではの走りのよさと、従来以上に広い室内空間を実現したのが最新のオデッセイとなる。

歴代のオデッセイは、3列シートのミニバンとしては異例とも言える背の低さが特徴だった。最新モデルは、大きくなったが、まだライバルよりはずっとコンパクト

クラスの中ではコンパクトなボディだが、室内は広々としている。こういうスペースユーティリティも人気の理由のひとつだ

そんなオデッセイのフルモデルチェンジから3年目となる2015年2月にハイブリッドモデルが追加された。システム自体は、アコードにも搭載される「スポーツ・ハイブリッド i-MMD」だ。とはいえ、モーターを新開発しており、エンジンもクラッチ機構も大幅に改良されている。出力は、モーターが135kW(184馬力)/315Nmで、エンジンが107kW(145馬力)/175Nm。アコードのモーター124kW(169馬力)/エンジン105kW(143馬力)よりもパワーアップしている。仕組みは従来同様だが、ハード面では大いに進化したのだ。JC08モード燃費は、24.4km/l〜26km/l。エスティマハイブリッドの17〜18km/lや、アルファード/ヴェルファイヤハイブリッドの18.4〜19.4km/lだけでなく、ノア/ヴォクシー/エスクァイアハイブリッドの23.8km/lを上回る。さすがに新型だけあって、スペック面ではしっかりとライバルをキャッチアップしている。

このシステムは、基本的にモーター駆動を中心として、電気がなくなるとエンジンで充電するのが特徴だ。エンジンはもっぱら充電にいそしみ、その力を直接走行に使うのは、高速走行など限られたシーンのみ。つまり、ほとんどをモーター駆動で済ます。こまめにエンジンとモーターの力をミックスして走るトヨタ方式とは大いに異なるのだ。

オデッセイハイブリッドは、基本的にモーターで駆動。エンジンは限られたシーンのみ直接走行で使う

オデッセイハイブリッドは、基本的にモーターで駆動。エンジンは限られたシーンのみ直接走行で使う

出力は、モーターが135kW(184馬力)/315Nmで、エンジンが107kW(145馬力)/175Nm。JC08モード燃費は、24.4km/l〜26km/l

ハイブリッドらしくAC100Vの電源コンセントを装備。アウトドアや遠征など利用シーンは多い

ハイブリッドらしくAC100Vの電源コンセントを装備。アウトドアや遠征など利用シーンは多い

ほとんどのシーンをモーターで走りきってしまった!

実際に走らせてみると、新しい感覚に驚いた。走り出しは、エンジンがかかっていないのだから、当然のようにスムーズで静か。室内に不快なエンジン振動は入ってこない。そして、街中を走っても、その感覚がずっと続く。市街地の流れに身を任せているうちは、完全にモーター駆動だけ。充電していた電気がなくなるとエンジンが始動する。また、急加速のときもエンジンが始動する。これは急加速に必要な大電力を電池だけでは供給しきれないので、必要な電力をその場でエンジンが発電するのだ。しかし、エンジンの振動と音は非常に小さく遠い。タイヤが発するノイズと振動のほうが大きいのでは? というほどの小ささだ。そんなときも、加速フィールは力強いモーター駆動そのまま。ようやく高速道路に乗り入れるとエンジンの力を使っているという表示が出た。直結クラッチがエンジンと車軸をつなげたのだが、そのときのショックは感じることができなかった。表示がなければ気づくことは、ほとんど無理だろう。結局のところ、1時間近くオデッセイのハイブリッドを街中や高速道路で走らせたが、走行フィーリングはほとんど電気自動車であったのだ。ミニバンなのに、電気自動車のように走る。なんと新鮮なことか。

メーターに表示されるパワートレインの状態。市街地走行ならほとんどがモーター駆動で事足りる

メーターに表示されるパワートレインの状態。市街地走行ならほとんどがモーター駆動で事足りる

ステアリングの手ごたえがしっかりしており、ミニバンながらドライバーズカーという側面を維持している

ステアリングの手ごたえがしっかりしており、ミニバンながらドライバーズカーという側面を維持している

ちなみに背が低いというオデッセイの特徴は、ロールの少なさや、コーナリングの安定感に表れていた。あと、ちょっと意外だなと思ったのは、ステアリングの手応えがしっかりとしていて重いこと。家族で使うミニバンではあるけれど、オデッセイはドライバーズカーという側面を大切にしているのだろう。走りのよさや新鮮なドライブフィーリングを求める人であれば、まず間違いなくオデッセイのハイブリッドは気に入るに違いない。

重心の低さがもたらす走行フィールは、従来のオデッセイから引き継がれたもの。それに加えハイブリッドのもたらす低燃費と新鮮な感覚も魅力

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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