話題の超小型EVにいち早く体験できる「Times Car PLUS × Ha:mo」とは?

トヨタのスマートモビリティ「i-ROAD」路上走行レポート

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トヨタ自動車とパーク24株式会社が実施するスマートモビリティ・シェアリングサービスの実証実験「Times Car PLUS × Ha:mo」が2018年3月まで延長された。注目なのは、まだ市販されていないi-ROADが使用されていること。そこで今回は、そもそもTimes Car PLUS × Ha:moはどんなサービスなのか? そしてi-ROADの走りはどうなのか? をレポートしよう。

まだ市販はされていないスマートモビリティi-ROADを路上で運転できるTimes Car PLUS × Ha:moを体験した

まだ市販はされていないスマートモビリティi-ROADを路上で運転できるTimes Car PLUS × Ha:moを体験した

超小型EVのスマートモビリティを乗り捨てスタイルでシェア

次世代の都市交通システムとしてトヨタは「Ha:mo(ハーモ)」を提案している。Ha:moとは、スマートモビリティと公共交通を最適に組みあわせ、シームレスで快適な近未来の移動手段を実現させることを目標とした実証実験プロジェクトだ。Ha:moは、これまでに、愛知県豊田市やフランスのグルノーブル市、東京都渋谷区などで実証実験が実施されている。

そのHa:moの東京都内での実証実験は、「Times Car PLUS TOYOTA i-ROAD Drive」として2015年2月よりトヨタ自動車とパーク24株式会社の2社によって開始された。そして、同年10月にTimes Car PLUS × Ha:moに発展。2016年3月になって、実証実験が2018年3月末まで延長されることが発表されたのだ。

このサービスはスマートフォン用アプリを使って、スマートモビリティと呼ばれる超小型EVを借りるもの。どこから乗っても、どこに返却するのも自由という、いわゆる乗り捨て型(ワンウェイ)のカーシェアだ。使用するのは、i-ROAD(アイロード)とCOMS(コムス)の2種で、これまでの30か所60車室(千代田区/中央区/江東区の一部)から100か所250車室(左記に港区と江東区を加える)へ順次拡大する。使用料はi-ROADで15分412円、「COMS」で15分206円。ただしi-ROADに限って事前講習とタイムズカープラスプログラム「ステージ2」以上が求められる。つまり、ある程度の利用実績がないとi-ROADを借りることができないというわけだ。とはいえ、ワンコイン以下で手軽にカーシェアできるのは便利なことは間違いない。

Times Car PLUS × Ha:moで使われるスマートモビリティ。i-ROAD(写真左)と、ひと回り大きな「COMS」(写真右)の2車種

スマホアプリの活用も重要な要素。予約に加え、返却先や走行可能距離などを調べることもできる

スマホアプリの活用も重要な要素。予約に加え、返却先や走行可能距離などを調べることもできる

収益性に難はあるが、新しい交通インフラ定着への挑戦

「これは弊社にとっては挑戦になります」とTimes Car PLUS × Ha:moの運営主体となるパーク24株式会社のタイムズカープラス事業部企画グループグループリーダーの亀田真隆氏は説明する。何が挑戦かというと、これまでもパーク24社はカーシェア事業を行ってきたが、それは「ラウンドトリップ型」。出発した同じステーションにクルマが戻ってくる方式であり、「乗り捨て型(ワンウェイ)」とはまったく別のもの。この新しいカーシェアにパーク24社は挑戦しようというのだ。

また、乗り捨て型はビジネスとして収益性に難がある。従来のスタイルなら、1台のクルマに対して駐車場はひとつあればいい。しかし、乗り捨て型は、出発地点とゴールの2か所の駐車場が必要で、土地代の安い地方都市ならいざ知らず、これを東京都心でビジネス的に儲かるようにするのは困難だ。

Times Car PLUS × Ha:moのような乗り捨て型(ワンウェイ)のカーシェアリングは、従来のラウンドトリップ型よりも運営負担が大きい

「1960年代の東京オリンピックでは首都高速という新しいインフラができあがりました。僕らも今回のオリンピックを契機になにかひとつインフラになるようなものを作れるんじゃないのか。ワンウェイ型は収益性が難しいけれど、それに挑戦できるプレイヤーって僕らしかいないよね。まず挑戦してみようと考えました」と亀田氏は挑戦の理由を説明した。

パーク24社は駐車場の運営会社として1985年に創業した後、1991年に無人パーキングシステムをスタート。その後も海外展開やレンタカービジネス、カーシェアと次々とビジネスを広げてきた。「社内にベンチャー意識があります」(亀田氏)というパーク24の社風が、次世代の都市交通システムHa:moとマッチしたのだろう。2015年春に手探り状態でスタートした実証実験は、これからの2年で収益性を確認するフェーズに入ったという。

「i-ROADは特別なクルマ。移動をより楽しくさせる、新感覚なモビリティです。COMSは、思った以上に簡単に気軽に乗れるクルマで便利です。ぜひ体験してほしいですね」と亀田氏は発言した。

東京オリンピックを目指した新しい交通インフラの構築という目標が「Times Car PLUS × Ha:mo」には込められている

たっぷりとi-ROADの走行特性を講習で学ぶ

Times Car PLUS × Ha:moで気になるのは、まだ市販前であるi-ROADを体験できることだ。i-ROADは、トヨタが2013年のジュネーブモーターショーで発表したパーソナルモビリティだ。全長2345×全幅870×全高1455mm。前2輪、後ろ1輪の3輪の電気自動車で、運転は、ハンドルとアクセル&ブレーキで行うが、バイクのようにコーナリング時に車体を傾ける(リーン)。しかも、操舵が後輪で、車体の傾きは自動で行われる。リチウムイオン電池を搭載しており、満充電での航続距離は30km程度。今回のプロジェクトでは、ミニカー登録(原付)ということで、乗車定員は1人で、一般道を最高速度60km/hで走行できるが、二段階右折や自動車専用道と高速道路の走行は行えない。なお、別エリアのHa:moプロジェクトでは、2人乗りのi-ROADが一部で使われた。

後輪を操舵し、バイクのように車体を傾けてコーナーを駆け抜けるi-ROAD。ユニークな走行特性を講習で理解してから乗車が可能になる

Times Car PLUS × Ha:moのi-ROAD向けの講習が行われるのは日比谷公園の地下にある日比谷駐車場だ。要予約で、1回90分で1,080円の費用がかかる。
 
講座の最初は座学。使用方法や法規などの注意点やビデオでのi-ROADの特性の説明が行われた。そこで、驚いたのが後輪操舵のi-ROADならではの走行特性だ。i-ROADは曲がるとき、最初に曲がる方向とは逆に後輪を振りだすのだ。通常の前輪で操舵する車両は車両の頭から曲がっていく。しかし後輪操舵なので、右に曲がるときは、最初に後輪が左に出ていく。一般的な前輪操舵の車両は、内輪差といって、前輪よりも後輪が内側を通ることに気をつけなければいけない。それに対してi-ROADは後輪が外を通ることに気をつけなければいけないのだ。

講習に先立って、会員カードをセンサーにタッチ。これで講習が行われることがサーバーに登録される

講習に先立って、会員カードをセンサーにタッチ。これで講習が行われることがサーバーに登録される

講習の最初は座学、指導員がi-ROADの特性をテキストで解説する

講習の最初は座学、指導員がi-ROADの特性をテキストで解説する

座学は、DVDを使った動画の視聴で締めくくられる

座学は、DVDを使った動画の視聴で締めくくられる

その説明の後、駐車場内に移動して、実車を使っての練習が始まる。駐車場の一角にパイロンが置かれ、指導員用と受講者用の2台のi-ROADが待っていた。最初の練習はコーナーの曲がりかただ。通常のクルマよりもハンドルを切るタイミングが早い。車両にはトランシーバーが置いてあり、リアルタイムでの指導員のアドバイスを聞きながらなので、非常にわかりやすい。

実車による講習、指導員の先導するi-ROADの後ろに従いながらメニューを進める

実車による講習、指導員の先導するi-ROADの後ろに従いながらメニューを進める

続いてスラロームやブレーキの練習を行う。リヤを振りだしながら、しかも自動でリーン(車体を傾ける)する感覚は、クルマともバイクとも異なる新しいものであった。また、車庫入れも通常のクルマとは異なるタイミングでのハンドル操作が求められる。これも何度も繰り返して練習する。そして、壁に近づきすぎてしまったときの対処法も独特。普通に前進して壁から離れようとすると後輪がぶつかってしまう。そのため、i-ROADはバックして壁から離れるのだ。そうした駐車場での練習は約40分にもおよんだ。

急ブレーキやスラロームも繰り返し行われ、独特の挙動を理解できるようになっている

急ブレーキやスラロームも繰り返し行われ、独特の挙動を理解できるようになっている

普通の自動車とは異なるハンドル操作を求められるので、駐車の練習メニューは念入りだ

普通の自動車とは異なるハンドル操作を求められるので、駐車の練習メニューは念入りだ

バイクに近い爽快感とクルマに近い走行マナー

講習の仕上げは路上走行だ。指導員の乗った車両の後をついて、日比谷近辺の実際の道を30分ほどかけて走る。駐車場の出口の坂を上りきり、暗い場内から明るい外に出ると、大きな開放感を得た。ドアが密閉しないi-ROADは、クルマというよりもバイクに近いのだ。バイクに乗らなくなって、10年以上経っているということもあり、街の空気やざわめき、隣を走るクルマの近さに少しドキドキ。でも、この爽快感はきっと誰もが楽しいと感じることだろう。

霞ヶ関の路上を走行中。地下駐車場の講習から一転して開放感がある

霞ヶ関の路上を走行中。地下駐車場の講習から一転して開放感がある

カーブを曲がる際は前輪操舵とは違ったタイミングでのハンドル操作が必要

カーブを曲がる際は前輪操舵とは違ったタイミングでのハンドル操作が必要

街中でのi-ROADの走行マナーは、バイクよりもクルマに近い。後輪を振りだす走行特性は、すり抜けなどの狭い場所を走るのには向いていない。クルマの横ではなく、クルマの後ろに並んで、道の真ん中を走る。加速力は街中レベルであれば十分で、ブレーキもしっかり効く。リーンしたときの車体の安定感が高く、コーナリング中の急ブレーキでも転倒しない。バイクに慣れていない人がi-ROADを初めて走らせても不安は少ないはずだ。ただし、エアコンがないので、真夏と真冬は、それなりの覚悟と服装が必要だ。

しかし、クルマともバイクとも異なるフィーリングは、ほかのどんな乗りものでも味わうことのできないもの。この魅力的なモビリティを15分412円で楽しめるというのは、とんでもなくリーズナブルなのではなかろうか。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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2017.3.22 更新
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