魅力は自動運転技術「プロパイロット」だけじゃない!

乗る人すべてが快適なミニバンを目指した、日産「セレナ」試乗&開発者インタビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加

2リッターミニバンの人気モデルである日産「セレナ」がフルモデルチェンジし、2016年8月24日より発売開始される。新型「セレナ」はどのようなクルマなのか? その特徴や狙いを、モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏が、試乗と開発者へのインタビューを通してレポートする。

運転支援技術「プロパイロット」に注目の集まる、5代目セレナだが、乗る人すべてが快適に過ごすことを目指したという

広さと使いやすさに徹底的にこだわった5代目セレナ

2リッタークラスのミニバンは、トヨタの「ノア/ヴォクシー」、ホンダの「ステップワゴン」といった各メーカーの人気モデルがそろう激戦区だ。そこで日産の看板モデルとして戦う「セレナ」が6年ぶりのフルモデルチェンジで第5世代となった。しかし、基本コンセプトは従来通りの“ビッグ&イージー&ファン”。室内の広さと使い勝手のよさに磨きをかけ、ワクワクできる最新技術を積極的に採用した。最新技術である自動運転技術「プロパイロット」は、ビジネス系のメディアにも盛んに取り上げられるほどの話題を集めている。しかし、実際のセレナに接してみると、広さや使い勝手の部分での進化がむしろ大きいと感じる。乗る人へのおもてなし感が強まっていたのだ。

さらに広がった室内空間。広いだけでなく細かな配慮が行き届いている

さらに広がった室内空間。広いだけでなく細かな配慮が行き届いている

コンセプトの“ビッグ”にあたる室内の広さは、前後長を180mm拡大。3列目シートに大人が座っても苦しくない広々空間を実現した。また、スライドドアの開口部を大きくし、2列目のシートベルトをシート内蔵式に。これによって3列目の乗員は、2列目シートに関係なく自由な乗り降りが可能となった。また2列目シートのレールにベアリングを採用することで、従来の2分の1の力でシートスライドができるようになった。3列目シートの跳ね上げ式収納も非常に軽く仕上がっていた。

全長が180mm伸びたことで、3列目スペースが拡大。2列目シートを軽く横にスライドさせるだけで、乗り降りできる

また、バックドアには2通りに開閉できるデュアルバックドアを採用。ガラス面のある上部だけを開くことができるため、狭い場所でも荷物の出し入れができる。スライドドアには、車体下に足を抜き差しすることでドアが自動開閉する「ハンズフリーオートスライドドア」を用意。給油口のフタを廃したキャップレス給油口を日産車として初めて採用したのも、特に女性にはうれしいニュースのはずだ。

バックドアは、上部だけと全体の2通りの開閉ができ、狭い場所での荷物の出し入れが行いやすくなっている

バックドアは、上部だけと全体の2通りの開閉ができ、狭い場所での荷物の出し入れが行いやすくなっている

ボディ下に足を入れるだけで、スライドドアが開く「ハンズフリーオートスライドドア」。子どもや荷物などで手が離せない場合に便利だ

日産車としては初めてキャップレスの給油口を採用。給油時に手が汚れないのはうれしい

日産車としては初めてキャップレスの給油口を採用。給油時に手が汚れないのはうれしい

ほかにも細かな工夫の多さは驚くばかりだ。USB電源ソケットは最大で6つ(そのうち助手席側のひとつはオプションのカーナビと連携する)。ドライバー用の大型サンバイザーはシースルー構造で、日よけしながらも信号を見ることができる。2列目3列目用のテーブルに備わるドリンクホルダーは、カニの爪の格好をしており、ドリンクだけでなくポテトの箱まで保持できる。またシートバックの収納は、スマートフォンやタブレットを収納しやすいように内部に仕切りを設置。日本専用車らしく、徹底的に日本のニーズに応えようという開発陣の気合いを感じることができたのだ。

プロパイロットの挙動は終始おだやか、安心感も感じられる

続いて、街中を走らせた印象をレポートしたい。乗り込んですぐに気づくのは視界の広さ。大きなミニバンを運転するのに不安を持つ人には、うれしい特徴だろう。また、インテリアカラーが6色から選べるのも魅力のひとつだ。ただしカーナビは、設置角度のせいか映り込みで画面が見づらい。早々の改良を期待したい。

視界が広く確保されており運転しやすい。カーナビは映りこみが少々気になった

視界が広く確保されており運転しやすい。カーナビは映りこみが少々気になった

パワートレインは、最高出力110kW(150馬力)の2リッター直噴エンジンとCVTの組みあわせ。これに、オルタネーターを減速エネルギー回生とエンジンアシスト用のモーターとして使うマイルドハイブリッド「S-HYBRID」をプラス。追加の二次電池は鉛バッテリーで、エンジンルームに設置されている。シンプルなシステムながらも、JC08モード17.2km/lのすぐれた燃費性能を達成している。パワー感は必要十分といったところ。CVTによる滑らかな加速と、落ち着いた挙動は、2列目や3列目の乗員には好ましいもの。ハイブリッドの実感や違和感は、ほとんどないのもマイルドハイブリッドの特徴だ。

最高出力110kW(150馬力)の2リッター直噴エンジンとCVTというパワートレイン。マイルドハイブリッド「S-HYBRID」ではこれに、モーターが組み合わされる

続いて高速道路に入って自動運転技術のプロパイロットを試す。操作は簡単だ。ステアリングの右にあるメインスイッチを押す。システムがモノカメラで走行車線を認識するのを待って、それからセットスイッチの下を押せばプロパイロット走行状態となる。ただし、車線を認識するまでは、少々時間がかかる。今回の試乗では5〜10秒ほど、街中でも起動してみたが、ほとんど車線を認識することはなかった。また、雨で路面が濡れると、反射などでモノカメラのシステムでは車線認識が難しくなる。そのためセレナでは、雨が降ってワイパーを動かすと、このプロパイロットが作動しなくなることは覚えておこう。

ステアリングの右にあるメインスイッチを押してシステムを起動。走行車線を認識してからセットスイッチの下を押せばプロパイロット走行状態になる

プロパイロットの特徴は、一定速度(もしくは前走車を追従)しながら、走行車線の中央をキープして走ること。車線をキープする動きは繊細でフラフラするという不安感はない。遅い前走車がいなくなった後の加速はゆったりで、前走車に近づいたときのブレーキは早めでスムーズ。全体におだやかな挙動という印象だ。安心感のあるシステムで、自動運転技術を先取りするものとしては、まずまずの出来ではないだろうか。ただし、分岐やきついカーブ、車線が薄くなると制御がオフになる。当然、よそ見は厳禁だ。自動運転技術と聞けば、大きな期待を抱いてしまうのは仕方ないが、あくまでも現状では、人間の運転を支援するというレベル。間違えれば危険もある。けれど、上手に使えば、これほど便利な道具もない。包丁は便利な道具だが、間違って使えばケガをする。同様に、プロパイロットも上手に使いこなす必要があるということだ。

プロパイロットの基本的な機能は、“一定速度を維持(もしくは前走車を追従)しながら、走行車線の中央をキープして走る”、というもの

プロパイロットは今後も機能強化が予定されており、2018年に登場する車種にはレーンチェンジ機能が加わる予定。2020年には市街地走行にも対応する

できることなら、3列目の人のために6枚ドアにしたかった!

写真左が遠藤智実氏、日産自動車日本商品企画部リージョナルプロダクトマネージャー。写真右が磯部博樹氏、日産自動車 Nissan 第二製品開発本部 Nissan 第二製品開発部 第三プロジェクト統括グループ DCVE(Deputy Chief Vehicle Engineer)

続いて、開発担当者に話を聞くことができたので、インタビュー形式で紹介しよう。遠藤氏は商品企画、磯部氏はエンジニアリングの開発担当だ。

鈴木:今回のセレナには、おもてなし感を強く感じました。

遠藤:今回、開発にあたってお客さまの話を聞くと、僕らが想像しているよりもずっと人をケアするというか、多人数でいることを尊ぶというか、喜ぶというか、そういう気持ちが強いことに気づきました。乗ってもらう人をちゃんとおもてなししたいというマインドがあるんですね。そうすると、もっとみんなが楽しめるようにしないといけないなと。

そこで、磯部(開発)さんに「ドアを6枚つけてください」とお願いしたんですよ。3列目の人のためのドアをつけてくださいと。正確に言うとバックドアをあわせると7枚ですけど(笑)。真面目に言ったわけではないですけれど、3列目席の人に対して、3列目が劣っている状態じゃないようにしたいという思いがあったんですね。

磯部:6枚は、スライドドアがあるので、さすがにね(笑)。「ガルウイングにするのか?」と冗談で言っていたんですけれど。

遠藤:レールもあるのに開かないのはわかっていましたけど。「じゃあ、あたかも3列目席専用のドアがあるようにしてください」と、現在の形になったんですね。

スライドドア自体が大きく、2列目シートを左右にスライドさせることができるので、3列目シートへのアクセスは格段によくなった

鈴木:なるほど。3列目でも乗り降りしやすくしようというわけですね。ちなみに、もうひとつの売りである「プロパイロット」は、どういう経緯で採用になったのですか?

遠藤:初期のコンセプトの中からプロパイロットは入っていました。「家族で出かけるときの障害っていうのは何ですか?」という話なんですね。まず女性からいうと「不安」「怖い」なんです。それを何かサポートできないのか? 今ある技術でできるよね。

鈴木:確かにプロパイロットがあれば不安感は減りますよね。

遠藤:あとは、お父さんが運転するとき。家族でレジャーに出るときは、絶対に渋滞に巻き込まれますよね。独身や若いカップルならば、夜中3時に帰って3時間しか寝られなくても翌実に会社に行っても頑張ろう!とできます。ところが家族に子どもがいたら、「この時間に帰ったら絶対に渋滞になる」と分かっていても、渋滞に突っ込まないといけません。絶対なんですよ。そのときのお父さんは、渋滞のときの気分がブルーじゃなくて、その前のレジャーのときからブルーなんですよ。早く帰りたくて仕方ない。渋滞が始まるから、「早く帰ろう」という(笑)。

プロパイロットは、女性に多い運転に感じる不安感や、渋滞時の運転の心配といった、家族で出かけるときの障害を軽減するのに有効だ

鈴木:確かに、午後3時くらいから帰りたくて仕方ないと(笑)。

遠藤:ややもすると、出かける前からブルーなんでよ。「みんな楽しいかもしれないけど、俺は帰りに渋滞が〜」と。そのブルーな気分を少しでもなくしたい。そのサポートにプロパイロットが必要だろう。2列目や3列目の人をもてなすのはいいけど、もてなす側は置き去りですか?と。その部分をサポートすることによって、運転する人も明るく幸せになれると思ってプロパイロットを採用しました。

鈴木:相当、プロパイロットに注目が集まっていますよね。これは想定通りですか?

磯部:私としては、プロパイロットばかりに焦点が当たっているのは不本意なんですよ。ミニバンの基本的な性能とか、使いやすさをとことん磨き込んできました。スライドドアやバックドアの使いやすさ、シートアレンジとか、そういう細かいこだわりをいっぱいに詰め込んできたんです。それなのに「あっ、プロパイロットのクルマね」と言われるのは、正直、不本意なんですよ。

鈴木:実際に、発表会で現物を見たら、シースルーのサンバイザーやUSB端子が6つもあるとか、本当に細かいところに、日本人が日本人に向けて作った国内専用車ならではの細かさがあるなあと感心しました。

遠藤:最初はプロパイロットでショールームに来てもらう。でも、ミニバンのユーザーの方は、ミニバンのことをよくご存知の方が多いので、見てもらえれば、私たちのこだわりに絶対に気づいてもらえると思うんですよ。「ああ!これは使いやすいよね」と。まず、なにはともあれ興味を持ってもらえているのは、僕にとってはすごくいいことですね。

磯部:実際に自分も使っていましたし、社内からもいっぱい要望がくるんですよ。わざわざ手描きでA4にスケッチして、「こういうことしたらどうだ!」とか。

鈴木:そういう意味では、やりやすくて、やり切ったという感じですね。結果的に、ドアはリヤが2枚なので、合計6枚になったと(笑)。

磯部:そうですね。あれもやったし、これもやったと(笑)。マイナーチェンジで何をやろうか?と困っているところです。

鈴木:自信作であり、実際に見ればわかるだろうと。

遠藤:共感してもらえる部分がたくさんあるんだろうなあと思います。

ミニバンに多くの人が感じていた不満の数々を解消した5代目セレナ。乗る人誰もが快適に過ごせる自信作だ

ミニバンに多くの人が感じていた不満の数々を解消した5代目セレナ。乗る人誰もが快適に過ごせる自信作だ

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
連載最新記事
連載記事一覧
2017.6.22 更新
ページトップへ戻る