さらに高められた走り。内外のデザインや安全装備もレベルアップ

スバルの新しい地平が見えた! 新型「インプレッサ」試乗&開発者インタビュー

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2016年10月25日より、スバルから新型「インプレッサ」が発売開始となる。新しいインプレッサは、どのようなモデルなのだろうか? 開発者のリーダーへのインタビューと試乗を通して、モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏が、その特徴に迫った。

5世代目の「インプレッサ」が発売開始される。スバルのラインアップではボトムを受け持つ人気モデルだが、新しい試みを取り入れた1台となった

開発リーダーいわく「自信作であることは間違いありません!」

富士重工 スバル商品企画本部 PGM阿部一博さん

富士重工 スバル商品企画本部 PGM阿部一博さん

新型インプレッサの発表を前に行われたメディア向け取材会において、開発のリーダーとなるPGM(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)を務めた阿部一博氏に話を聞くことができた。まずはインタビューから紹介しよう。

鈴木:今回のインプレッサは、プラットフォーム一新が一番大きいところですよね?

阿部:そうですね。技術的には間違いなく、そこがポイントです。

鈴木:スバルの場合、ひとつのプラットフォームを、「インプレッサ」から「レガシィ」、「フォレスター」とほかのモデルにも使い回します。なぜ、新しいプラットフォーム「スバル・グローバル・プラットフォーム」が、このインプレッサから採用されたのでしょうか? タイミングですか? それとも阿部さんからの強い要望ですか?

技術面で最大の注目点は、今後のスバルを支えることになる新しいプラットフォーム「スバル・グローバル・プラットフォーム」を採用したことだ

阿部:正直、タイミングがよかったというほうが強いと思います。富士重工として、これまでのプラットフォームを10年間使い回してきて、次のステップに会社全体として上がりたいというタイミングでした。それに、今は、販売の調子がよいこともあって、今ならお金も使える。そして過去10年で技術的なノウハウもだいぶたまっていて、今やれば非常によい商品ができるのがわかっていました。実は、私がPGMになる1年も前から、先行開発が進んでいて、私がPGMになったときに「これは使えるな」と。それで使わせてもらいました。私が一から「こういうことをやろうよ!」と盛り上げたわけでは、正直ありません。

鈴木:会社の雰囲気として、「新しいプラットフォームを使おう」というものがあったんですね。そして、このインプレッサで使ったプラットフォームを、次の「XV」になって、「フォレスター」になって「レガシィ」になると……。

阿部:そうですね。設計構想は間違いなくこれを使います。大きくなるなど、サイズが変化したりするでしょうけど、このプラットフォームが「レヴォーグ」でも「レガシィ」でも、「アウトバック」でも使います。唯一、「BRZ」だけは、このプラットフォームを使えません。

鈴木:BRZはFRですものね(笑)。それで、このインプレッサが、次世代のスバルのスタンダードになるんだという意気込みで作ったと?

新たな「スバル・グローバル・プラットフォーム」は、剛性が大幅に高められた。もちろん、あらゆる基本性能にとって有利になる

阿部:間違いなくそうです。プラットフォームを新しくするとなると、開発の規模は数倍になるので、「作ってみたけど、あまり調子よくないから、もう1回」ということが起きたら、会社として大変なことになります。できあがったモノをトントントンと使うのが大前提ですから。また、インテリア関係など、プラットフォームにかかわらない部分も、同じくレベルを上げて、スタンダードにしていこうと強く思いました。

鈴木:数倍の規模で開発したのだから、当然、自信作であると?

阿部:自信作であることは間違いありません。また、次につながるスバルの商品力も保証されたと思っています。

鈴木:ちなみに発売が10月なのに、プラットフォームを3月に発表するなど、かなり早め早めに情報を出していました。それはどういう理由なのでしょうか?

写真は、北米モデルの説明会の様子。この新型インプレッサの発売に先立って、今夏にプレイベントを実施するなど、先回りして情報が公開された

阿部:今回みたいに、プラットフォームを新しくしたクルマを導入するとなると、説明をするのに、「プラットフォームを変えていて、実は〜」とやっていると、商品の具体的な話にいつまでたってもたどり着きません。だから、まず技術的に何をやったのかを、商品の導入前に発表しようと。それをやったうえで、徐々に商品をお知らせしようという考えがありました。ここまで皆さんとしては長かったかもしれませんが、私としてはちょうどよかったんですよ。

鈴木:なるほど。最近はティザーを早くやるのが流行っているのもありますよね。それで、今回の場合、商品としての飛び道具みたいなものは、何になるのでしょうか?

阿部:安全という意味で、歩行者保護エアバッグがひとつの飛び道具だと思います。日本車では初採用となります。インプレッサといえば、うちではエントリーで100万円台から始まるクルマです。そこに日本車初の歩行者保護エアバッグを標準装着してしまう。しかも、「EyeSight ver.3」も全部装着。「安全といったら、このクルマだよね!」と思ってもらえるようにしていると。そこが飛び道具だと思います。

国産車では初となる歩行者保護エアバッグ。しかも全グレードに標準装備される

国産車では初となる歩行者保護エアバッグ。しかも全グレードに標準装備される

鈴木:スバル車の衝突安全性能はもともと非常に高い評価を得ています。日本だけでなくアメリカのアセスメントでも、相当に成績がよいですよね。さらに予防安全も「EyeSight」がある。そのうえで、歩行者保護もしっかりやった。まさに死角はないと?

阿部:安全面では死角はないと思っていますね。

好評の運転支援システム「EyeSight」は、最新のver.3に進化。こちらも全グレードに標準搭載される

好評の運転支援システム「EyeSight」は、最新のver.3に進化。こちらも全グレードに標準搭載される

鈴木:あと発表していないのは値段だけですね。(編注:取材は正式発表前に行われた)

阿部:先行受注を9月1日からやっているので、ディーラーさんには値段の情報もいっていて、お客さまに値段を正確にお伝えしています。

鈴木:販売の手応えはどうですか?

阿部:またお客さまを待たせることになりそうだと。今は戦々恐々としています。

鈴木:予想以上にいいと?

阿部:先行受注は、爆発的なスタートダッシュをしていますね。

鈴木:正式な発表が楽しみですね。

※編注:10月13日に行われた正式発表では、価格と共に、9月1日から10月11日までの先行予約の数字も発表された。それによれば、スバルの予想を大きく上回る5883台の受注になったという。

プラットフォームだけでなくパワートレインからインテリアまで一新された

水平対向エンジンを搭載したスバルのラインアップのボトムを受け持つのがインプレッサだ。その最新の第5世代モデルには、新しく開発された「スバル・グローバル・プラットフォーム」が採用された。プラットフォームは、走行性能から衝突安全性能までを定める、まさにクルマの骨格となるもの。数世代をひとつのプラットフォームでまかなうだけでなく、複数の車種にも利用するのが普通だ。車種の少ないスバルの場合、従来より、後輪駆動スポーツカーのBRZ以外は、ひとつのプラットフォームを利用してきた。そのたったひとつのプラットフォームを一新させて、まずはこの新型インプレッサに使ったのだ。

新型プラットフォームの特徴は、非常に高い剛性を実現して走行性能の絶対値を高めただけでなく、フィーリング面でも、大きくレベルアップしたことだ。また、従来から高かった衝突安全性能も、さらに向上。衝突エネルギーの吸収率を、従来から1.4倍も高めている。そして、このプラットフォームは、幅広い車種に利用されるだけでなく、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド、電気自動車への利用も想定されているという。つまり電動化されたスバル車が、このプラットフォームが利用されているうちに登場する可能性も見えてくる。なんとも夢のあるプラットフォームなのだ。

「スバル・グローバル・プラットフォーム」は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド、電気自動車への利用も想定されている

また、新型インプレッサはプラットフォームだけでなく、パワートレインも新しくなった。水平対向4気筒の1.6リッターと2リッターエンジンに、CVTのリニアトロニックを組みあわせるのは従来同様だが、その中身は80%以上を新設計。2リッターは直噴化され、CVTも大幅に軽量化&低抵抗化されている。2リッターエンジンは最高出力113kW(154馬力)/6000rpm、最大トルク196Nmで、JC08モード燃費は2WDで最高17.0km/l、4WDで16.8km/l。1.6リッターは最高出力85kW(115馬力)/6200rpm、最大トルク148Nmで、JC08モード燃費は2WDで最高18.2km/l、4WDで17.0km/lとなっている。スペック上の数値としてはわずかな向上だが、中速トルクの増大やCVTのレシオ拡大、エアロダイナミックスの進化などにより、実燃費の向上が期待できる。

2リッターエンジンは、80%以上が新設計。直噴化もされた

2リッターエンジンは、80%以上が新設計。直噴化もされた

装備面での特徴は、前述の通り、日本車初採用となる、歩行者保護エアバッグを全車に標準装備としたこと。これは歩行者との万一の衝突事故のときに、フロントガラス下部やピラーの上にエアバッグを展開して、ぶつかった歩行者の頭部への衝撃を緩和するというもの。世界的に見て、歩行者の交通事故死亡者の多い日本では効果の高い安全装備だ。また、ステレオカメラを使った衝突被害軽減自動ブレーキであるEyeSightも最新のver.3を搭載。オプションに、ハイビームアシストやステアリング連動ヘッドランプ、斜め後方の死角をカバーするスバルリヤビークルディテクションといった安全装備を用意。このクラスの安全装備としてはトップクラスの内容と言えるだろう。

ステアリング連動ヘッドランプも用意されている。受動安全だけでなく、事故を未然に防ぐ工夫も積極的に取り入れられている

ラインアップはセダンの「インプレッサG4」と、5ドアハッチバックの「インプレッサSPORT」の2種。それぞれに1.6リッターと2リッターのエンジン、FFの2WDと4WDが用意されている。ただし1.6リッターモデルの販売開始は2016年末に遅れることとなった。

走りだしてすぐにわかる、ハッキリとした進化

試乗は、量産直前のプロトタイプで、2リッターエンジンを搭載した4WDモデル。コースは、普段は自転車が走るクローズドコース。ツイスティでアップダウンのあるコースは、ハンドリングやエンジンのレスポンスを味わうのに向いている。ただし、アベレージスピードが低いうえに、路面が平滑なため、乗り心地の良し悪しを知るのには向いていない。

試乗車に乗り込んでみて、まずビックリした。インテリアの雰囲気が一新している。全体的な意匠は旧型の延長線上だが、細密になったというか、解像度が上がったというか……。以前は単純な平面だったところに、細かくステッチが入るなど、全体にデザインが細かくなって凝っている。ひと目で品質感が高まっていると感じる。ひとつ上の車格のクルマに乗っているようだ。

全体のテイストは旧モデルの延長線上にありながらも、細部の作りこみが凝っていて、明らかに質感が向上している

視界のよいシートポジションはスバル車の美点。新しいインプレッサにももちろん継承されている

視界のよいシートポジションはスバル車の美点。新しいインプレッサにももちろん継承されている

ボディが大きくなったこともあり室内は広くなった。特に後席のレッグルームは20mm以上拡大された

ボディが大きくなったこともあり室内は広くなった。特に後席のレッグルームは20mm以上拡大された

そして走りだして、またもビックリ。最初のコーナーを曲がった瞬間に、剛性感が格段に上がっていることに気づく。ステアリングを切ったときのダイレクト感やレスポンスがいい。ステアリングギヤも、よりクイックになっているが、リニアにクルマが動くため、神経質になることもない。また、車内の静粛性も高まっている。そして、コーナリングの安心感にも驚いた。4輪がしっかりと路面をつかんでいる。オプションの「アクティブ・トルク・ベクタリング」を装着した試乗車であれば、コーナリングの驚きは、さらに大きい。コーナリング中に、内輪側に軽くブレーキを効かせることで、コーナリング力を高めるという機能だ。これがついているクルマは、きついコーナーでもグイグイと鼻先をイン側に向けてくれるのだ。

ステアリング操作に対するダイレクトさは完全にスポーツカーレベル。それでいて、4輪がしっかりと路面をつかむ格別の安心感がある。旧型モデルからの劇的なまでの進化だ。スバルが提唱する「安心と楽しさ」を現実にしたのが、新型インプレッサの走りであったと言っていい。これから後に出てくるスバル車は、このインプレッサを土台に、さらに磨き込まれる。今後のスバル車が楽しみになる、出来のよさであった。

スバルが提唱する「安心と楽しさ」を見事に実現。質感の上がった走りで見事なモデルチェンジを果たした

スバルが提唱する「安心と楽しさ」を見事に実現。質感の上がった走りで見事なモデルチェンジを果たした

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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2017.10.23 更新
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