人気のコンパクトMPVが8年ぶりにリニューアル!

新型も“ちょうどいい”、ホンダ「フリード」試乗レポート

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ホンダのコンパクトMPV「フリード」がフルモデルチェンジして、2016年9月16日より発売されている。新しくなったフリードは、どのようなクルマなのか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

新型も高い人気を保つホンダ「フリード」。コンパクトながら、3列シートを備える実用性の高さが支持されてきた

小さくてもミニバンとしてのすぐれた使い勝手を実現した“ちょうどいい”クルマ

小さなクルマに3列シートを詰め込み、「コンパクトミニバン」というジャンルを切り拓いたのが2001年誕生のホンダ「モビリオ」だ。そのコンセプトを引き継ぎ、“ちょうどいい”をキャッチフレーズに、2008年に登場したのが初代「フリード」であった。全長は4.3m弱で、フィットなどのコンパクトカーよりは大きいものの、ステップワゴンのようなハイトミニバンより小さく、奥様方にも「扱いやすい」と大人気になった。8年ものロングライフモデルとなりながらも、販売ランキング上位を守り続けてきたホンダの超優等生モデルである。また、3列シート仕様を基本モデルとしつつ、2列5人乗りの「フリードスパイク」という兄弟車も生まれた。広い荷室を持つフリードスパイクは、車中泊やアクティビティを楽しむ層に受け入れられることに成功。兄弟車を揃えることで、幅広いユーザーを獲得してきたのもフリードの特徴だろう。ちなみに、フリードはファミリー層で女性ユーザーの比率が高く、フリードスパイクは育児のひと段落した子離れ層で男性ユーザーが多いという。

ルーツである「モビリオ」が、先代モデルで「フリード」と改名。新型のフリードにも、コンパクトだが使い勝手はミニバン、というコンセプトは継承されている

先代のコンセプト“ちょうどいい”を踏襲

第2世代に代替わりしたフリードだが、基本的なコンセプトは踏襲された。あくまでも、コンパクトなボディに広々とした室内と使い勝手のよさを追求している。ただし、。2列シートモデルはフリードスパイクから「フリード+(プラス)」に名称が変更された。3列シートをフリード、2列シートをフリード+としたのだ。この変更は旧型スパイクのオーナーが「フリードとのルックスの差別化をあまり求めていない」という調査結果があったからだという。そのため2モデルの主な違いは、リヤハッチゲートの形くらいになった。フリード+はラゲッジの床が先代よりも185mmも低くなり、それにあわせてハッチゲートが大幅に広くなっているのだ。

フリード(写真左)とフリード+(写真右)の外見上の大きな違いは、リヤハッチゲートの形状とサイズ。フリード+のほうが開口部が広く取られている

この超低床化を実現したのが新しいプラットフォームだ。全長を先代より50mm延長。しかし、室内はさらに拡大し、フリードでいえば1列目から3列目までの乗員のヒップポイント間は90mm拡大。2列目シートのスライド量は120mmも大きくり、2列目シートの広々感は、ステップワゴン並みとなっている。また超低床化されたフリード+は、ラゲッジスペースを2階建てとして使うことが可能となった。専用のシートバックボードをセットすれば、大人2人がゆったりくつろげるフラットなスペースができる。車中泊もさらにしやすくなっているのだ。ちなみに超低床化によって、スロープ付きの車イス仕様車も作りやすくなり、244万円からラインアップされている。

2列目シートは広々感も十分。スライド量も120mmも大きくなった

2列目シートは広々感も十分。スライド量も120mmも大きくなった

超低床ボディのフリード+は、スロープを使った車イスの乗降も行いやすい

超低床ボディのフリード+は、スロープを使った車イスの乗降も行いやすい

パワートレインは1.5リッター直噴ガソリンエンジンとCVTを組み合わせたものと、1.5リッターガソリン+モーター内蔵7速DCTのハイブリッドの2種。1.5リッターエンジンの出力は最高96kW(131PS)・最大トルク155Nmとなり、JC08モード燃費は最高で19.0km/l。ハイブリッドはエンジンの出力が81kW(110PS)、最大トルク134Nm、モーターが22kW(29.5PS)、最大トルク160Nmで、JC08モード燃費は最高で27.2km/lとなる。それぞれにFFと4WDが用意されており、4WDは後輪へのプロペラシャフトを備える機械式。電子制御により、前輪が滑り出す前に後輪へ駆動力を配分し、雪道でもスムーズで安心感のある走りを実現している。

パワートレインは、1.5リッター直噴ガソリンエンジンと、1.5リッターガソリン+モーターのハイブリッドとの2種類

シャキッとした走りは、相当に進化している

続いて、実車を走らせた印象をレポートしたい。借り出したのはハイブリッドのフリード+だ。まず、乗り込んで最初に感じるのは、窓が広々としていて視界がいいこと。四隅の見通しがよくクルマのサイズをつかみやすい。インテリアの質感も先代よりも高まっており、全体としてシックで落ち着いた雰囲気だ。以前、3列シートのフリードの室内を見たこともあるが、そのときも同じような印象であったから、新型フリードはポップさではなく、シックさを前面に押し出しているのだろう。

視界は良好で、車のサイズ感が把握しやすい

視界は良好で、車のサイズ感が把握しやすい

インテリアはシックで落ち着いた雰囲気だ

インテリアはシックで落ち着いた雰囲気だ

フリード+は2列目シートまでフラットにできるので、車中泊がしやすい

フリード+は2列目シートまでフラットにできるので、車中泊がしやすい

なお、ハイブリッドではあるが、EV走行ボタンはない。じんわりとアクセルを踏めばEV状態でスタートするが、すぐにエンジンは始動。時速50〜60kmで走行中に負荷の少ないときもEV状態になるが、それも限定的だ。あまりEV色の強くないハイブリッドである。それでもエンジンの存在感は非常に小さく、音も震動もミニマム。全体として静粛性にすぐれているという印象だ。
低速度域でのアクセル操作に対する加速感は、それほど力強いものではないがリニア。高速域での瞬発力はほどほどで、必要十分といったところ。ミニバンらしく、全体としてはおっとりとした動きを見せる。しかし、船のような、操舵に対してリヤが泳ぐような動きは見せない。先代モデルよりも、ずいぶんとシャキっとした走りを見せてくれた。フラットな乗り心地で、路面の段差を越えるときのショックも、上手にいなされている。走りの点では、先代モデルから、数段ステップアップしていたのだ。

特別にパワフルではないが、ミニバンとして必要十分な動力性能を備える。走行フィールは前モデルより数段向上した印象だ

また、使い勝手の点も上々だ。あっと驚く超低床もあるが、それ以外でも、後席の様子がわかる専用ミラーやフラットな床、たくさんの収納、備え付けのシェードなど、細かな工夫や改良が見られる。モビリオから培われてきたノウハウの蓄積も大きいのだろう。特に2列シートのフリード+は、アウトドアユースや車中泊など、幅広い使い方に対応できるような工夫があちこちに見られた。

後席専用のミラー。チャイルドシートに座らせた子どもの様子を確認する場合などに重宝する

後席専用のミラー。チャイルドシートに座らせた子どもの様子を確認する場合などに重宝する

話題の運転支援機能は、最新の「ホンダセンシング」を搭載。衝突被害軽減自動ブレーキだけでなく、路側帯にいる歩行者との衝突を避ける歩行者事故低減ステアリングなどが備わっている。走行中に制限速度などの道路標識を認識してディスプレイに表示する標識認識機能も便利だ。また、前走車を追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や車線維持支援システム、ステアリング制御を伴う路外逸脱抑制機能などはロングドライブの疲労軽減に大いに期待できるうれしい機能だ。予算に余裕があれば、これらの運転支援機能はぜひとも装備することをおすすめしたい。

運転支援機能「ホンダセンシング」として、衝突被害軽減自動ブレーキ、前走車を追従するACC、車線維持支援システム、ステアリング制御を伴う路外逸脱抑制機能を搭載

ユニークなものとして、路側帯にいる歩行者との衝突を避ける歩行者事故低減ステアリングや、道路標識を認識してディスプレイに表示する機能も備える

奇抜なデザインや派手な先進技術の採用はなかったが、従来のコンセプトを守りつつ、パッケージングから走り、実用性のすべての面で先代を上回った新型フリード。生真面目で着実な進化が新型の特徴であったのだ。

派手さはないが、機能性や走行性能が向上し、実用的なミニバンという根本に磨きがかけられている

派手さはないが、機能性や走行性能が向上し、実用的なミニバンという根本に磨きがかけられている

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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2017.7.21 更新
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